1)地政学は、常に普遍的な価値基軸によって国家戦略を動かす!!
「2025年 韓国はなくなっている」の表紙タイトルには目が留まると思う。何故!?の疑
問が湧くだろう。本著作は「地政学」の本。第1章では、「リアリズム」で読み解く東ア
ジア、とある。
国家戦略の過程で、「地理」、「歴史」「イデオロギー」という3要素の相乗、という価
値基軸の重要性を謳い、これが本著作の醍醐味である(34頁)。
・要素別に見ると、「地理」は、人間の手によって改変することが困難であり、“リアリ
ズム”=“現実主義”を指向する(20頁)。
・「歴史」は、民族のアイデンティティーの遺産であり、自然環境の恵みの過多、寡少に
よる影響を受け、性格、行動パターンがそのまま“国民性”へと醸熟され、未来予測に応用
が利く(252頁)。
・「イデオロギー」は、“アイデアリズム”=“理想主義”との距離の度合い、程度が、国家
の舵取りを決定づける。何より“アイデアリズム”は“主観”であり、“正当派歴史観”には国
家の策謀が介入しやすい(20頁)。
「地理」で不動要素が強いのが「国家」であり、現実を指向するとカネやモノたる経済が
国家を基礎づける。
殊に、「大陸国家」(=中国、ロシア)であれば、理想から距離をとって現実的なものの
提供=“経済的裕福”が国家の安定につながる。対極の「海洋国家」(=日本、台湾)では、“
経済的裕福”が達成しやすく、理想に近く浸り“平和ボケ”ができる時機もある(32頁)。
そして、地政学では「軍事が経済に優先する」という原則があり、如実に動きが見られる
のが、「半島国家」である。「半島国家」(=朝鮮、ベトナム)は、「大陸国家」=“ラン
ドパワー”の脅威に晒され、「海洋国家(島国)」=“シーパワー”との拮抗関係にあり、「
大陸国家」「海洋国家」の見立てによれば、弛緩地帯でもあり、火薬庫でもあり、安楽は
ない(35頁)。では、「半島国家」の代表たる朝鮮半島の情勢を見てみよう。
2)地政学を読み解くと、「統一朝鮮」の時代がやって来る!!
明時代の落とし子である朱子学には「華夷思想」が底流としてあり、「半島国家」の民族
のアイデンティティーである(140頁)。
北朝鮮は、「自分たちこそが本来の中華を守っている」との自負があり、社会主義を加味
し、“主体思想”=“チュチェ思想”の持ち主である(43頁)。
また、韓国は、「両班(ヤンバン)でなければ人ではない」「知識人こそが至上」という
伝統的な考えが支えとなって学歴主義、学閥主義は既に知られるところである(141頁)。
文政権にいたる3代までの進歩派政権は、キム一族を潜在的に是認し、何より「民族統一
の悲願達成」を目指していて、北の現体制をどうするのか!?南北の経済格差をいかに解
消するのか!?という具体的な青写真は持ち合わせていない(131頁、142頁)。
もっとも、「民族統一の悲願達成」=朝鮮ファーストであり、トランプ政権の「アメリカ・
ファースト」の“アイデアリズム”の相性摩擦は、今となっては激減している利点はある(
150頁)。
少し、米朝に視点を移してみよう。トランプは取引=ディール好きだ。
第1回の米朝首脳会談(2018年6月18日)の開催よりも、米朝会談の前夜(2018年6月11
日)にマリーナベイのホテルのカジノに金正恩を招き「お前の国にも、こんな立派なカジ
ノが造れるんだぞ」と誘引した。”核放棄し、経済発展の未来図を描いたらどうだ“と。金
正恩は沈黙...(できるはずがない)。
続いて、第2回の米朝首脳会談(2019年2月)がベトナムのハノイで開催された(130頁)。
金正恩にしてみれば、限定的で実効性の薄い「非核化」を約束し、経済制裁を緩めてもら
う目論見であった(152頁)。
ところが、トランプは「非核化」の意思がまったくないことを知りつつ、韓国の「仲裁」
に乗ったふりをし、「あんたは非核化というが、この写真は何なんだ!?」と証拠を突き
つける。非公開の核開発基地が露呈していることを知った金正恩は呆然自失になったとい
う(131頁)。文在寅も仲裁役が果たせず面目が潰れた。
さらに、国際金融資本から手を引かれ、資金困窮、経済制裁は相当に効いているという背
面の理由も合わさる。
いよいよ金正恩は焦る。
韓国にしても、韓国の技術的アドバンテージも下火となり、すでに韓国産のスマートフォ
ンは市場を失っている(160頁)。今さら、歴史問題を蒸し返し日本に賠償を求めるしか
手立てがないのか!?と思ってしまう。
日本の経済産業省は2019年7月1日、韓国への輸出管理規制の運用を見直し、スマートフ
ォンやテレビに使われる半導体などの製造過程で必要な材料、3品目の輸出規制を強化す
ると発表した。軍事転用できる半導体規制は韓国のスマートフォン市場にとって打撃。最
近のレーダー照射問題、徴用をめぐる問題は地政学的な動きである。
半島経済はますます内製化する。
現状では、韓国の財閥は北へ投資し、北の安い労働力により輸出競争力を強化しようと手
ぐすね引いている動きが功を奏す程度である(157頁)。必然の動きなのか、中国が香港
返還の際に採用した「一国二制度」が起爆剤となる(156頁)。
そして何より、トランプ大統領のツィーターでの呼びかけに北朝鮮政府が応じ、日本開催
G20の直後に第3回米朝首脳会談(2019年6月30日)が北朝鮮で開催となった。トランプ
は現職の大統領として軍事境界線を越えたのである。交渉チームを双方作り、交渉再開の
合意となった。今回の訪朝は、大統領選の再選のためか!?ノーベル平和賞を取りに行っ
ているのか!?パフォーマンスの要素が強いが、それにしても「統一朝鮮」が現実味を帯
びてきた。
自らの民主主義の手続きにより選んだ政権が、韓国の普通の有権者は職を奪い、“アイデア
リズム”のもとで、果たしてこの状況に納得できるのか!?
韓国一国民は、自らは両班(ヤンバン)でありたい!!そう思うはず。
隣人がことの真相に気がついても手の施しようはない、茂木氏もそう言っている(160頁)。
アチソンラインが誘因となった朝鮮戦争も、38度線が「統一朝鮮」により鴨緑江まで後退
する、そう素直に喜べばよいのか!?韓国の人々の置かれた心情を思うと悩みどころだ。
「世界覇権100年戦略」はもういいだろう。低姿勢をやめにした中国の習近平と、アメリカ
のトランプとの「覇権」争い。ナンバーツーの釘は打たれる、「トゥキュディデスの罠」に
習近平は填まってしまった(29頁)。
世界は今、環境、貧困、テロや紛争、他民族の排斥など、多方面に伏線が張られているよう
に見えるが、結局のところ、米中の「覇権争い」に収斂される。
米中が世界の“舵取り”を行い、一寸先は“うっすら闇”である。そんな中にあって地政学は“灯
り”をうっすら照らしてくれている。地政学は日々の出来事なのである。
日本人が知るべき東アジアの地政学 ~2025年 韓国はなくなっている~ (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2019/6/25
茂木 誠
(著)
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本の長さ256ページ
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言語日本語
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出版社悟空出版
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発売日2019/6/25
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寸法18.8 x 12.8 x 2.5 cm
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ISBN-104908117624
-
ISBN-13978-4908117626
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商品の説明
出版社からのコメント
まずはカバーの地図を見て下さい。
普段我々が見ている地図の南北がひっくり返っています。
朝鮮半島が日本に突きつけられた刃に見えますが、一方、韓国、北朝鮮、そして中国、ロシアから見れば、太平洋への出口が日本によって塞がれているのがわかります。
さらに中国は沖縄、台湾、フィリピン、インドネシア等によって西南も塞がれています。それぞれの出口は地政学で言うチョークポイント(首が絞められてしまう致命的な地点)になっています。ランドパワー大国の中国が、同時にシーパワー大国を指向していますが、これが中国の圧倒的に不利な点です。
片や、幸いな事に日本や台湾、フィリピンそしてアメリカはどこからでも太平洋に出られます。
このカバーはこうした地政学のリアリズムで世界を見ることの大切さを表しています。
アメリカの在日米軍司令官室には南北がひっくり返った大きな地図が掛けられているそうです。
こうした視点を前提に“茂木流地政学”で激動の東アジアを見れば、「日・韓・中・朝・台・米・露」の国益と国家戦略が浮き彫りになり、日本の進むべき道が見えてきます。
この本は目からウロコの連続です。
どうぞご覧になって下さい。
普段我々が見ている地図の南北がひっくり返っています。
朝鮮半島が日本に突きつけられた刃に見えますが、一方、韓国、北朝鮮、そして中国、ロシアから見れば、太平洋への出口が日本によって塞がれているのがわかります。
さらに中国は沖縄、台湾、フィリピン、インドネシア等によって西南も塞がれています。それぞれの出口は地政学で言うチョークポイント(首が絞められてしまう致命的な地点)になっています。ランドパワー大国の中国が、同時にシーパワー大国を指向していますが、これが中国の圧倒的に不利な点です。
片や、幸いな事に日本や台湾、フィリピンそしてアメリカはどこからでも太平洋に出られます。
このカバーはこうした地政学のリアリズムで世界を見ることの大切さを表しています。
アメリカの在日米軍司令官室には南北がひっくり返った大きな地図が掛けられているそうです。
こうした視点を前提に“茂木流地政学”で激動の東アジアを見れば、「日・韓・中・朝・台・米・露」の国益と国家戦略が浮き彫りになり、日本の進むべき道が見えてきます。
この本は目からウロコの連続です。
どうぞご覧になって下さい。
内容(「BOOK」データベースより)
大人気!予備校講師茂木誠が世界史の教養で米中覇権争いと「統一朝鮮」を読み解く。→その時、日本はどうする!?
著者について
東京都出身。駿台予備学校、ネット配信のN予備校で大学入試世界史を担当。iPadを駆使した独自の視覚的授業が好評を得ている。世界史の受験参考書のほか一般向けの著書も多数。『経済は世界史から学べ! 』(ダイヤモンド社)、『世界史を動かした思想家たちの格闘』(大和書房)、『世界史で学べ! 地政学』(祥伝社)、『ニュースの"なぜ?"は世界史に学べ』シリーズ(SB新書)、『マンガでわかる地政学』(池田書店)、『サバイバル世界史』(青春新書)、『世界史とつなげて学べ 超日本史』(KADOKAWA)など。YouTubeもぎせかチャンネルで時事問題について発信中。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
茂木/誠
東京都出身。駿台予備学校、ネット配信のN予備校で大学入試世界史を担当。iPadを駆使した独自の視覚的授業が好評を得ている。世界史の受験参考書のほか一般向けの著書も多数。YouTubeもぎせかチャンネルで時事問題について発信中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
東京都出身。駿台予備学校、ネット配信のN予備校で大学入試世界史を担当。iPadを駆使した独自の視覚的授業が好評を得ている。世界史の受験参考書のほか一般向けの著書も多数。YouTubeもぎせかチャンネルで時事問題について発信中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 悟空出版 (2019/6/25)
- 発売日 : 2019/6/25
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 256ページ
- ISBN-10 : 4908117624
- ISBN-13 : 978-4908117626
- 寸法 : 18.8 x 12.8 x 2.5 cm
-
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- - 80位国際政治情勢
- - 221位政治入門
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2019年7月4日に日本でレビュー済み
およそ二十年近く前に米中冷戦の未来を予測していた『日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略』という国際戦略論の大著があり、その本の中の一章では歴史分析に基づいた詳細な地政学論(シーパワーとランドパワーの衝突、米中冷戦の帰趨、半島国家が持つ宿命、その他)が論証展開されていた。
この『日本人が知るべき東アジアの地政学』 は、その本の地政学論の章の要点部分をそのまま下敷きにして焼き直ししたような感じの内容だ。
本のタイトルの冠も「日本人が知らない」が「日本人が知るべき」に少し変わっているだけなので、この本はおそらく『「二つのアメリカ」の世界戦略』を元ネタにして書かれているのではないかと思う。
それゆえに個人的には既読感があって新味は感じなかったが、この地政学論自体が的を射たものであることは間違いなく、元ネタの本を知らない若い読者にとっては極めて有益な知識を得られる良書だろう。
中国の経済力がまだ世界6位ぐらいで日独英仏よりも下であった二十年近く前、あの頃に初めて上記の本で地政学的な近未来予測を読んだときは、「米中が米ソのように冷戦に突入する?そして米日シーパワー連合が中国ランドパワーに勝利する?本当にそんな未来がくるのか?」と半信半疑だった。
しかし、あれから二十年近い年月が経った今、トランプ政権の登場により、まさしくその近未来予測そのまんまの国際状況が現実に目の前に展開している。
米中冷戦だけではなく、中国の覇権拡大とか、中国の反日暴動とか、日米印の連携とか、韓国の左傾化や北との統一志向とか、英国のEU離脱とか、安倍政権待望論とか、その他いろいろ・・・、二十年近く前のその本で「予言」されていた大小さまざまな未来予測がゾッとするぐらいことごとく的中しているのだ。著者が未来透視能力者(笑)じゃないのなら、地政学という学問がそれだけ凄いということだ。
一ヵ月先ですら何が起こるかわからないような国際情勢の中で、二十年近くも前に書かれた本の地政学的考察に基づく未来予測が何から何まで完全に的中している事実。
この事実をみつめれば、国際政治を考える上で地政学という学問がいかに重要不可欠なものであるかは明らかである。メディアも政治家も地政学を知らずして国際政治を語るべきではない。
この『日本人が知るべき東アジアの地政学』 は、その本の地政学論の章の要点部分をそのまま下敷きにして焼き直ししたような感じの内容だ。
本のタイトルの冠も「日本人が知らない」が「日本人が知るべき」に少し変わっているだけなので、この本はおそらく『「二つのアメリカ」の世界戦略』を元ネタにして書かれているのではないかと思う。
それゆえに個人的には既読感があって新味は感じなかったが、この地政学論自体が的を射たものであることは間違いなく、元ネタの本を知らない若い読者にとっては極めて有益な知識を得られる良書だろう。
中国の経済力がまだ世界6位ぐらいで日独英仏よりも下であった二十年近く前、あの頃に初めて上記の本で地政学的な近未来予測を読んだときは、「米中が米ソのように冷戦に突入する?そして米日シーパワー連合が中国ランドパワーに勝利する?本当にそんな未来がくるのか?」と半信半疑だった。
しかし、あれから二十年近い年月が経った今、トランプ政権の登場により、まさしくその近未来予測そのまんまの国際状況が現実に目の前に展開している。
米中冷戦だけではなく、中国の覇権拡大とか、中国の反日暴動とか、日米印の連携とか、韓国の左傾化や北との統一志向とか、英国のEU離脱とか、安倍政権待望論とか、その他いろいろ・・・、二十年近く前のその本で「予言」されていた大小さまざまな未来予測がゾッとするぐらいことごとく的中しているのだ。著者が未来透視能力者(笑)じゃないのなら、地政学という学問がそれだけ凄いということだ。
一ヵ月先ですら何が起こるかわからないような国際情勢の中で、二十年近くも前に書かれた本の地政学的考察に基づく未来予測が何から何まで完全に的中している事実。
この事実をみつめれば、国際政治を考える上で地政学という学問がいかに重要不可欠なものであるかは明らかである。メディアも政治家も地政学を知らずして国際政治を語るべきではない。
2019年7月20日に日本でレビュー済み
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本書で茂木氏は、歴史と地政学を同時に論じている。もともと地政学は歴史を使って検証するものだ。
確かな歴史知識に裏付けられた冷静な分析に毎度のことながら感心させられた。
特に本書のメインともいえる朝鮮半島の歴史と地政学的分析が興味深い。今のトランプ政権と、南北朝鮮の動きを虚心に見れば茂木氏の分析が正解のように思われる。つまり、朝鮮半島は早くて2025年までに統一され、38度線は対馬海峡に南下するのではなく鴨緑江に北上する。韓国の親北政権、進歩派の本質は朝鮮民族至上主義であり主体思想とはマルクス風味の朱子学であることが日本人には理解されていないと指摘する。さらに文在寅のような親北のランドパワー志向が朝鮮半島の地政学から見るとむしろ正道とも考えられる。
アメリカは半島から軍を引き上げ、朝鮮半島はベトナム型の社会主義で統一され朝鮮民族は悲願の民族独立を達成する。そして朝鮮半島がチャイナ、アメリカ、ロシアの間の永遠の緩衝地帯として存続するためには核は必要不可欠でありアメリカもそれを最終的に容認するであろう。
政治は常に右に左に揺れ動くが地政学的条件は不変であり、その国の取るべき正しい方向は決まっている。すなわちシーパワーかランドパワーの国かは地政学的に決まっている条件であり、それを見誤ると国が傾くのが歴史の教えるところだ。
確かな歴史知識に裏付けられた冷静な分析に毎度のことながら感心させられた。
特に本書のメインともいえる朝鮮半島の歴史と地政学的分析が興味深い。今のトランプ政権と、南北朝鮮の動きを虚心に見れば茂木氏の分析が正解のように思われる。つまり、朝鮮半島は早くて2025年までに統一され、38度線は対馬海峡に南下するのではなく鴨緑江に北上する。韓国の親北政権、進歩派の本質は朝鮮民族至上主義であり主体思想とはマルクス風味の朱子学であることが日本人には理解されていないと指摘する。さらに文在寅のような親北のランドパワー志向が朝鮮半島の地政学から見るとむしろ正道とも考えられる。
アメリカは半島から軍を引き上げ、朝鮮半島はベトナム型の社会主義で統一され朝鮮民族は悲願の民族独立を達成する。そして朝鮮半島がチャイナ、アメリカ、ロシアの間の永遠の緩衝地帯として存続するためには核は必要不可欠でありアメリカもそれを最終的に容認するであろう。
政治は常に右に左に揺れ動くが地政学的条件は不変であり、その国の取るべき正しい方向は決まっている。すなわちシーパワーかランドパワーの国かは地政学的に決まっている条件であり、それを見誤ると国が傾くのが歴史の教えるところだ。
2019年7月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「東アジアの」というタイトルながら、実際は南北朝鮮にスポットを当て、朝鮮半島情勢を歴史、周辺の大国との関係で論じている。同じ著者の『世界史で学べ!地政学』では半島国家としての朝鮮半島とギリシャのアナロジーに膝を打ったのだが、そこをさらに深掘りしてきた印象。韓国人のメンタリティにおける朱子学と両班支配の影響の解説が勉強になった。本書でシナリオの一つとして予測されている「北朝鮮主導による『主体思想』の下での2025年朝鮮半島の統一」「北朝鮮キム王朝の存続・皇室化」がまさか実現するとは思えませんが、本当にそうなったら著者は「地政学の神」に祀り上げられるでしょう。
ベスト500レビュアー
Amazonで購入
著者の説いているとことはもっともだと思いつつも、わが国は自分たちをシーパワーと本当に位置づけたことがあるのかどうかが疑問に思えてならなかったので、まとまらないながら一言意見を述べさせていただきます。
例えば元寇を撃退した戦いもわが国の陸軍力が相手の上陸部隊を撃退したのであって、海戦で勝利したのではありません。秀吉の朝鮮侵攻にしても最終的に失敗に終わったもののあれだけ相手方にダメージを与えることができたのはわが国の陸軍力のためだったのではないでしょうか。緻密な占領計画を持たない国内の失業対策的色彩が強い戦いであったことが失敗の最大の要因ではあったのでしょうが、海戦で遅れをとったことで兵站線が続かなくなったことが敗戦の直接的なきっかけになったのではないかと思います。つまり日本は島国ではありますが、歴史的には内戦によって培われた陸軍国であり、海上戦では白村江の戦い以来勝ったことがないのです。なお、倭寇のような私兵集団は海軍とは呼べないことも確認しておきたいと思います。
日清・日露の両戦役で海軍が大勝利を上げたことで日本は海軍国であるかのように思っているひとがいます。しかし大東亜戦争にまで続く日本海軍の基本的考え方は艦隊決戦であって、自国側のシーレーンの確保、相手方のシーレーン破壊という本来の海軍国の発想はついに出て来ませんでした。これは艦隊の運用だけではなく、航空機の運用法についてもいえることです。実際相手国の輸送船団を集中的に攻撃するという作戦はとられたことがありませんでした。この相手方の主力部隊と決戦、撃破するという発想はそもそも陸軍国の発想なのではないかと思うのです。英国vs.スペインの海戦なども、艦隊決戦のようにみえますが、その戦争目的はあくまで植民地へのシーレーンをどちらが確保するかだったのです。
地理的な要因がその国の歴史を決定する基本的要因のひとつであるという考え方に異論はありません。しかしランドパワー=陸軍国という方向には異論はありませんが、シーパワー=海軍国という発想は違うのではないかと思うのです。
アメリカが国力を落とすことによりアジアから勢力を引いていく。わが国は自主防衛の方向に舵を切る以外に安全を確保する方法がないという意見には基本的に賛成です。しかし日米戦争は結局アメリカの経済封鎖によって起こったことを忘れてはならないと思います。わが国が憲法第9条などという机上の空論にしがみつくことなく一定程度の防衛能力を確保する必要があることには、議論の余地はありません。しかし、資源のないわが国は結局一国独立防衛、中立というのは不可能なのであって、政治的にどう複雑な世界情勢の中を泳ぎ切るかが重要なのだという認識がまず大事だと思います。
こうした議論を突き詰めていきますと、結局核武装論に行き着くのですが、これはここでは議論しないことにします。とにかく日本が島国であり、比較的肥沃な土地に恵まれていたことが長く独立を保てたことの最大の要因の一つであったことは間違いありませんが、シーパワーといった議論は(その語感も手伝って)ややもすれば国策を間違った方向に誘導してしまう可能性があるのではないかと懸念されます。
例えば元寇を撃退した戦いもわが国の陸軍力が相手の上陸部隊を撃退したのであって、海戦で勝利したのではありません。秀吉の朝鮮侵攻にしても最終的に失敗に終わったもののあれだけ相手方にダメージを与えることができたのはわが国の陸軍力のためだったのではないでしょうか。緻密な占領計画を持たない国内の失業対策的色彩が強い戦いであったことが失敗の最大の要因ではあったのでしょうが、海戦で遅れをとったことで兵站線が続かなくなったことが敗戦の直接的なきっかけになったのではないかと思います。つまり日本は島国ではありますが、歴史的には内戦によって培われた陸軍国であり、海上戦では白村江の戦い以来勝ったことがないのです。なお、倭寇のような私兵集団は海軍とは呼べないことも確認しておきたいと思います。
日清・日露の両戦役で海軍が大勝利を上げたことで日本は海軍国であるかのように思っているひとがいます。しかし大東亜戦争にまで続く日本海軍の基本的考え方は艦隊決戦であって、自国側のシーレーンの確保、相手方のシーレーン破壊という本来の海軍国の発想はついに出て来ませんでした。これは艦隊の運用だけではなく、航空機の運用法についてもいえることです。実際相手国の輸送船団を集中的に攻撃するという作戦はとられたことがありませんでした。この相手方の主力部隊と決戦、撃破するという発想はそもそも陸軍国の発想なのではないかと思うのです。英国vs.スペインの海戦なども、艦隊決戦のようにみえますが、その戦争目的はあくまで植民地へのシーレーンをどちらが確保するかだったのです。
地理的な要因がその国の歴史を決定する基本的要因のひとつであるという考え方に異論はありません。しかしランドパワー=陸軍国という方向には異論はありませんが、シーパワー=海軍国という発想は違うのではないかと思うのです。
アメリカが国力を落とすことによりアジアから勢力を引いていく。わが国は自主防衛の方向に舵を切る以外に安全を確保する方法がないという意見には基本的に賛成です。しかし日米戦争は結局アメリカの経済封鎖によって起こったことを忘れてはならないと思います。わが国が憲法第9条などという机上の空論にしがみつくことなく一定程度の防衛能力を確保する必要があることには、議論の余地はありません。しかし、資源のないわが国は結局一国独立防衛、中立というのは不可能なのであって、政治的にどう複雑な世界情勢の中を泳ぎ切るかが重要なのだという認識がまず大事だと思います。
こうした議論を突き詰めていきますと、結局核武装論に行き着くのですが、これはここでは議論しないことにします。とにかく日本が島国であり、比較的肥沃な土地に恵まれていたことが長く独立を保てたことの最大の要因の一つであったことは間違いありませんが、シーパワーといった議論は(その語感も手伝って)ややもすれば国策を間違った方向に誘導してしまう可能性があるのではないかと懸念されます。