いわゆる史実を並べた一般の歴史書とは異なり、日本という国や日本人が、どのような過程を経て今の姿になったかを教えてくれる貴重な著作と言える。
日本および日本人の成り立ちを知る上で、特に重要と感じた項目を、以下に列挙する。
1) 日本では、南北朝の動乱後、14世紀に始まった室町時代を境として、以下のような大きな変化が生まれた。
a) 現存する日本の村の約4分の3は、室町時代を起点にしている。
b) 女流文学が活性化していたのは、14世紀まで。
c) 13世紀後半から14世紀にかけて、金属貨幣が本格的に流通し始める。
d) 神仏とのつながりによって、特別の身分とみなされていた職人も、南北朝の動乱を経て、15世紀になると守護大名のような世俗的な権力を頼るようになった。
2) 差別について
もともと縄文時代のころは、生きること自体が大変なことであり、人を差別するという感覚は存在しなかった。
8世紀の奈良時代になると、国家が政策として苦境に陥った人々を救済する組織をつくるが、9世紀の終わりごろ(平安時代)には、財政的に困難となる。
ただし、鎌倉後期(13~14世紀)になると、非人・放免・牛飼などと呼ばれて区別されていた人々は、ケガレとして排除しようとする風潮の一方で、自然・動物・子ども・処刑・葬送・楽器・刀・鎧など、当時神聖とみなされていた対象にたいして特異な力をもっている人々としてもとらえられており、この両者がせめぎあっていた。
しかし、14世紀(室町時代)以降、社会が徐々に文明化されてくると、ケガレとしての差別の感覚がより強くなり、さらに江戸時代(17世紀)になると、ますますその風潮が定着する。
3) 天皇制について
天皇制は、「日本」という国号とともに、律令制度が確立した天武・持統のときに始まった。従って、天皇は、種々の決定にあたり律令制にもとづいて太政官の承諾を必要とし、太政官とは常に緊張関係にあった。
その後、天皇制は、鎌倉・室町時代と織田信長の時代に、危機を迎える。特に、後醍醐天皇は権力の回復を試みて、鎌倉幕府を滅亡に導いたが、室町時代には、足利氏と対立し、南朝を樹立することになった。その後、義満の時代に南北朝は統一されたが、いまの天皇制も起源は北朝であるにもかかわらず、南朝を正統としている。
4) 縄文時代・弥生時代
日本は、縄文時代・弥生時代を起源として固有の文化が形成されたと考えられがちだが、当時の日本の地形は現在と大きく異なっており、すでに大陸から数十万から百万人以上の人々が渡来していた。また、当初は、縄文時代は狩猟、弥生時代は農耕中心の時代と考えられてきたが、最近の研究では、縄文時代には、すでに畑作や稲作がはじまっており、縄文文化と弥生文化が共存していた時期もかなり長期間つづいていたことがわかっている。
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日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫) 文庫 – 2005/7/6
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30万部突破のロングセラー
若い読者も、学び直したい人も
歴史に夢中になれる本No.1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この1冊で日本史の常識が覆った!
日本が農業中心社会だったというイメージはなぜ作られたのか。商工業者や芸能民はどうして賤視されるようになっていったのか。現代社会の祖型を形づくった、文明史的大転換期・中世。そこに新しい光をあて農村を中心とした均質な日本社会像に疑義を呈してきた著者が、貨幣経済、階級と差別、権力と信仰、女性の地位、多様な民族社会にたいする文字・資料の有りようなど、日本中世の真実とその多彩な横顔をいきいきと平明に語る。ロングセラーを続編とあわせて文庫化。
網野さんの本を読まずに歴史小説は書けない。
──北方謙三
武士と農民ばかりが目立つ教科書的なイメージの背後に広がる多様で豊かな中世像に読者は魅了されることだろう。
その歴史観は宮崎駿の『もののけ姫』などのフィクションにも大きな影響を与えた。中世社会の全体像をつかむのにどの本から読めばいいか迷っている方にお薦めしたい。
── 呉座勇一
「われわれが今後の国際社会で生きていくため、その中でほんとうになすべき使命を果 たしていくためには、日本の社会について正確な理解を持ち、自らについて正確な認識 を持っていなくてはなりません。そうでないと、伸ばすべきものをつぶし、無駄なエネル ギーを使い、とんでもないところに日本人がいってしまう危険があると思うのです。そのような意味で、現在ほど歴史を勉強することが大切な意味を持っている時代はなく、また歴史学の担う責任の大きい時代はないといってもよいと思います。」( 本文より)
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日本が農業中心社会だったというイメージはなぜ作られたのか。商工業者や芸能民はどうして賤視されるようになっていったのか。現代社会の祖型を形づくった、文明史的大転換期・中世。そこに新しい光をあて農村を中心とした均質な日本社会像に疑義を呈してきた著者が、貨幣経済、階級と差別、権力と信仰、女性の地位、多様な民族社会にたいする文字・資料の有りようなど、日本中世の真実とその多彩な横顔をいきいきと平明に語る。ロングセラーを続編とあわせて文庫化。
網野さんの本を読まずに歴史小説は書けない。
──北方謙三
武士と農民ばかりが目立つ教科書的なイメージの背後に広がる多様で豊かな中世像に読者は魅了されることだろう。
その歴史観は宮崎駿の『もののけ姫』などのフィクションにも大きな影響を与えた。中世社会の全体像をつかむのにどの本から読めばいいか迷っている方にお薦めしたい。
── 呉座勇一
「われわれが今後の国際社会で生きていくため、その中でほんとうになすべき使命を果 たしていくためには、日本の社会について正確な理解を持ち、自らについて正確な認識 を持っていなくてはなりません。そうでないと、伸ばすべきものをつぶし、無駄なエネル ギーを使い、とんでもないところに日本人がいってしまう危険があると思うのです。そのような意味で、現在ほど歴史を勉強することが大切な意味を持っている時代はなく、また歴史学の担う責任の大きい時代はないといってもよいと思います。」( 本文より)
- ISBN-104480089292
- ISBN-13978-4480089298
- 出版社筑摩書房
- 発売日2005/7/6
- 言語日本語
- 本の長さ409ページ
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
日本が農業中心社会だったというイメージはなぜ作られたのか。商工業者や芸能民はどうして賤視されるようになっていったのか。現代社会の祖型を形づくった、文明史的大転換期・中世。そこに新しい光をあて農村を中心とした均質な日本社会像に疑義を呈してきた著者が、貨幣経済、階級と差別、権力と信仰、女性の地位、多様な民族社会にたいする文字・資料の有りようなど、日本中世の真実とその多彩な横顔をいきいきと平明に語る。ロングセラーを続編とあわせて文庫化。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
網野/善彦
1928-2004年。山梨県生まれ。東京大学文学部史学科卒業。名古屋大学助教授、神奈川大学短期大学教授、同大学特任教授を歴任。歴史家。専攻は、日本中世史、日本海民史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1928-2004年。山梨県生まれ。東京大学文学部史学科卒業。名古屋大学助教授、神奈川大学短期大学教授、同大学特任教授を歴任。歴史家。専攻は、日本中世史、日本海民史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2005/7/6)
- 発売日 : 2005/7/6
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 409ページ
- ISBN-10 : 4480089292
- ISBN-13 : 978-4480089298
- Amazon 売れ筋ランキング: - 5,217位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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2019年6月2日に日本でレビュー済み
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2018年12月2日に日本でレビュー済み
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大学時代に読んだこの本を、「よみなおし」てみました。
今の時代に読んでも、というか、今の時代にこそ読まれるべき内容が多く含まれていて、
とても刺激的であり、著者の推論についても長年の研究成果と資料の裏付けがあります。
西日本(朝鮮半島・中国江南を含む)と東日本(ロシア文化圏を含む)との歴史的・文化的な相違については、
自分が最近見過ごしていた視点だったので、はっとさせられました。
これ以外にも、はっとさせられる指摘は数多く、歴史が好きな方には必読の書と言っていいと思います。
ただ、「日本は中国や韓国よりも優れた国だ」「日本のやってきたことはすべて正しい」という考えの方が読んでも、おもしろくないと思います。
今の時代に読んでも、というか、今の時代にこそ読まれるべき内容が多く含まれていて、
とても刺激的であり、著者の推論についても長年の研究成果と資料の裏付けがあります。
西日本(朝鮮半島・中国江南を含む)と東日本(ロシア文化圏を含む)との歴史的・文化的な相違については、
自分が最近見過ごしていた視点だったので、はっとさせられました。
これ以外にも、はっとさせられる指摘は数多く、歴史が好きな方には必読の書と言っていいと思います。
ただ、「日本は中国や韓国よりも優れた国だ」「日本のやってきたことはすべて正しい」という考えの方が読んでも、おもしろくないと思います。
2019年1月13日に日本でレビュー済み
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この本は私が25年ほど前に留学した時に日本語が恋しくなったら困るから、と思い持って行った本の一冊で何度も読み返した本でした。今は手元にないのですが、まさかkindle化されているとは…。内容は他のレヴューで語られている通りですが、出版から30年近くたち網野先生が亡くなられ、網野史観への批判も出てきてまた新たな気持ちで読めました。難しい本ではないので、日本史に関する本で人に勧めるとしたらこれも候補に挙がると思います。最近出たナントか国記に金を出す位ならこちらにお金を出した方が勉強になります。
殿堂入りベスト50レビュアー
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"開かれた市場は、日常の世界とはちがい、聖なる世界、神の世界につながる場であると考えられていました。そこにはいると、モノも人も世俗の縁から切れてしまう。"1991年、1996年の続編を併せて一冊とした本書は、日本を『正確に知ること』が義務だとする信念を持つ著者による渾身の一冊。
個人的には読書を通じて、必然として何度もそれぞれの作中舞台となる【日本の歴史】を振り返ってきたものの、発売からロングセラーとなっている本書を読む機会がこれまでなかったのですが。この度、ある議員が本書に触れて活動を紹介していたことをキッカケにようやく手にとりました。
さて、本書では歴史学者である著者が、収録のうち前半となる『日本の歴史をよみなおす』では、これだけで充分に刺激的な【カタカナやひらがなから考える文字の話】から始まり、貨幣の流通過程と価値の変遷、天皇直属人の【神人、寄人、供御人】聖なる職能人から世俗、差別への流れや、女性をめぐる職能や性、室町・戦国時代以降における地位の低下、最後には天皇という称号の持つ【2つの顔】についてと様々に話題が展開していくわけですが。
確かに室町時代から始まる禅や茶といったものを【日本の伝統文化】としてありがたく扱う本が多い中【室町以前について】著者の様に考察、紹介している本は手にとったことがなかった事から、かなり刺激的でした。
また同じく後半となる『続・日本の歴史をよみなおす』では【百姓という言葉を土地に結び付けられた農民と誤ってイメージしてしまった】事が、日本史の正確な理解を妨げてきたのでは?と疑問を呈した上で、各地の文献から、荘園や公領、悪党についての考察を繰り広げつつ、日本列島という形としてではなく、大陸も含めた【海洋ネットワーク国家】としての日本について展開しているのですが。
都道府県という【細かく誰かに線をひかれた土地】に縛られ、地域のご当地魅力を発信しあっている現在と比べ、ダイナミックかつ躍動的に溢れていて、こちらもわかりやすく魅力的でした。
室町以前、教科書にのらない歴史を考察したい誰か。あるいは土地や農業に縛られない海洋ネットワーク国家としての日本史をイメージしたい誰かにもオススメ。
個人的には読書を通じて、必然として何度もそれぞれの作中舞台となる【日本の歴史】を振り返ってきたものの、発売からロングセラーとなっている本書を読む機会がこれまでなかったのですが。この度、ある議員が本書に触れて活動を紹介していたことをキッカケにようやく手にとりました。
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確かに室町時代から始まる禅や茶といったものを【日本の伝統文化】としてありがたく扱う本が多い中【室町以前について】著者の様に考察、紹介している本は手にとったことがなかった事から、かなり刺激的でした。
また同じく後半となる『続・日本の歴史をよみなおす』では【百姓という言葉を土地に結び付けられた農民と誤ってイメージしてしまった】事が、日本史の正確な理解を妨げてきたのでは?と疑問を呈した上で、各地の文献から、荘園や公領、悪党についての考察を繰り広げつつ、日本列島という形としてではなく、大陸も含めた【海洋ネットワーク国家】としての日本について展開しているのですが。
都道府県という【細かく誰かに線をひかれた土地】に縛られ、地域のご当地魅力を発信しあっている現在と比べ、ダイナミックかつ躍動的に溢れていて、こちらもわかりやすく魅力的でした。
室町以前、教科書にのらない歴史を考察したい誰か。あるいは土地や農業に縛られない海洋ネットワーク国家としての日本史をイメージしたい誰かにもオススメ。
ベスト500レビュアー
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網野善彦氏の本としては、数年前に読んだ『東と西の語る日本の歴史』に次いで二作目。本書はレビュー数も『東と西』に比べて圧倒的に多く網野氏の代表作と言っていいと思うが、わたし個人としては『東と西』の方が断然面白かった、というのが本音。理由としては『東と西』が東日本と西日本の差異を軸として日本史の大胆な読み替えに挑んだのに対し、本書では文字、貨幣、商業、金融、芸能、女性、天皇、農業、貿易など題材が多岐にわたっていて、それぞれの各論は現代人の持つ中世の歴史に対する常識を覆すものではあるんだけれども、じゃ、中世とはどういう時代だったんだ、となると、う~ん、なんかよくわからん。著者が意図したと思われる、中世という時代を一気に読み替えるぜというほどのインパクトは残念ながら感じられなかった。わたし自身は男なので女性についての論述はなかなか興味深かったですが。本書は「日本の歴史をよみなおす」と「続・日本の歴史をよみなおす」の二部構成。続篇のほうが面白い、かな。やや否定的なレビューになってしまったが、著者の、常識を疑う視点、挑戦的な姿勢は大好きであるし、それによって読者は中世の歴史に対してより広く深い視野を得られることは間違いないと思う。
2018年8月23日に日本でレビュー済み
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当たり前と感じていたことが、実は間違っている、全く逆の意味があるなどということを
じっくり教えてもらった。素晴らしい著作だ。日本の歴史、いや、世界の歴史だって同じだと思うが、
しっかりとした資料・思慮をもとに考え直す必要があることを知らされた。
じっくり教えてもらった。素晴らしい著作だ。日本の歴史、いや、世界の歴史だって同じだと思うが、
しっかりとした資料・思慮をもとに考え直す必要があることを知らされた。
2019年3月27日に日本でレビュー済み
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海の民、遊行者など漂泊の民の視点で、日本史を捉え直したすばらしい歴史解説書であった。この本を読むと、いままで所領等、土地によって縛られた人間の上下関係などの関係性が崩され、土地を持たない海商や遊行者など漂白の民の社会的、経済的地位を高めるばかりか、忘れられていた日本史の側面を補完した良書であった。