恥ずかしながらノーベル文学賞受賞ということで、イシグロ氏を知りました。
早速、英国を舞台としたこの作品に興味を覚え、購入しました。初めは、自分に理解できるだろうかと不安でしたが、読み出したら一気に読めてしまいました。
翻訳が綺麗にまとまっているのも良かったと思いますが、執事の目と言葉を通して、丁寧な文章で一貫しており、それが新鮮で、却って集中して読めたのかなと思います。
私の語彙力では、この作品の素晴らしさが上手く説明出来ないかもしれませんが、スティーブンスの執事としての姿に敬服するばかりでした。父であり執事でもあるウィリアムとの話、女中頭のミス・ケントンとの話、ダーリントン卿の栄光から没落への話などが絡められ、執事としても時代の流れの中でも歴史を重ね、それが回顧されるきっかけとなった小旅行中でさえも、執事とはと職務に忠実な姿が、逆に切なくも映りました。
淡々としてはいるけど、心地よい余韻の残る作品です。
原文の英語も読めたら挑戦してみたいですね。

日の名残り: ノーベル賞記念版
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©THE REMAINS OF THE DAY by Kazuo Ishiguro Copyright ⓒ 1989 by Kazuo Ishiguro Japanese audiobook rights arranged with Rogers, Coleridge and White Ltd. through The English Agency (Japan) Ltd. (P)2018 Audible, Inc.
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登録情報
再生時間 | 10 時間 50 分 |
---|---|
著者 | カズオ イシグロ, 土屋 政雄 |
ナレーター | 田辺 誠一 |
配信日(Audible.co.jp) | 2018/8/26 |
出版社 | Audible Studios |
プログラムタイプ | オーディオブック |
バージョン | 完全版 |
言語 | 日本語 |
ASIN | B07GR66RWC |
Amazon 売れ筋ランキング |
- 246位Audible オーディオブック (の売れ筋ランキングを見るAudible オーディオブック)
- 39位文学・フィクション: 現代文学 - 47位全集・選書 (本) - 830位文芸作品 |
カスタマーレビュー
5つ星のうち4.3
星5つ中の4.3
558 件のグローバル評価
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トップレビュー
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2017年10月26日に日本でレビュー済み
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49人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2017年12月9日に日本でレビュー済み
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人生の虚しさと希望を感じた不思議な作品。ある男性の回想を丹念にたどりながら、実は人は自分の人生を後から顧みることはできても、その当時に何かを変えることが困難であること、そして、後悔をすることも人生の宿命なのだと痛感させられた。若い人は必見だと思う。後悔しないために。同年代か、それより上の人は、心の中に一筋の涙が流れるだろう。
2019年4月17日に日本でレビュー済み
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スティーブンスは英国のサムライだ。
彼は気の利く唐変木で。自らの任務の遂行に忠実なジェームス・ボンドのような執事だ。
だがボンドと違ってスティーブンスはあえて学習しなければジョークひとつ言えないような、洗練されてはいるが無骨で、微笑ましい愚直さを持つ。
しかし、その最大の長所である主人への忠誠心があるが故に、悪しきファシズムに傾倒していくダーリントン卿に反対することは出来ない。ファシズムの帰結を理解していただろうスティーブンスは主人を諌めることは無くどこまでも忠実だった。
そんな彼が新しい主人から旅行を薦められる。その旅で思い出されるのは、ミス・ケントンとの男女の友情。繁栄していた頃の屋敷での出来事。理想の執事はどのようなものかという問答等。
小説の語り方がスティーブンスのサムライ性を存分に味あわせてくれる。
彼は気の利く唐変木で。自らの任務の遂行に忠実なジェームス・ボンドのような執事だ。
だがボンドと違ってスティーブンスはあえて学習しなければジョークひとつ言えないような、洗練されてはいるが無骨で、微笑ましい愚直さを持つ。
しかし、その最大の長所である主人への忠誠心があるが故に、悪しきファシズムに傾倒していくダーリントン卿に反対することは出来ない。ファシズムの帰結を理解していただろうスティーブンスは主人を諌めることは無くどこまでも忠実だった。
そんな彼が新しい主人から旅行を薦められる。その旅で思い出されるのは、ミス・ケントンとの男女の友情。繁栄していた頃の屋敷での出来事。理想の執事はどのようなものかという問答等。
小説の語り方がスティーブンスのサムライ性を存分に味あわせてくれる。
2018年10月20日に日本でレビュー済み
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イシグロ氏の作品。89年、今となっては30年前、なんと35歳の時に書かれた作品ですね。なぜこの作品、この設定で書こうと思ったのか。いわゆる人気作家の作品と違って、このような作品には作家の「これを書きたい」という極めて強い意思が存在していると思うのだが。
表面的な体裁は他のレビュアーも指摘されている通りの、老境を迎えつつある、ある人物の独白と回顧録。作者の観察眼の鋭さ、時代背景などもよく調べて執筆していると思います。
旧と新、建前と本音、規律と自由、権威と凡庸、知と無知、信頼と誤解。人はこだわりゆえに向上し、かつ後退する。対比を巧みに用いて、人の営みの複雑さを丁寧に書き上げていると思います。
理想だけでは動かない。何か一つの要因で決まる事象などない。国・社会・個人、各レベルでまるで違う様相に見えて、共通して持ってる人間の特性を、執筆当時の視点で描いたのではないだろうか。
それでも作者はそれをポジティブに捉えていると思うが。
「夕方が一日でいちばんいい時間」、終場面で語る相手の男の言葉。この場面をわざわざ描いたのは、悲観するためではないだろう。なぜならそこに明日へのつながりが隠されているから。
漠然と読んでしまうと何が面白いのか分かりにくいと思うが、個人的には読後に充足感を感じました。
表面的な体裁は他のレビュアーも指摘されている通りの、老境を迎えつつある、ある人物の独白と回顧録。作者の観察眼の鋭さ、時代背景などもよく調べて執筆していると思います。
旧と新、建前と本音、規律と自由、権威と凡庸、知と無知、信頼と誤解。人はこだわりゆえに向上し、かつ後退する。対比を巧みに用いて、人の営みの複雑さを丁寧に書き上げていると思います。
理想だけでは動かない。何か一つの要因で決まる事象などない。国・社会・個人、各レベルでまるで違う様相に見えて、共通して持ってる人間の特性を、執筆当時の視点で描いたのではないだろうか。
それでも作者はそれをポジティブに捉えていると思うが。
「夕方が一日でいちばんいい時間」、終場面で語る相手の男の言葉。この場面をわざわざ描いたのは、悲観するためではないだろう。なぜならそこに明日へのつながりが隠されているから。
漠然と読んでしまうと何が面白いのか分かりにくいと思うが、個人的には読後に充足感を感じました。
2019年10月22日に日本でレビュー済み
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英国のかつては伝統あるお屋敷に長年勤め上げた執事の独白形式で物語は進む。
第一次大戦から第二次大戦を経て英国の栄光は没落し米国にとって代わられ屋敷も新興勢力の米国人のものとなり、執事としての人生も終わろうとしている。そんなある日に当時同僚として心を通じ合わせていた女性に会いにいく機会を得てその道中、英国の田舎、伝統ある美しき英国の風土に触れて、自らの人生や英国の歩んだ道を回顧し、自らの人生の価値を再発見する。
ナタバレを避けたあらすじとしてはこんな感じなのでしょうが、テレビドラマ「ダウントンアビー」をイメージしながら読み進めてしまいました。まさにカーソンの生き様がそこにありました。ドラマの中のセリフが出てきたりして、思わず吹き出したり、ニンマリしたり。
主人公たちは熟年、老年です。そんな彼らが過去を振り返るのですが、決して年寄り向けのお話ではなく、若い頃から何度でも読み直すことのできる小説と感じました。
例えば、藤沢周平の「蝉しぐれ」、ケングリムウッドの「リプレイ」などを私は30年近く何度も読み返して年齢を増すごとに新しい発見と感動を得ています。そんな小説がまた一つ私の本棚に増えました。
淡く切ない青春が好きな方、人生を小さな幸せで満たしたいと考えいる方、お勧めです。
第一次大戦から第二次大戦を経て英国の栄光は没落し米国にとって代わられ屋敷も新興勢力の米国人のものとなり、執事としての人生も終わろうとしている。そんなある日に当時同僚として心を通じ合わせていた女性に会いにいく機会を得てその道中、英国の田舎、伝統ある美しき英国の風土に触れて、自らの人生や英国の歩んだ道を回顧し、自らの人生の価値を再発見する。
ナタバレを避けたあらすじとしてはこんな感じなのでしょうが、テレビドラマ「ダウントンアビー」をイメージしながら読み進めてしまいました。まさにカーソンの生き様がそこにありました。ドラマの中のセリフが出てきたりして、思わず吹き出したり、ニンマリしたり。
主人公たちは熟年、老年です。そんな彼らが過去を振り返るのですが、決して年寄り向けのお話ではなく、若い頃から何度でも読み直すことのできる小説と感じました。
例えば、藤沢周平の「蝉しぐれ」、ケングリムウッドの「リプレイ」などを私は30年近く何度も読み返して年齢を増すごとに新しい発見と感動を得ています。そんな小説がまた一つ私の本棚に増えました。
淡く切ない青春が好きな方、人生を小さな幸せで満たしたいと考えいる方、お勧めです。
2019年8月17日に日本でレビュー済み
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品のある丁寧な翻訳で、カズオイシグロ氏の原文は分かりませんが 内容に沿ったものではないかと思いました。
かつてのイギリス貴族社会における 「ノーブレス・オブリッジ」 を、垣間見たような その偉大な紳士に仕える 品格を備えた執事の在り様は ある種 少年のような純なもので滑稽でもありました。
ダーリントンホールの主である ダーリントン卿は「ノーブレス・オブリッジ」を地で行くような紳士ではあるのですが、如何せん世間知らずというか、とっちゃん坊やのようなのですね、
世間知らずとも言える執事スティーブンスと、とっちゃん坊やのダーリントン卿が 第二次世界大戦末期ダーリントンホールで繰り広げられる物語、イギリスらしい皮肉も交えながら 古き良き時代のイギリス貴族社会を描いて興味深く、又 女中頭ミス・ケントンの登場も 物語の結末も含め興味深く読み進めました。
映画「日の名残り」では、執事スティーブンス役をアンソニー・ホプキンス、ミスケントン役をエマ・トンプソンが演じて秀逸! ほぼ原作に忠実に描かれており 映画と本と両方体験すると 堪能できます。
かつてのイギリス貴族社会における 「ノーブレス・オブリッジ」 を、垣間見たような その偉大な紳士に仕える 品格を備えた執事の在り様は ある種 少年のような純なもので滑稽でもありました。
ダーリントンホールの主である ダーリントン卿は「ノーブレス・オブリッジ」を地で行くような紳士ではあるのですが、如何せん世間知らずというか、とっちゃん坊やのようなのですね、
世間知らずとも言える執事スティーブンスと、とっちゃん坊やのダーリントン卿が 第二次世界大戦末期ダーリントンホールで繰り広げられる物語、イギリスらしい皮肉も交えながら 古き良き時代のイギリス貴族社会を描いて興味深く、又 女中頭ミス・ケントンの登場も 物語の結末も含め興味深く読み進めました。
映画「日の名残り」では、執事スティーブンス役をアンソニー・ホプキンス、ミスケントン役をエマ・トンプソンが演じて秀逸! ほぼ原作に忠実に描かれており 映画と本と両方体験すると 堪能できます。
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