1990年5月からほぼ一年間、「ザ・ビッグマン」というマイナーなビジネス雑誌に連載されたもの。いろいろと制約があったかと思うが、西部氏じしん「場違いを承知で力をふるった」と述べているとおり、それぞれ短いながらも本格的な論考となっている。
1991年に世界文化社から『思想史の相貌』と題して単行本化され、1996年に同タイトルで徳間文庫に。しばらく絶版のあと、2012年、改題され、「あとがき」を附してハルキ文庫として復刊された。
取り上げられるのは、福沢諭吉、夏目漱石、吉野作造、北一輝、河合栄治郎、和辻哲郎、伊藤博文、吉田茂、坂口安吾、竹内好、吉本隆明、小林秀雄、そして筆者がもっとも敬愛するという福田恆存。この福田論だけは『幻像の保守へ』からの転載だ。
ご覧のとおり、全員が「保守」というわけではなく、否定的に扱われる人も多い。しかし褒めるにせよ難じるにせよ、現代日本の保守思想を代表する西部氏が、近代日本を生きた先達との「思想的対峙」を試みたエッセイとして貴重なものだと思う。
ネットを見ていたら、
「『ニヒリズムを超えて』所収の「明晰さの欠如―三島由紀夫論」「清浄な魂―田中美知太郎論」「能動的ニヒリストの生涯―清水幾太郎論」「声なき声の人―岸信介論」などを含め西部による近代日本知識人論集として再編集されるのが望ましい。」
と書いている方がおられた。同感だ。
西部氏がこれを連載していた頃と比べて、いま世には「自称保守」が溢れているが、それらが誠に「保守」の名に値するか否かは疑わしい。宇野重規『保守主義とは何か』(中公新書)や、中島岳志『「リベラル保守」宣言』(新潮文庫)が注目を集めている今、改めて読まれる値打ちはあるはずだ。
なおハルキ文庫には、「西部邁の思想家列伝・欧米編」たる『思想の英雄たち―保守の源流をたずねて』の重版をぜひともお願いしたい。買おうと思ったら品切れになっていて悄然とした。
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内容紹介
「総じていえば、人間および社会のかかえる二重性あるいは両義性のなかで節度・平衡を保つことを可能にするような言葉遣いと生き方を求めつづけたのが福沢諭吉だといえる」(本書「保守思想の源流」より)。福沢諭吉・和辻哲郎・坂口安吾・吉本隆明・小林秀雄・福田恆存・・・・・・など〈日本保守思想の流れにあって、言論界から少々目立つ誤解を受けていると思われてならない〉作家十三人を論じた思索的な書、待望の文庫化。
著者について
1939年、北海道生まれ。東京大学経済学部卒。横浜国立大学教授、東京大学教授を経て、88年3月に辞任。83年、『経済倫理学序説』で吉野作造賞を、84年、『生まじめな戯れ』でサントリー学芸賞を受賞。他の著書に『大衆への反逆』『幻像の保守へ』『死生論』『戦争論』『人間論』『国民の道徳』『人生の作法』『文明の敵・民主主義 危機の政治哲学』『小沢一郎は背広を着たゴロツキである。』など多数。
登録情報
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