新興国ビジネスに携わっているので本書を購入しました。まず本書の全体を覆っている全体コンセプトの「制度のすきま」ですが、なるほど当たり前といえば当たり前ですが、こういう売り手と買い手の仲介機能不在、という点に着目したのはとても参考になりました。ただし気になる点がいくつかあります。
第1に「すきま」という訳について最後まで違和感を感じ続けました。原文はinstitutional voidですが、「すきま」と言われると埋まっている部分が大半で隙間がある、という意味合いですよね。私はBRICs4ヶ国のビジネスに携わって現地に何度も足を運んでいますが、現地の状況は埋まっている部分の方が圧倒的に小さくて、大半が「空白」であるという方が正しい認識です。よって「制度の空白」とした方がベターと思います。
次に気になる点としては、ケース紹介時に、当該企業の成功要因について「制度の隙間を埋めた」からである、という説明が常になされていますが、無理を感じるケースも見受けられます。ハイアールが中国四川省で現地ニーズにあった洗濯機を開発したところ大成功した、というケースを「制度の隙間を埋めたからである」と解説されていますが、これは無理があるでしょう(仮にそうだとしても説明をはしょりすぎていて意味不明)。むしろパンカジ・ゲマワット教授が提唱されているAAAアプローチの中のアダプテーション戦略である、と解釈する方が素直です。
また正直分析が浅いという印象はぬぐえませんでした。企業が新興国で直面する選択肢がいくつかある、例えば独力か提携か、という問いかけがあって、提携で成功している例と失敗している例を両方紹介して、必ずしも提携で成功するとは限らない、と結論づけていますが、「では成功例と失敗例の差異は何なのか?何が失敗と成功の分け目になっているのか?」というところに踏み込んでくれていません。分析が浅いなあと感じます。ということで本書はアカデミックな人たちにはうけるかもしれませんが、実業界の人々からするとかなり物足りない、と感じざるを得ませんでした。
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新興国マーケット進出戦略: 「制度のすきま」を攻める 単行本 – 2012/2/1
購入を強化する
物流、決済サービス、法制度など、先進国では当たり前の市場インフラの欠如、すなわち「制度のすきま」を見極めることが新興国市場を制するポイントだ。多くの企業事例から導かれた明快なフレームワークを解説。
- 本の長さ317ページ
- 言語日本語
- 出版社日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
- 発売日2012/2/1
- ISBN-104532317762
- ISBN-13978-4532317768
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
高度に発達した物流ネットワーク、ローンやクレジットカード等の決済サービス、企業を評価する監査・格付け機関、知財権をはじめとする法制度、アクセスのよい交通網―。先進国では当たり前の「市場インフラ」が機能しない新興国で成功する企業の条件とは?マイクロソフト、テトラパック、GM、マクドナルド、ホームデポなどの多国籍企業と、タタ、ICICI、インフォシス、ハイアールなどの新興国企業、双方の成功事例から、戦略立案と投資判断に役立つ明快なフレームワークを提示する。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
カナ,タルン
ハーバード・ビジネススクールのホルヘ・パウロ・レマン記念講座教授。新興国市場における戦略と国際ビジネスについて研究し、教壇に立つ。数多くの企業・NGOの役員を務めているほか、アジアの新興企業数社のメンター役も務める。2007年には世界経済フォーラムの「ヤング・グローバル・リーダー」に、2009年には国際経営学会(AIB)フェローに選ばれている
パレプ,クリシュナ・G.
ハーバード・ビジネススクールのロス・グレアム・ウォーカー記念講座教授および国際開発部の上級副学部長。アジア、ヨーロッパ、ラテンアメリカにおける同校の国際活動を統括。新興国市場での企業戦略を中心に研究し、グローバルCEO養成などの講義を行う。また、コンサルタントや役員として多くの新興国企業の経営に携わっている
上原/裕美子
1976年生まれ、筑波大学第二学群比較文化学類卒業、翻訳者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
ハーバード・ビジネススクールのホルヘ・パウロ・レマン記念講座教授。新興国市場における戦略と国際ビジネスについて研究し、教壇に立つ。数多くの企業・NGOの役員を務めているほか、アジアの新興企業数社のメンター役も務める。2007年には世界経済フォーラムの「ヤング・グローバル・リーダー」に、2009年には国際経営学会(AIB)フェローに選ばれている
パレプ,クリシュナ・G.
ハーバード・ビジネススクールのロス・グレアム・ウォーカー記念講座教授および国際開発部の上級副学部長。アジア、ヨーロッパ、ラテンアメリカにおける同校の国際活動を統括。新興国市場での企業戦略を中心に研究し、グローバルCEO養成などの講義を行う。また、コンサルタントや役員として多くの新興国企業の経営に携わっている
上原/裕美子
1976年生まれ、筑波大学第二学群比較文化学類卒業、翻訳者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2012/2/1)
- 発売日 : 2012/2/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 317ページ
- ISBN-10 : 4532317762
- ISBN-13 : 978-4532317768
- Amazon 売れ筋ランキング: - 237,521位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 62位海外進出
- - 9,266位投資・金融・会社経営 (本)
- カスタマーレビュー:
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2012年12月30日に日本でレビュー済み
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12人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2012年5月5日に日本でレビュー済み
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中国、インド、ブラジルといった新興国市場に進出していく際の困難について、ハーバード・ビジネススクール流のケース・スタディで紹介されている。今現在、日本経済が停滞している中で、新興国に活路を見出すことは本来必要なのだろうが、なかなか資本、人材、そして意欲の面で難しいかもしれない。しかし、だからこそ新興国市場への進出が重要になると思う。
この本のキーワードは「制度のすき間」である。先進国なら当然あるサービスが新興国にはない。この本はそれだからこそチャンスがあるのだと主張し、絶望的な状況で進出し成功した実例を挙げている。
一番印象的だったケースは、テトラパックのアルゼンチン進出で、2001年のアルゼンチンの債務不履行時にどのようにテトラパックはこう考えた。
「会社と違って、国は破綻しても死ぬわけではない。必ず立ち直る。」
この言葉は今の閉塞感がある日本にとって重い言葉だ。
この本を読むことによって、困難に立ち向かい新しいことにチャレンジする気持ちが生まれてくると思う。
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一番印象的だったケースは、テトラパックのアルゼンチン進出で、2001年のアルゼンチンの債務不履行時にどのようにテトラパックはこう考えた。
「会社と違って、国は破綻しても死ぬわけではない。必ず立ち直る。」
この言葉は今の閉塞感がある日本にとって重い言葉だ。
この本を読むことによって、困難に立ち向かい新しいことにチャレンジする気持ちが生まれてくると思う。






