2019年の統一地方選の最中に出版されたタイムリーな本。
本書は提言書と言うよりも、どちらかと言うと教科書的な内容であり、理解するのが難しいと言われる地方政府の構造・歴史など、必要な情報をほぼ全て網羅している。
本書は第1章から第5章まで。これに、序章と終章を加えた全7章から成っている。1章では、地方政府の構造の一部である首長と議会を解説し、首長や地方議員がどのように選び出されるのかという選挙制度(大統領制と議院内閣制の混合)、また、執政の機能を誰にどのようにして負わせるのか、という執政制度に着目し、この2つが地方政府で政党制が確立されていない原因だとし、議会の機能不全を引き起こしているという。
2章では、地方政府の構造の一部である行政機構と住民に焦点を当て、特に2000年代以降の変化を重視して描いている。地方政府は人材育成方針に問題を抱えており、人手不足に悩んでいたが、民間委託によってそれを補おうとしている。しかしそれは、政治や行政の、地方政府による独占が無くなるという意味でもあり、地方政府のプラットフォーム化が進んでいると指摘する。
3章では、地域社会・経済と地方政府の関係に光を当てる。過去の歴史を振り返り、江戸時代を理想的とする歴史観には反対し、明治・大正以降に顕著になった地域間の人口移動に注目する。人々がどこに、どのような目的で住むかによって行政サービスの需要や、地方政府の税収などは変化するので、地方政府は人口増加に腐心してきた。しかし、人口増加で豊かになる時代は過ぎ去り、人口減少・過疎化さえ起きている。また、地方政府は都市計画・住宅政策に非常に消極的であり、街並みの汚さにも影響しているという。
4章では、都道府県と市町村の関係、並びに都道府県間・市町村間の関係について説明している。外国と日本の制度比較、都道府県数が増減しない理由など興味深い話題が多いが、一番はやはり合併だろう。日本では過去、明治、昭和、平成時代に大合併が進められた事があったが、その背景について詳しく考察している。基本的には、人口が小さい、人口減少率が大きい、財政力が低いという市町村ほど合併に積極的なようである。しかしいずれにしても、地方政府は中央政府の影響を強く受けて合併している事が分かる。
5章では、中央政府と地方政府との関係について解説している。基本的に、日本は中央集権国家であり、中央政府の力は強い。地方政府も、中央政府から強い統制を受けている。特に統制が強いのは地方政府の財源に対してで、中央政府は地方交付税によって、全ての地方政府の財源を確保しているが、地方政府はこれによって少なくとも歳入の面では自治を喪失している。(地方交付税と引き換えに、地方税や地方債に統制を加えている)それでも、地方交付税は地域間再分配につながっていたので、あながち悪い要素ばかりでもなかったのだが、90年代、2000年代と時代が変わるにつれて、地域間再分配は行われなくなり、政治家も再分配を争点にすることはほとんどなくなった。その間、2度にわたって地方分権改革が行われ、地方政府にとってプラス面もあったが、再分配に関しては争われず、一極集中が続く東京と地方の差がますます広がる結果に。日本は未だに地方分権の分野では後れを取っていると言わざるを得ない。
序章は本書を読むにあたっての基礎知識、終章は本書の内容のまとめである。
本書ほど、地方政府について広範に分かり易く解説した本は滅多にないのではないかと思う。地方政府を理解する上では必読書である。
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日本の地方政府-1700自治体の実態と課題 (中公新書) 新書 – 2019/4/19
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日本には都道府県47、市790、町745など、1700を超える地方政府がある。一般に地方自治体、地方公共団体と呼ばれ、行政機構のみが存在する印象を与えてきた。だが20世紀末以降の地方分権改革は、教育、介護、空き家問題など、身近な課題に直面する各政府に大きな力を与えた。
本書は、政治制度、国との関係、地域社会・経済の3つの面から、国家の2.5倍の支出と4倍の人員を持つ地方政府の変貌と実態を描く。
本書は、政治制度、国との関係、地域社会・経済の3つの面から、国家の2.5倍の支出と4倍の人員を持つ地方政府の変貌と実態を描く。
- 本の長さ258ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2019/4/19
- 寸法11.1 x 1.1 x 17.5 cm
- ISBN-104121025377
- ISBN-13978-4121025371
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
人口178人の青ヶ島村から、1350万人の東京都まで。日本には都道府県47、市790、町745など、1700を超える地方政府がある。一般に地方自治体、地方公共団体と呼ばれ、行政機構のみが存在する印象を与えてきた。だが20世紀末以降の地方分権改革は、教育、介護、空き空問題など、身近な課題に直面する各政府に大きな力を与えた。本書は、政治制度、国との関係、地域社会・経済の三つの面から、国家の2.5倍の支出と4倍の人員を持つ地方政府の軌跡、構造と実態を描く。
著者について
曽我謙悟
1971(昭和46)年兵庫県生まれ.94年東京大学法学部卒業.同年東京大学大学院法学政治学研究科助手. 97年大阪大学大学院法学研究科助教授,神戸大学大学院法学研究科教授を経て,2015年より京都大学大学院法学研究科教授 専攻・行政学,現代日本政治. 著書 『ゲームとしての官僚制』(東京大学出版会,2005年) 『行政学』(有斐閣,2013年) 『現代日本の官僚制』(東京大学出版会,2016年) 共著 『日本の地方政治――二元代表制政府の政策選択』(名古屋大学出版会,2007年 『比較政治制度論』 (有斐閣,2008年) 他多数
1971(昭和46)年兵庫県生まれ.94年東京大学法学部卒業.同年東京大学大学院法学政治学研究科助手. 97年大阪大学大学院法学研究科助教授,神戸大学大学院法学研究科教授を経て,2015年より京都大学大学院法学研究科教授 専攻・行政学,現代日本政治. 著書 『ゲームとしての官僚制』(東京大学出版会,2005年) 『行政学』(有斐閣,2013年) 『現代日本の官僚制』(東京大学出版会,2016年) 共著 『日本の地方政治――二元代表制政府の政策選択』(名古屋大学出版会,2007年 『比較政治制度論』 (有斐閣,2008年) 他多数
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
曽我/謙悟
1971(昭和46)年兵庫県生まれ。94年東京大学法学部卒業。同年東京大学大学院法学政治学研究科助手。97年大阪大学法学部助教授、神戸大学大学院法学研究科教授を経て、2015年より京都大学大学院法学研究科教授。専攻、行政学、現代日本政治。著書・共著多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1971(昭和46)年兵庫県生まれ。94年東京大学法学部卒業。同年東京大学大学院法学政治学研究科助手。97年大阪大学法学部助教授、神戸大学大学院法学研究科教授を経て、2015年より京都大学大学院法学研究科教授。専攻、行政学、現代日本政治。著書・共著多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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2019年5月6日に日本でレビュー済み
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2019年6月9日に日本でレビュー済み
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平易かつ抑制的な表現で、淡々と地方自治のあり方を網羅的に俯瞰し、問題点を説明する。その視点は大学の研究者のそれであり、教科書的にならざるを得ないのは仕方ないところ。
そのため、一般の読者にとっては眠たくなるだろうが、地方自治に関わるものにとっては必須の知識といえる。
問題点は数多くあるが、大きなところとして、お金をどうするか、そしてその当事者は誰なのかといった点がある。
具体的には最終章にあるとおり、東京一極に集まる地方税収と、それ以外の地方圏との分配の問題であり、また地方に税収の決定権や調整能力を持たせるか否かの問題である。
都市部を除き、地方税の約半分は固定資産税によっており、これは地価に連動している。著者は地方政策のあり方について、人口のみに着目して行われる弊害に警鐘を鳴らしているが、地価に連動する以上、地価を左右する人口に着目せざるを得ないだろう。しかし、早くこの問題に着手しなければ、早晩、地方財政は破綻するだろう。土地に価格がつかなくなるからだ。いや、すでに地方の土地に価格はあるのか甚だ疑問である。
もうひとつは、人間は理想に向かって進化するものであり進化すべきという単純な進化論的性善説について。そろそろ民主主義の学校にいくべきだと、いつまで経ってもナイーブなままの市民に対して揶揄を含意しつつ著者は意見するが、民主主義が政策的に導入された明治維新から150年、戦後から70年も経過していることを十分に検討する必要があろう。つまり理想とする民主主義がなぜ根付かないのかを、人間や集団社会の心理や生理的機能等の面からも幅広く反省しなければ、おそらく、200年経っても同じことをいうハメになるだろう。市民は忙しく、目の前のことで手一杯であり、「人間が何か選択しようとしたとき」の正解率はなんとチンパンジー以下というハンスの「FACTFULNESS」が示したとおりである。
そもそも地方議員の何割が地方自治法を読み、学んだことがあるのか。憲法や民法すら読んだことがないのではないか。立法権をもつ市長だって怪しいものである。そんな地方議会でどれだけ馬鹿馬鹿しい議論が行われているか吟味する必要があろう。
私は、今の地方分権のあり方は、民主主義の理想論を掲げ、大蔵省排除と天下り先としての公共団体の独立性確保の実益に走った自治省官僚の大失政ではないかと疑っている。
そのため、一般の読者にとっては眠たくなるだろうが、地方自治に関わるものにとっては必須の知識といえる。
問題点は数多くあるが、大きなところとして、お金をどうするか、そしてその当事者は誰なのかといった点がある。
具体的には最終章にあるとおり、東京一極に集まる地方税収と、それ以外の地方圏との分配の問題であり、また地方に税収の決定権や調整能力を持たせるか否かの問題である。
都市部を除き、地方税の約半分は固定資産税によっており、これは地価に連動している。著者は地方政策のあり方について、人口のみに着目して行われる弊害に警鐘を鳴らしているが、地価に連動する以上、地価を左右する人口に着目せざるを得ないだろう。しかし、早くこの問題に着手しなければ、早晩、地方財政は破綻するだろう。土地に価格がつかなくなるからだ。いや、すでに地方の土地に価格はあるのか甚だ疑問である。
もうひとつは、人間は理想に向かって進化するものであり進化すべきという単純な進化論的性善説について。そろそろ民主主義の学校にいくべきだと、いつまで経ってもナイーブなままの市民に対して揶揄を含意しつつ著者は意見するが、民主主義が政策的に導入された明治維新から150年、戦後から70年も経過していることを十分に検討する必要があろう。つまり理想とする民主主義がなぜ根付かないのかを、人間や集団社会の心理や生理的機能等の面からも幅広く反省しなければ、おそらく、200年経っても同じことをいうハメになるだろう。市民は忙しく、目の前のことで手一杯であり、「人間が何か選択しようとしたとき」の正解率はなんとチンパンジー以下というハンスの「FACTFULNESS」が示したとおりである。
そもそも地方議員の何割が地方自治法を読み、学んだことがあるのか。憲法や民法すら読んだことがないのではないか。立法権をもつ市長だって怪しいものである。そんな地方議会でどれだけ馬鹿馬鹿しい議論が行われているか吟味する必要があろう。
私は、今の地方分権のあり方は、民主主義の理想論を掲げ、大蔵省排除と天下り先としての公共団体の独立性確保の実益に走った自治省官僚の大失政ではないかと疑っている。
ベスト500レビュアー
Amazonで購入
日本の地方政府(いわゆる地方自治体)について、「政治制度、中央・地方関係、地域社会・経済と地方政府の関係(p.iii)」の3側面から、「歴史的な変遷にも触れるように(p.247)」しつつ網羅的に読み解く。
網羅的な分、講義にたとえるすごい早口で、ついていくのが大変である。学ぶことは多い。
終章(pp.231-245)では全体が振りかえられているので、ここだけでも読めば、本書の趣旨はある程度分かる。
そのなかで著者は、日本の地方政府や住民について「どれだけの負担を背負ってどれだけのサービスを受けるのか(p.244)」という「税の決定という困難(p.243)」を引き受けておらず/引き受けられず、「地方自治は民主主義の学校と言うが……私たちはまだ学校に入学していない(p.244)」と喝破する。否定できないところである。
それとともに著者は、地方政治における「政党制の欠落(p.240)」を批判する。こちらについては、私は(既成)政党には批判的なので「地方政治が政党色を増すことがいいことなのか」といささか懐疑的である。
「現状がいかなる関係者による、いかなる選択の組み合わせとして成り立っているのか……いかなる意味で均衡たりえているのか……(p.239)」という箇所など「ゲーム理論的な言い回しだなあ」と感じていたら著者には『ゲームとしての官僚制』という書もあるのだった。
網羅的な分、講義にたとえるすごい早口で、ついていくのが大変である。学ぶことは多い。
終章(pp.231-245)では全体が振りかえられているので、ここだけでも読めば、本書の趣旨はある程度分かる。
そのなかで著者は、日本の地方政府や住民について「どれだけの負担を背負ってどれだけのサービスを受けるのか(p.244)」という「税の決定という困難(p.243)」を引き受けておらず/引き受けられず、「地方自治は民主主義の学校と言うが……私たちはまだ学校に入学していない(p.244)」と喝破する。否定できないところである。
それとともに著者は、地方政治における「政党制の欠落(p.240)」を批判する。こちらについては、私は(既成)政党には批判的なので「地方政治が政党色を増すことがいいことなのか」といささか懐疑的である。
「現状がいかなる関係者による、いかなる選択の組み合わせとして成り立っているのか……いかなる意味で均衡たりえているのか……(p.239)」という箇所など「ゲーム理論的な言い回しだなあ」と感じていたら著者には『ゲームとしての官僚制』という書もあるのだった。
ベスト500レビュアー
本書は、日本全体に1700以上もある地方政府(地方自治体)にまつわる諸々をコンパクトにまとめた本である。
扱う内容は、地方政府内の統治構造、地方政府に求められるサービスとそれを巡る問題、地域経済、地方自治体間の関係、中央政府との関係、と、それぞれで一章とっており、非常に手広い。
地方政府では、特に政党の集票力低下以降、政党からは距離を置く候補は増えている。地方議会は、選挙区の大きさ(政党の状況を決める)が乱立しており、また首長との直接的関係の方が重要なため、政党政治の不在が生じる。
政党不在の地方政治の弊害として、政党によるスクリーニングや教育がなされない点が挙げられている。
後の章で市町村合併に伴う議員削減と当選ライン上昇で、政党の支援を受ける候補者が増える一方で、「地域密着の地方議員の支援を受け、中央の政治家が選挙で票を集める」という動きはしづらくなり、合併後の地域では自民党系の議員は票を減らしているという結果もある。
住民が移動できる状況での地方政府の在り方の問題を、第三章で丸ごと一章割いて論じているのはなかなか面白い。
人間が自由に移動できるのは明治からで、筆者はそこに江戸時代以前の村落共同体との大きな違いを見出している。
市の特徴づけ・格付けとして、真っ先に「人口~万人の市」のように人口に訴える(逆に国については経済規模がよく取り上げられる)、という指摘はなるほどと思った。
また、人口目標があるために開発政策に傾倒し、街づくりや都市計画などは日本は弱い。海外と比較した場合に、低所得者向けの住宅政策がない(公営住宅は低所得者向けとは言い難く、またそれも縮小傾向である)、というのもあまり意識していない点であった。日本では企業が社宅を提供したために、政策ではこうした問題が取り扱われなかったのである。
地方政府間の話では「なぜ都道府県は増減しないか」という問いを投げていたのはなるほどと思った。
代表の論理(住民の意見をきちんと代弁すべき)からは市町村が重視されるし、行政効率性の観点からも分割は歪である。それにもかかわらず都道府県が安定的に存在するのは、逆説的だが市町村がニーズにこたえ、そこが柔軟に大きさや状態を変えてきたことにあると指摘する(保健・福祉サービスの多くを市町村レベルが担うのは海外では珍しいという)。もう一つの要因として、中央政治の選挙における県連の組織化が挙げられている。
中央・地方関係についての記述では、原発やその他迷惑施設など建設地域に負担がかかる施設について、地域住民と向き合う役割を中央政府が負わず、法的強制力を持たない(=接収などの権限はなく、交渉しか出来ない)民間企業に押し付けてきたこと、そのため一度許可が下りた地域に集中的に施設が建てられること、などは面白い指摘だと思った。
このようにトピックスは非常に多岐にわたり、また地方政府間の再分配や合併の話、独自条例の広がり方なども扱われている。
このように非常に手広いため、個々のトピックスに割ける紙面はどうしても少なくなり、深掘りはあまりできていない印象でもある。
網羅的という点ではこのような書き方がいい一方で、深掘りという意味では、いくつかのトピックスを削ってもいいかもしれないと思った(私の感想としては、地方公務員のキャリアパスや任用を主に書いた2章はなくてもいい気がした。また、地方政府の在り方や抱える問題、相互再分配という主に3章~5章の内容と、地方議会・中央議会の統治制度と政治家の行動などを書いた1章の内容とはやや独立しているので、別の本でもいいかもしれないと思った)
また、都市と地方の関係について、これまで農村部への配慮で都市の力が殺されている面があるが、都市が日本の牽引役になる必要があるというようなことを書く一方で、地方と都市の格差是正も重要だという論調で、どうしたいのかよく分からない印象が残った。
全体としてはちょっと詰めすぎている印象を持ったが、しかし地方政府をここまで網羅的に書いた本は珍しく、意義のある一冊だと思う。
扱う内容は、地方政府内の統治構造、地方政府に求められるサービスとそれを巡る問題、地域経済、地方自治体間の関係、中央政府との関係、と、それぞれで一章とっており、非常に手広い。
地方政府では、特に政党の集票力低下以降、政党からは距離を置く候補は増えている。地方議会は、選挙区の大きさ(政党の状況を決める)が乱立しており、また首長との直接的関係の方が重要なため、政党政治の不在が生じる。
政党不在の地方政治の弊害として、政党によるスクリーニングや教育がなされない点が挙げられている。
後の章で市町村合併に伴う議員削減と当選ライン上昇で、政党の支援を受ける候補者が増える一方で、「地域密着の地方議員の支援を受け、中央の政治家が選挙で票を集める」という動きはしづらくなり、合併後の地域では自民党系の議員は票を減らしているという結果もある。
住民が移動できる状況での地方政府の在り方の問題を、第三章で丸ごと一章割いて論じているのはなかなか面白い。
人間が自由に移動できるのは明治からで、筆者はそこに江戸時代以前の村落共同体との大きな違いを見出している。
市の特徴づけ・格付けとして、真っ先に「人口~万人の市」のように人口に訴える(逆に国については経済規模がよく取り上げられる)、という指摘はなるほどと思った。
また、人口目標があるために開発政策に傾倒し、街づくりや都市計画などは日本は弱い。海外と比較した場合に、低所得者向けの住宅政策がない(公営住宅は低所得者向けとは言い難く、またそれも縮小傾向である)、というのもあまり意識していない点であった。日本では企業が社宅を提供したために、政策ではこうした問題が取り扱われなかったのである。
地方政府間の話では「なぜ都道府県は増減しないか」という問いを投げていたのはなるほどと思った。
代表の論理(住民の意見をきちんと代弁すべき)からは市町村が重視されるし、行政効率性の観点からも分割は歪である。それにもかかわらず都道府県が安定的に存在するのは、逆説的だが市町村がニーズにこたえ、そこが柔軟に大きさや状態を変えてきたことにあると指摘する(保健・福祉サービスの多くを市町村レベルが担うのは海外では珍しいという)。もう一つの要因として、中央政治の選挙における県連の組織化が挙げられている。
中央・地方関係についての記述では、原発やその他迷惑施設など建設地域に負担がかかる施設について、地域住民と向き合う役割を中央政府が負わず、法的強制力を持たない(=接収などの権限はなく、交渉しか出来ない)民間企業に押し付けてきたこと、そのため一度許可が下りた地域に集中的に施設が建てられること、などは面白い指摘だと思った。
このようにトピックスは非常に多岐にわたり、また地方政府間の再分配や合併の話、独自条例の広がり方なども扱われている。
このように非常に手広いため、個々のトピックスに割ける紙面はどうしても少なくなり、深掘りはあまりできていない印象でもある。
網羅的という点ではこのような書き方がいい一方で、深掘りという意味では、いくつかのトピックスを削ってもいいかもしれないと思った(私の感想としては、地方公務員のキャリアパスや任用を主に書いた2章はなくてもいい気がした。また、地方政府の在り方や抱える問題、相互再分配という主に3章~5章の内容と、地方議会・中央議会の統治制度と政治家の行動などを書いた1章の内容とはやや独立しているので、別の本でもいいかもしれないと思った)
また、都市と地方の関係について、これまで農村部への配慮で都市の力が殺されている面があるが、都市が日本の牽引役になる必要があるというようなことを書く一方で、地方と都市の格差是正も重要だという論調で、どうしたいのかよく分からない印象が残った。
全体としてはちょっと詰めすぎている印象を持ったが、しかし地方政府をここまで網羅的に書いた本は珍しく、意義のある一冊だと思う。






