前巻辺りから本格的に宝条潰しに乗り出した黒崎ですが、黒崎→犬伏(パートナー)→日下(官僚時代の同期)→烏山(大学の後輩)→神志名と、期せずして「宝条包囲網」が形成されつつある印象です。
前巻からの続きである「ブライダル詐欺」は昨今の婚活ブームに乗っかる二種の詐欺(シンプルな結婚詐欺と結婚ビジネスを餌にした投資詐欺)が描かれています。
ケチな結婚詐欺師の方は黒崎と黒崎の標的の両方からスケープゴート扱いされていささか気の毒なんですが、女から金は騙し取るは会社の金は盗むはとろくでもないやつなのは確かなのに、退き際だけはやけに潔いのがちょっと笑えるというか。
「コンサルタント詐欺」は銀行と組んだ現代の地上げ屋が描かれます。コンサルティングの名目で顧客に不動産転がしさせた上で銀行に担保を押さえさせるというのもなかなか悪辣で興味深いんですが、このエピソードでは宝条の真の目的が明らかになります。
こういう強引な手段まで用いて地位と権力を固めてるくらいなんだから当然と言えば当然ですけど、こいつはこいつで結構危ない橋を渡ってるんだなぁ。
気になるのは桂木の動向で、彼は旧シリーズの頃に「詐欺は経済の食物連鎖」という言い方で詐欺という「経済活動」のコントロールの必要性を語ってたと思うんですけど、そんな桂木が宝条のギガバンク・テラバンク構想をどう考えてるんだろうかなと。
宝条の構想はある意味、将来のより大きな秩序を構築するために現在の秩序を破壊する、というものだし、必ずしも桂木の目的に添うものではないでしょう。といって、御木本の時と同じように黒崎が桂木の刺客となって宝条を葬る、というのもちょっと・・・ま、何にしろ今後の展開を期待しつつ見守りたいです。
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