好調の日本史本のなかでも「磯田歴史学」が絶好調の秘密
来年のNHK大河ドラマ『西郷(せご)どん』で時代考証を務める、気鋭の歴史学者の最新エッセイ集が絶好調だ。映画化もされた『武士の家計簿』を始め、既に数々のヒット作のある著者だが、本書は刊行から2週間弱で10万部を突破。その後もペースの落ちない異例のロケットスタートぶりだ。
「著者のテレビ出演が増えたことや、『応仁の乱』から続く中公新書の歴史ものの好調もあってか、歴史の本をあまり手に取らないような読者にも幅広く届いている印象です」(担当編集者)
江戸や幕末の民衆の暮らしを史料から細やかに想像し、徳川家康や坂本龍馬といった大人物たちの意外な一面を掘り下げ、井伊直虎のようにややマイナーな人物にも光を当てる。天災の記録を現代の災害対策と結びつける、アクチュアルな発言でも知られる。そんな多面的な「磯田歴史学」のエッセンスが、いい意味で学者離れした、滑らかな文章で詰め込まれている。
「一篇が数ページのエッセイに、史料や史跡の研究に基づく新たな発見が惜しげもなく盛り込まれる。アウトプットは柔らかでも、インプットは骨太。それが著者の持ち味です」(担当編集者)
前書きで著者は、古文書にきちんと向き合うことの大切さを熱く語っている。本書はまさにその実践の成果。歴史学への入門書であると同時に、日本史に一家言ある人に気付きを与える一冊にも仕上がっている。
評者:前田 久
(週刊文春 2017.11.30 号掲載)
西郷隆盛の性格は、書状からみえる。豊臣秀頼の父親は本当に秀吉なのか。著者が原本を発見した龍馬の手紙の中身とは。司馬遼太郎と伝説の儒学者には奇縁があった―日本史にはたくさんの謎が潜んでいる。著者は全国各地で古文書を発見・解説し、真相へと分け入ってゆく。歴史の「本当の姿」は、古文書の中からしかみえてこない。小説や教科書ではわからない、日本史の面白さ、魅力がここにある!
著者について
1970年、岡山県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(史学)。茨城大学准教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2016年4月より国際日本文化研究センター准教授。『武士の家計簿』(新潮新書、新潮ドキュメント賞受賞)、『無私の日本人』(文春文庫)、『天災から日本史を読みなおす』(中公新書、日本エッセイストクラブ賞受賞)など著書多数。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
磯田/道史
1970年、岡山県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(史学)。茨城大学准教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2016年より国際日本文化研究センター准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)