上代の大和朝廷の法典は、応仁の乱以後の戦乱で失われたとのことで、『飛鳥浄御原令』と『大宝律令』の原文は現存せず、『養老律令』の場合は、『令義解』『令集解』の令文などでその一部が、また、諸書へ引用された逸文としてその他の部分が残存しているという。本書は、これら現存する一部の令文や逸文から『養老律令』の全体像を復原したもの。条文の順に、まず原漢文を掲示し、次の行に訓読文を付し、さらに各ページ上段の頭注と巻末の補注で解説する体裁を採っている。
本書収録の『養老律令』のうち、「律」は、名例律、衛禁律、職制律、賊盗律及び闘訟律であり、「令」は、官位令、職員令、後宮職員令、東宮職員令、家令職員令、神祇令、僧尼令、戸令、田令、賦役令、学令、選叙令、継嗣令、考課令、禄令、宮衛令、軍防令、儀制令、衣服令、営繕令、公式令、倉庫令、厩牧令、医疾令、仮寧令、喪葬令、関市令、捕亡令、獄令及び雑令である。
古代史関係の本を読んでいて、「凡(およ)そ戸(へ)は、五十戸を以て里と為(せ)よ。」(戸令)とか、「凡そ田は、六年に一たび班(たま)へ。」(田令)といった『養老律令』の条文の一節に接する機会が度重なると、その全貌を知りたいと思うようになったが、知り得ず、隔靴掻痒の感を強くしていた。レビュアーは、寡聞にして、『養老律令』の全体像を訓読文で示した出版物をほかに知らず、本書によってやっと古代政治の基礎的な知識を得たとの感慨が深い。
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