仮想の地球と飛行機
「旅客機を操縦してみたい」と思ったことのある方はたくさんいらっしゃるこ
とでしょう。それを実現する正当な方法は、実際に航空会社のパイロットになる
ことです。しかし今の日本の航空法上では、パイロットの資格を取得することが
まず難関ですし、無事パイロットになったところで、飛行に関する様々な規制が
存在し、とても自由自在に空を飛ぶことなど不可能なのが現実です。
その反面、Microsoft Flight Simulator(FS)は「自由自在に空を飛びたい」
という希望を、とても手軽に実現させてくれるすばらしいソフトです。そこには
点数も制限時間も競争もありません。ただ現在あるがままの陸地、島々、海洋、
湖沼などの自然環境と、高層ビルや橋などの建造物、そして空港施設を忠実に再
現した、いわば「仮想の地球」と、そこを飛ぶための「飛行機」があるだけです。
その「仮想の地球」と「飛行機」のディテールは、バーションを重ねるごとに
飛躍的に進歩し、今回最新のMicrosoft Flight Simulator X(FSX)がリリース
されました。そこに展開される実写と見紛うばかりの美しい「仮想の地球」上
を、実機さながらの飛行特性を再現した「飛行機」を操り、何ものにも縛られ
ず、自由に飛び回ることができたら、どんなに素晴らしいことでしょう。
■楽しく飛行できるようになるために
しかしながら、実機さながらの飛行特性を再現したFSXの飛行機を操縦するこ
とは、初めての方にとって少々難しいかもしれません。実際に「FSXを始めたけ
れど、うまく飛べない。基礎から学ぶにもどこから手をつけていいか分からな
い。さわってみたがさっぱり分からずにあきらめかけてしまった。」という方は
大勢いらっしゃると思います。
その一方で、飛行機の操縦方法を解説した市販の書籍の多くは、たとえば膨大
な計器類の各機能について、あるいは上昇、降下、旋回といった各単独の事象ご
とに詳細に解説されている反面、離陸から着陸までの一連の流れが非常に分かり
にくいと言えます。
そこで、本書は、読者が退屈な座学と飛行訓練を続けるのではなく、実際に空
港から空港に至る面白そうなコースを飛行していくことで、計器の使い方を含め
た様々な知識や飛行技術を感覚的に修得できるようになれば、という思いで書い
てみました。いわば「バイエルから地道に練習するのではなく、好きな曲だけ練
習していたら、いつの間にかピアノが弾けるようになる」ことをねらっています。
また、今回は、沖縄をはじめ、タヒチ、ハワイ、キリバス、ツバルなど南太平
洋のコースを数多く採り入れました。美しい珊瑚礁と海に囲まれた南の島なら、
気持ちが癒されることはもちろん、さほどコンピュータの性能も要求されないの
で、高価なパソコンを準備しなくても手軽に楽しむことができると思います。
■その他
本書で紹介している飛行手順は、説明を分かりやすくするために設定している
ものですので、実機の飛行コースや操縦手順とは必ずしも一致しません。本書を
読んで飛行できるようになった後、これらのことをもっと詳しく知りたくなった
ときは、航空チャートや航空力学、航空機操縦関係の本を入手され、「バイエル
に立ち戻る」ことをおすすめします。
もちろん、それらの知識がなくても、十分FSXを楽しむことができます。「仮
想の地球」には法律も規則もありませんから......。
(まえがきより)
