幕末のペリー来航による開国から、およそ昭和天皇崩御に至るまでを扱った近代日本の通史。
各担当年代に分かれた8人の研究者がリレー形式で執筆しており、
単行本の初版が1999年という如く比較的近年の研究成果を反映しているのが特徴。
どの著者もある程度の前提知識を読者に要求しているため、
高校卒業程度の日本史知識がないと議論についていくのが少し難しいかもしれない。
(たとえば「七卿落ち」「星亨」「2.26事件」といったキーワード)
いったいに近代国家として日本の政治の意思決定プロセスがどのように形成されていったかに大きく焦点が当てられており、
政治的な観点で近代日本の成り立ちを知る上では大変よい企画である。
とりわけシリーズ劈頭を飾る幕末担当の松本氏、また昭和の戦時中を扱った北岡・五百籏頭両氏は
いずれも切れ味の鋭い論考を展開しており、これらの巻だけでも一読を勧めたい。
その反面文化史や風俗史といった意味での分析は甚だ物足りなかったのも事実だった。
ただこちらについてはテーマごとに特集された別冊のシリーズが存在するので、そちらで補完すべきだろう。
個人的には執筆を受け持った8人の間でも学者としての力量差が如実に感じられた。
前述のように示唆に富む議論を開陳してみせる著者がいる一方で、
退屈な教科書よろしく淡々と時系列順に出来事を叙するだけのような担当者も見受けられたのは残念である。
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日本の近代1 - 開国・維新 1853~1871 (中公文庫) 文庫 – 2012/6/23
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太平の眠りから目覚めさせられた日本は否応なしに開国そして近代国家への道を踏み出していく。黒船来航に始まる十五年の動乱、勇気と英知の物語。
- 本の長さ423ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2012/6/23
- ISBN-104122056616
- ISBN-13978-4122056619
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
ペリー来航に始まる幕末の波瀾。欧米各国の圧迫と国家の危機を、人々は英知と戦略で切り抜ける。日本がアジアで唯一近代化に成功したのはなぜか。日本人とは何かを近代国家誕生の過程から描く。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
松本/健一
1946年(昭和21)群馬県生まれ。東京大学経済学部卒業。法政大学大学院在学中に『若き北一輝』を発表。以後、日本の思想・政治・文学についての評論活動を展開。現在、麗澤大学教授。主な著書に、『近代アジア精神史の試み』(岩波現代文庫、アジア太平洋賞受賞)、『評伝北一輝』(全五巻、岩波書店、毎日出版文化賞、司馬遼太郎賞受賞)ほか多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1946年(昭和21)群馬県生まれ。東京大学経済学部卒業。法政大学大学院在学中に『若き北一輝』を発表。以後、日本の思想・政治・文学についての評論活動を展開。現在、麗澤大学教授。主な著書に、『近代アジア精神史の試み』(岩波現代文庫、アジア太平洋賞受賞)、『評伝北一輝』(全五巻、岩波書店、毎日出版文化賞、司馬遼太郎賞受賞)ほか多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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2020年5月21日に日本でレビュー済み
著者は、従来の歴史書は、幕末から明治維新にいたる歴史を「尊王・倒幕とか、徳川vs. 反徳川とか、図式的」である、としている。本書は、黒船来航から明治維新に至る15年の動乱の時代をイキイキと描いている、つまり、図式的な歴史書ではなく生きている人間の息遣いが聞こえるような素晴らしい本である。そして、アジア諸国が植民地になるなかで、なぜ日本が近代化できたのか。本書を読んで、その答えをみつけることができた。
本書を読んで、日本の近代化をすすめた思想が3つあることに気づいた。
一つ目は、ペリー来航と白旗から始まる国際法(万国公法)への理解。攻撃したとしても白旗を掲げれば攻撃をやめるという恫喝を受け、国際社会のルールがあることを教えられ、列強の侵略に対抗するため、幕府側だけでなく坂本龍馬などの志士も万国公法を学んでいった。
二つめは、近代国家の理念。横井小楠の『国是三論』、小楠の影響を受け、小楠の思想の実践者であった坂本竜馬が書いた「船中八策」、そして小楠の弟子で龍馬の友人だった由利公正の起草した「五箇条の御誓文」。小楠や龍馬を経て、近代国家の理念はつくられていったのである。
三つ目は、欧米の科学技術を取り入れなければならない、という技術立国の考え。アヘン戦争に危機感を抱いて、欧米技術の導入を説いた佐久間象山が象徴的な人物である。また、反射炉などの近代的な工場をつくろうとした佐賀藩、薩摩藩、水戸藩などがこの考えを実践している。
万国公法への理解、横井小楠を源流とする近代国家の思想、そして技術立国。この3つの考えを中心に著者は黒船来航から明治維新に至る歴史を叙述しており、また、そこで当時の人間がどう考え、行動していたかがよくわかる本である。従来の図式的な見方から離れた素晴らしい本である。
本書を読んで、日本の近代化をすすめた思想が3つあることに気づいた。
一つ目は、ペリー来航と白旗から始まる国際法(万国公法)への理解。攻撃したとしても白旗を掲げれば攻撃をやめるという恫喝を受け、国際社会のルールがあることを教えられ、列強の侵略に対抗するため、幕府側だけでなく坂本龍馬などの志士も万国公法を学んでいった。
二つめは、近代国家の理念。横井小楠の『国是三論』、小楠の影響を受け、小楠の思想の実践者であった坂本竜馬が書いた「船中八策」、そして小楠の弟子で龍馬の友人だった由利公正の起草した「五箇条の御誓文」。小楠や龍馬を経て、近代国家の理念はつくられていったのである。
三つ目は、欧米の科学技術を取り入れなければならない、という技術立国の考え。アヘン戦争に危機感を抱いて、欧米技術の導入を説いた佐久間象山が象徴的な人物である。また、反射炉などの近代的な工場をつくろうとした佐賀藩、薩摩藩、水戸藩などがこの考えを実践している。
万国公法への理解、横井小楠を源流とする近代国家の思想、そして技術立国。この3つの考えを中心に著者は黒船来航から明治維新に至る歴史を叙述しており、また、そこで当時の人間がどう考え、行動していたかがよくわかる本である。従来の図式的な見方から離れた素晴らしい本である。