「武将列伝」シリーズの「戦国終末編」。採り上げられる武将は、黒田如水、蒲生氏郷、真田昌幸、長曾我部元親、伊達政宗、石田三成、加藤清正。海音寺氏の歴史を観る眼の確かさには定評があり、これまで「悪人列伝」を中心に楽しんで来たが、今回初めて「武将列伝」を手に取って見た。
「黒田如水」については目新しい事蹟は書かれていないが、独特の観察眼が光る。安吾の短編「二流の人」での人物像と比較すると面白いと思う。逆に「蒲生氏郷」は、ここまで詳しく記述した物は稀だと思うので貴重な史料と言える。"会津っぽ"気質の産みの親が氏郷だと考えると楽しい。著者はこの両者を高く買っているようだ。一方、知将の誉れ高い「真田昌幸」には手厳しい。既存説に惑わされない独自の人物観が著者の魅力であろう。「長曾我部元親」のエピソード群も当時の四国の状況と合わせ興味を惹く。「伊達政宗」に関しても新しい事蹟の記述は見当たらないが、コンプレックスをバネにした梟雄という一貫した視点で活写している。また当然ではあるが、秀吉、家康が全編(この時代)を貫く糸になっているとの事実も改めて痛感させられる。「石田三成」については「真田昌幸」にも遥かに増して辛辣。著者が才よりも器・人品を重んじている事が窺える。最後の「加藤清正」にもそれが現われている。
史料の丹念な精査に基づき、自身の価値基準に照らして人物を描く手腕が際立つ。特に、氏郷、元親と言った余り採り上げられない人物の記述に面白さを感じた。歴史ファンには堪えられない作品だと思う。
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新装版 武将列伝 戦国終末篇 (文春文庫) 文庫 – 2008/6/10
乱れに乱れた戦国時代も、関ガ原から大坂の陣にかけていよいよ最終章へと向かう。遅すぎる登場に苦悶する7人の武将の姿を描く
- 本の長さ438ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2008/6/10
- ISBN-104167135566
- ISBN-13978-4167135560
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋; 新装版 (2008/6/10)
- 発売日 : 2008/6/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 438ページ
- ISBN-10 : 4167135566
- ISBN-13 : 978-4167135560
- Amazon 売れ筋ランキング: - 477,023位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 5,681位文春文庫
- - 50,412位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
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2011年10月2日に日本でレビュー済み
黒田如水、蒲生氏郷、真田昌幸、石田三成と魅力的な名前が並んでいたので購入。歴史読み物や大河ドラマで披露される挿話で読んだり見たりしたなと思うのは、この本を種本としているのかと思うほど、まともっているし、面白い。古今の史料を渉猟し、それをただ紹介するわけではなく、かみ砕き、まるで講談のように歴史上の傑物を案内する。歴史を学ぶには、こういうものから入ればいいのではと思う。ただ、武将のことを将校と表現している個所があったが、そういう言い方はあるのだろうか。同様の疑問を抱かされる個所が数か所あった。
2010年2月6日に日本でレビュー済み
井沢元彦氏の著作に海音寺氏から影響を受けた旨の著述が多い事も
あり、読んでみました。もっと早く読めば良かった、と少々後悔です。
井沢氏が海音寺氏の影響を受けている事は間違いないと思います。
特に個人的に興味深かったのが、個人的な好き嫌いの結構ある人だな、
と言うもの。黒田如水や蒲生氏郷が比較的好意的に描かれているのに
比べ、石田光成や伊達正宗はひどい書かれよう。特に石田光成は、
「結局三成と中が良いのは同じ文治派の面々と(秀吉にとっての)外様
大名だけ。外様は秀吉のご機嫌を取るために三成と仲良くなっただけで、
人間的にきわめて魅力に乏しい人物だったと思われる」ここまで書かれる
と三成も可哀想だな、と思ってしまいますが。
昔の作家ですが、全く違和感なく読めますし、歴史の新しい見方を
教えてくれるという意味でこのシリーズはお勧めだと思います。
あり、読んでみました。もっと早く読めば良かった、と少々後悔です。
井沢氏が海音寺氏の影響を受けている事は間違いないと思います。
特に個人的に興味深かったのが、個人的な好き嫌いの結構ある人だな、
と言うもの。黒田如水や蒲生氏郷が比較的好意的に描かれているのに
比べ、石田光成や伊達正宗はひどい書かれよう。特に石田光成は、
「結局三成と中が良いのは同じ文治派の面々と(秀吉にとっての)外様
大名だけ。外様は秀吉のご機嫌を取るために三成と仲良くなっただけで、
人間的にきわめて魅力に乏しい人物だったと思われる」ここまで書かれる
と三成も可哀想だな、と思ってしまいますが。
昔の作家ですが、全く違和感なく読めますし、歴史の新しい見方を
教えてくれるという意味でこのシリーズはお勧めだと思います。