1巻読み終えたところです。司馬遼太郎氏の歴史観、日本人観に刮目です。この巻では主人公は未だ歴史上の人物でもなく、一介の極貧の若者でしかありません。彼、嘉兵衛は若者宿という組織に苛め抜かれます。彼の極貧でありながら、卑屈にならず媚びる事なく毅然とした人柄が傲岸で可愛げがないと周囲に恐れられたがための苛めであったと思います。自分達と異質なものを排除しようとする狭量が封建制の中で虐げられる人々に生まれたのは当然といえるかもしれません。そこには現代社会の苛めにも通ずる構図があると感じます。
嘉兵衛はめげません。むしろ、虐待される環境の中で物事の本質を見極める力や、対抗する精神の強さを培っていきます。毅然と立ち向かっていきます。彼は様々空想します。妄想といってもいいかもしれません。それを実現化していく行動力も強運も持っています。実に魅力的な海の男です。おふさは男を見る目があったと思います。網元の娘で嘉兵衛の階層から見ればお姫様であった彼女が、純粋に嘉兵衛に惹かれていくのが不思議な気もしますが男と女の縁の不思議というものでしょうか。おふさも可愛い魅力にあふれています。
船の構造や当時の海運の状況など、フンフン・・なるほどね!と理解出来ました。島国に住まう海洋民族である私にとって潮の香のするこの物語には心躍るものがあります。2巻を読むのが楽しみです。
新装版 菜の花の沖 (1) (文春文庫) (日本語) 文庫 – 2000/9/1
司馬 遼太郎
(著)
著者の作品一覧、著者略歴や口コミなどをご覧いただけます
この著者の 検索結果 を表示
あなたは著者ですか?
著者セントラルはこちら
|
この商品はセット買いができます
『新装版 菜の花の沖 1-6巻 セット』 こちらをチェック
-
ISBN-104167105861
-
ISBN-13978-4167105860
-
版新装
-
出版社文藝春秋
-
発売日2000/9/1
-
言語日本語
-
本の長さ403ページ
よく一緒に購入されている商品
こちらもおすすめ
ページ: 1 / 1 最初に戻るページ: 1 / 1
Kindle 端末は必要ありません。無料 Kindle アプリのいずれかをダウンロードすると、スマートフォン、タブレットPCで Kindle 本をお読みいただけます。
1分以内にKindleで 菜の花の沖(一) (文春文庫) をお読みいただけます。
Kindle をお持ちでない場合、Get your Kindle here Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
Kindle をお持ちでない場合、Get your Kindle here Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
江戸後期、淡路島の貧家に生れた高田屋嘉兵衛は、悲惨な境遇から海の男として身を起し、ついには北辺の蝦夷・千島の海で活躍する偉大な商人に成長してゆく…。沸騰する商品経済を内包しつつも頑なに国をとざし続ける日本と、南下する大国ロシアとのはざまで数奇な運命を生き抜いた快男児の生涯を雄大な構想で描く。
登録情報
- 出版社 : 文藝春秋; 新装版 (2000/9/1)
- 発売日 : 2000/9/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 403ページ
- ISBN-10 : 4167105861
- ISBN-13 : 978-4167105860
-
Amazon 売れ筋ランキング:
- 49,589位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 222位直木賞受賞(26-50回)作家の本
- - 577位歴史・時代小説 (本)
- - 636位文春文庫
- カスタマーレビュー:
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ: 1 / 1 最初に戻るページ: 1 / 1
カスタマーレビュー
5つ星のうち4.4
星5つ中の4.4
45 件のグローバル評価
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2015年11月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
古い本ですが、満足のいく品質レベルでした。これで全巻が揃えることができ嬉しいです。
2021年1月17日に日本でレビュー済み
主人公の高田屋嘉兵衛がほとんど知られていないので、司馬遼太郎作品の中でも知名度が低い長編作品ですが、
様々に面白い要素が含まれた作品でした。
高田屋嘉兵衛という人物は、江戸時代の淡路島出身の貧しい漁夫だったのが、強い意志の力で徐々に頭角を現し高田屋という屋号を持つにいたり、その後、北海道や北方領土と本州間の交易ルートを日本で初めて開発するなかで、ロシア軍艦に拿捕されるものの、衝突の兆しが現れた日露間の関係を平和裏に解決するために、ロシアで幽囚の身ながらロシア人の信頼を得て、二国間の交渉を成立にまで持っていった人物です。
全6巻ありますが、初めは淡路島で、住む村の隣の村で働いているというだけで異端視される嘉兵衛が体制に屈するどころか隣村の庄屋の娘を奪い、村八分にされて、娘と一緒に淡路から抜け出すストーリーから始まります。ここでは江戸時代の村社会がどういう体質であったかが大変よく理解でき、これだけで一つの本になってもよいくらいです。
次に兵庫を拠点にし水主(かこ)から船頭になり、自分の船を持つようになっていくのですが、ここでは北前船の歴史や和船の構造、伯耆(鳥取県)や北陸、東北に至るまでの航路の説明や、取引の対象となる品々がよくわかりました。当時の江戸は巨大な消費地であったのにも関わらず酒や衣類などは全て上方(大阪、京都)から運ばれていたことも知ることができました。
「くだらない」の語源が、「上方から下ってくる品々ではない」という意味だったのが面白かった。
江戸幕府が故意に船の構造の進歩を止めたおかげで貧弱な船で、今のような地図や羅針盤もなく、風や潮に流され座礁に怯えながら航海する人たちは、どれだけ不安だったのか今のようなエンジン、無線、GPSが充実している今からは想像もつきません。
本州の航路の基盤を作ると、いよいよ蝦夷地(北海道)まで進出し、当時文明的に非常に送れていた蝦夷地の人々の暮らしを向上させることを自らの使命と自覚し、函館から釧路、さらにクナシリやエトロフへ、航路を開発していきますが、蝦夷地で松前藩に差別的に虐げられたアイヌ民族の人たちの様子も大変よくわかりました。
クナシリやエトロフが小説に出てくることは大変珍しく、地図を見ながら嘉兵衛と一緒に荒波を乗り越えていくような気分になりました。
そこからロシアが出てくるのですが、第五巻はほぼ全てがロシアの話になります。司馬遼太郎さんは、とにかくとことん調べる作家さんで、読んでいて非常に勉強になってよいのですが、第五巻については、ほぼ全く嘉兵衛のストーリーは進みません。街道をゆく「ロシア編」みたいになっていて、小説作品としてちょっとどうかなという気も若干します。
「坂の上の雲」も初めは、秋山兄弟のストーリーで始まるのが、途中からほぼ終始歴史解説のようになってしまっていたのと同じです。
まあ、歴史小説としては問題ありかもしれませんが、鎖国下の日本ではどうしても長崎のオランダ交易やキリシタン弾圧などの方に目が行きがちで、ロシアがクロテンやラッコの毛皮を求めてどんどん東に進出し、オホーツク海やカムチャッカ半島から千島列島、エトロフ、クナシリまで移動してくる流れと、間宮林蔵、伊能忠敬などの探検家や技術者などを先鞭に蝦夷地の北へ進む日本人の流れが交差し、アイヌの人たちをサンドイッチにしながら小競り合いが発生していた様子を非常に詳しく解説してくれたのは大変ありがたかったです。
そして第六巻は嘉兵衛がロシア軍艦に拿捕され、ほとんど日本人が誰も知らないロシアの大地で、なんとか日本とロシアの衝突を防ごうと奮闘、生涯で一番の親友と言えるまでの関係を築き上げたリコルドと一緒にロシア船で北海道へ戻り、日本人に幽囚されていたゴローニンを無事解放するまでの感動的なストーリーが繰り広げられます。
その後、明治維新を経て開国、ロシアとは悲惨な戦争を行い、数十万人もの命が消えることになってしまうのですが、嘉兵衛の実話は、異国でありながらも人間通しがきちんと分かり合える努力をすれば、争いというのは防ぐことができるということを教えてくれるので、今の時代再び自国第一主義が台頭しつつありますが、未来の世界平和に繋げていきたいと思いました。
様々に面白い要素が含まれた作品でした。
高田屋嘉兵衛という人物は、江戸時代の淡路島出身の貧しい漁夫だったのが、強い意志の力で徐々に頭角を現し高田屋という屋号を持つにいたり、その後、北海道や北方領土と本州間の交易ルートを日本で初めて開発するなかで、ロシア軍艦に拿捕されるものの、衝突の兆しが現れた日露間の関係を平和裏に解決するために、ロシアで幽囚の身ながらロシア人の信頼を得て、二国間の交渉を成立にまで持っていった人物です。
全6巻ありますが、初めは淡路島で、住む村の隣の村で働いているというだけで異端視される嘉兵衛が体制に屈するどころか隣村の庄屋の娘を奪い、村八分にされて、娘と一緒に淡路から抜け出すストーリーから始まります。ここでは江戸時代の村社会がどういう体質であったかが大変よく理解でき、これだけで一つの本になってもよいくらいです。
次に兵庫を拠点にし水主(かこ)から船頭になり、自分の船を持つようになっていくのですが、ここでは北前船の歴史や和船の構造、伯耆(鳥取県)や北陸、東北に至るまでの航路の説明や、取引の対象となる品々がよくわかりました。当時の江戸は巨大な消費地であったのにも関わらず酒や衣類などは全て上方(大阪、京都)から運ばれていたことも知ることができました。
「くだらない」の語源が、「上方から下ってくる品々ではない」という意味だったのが面白かった。
江戸幕府が故意に船の構造の進歩を止めたおかげで貧弱な船で、今のような地図や羅針盤もなく、風や潮に流され座礁に怯えながら航海する人たちは、どれだけ不安だったのか今のようなエンジン、無線、GPSが充実している今からは想像もつきません。
本州の航路の基盤を作ると、いよいよ蝦夷地(北海道)まで進出し、当時文明的に非常に送れていた蝦夷地の人々の暮らしを向上させることを自らの使命と自覚し、函館から釧路、さらにクナシリやエトロフへ、航路を開発していきますが、蝦夷地で松前藩に差別的に虐げられたアイヌ民族の人たちの様子も大変よくわかりました。
クナシリやエトロフが小説に出てくることは大変珍しく、地図を見ながら嘉兵衛と一緒に荒波を乗り越えていくような気分になりました。
そこからロシアが出てくるのですが、第五巻はほぼ全てがロシアの話になります。司馬遼太郎さんは、とにかくとことん調べる作家さんで、読んでいて非常に勉強になってよいのですが、第五巻については、ほぼ全く嘉兵衛のストーリーは進みません。街道をゆく「ロシア編」みたいになっていて、小説作品としてちょっとどうかなという気も若干します。
「坂の上の雲」も初めは、秋山兄弟のストーリーで始まるのが、途中からほぼ終始歴史解説のようになってしまっていたのと同じです。
まあ、歴史小説としては問題ありかもしれませんが、鎖国下の日本ではどうしても長崎のオランダ交易やキリシタン弾圧などの方に目が行きがちで、ロシアがクロテンやラッコの毛皮を求めてどんどん東に進出し、オホーツク海やカムチャッカ半島から千島列島、エトロフ、クナシリまで移動してくる流れと、間宮林蔵、伊能忠敬などの探検家や技術者などを先鞭に蝦夷地の北へ進む日本人の流れが交差し、アイヌの人たちをサンドイッチにしながら小競り合いが発生していた様子を非常に詳しく解説してくれたのは大変ありがたかったです。
そして第六巻は嘉兵衛がロシア軍艦に拿捕され、ほとんど日本人が誰も知らないロシアの大地で、なんとか日本とロシアの衝突を防ごうと奮闘、生涯で一番の親友と言えるまでの関係を築き上げたリコルドと一緒にロシア船で北海道へ戻り、日本人に幽囚されていたゴローニンを無事解放するまでの感動的なストーリーが繰り広げられます。
その後、明治維新を経て開国、ロシアとは悲惨な戦争を行い、数十万人もの命が消えることになってしまうのですが、嘉兵衛の実話は、異国でありながらも人間通しがきちんと分かり合える努力をすれば、争いというのは防ぐことができるということを教えてくれるので、今の時代再び自国第一主義が台頭しつつありますが、未来の世界平和に繋げていきたいと思いました。