この本は、見た目には新書版風で、『古楽のすすめ』なんていうような初心者向け風のタイトルでもあるので、あまり期待していなかったのだが、最初のページからもう目からウロコの内容で、まったく充実した内容の本だった。たしかに2400円もする高い本だが、それなりの価値がある。
バッハで一つの時代に区切りがつくという話から、モノフォニー、ポリフォニー、ホモフォニーという音楽のありようについての解説がじつに適格でわかりやすい。ポリフォニーによって和声ということが意識され始めるが、通奏低音の発見によって、主たる旋律を他の声部が支えるホモフォニーが可能になった。それがバロック音楽の始まりを意味するという。
もちろんバロック音楽の時代になったからといってホモフォニー一色ではなくて、ポリフォニーも重要な役割を担っていた。それがソナタと呼ばれた器楽合奏曲に現れている。ソロと通奏低音だけではポリフォニーとして不十分。クワルテットだとポリフォニーに傾きすぎる。トリオでちょうど両者のバランスが取れる。そこでコレッリのトリオ・ソナタがバロックの器楽音楽の隆盛を先導することになったという。
その他、古代ギリシャからの遺産としての音楽理論や平均律への道、ドレミ唱法の形成、シャープとフラットの歴史など、興味深い話が次から次へと登場して、じつに充実した内容であった。
新版 古楽のすすめ (オルフェ・ライブラリー) 単行本 – 2010/6/16
金澤 正剛
(著)
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本の長さ264ページ
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出版社音楽之友社
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発売日2010/6/16
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ISBN-104276371058
-
ISBN-13978-4276371057
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
音楽の仕組み、音階や形式、楽器など、クラシック音楽のさまざまな要素が、どのように生まれ発展し変化をとげてきたのか…「バロック期の音楽」(新規書き下ろし)の、器楽曲(ソナタ、協奏曲)、声楽曲(カンタータ、オラトリオ、オペラ)はそれぞれがどのような過程をたどり進化をとげたのか…etc.古楽ファンのみならずオペラ・ファンにも目から鱗が落ちる名解説。
著者について
1934年東京生まれ。57年国際基督教大学卒業、66年ハーヴァード大学大学院博士課程修了(音楽学)。国際基督教大学非常勤講師、ハーヴァード大学イタリアルネサンス研究所(フィレンツェ)研究員、アンティオーク大学およびアールハム大学の客員教授などを経て、1982年に国際基督教大学教授に就任、同大学宗教音楽センター所長を兼務、2004年より同大学名誉教授と同時に日本大学芸術学部非常勤講師。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
金澤/正剛
1934年東京生まれ。1957年国際基督教大学卒業、1966年ハーヴァード大学大学院博士課程修了(音楽学)。国際基督教大学非常勤講師、ハーヴァード大学イタリアルネサンス研究所(フィレンツェ)研究員、アンティオーク大学およびアールハム大学の客員教授などを経て、1982年国際基督教大学教授に就任、同大学宗教音楽センター所長を兼務、2004年より同大学名誉教授。日本音楽学会、日本オルガン研究会、キリスト教礼拝音楽学会等の会長を歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1934年東京生まれ。1957年国際基督教大学卒業、1966年ハーヴァード大学大学院博士課程修了(音楽学)。国際基督教大学非常勤講師、ハーヴァード大学イタリアルネサンス研究所(フィレンツェ)研究員、アンティオーク大学およびアールハム大学の客員教授などを経て、1982年国際基督教大学教授に就任、同大学宗教音楽センター所長を兼務、2004年より同大学名誉教授。日本音楽学会、日本オルガン研究会、キリスト教礼拝音楽学会等の会長を歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 音楽之友社; 新版 (2010/6/16)
- 発売日 : 2010/6/16
- 単行本 : 264ページ
- ISBN-10 : 4276371058
- ISBN-13 : 978-4276371057
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Amazon 売れ筋ランキング:
- 303,856位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
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音楽は耳で聴くことで理解するわけですが、個々の音楽は別として体系的にその時代やジャンルを捉える時に本は欠かせません。また内容的に確かで読みやすくないと理解が追いつきません。
本書は、あとがきにも書かれているように「1998年に日本ミュージック・ペンクラブ大賞」を受賞した書籍に「バロック期の音楽」の章を新規に書きおろして「器楽曲」と「声楽曲」に分けて執筆した増補版です。一部の間違いも改訂してあるようでより確かな内容の書籍になりました。
筆者の金澤正剛氏は国際基督教大学名誉教授でこれまで多くの音楽史関係の書籍を出版し、同様に音楽雑誌でその高名を拝見してきました。
タクトゥス(拍)と小節線の関係が18ページから記載してありますが、ポリフォニーの音楽の再現において小節線のない感覚で歌うと音楽の横への流れが違和感なく体得できるでしょう。
バッハのブランデンブルグ協奏曲第3番の第2楽章には2つの和音が記されているだけですが、それはバッハが即興演奏する場合、頭の中に音楽があることから記譜する必要がないという説明もまた参考になりました。
シャープとフラットの意味の変化の項で書かれている日本人が陥っているBフラットとBナチュラルの読みの間違い、そしてイネガルの奏法、フランス風序曲のリズムも興味を惹きました。
なお誤植の指摘を。194ページの7行目の「1812年のヘンデルの登場」はヘンデルがロンドンに移住した「1712年」の間違いです。
本書の章立てです。古楽とは何か 時代から時代へ ミューズをめぐって 古代ギリシャからの遺産 ド・レ・ミの起源 シャープとフラットの歴史 古代の楽器をめぐって バロック器楽曲の発展―ソナタ、コンチェルトそしてシンフォニア バロック声楽曲の発展―カンタータ、オペラそしてオラトリオ 音楽家になる道 忘れ去られた音楽について 即興演奏について
本書は、あとがきにも書かれているように「1998年に日本ミュージック・ペンクラブ大賞」を受賞した書籍に「バロック期の音楽」の章を新規に書きおろして「器楽曲」と「声楽曲」に分けて執筆した増補版です。一部の間違いも改訂してあるようでより確かな内容の書籍になりました。
筆者の金澤正剛氏は国際基督教大学名誉教授でこれまで多くの音楽史関係の書籍を出版し、同様に音楽雑誌でその高名を拝見してきました。
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バッハのブランデンブルグ協奏曲第3番の第2楽章には2つの和音が記されているだけですが、それはバッハが即興演奏する場合、頭の中に音楽があることから記譜する必要がないという説明もまた参考になりました。
シャープとフラットの意味の変化の項で書かれている日本人が陥っているBフラットとBナチュラルの読みの間違い、そしてイネガルの奏法、フランス風序曲のリズムも興味を惹きました。
なお誤植の指摘を。194ページの7行目の「1812年のヘンデルの登場」はヘンデルがロンドンに移住した「1712年」の間違いです。
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