司馬作品はほとんど読んでいるが「王城の護衛者」は最も好きな作品の一つ。
謀略渦巻くこの時代孝明天皇が唯一信頼し頼りとしたのが清廉実直な若い会津藩主・
松平容保。私は別に天皇主義者ではないが、危機に際し孝明が密かに発した宸翰
「朕は会津をもっとも頼みにしている。一朝有事のときにはその力を借らんと
欲するものである」を受け、容保が感極まって突っ伏し泣き続ける場面にくると
いつも涙がにじんでくる。
会津人は落城後下北半島に追いやられ塗炭の苦しみを味わう。容保は終身孝明の宸翰を
肌身離さず、後年長州閥総帥山縣が「買い取りたい」と交渉させたが松平家は婉曲に
拒絶した。
京都守護職として王城の護衛に当たった会津藩が、なぜ朝敵として殲滅されたのか。
何故徳川慶喜は勝てる戦争を放棄したのか。明治維新史はまだ十分には解き明かされていない。
本書は他に岩倉具視・大久保利通らが画策した戊辰戦争の舞台裏「加茂の水」、
長岡藩家老・河井継之助を描いた「英雄児」を収めている。河井については重厚な
長編「峠」があり少々深刻だが、短編「英雄児」のほうは筆致が軽快で爽やかな読後感が
残る。司馬さんも楽しんで書いたのではないか。
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