この作品の作者さんは、30代のようですが・・・彼らにとっては、文豪と言われる登場人物のモデルたちは、「本当に生きていた人」ではなく、歴史上の「暗記項目」という形骸化したイメージしかないのかなと嘆かわしくなる作品ですね。
ちょっと話がずれますが、私は20年近く前、宇治の平等院鳳凰堂の特別展で、豊臣秀吉の奥歯が展示されていたのを見たことがあります。そこにあったのは、まさしくその存在が「実在した」という強烈なリアルです。
静岡の久能山東照宮には、徳川家康の実物手形がありますが、それも本当に「居た」というリアルがあります。
この作者さんにとって、「太宰治」という存在は、もはや記号で、自殺ばかり何度もしていたおかしな物書き、という、実在の人物ではなく社会や国語の教科書に載っている「知識」という扱いで、人間ではないんでしょうね。
太宰さん縁の方、太宰さんの血縁の方、今もご存命なわけで、三島由紀夫さんみたいに太宰さんと言い合いをした人は、もし今ご存命ならまだ90歳ですよ。太宰さんって、もう著作権フリーにはなってるとはいえ、まだ「現代を生きた人」と言える存在なのではないでしょうか。
冒頭の「自殺マニア」からして、一体何を考えているんだろうと。自殺した親なり祖父也を、こうして揶揄されるご遺族の心情を、考えもしない。もし、自殺マニアキャラに何の疑問も持たずウケている人がいたら、基本的道徳やモラルがおかしすぎます。作中だけでもかなりおかしいと思ったのに、ここのコメントを見たらイベントで「入水餃子」なるものを売っていたとか?狂気の沙汰としか思えませんね。太宰さんになんか恨みでもあるのかと思うほど。
しかも特定の人間の死を揶揄することを誰も止めない恐ろしさ。何なんでしょうね、表現の自由はあるわけですが、こういう現実にご身内がいる人物を苦悩や生き様を二次表現する際、やはり踏み越えてはいけない部分があるように思います。
こういう表現が肯定されてしまうと、人の死を安易にからかう事に罪悪感を持たない人が出てきてしまうように思えて、やや危ない感じを受けました。
もっともこの作品はそそういうテーマではないわけですが…正直この作品の能力バトルに文豪である必要性をあまり感じません。かえってオリキャラの方が面白かったのではないかと思います。
この作品のレビューはもっと前に書いていたのですが、2020年、有名人の自死が多発し、ちょっと考えされられ、レビューを編集し再レビューしました。皆が人の命の重さを感じているはずです。
自殺マニアという言葉を、実際に生き、生きることにずっと苦悩し続けた人に、安易に使ってほしくないし、それを面白がる感性であってほしくない。大手の出版社がこういう表現の物を大々的に出すだけで、あたかもそういう表現が肯定された印象を世間に与えてしまう。
自分自身が楽しむ自前のノートの創作なら構わないけど・・・と。
著者様には、子供が接する作品として、今一度踏み越えてはいけない表現や、実際にいた人物やご遺族に、どう敬意を表しつつ二次創作を作るかという点で、お考えいただければ…と思います。太宰さんだけではなく、与謝野晶子さんはいかがなものかと思いました。厳しいことを申して恐縮ですが、エンタメは人を傷つけるものであってはいけないように感じ、それを勉強させていただいた点においては★1つです。
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