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数学ガール/ポアンカレ予想 Kindle版
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言語日本語
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出版社SBクリエイティブ
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発売日2018/4/13
-
ファイルサイズ114197 KB
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
“形”って何?どうやって探ればいいの?「僕」と四人の少女が、真の“形”を追い求める魅惑の数学物語。
--このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。
著者について
結城浩 1963年生まれ。
プログラミング言語、デザインパターン、暗号、数学などの分野で入門書を執筆。
代表作は『数学ガール』シリーズ。
J.S.バッハの「フーガの技法」が大好きな、プロテスタントのクリスチャン。
--このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。
プログラミング言語、デザインパターン、暗号、数学などの分野で入門書を執筆。
代表作は『数学ガール』シリーズ。
J.S.バッハの「フーガの技法」が大好きな、プロテスタントのクリスチャン。
--このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。
出版社より

登録情報
- ASIN : B07C46Q7PW
- 出版社 : SBクリエイティブ (2018/4/13)
- 発売日 : 2018/4/13
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 114197 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効になっていません。
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 421ページ
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Amazon 売れ筋ランキング:
- 35,825位Kindleストア (の売れ筋ランキングを見るKindleストア)
- - 126位数学 (Kindleストア)
- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2018年12月9日に日本でレビュー済み
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Amazonで購入
テーマとなっている理論が理解できなくても、考え方や楽しさが分かります。
1人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2018年6月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
数学の難問を説明するには, それなりにいくつもの分野から必要となる概念や定理を取り出して説明するだけではなく, それらを読者または聞き手が道具として認識できる程に理解しなければならない. そして著者または発表者は, 予備知識を殆んど仮定できない状況において, 非常に多くあるそれらを理解されるように説明しなければならない.
本書の主題がポアンカレ予想に関する解説であると考える人もいるが,「数学ガール」というシリーズの意図と著者の意向では, 数学徒内外の多くの人にポアンカレ予想について少しでも知ってもらうように著された物語風の解説書, と考えるのが正確だろう.
私も, ナビエ-ストークス方程式のミレニアム問題(流体力学の基礎となる偏微分方程式の適切な解の一意存在問題とその解の可微分性)について多変数関数の微分積分から始めて代数系や位相および測度とルベーグ積分などを必要に応じて説明し, ミレニアム問題の意味と進展まで説明しようと執筆のメモまで用意してあるが, やはり本書のように, いきなり本題に入れるのは限られた場面だけで, 最終目標に達するまでかなりの準備を要する. ミレニアム問題のうち3つについてブログで簡単に解説しているが, 誰でもわかるように初等的にするには高度な内容は省かざるを得なかった. なおその記事も参照されたい.
「単連結な3次元閉多様体は3次元球面と同相である」という主張を数学ガールのシリーズで説明できたこと自体が高く評価されるべきなのだ. 単連結という語は「穴がない」ことであるが, 厳密に表現するには, 基本群の他でも, ホモロジーやコホモロジーあるいはコーシーの積分定理の位相幾何的考察など, 進んだ数学が必要である. 物語として不自然にならないようにしつつ閉多様体の概念を述べるのも, 数学の専門書に慣れているとは限らない読者層にも配慮するとなれば, 本書にあるような説明はかなり自然な物だと思われる. 熱伝導方程式とその解の平滑化の説明がポアンカレ予想におけるリッチフロー方程式の性質の理解に役立つのは, 本書をていねいに読めばわかるはずである.
まず, ケーニヒスベルクの橋渡りの問題から位相幾何の考え方を説明し, 位相空間・多様体・リーマン計量・基本群・微分方程式・ガウス曲率など幾何学において重要な概念たちを初等的に導入し, 最後にポアンカレ予想の証明の直観的意味と論理構造を説明してゆく. そしてリッチフロー方程式と式の形や解の性質が類似した(定数係数斉次線型)熱方程式の初期値問題を解説し, 再びリッチフロー方程式の考察に戻る. 厳密性よりわかりやすさを優先しているので突っ込みたくなる人もいるかもしれないが, 数学ガールシリーズの広い読者層を考えると妥当な書き方である.
本書は図説がとても多く, しかも見やすい上に, 文も読みやすいだけではなく, 幾何学と代数学そして解析学が融合して, さらに物理学まで関係していく様子を, 臨場感を味わいながら楽しく学べる. また, 始めあたりのグラフ理論の話も, 当然内容の理解に必須ながら, 私はここを読んで「離散数学で使われる位相が離散位相なのか…だから冪集合が定める位相を離散位相というのか」と位相を学んで8年来の疑問が晴れた. また位相の導入では自分が普段数学を教えている時と同じことが書かれていた. やはり世の中には自分と同じことを考える人がいるのだなと感じた. 位相の説明は, 位相を実際に教える上でも役に立った.
また非ユークリッド幾何学についても入り口をかなりていねいに解説しており, 多様体の計量の概念を深く理解することができた. 詳細は省くが, 或る種の 複素多様体 では計量が存在するか自明ではなく, その計量を未知関数とする 非線型偏微分方程式 の解の存在問題によって解かれる. このことを, より本質から理解したいので, 非ユークリッド幾何学の説明が最も思い出に残っている.
終わりにデルタ関数という超関数が現れるのも, 超関数愛好者としてはうれしかった.
幾何学 のおもしろさだけではなく, 代数学 と 解析学 と 物理学 のおもしろさまで楽しめつつわかる本である. 収穫は位相幾何の入門事項だけではない. ぜひゆっくりていねいに読んでみていただきたい.
なお「境界のない閉多様体」の厳密な定義は「 微分位相幾何学 」が参考になる. (2019.1.12 加筆)
私は, ポアンカレ予想を知って, また知り合いから「位相幾何でも微分形式の積分でルベーグ積分を使う」と聞いて, 位相幾何 に興味を持った. その理解の第一歩となった本である.
本書の主題がポアンカレ予想に関する解説であると考える人もいるが,「数学ガール」というシリーズの意図と著者の意向では, 数学徒内外の多くの人にポアンカレ予想について少しでも知ってもらうように著された物語風の解説書, と考えるのが正確だろう.
私も, ナビエ-ストークス方程式のミレニアム問題(流体力学の基礎となる偏微分方程式の適切な解の一意存在問題とその解の可微分性)について多変数関数の微分積分から始めて代数系や位相および測度とルベーグ積分などを必要に応じて説明し, ミレニアム問題の意味と進展まで説明しようと執筆のメモまで用意してあるが, やはり本書のように, いきなり本題に入れるのは限られた場面だけで, 最終目標に達するまでかなりの準備を要する. ミレニアム問題のうち3つについてブログで簡単に解説しているが, 誰でもわかるように初等的にするには高度な内容は省かざるを得なかった. なおその記事も参照されたい.
「単連結な3次元閉多様体は3次元球面と同相である」という主張を数学ガールのシリーズで説明できたこと自体が高く評価されるべきなのだ. 単連結という語は「穴がない」ことであるが, 厳密に表現するには, 基本群の他でも, ホモロジーやコホモロジーあるいはコーシーの積分定理の位相幾何的考察など, 進んだ数学が必要である. 物語として不自然にならないようにしつつ閉多様体の概念を述べるのも, 数学の専門書に慣れているとは限らない読者層にも配慮するとなれば, 本書にあるような説明はかなり自然な物だと思われる. 熱伝導方程式とその解の平滑化の説明がポアンカレ予想におけるリッチフロー方程式の性質の理解に役立つのは, 本書をていねいに読めばわかるはずである.
まず, ケーニヒスベルクの橋渡りの問題から位相幾何の考え方を説明し, 位相空間・多様体・リーマン計量・基本群・微分方程式・ガウス曲率など幾何学において重要な概念たちを初等的に導入し, 最後にポアンカレ予想の証明の直観的意味と論理構造を説明してゆく. そしてリッチフロー方程式と式の形や解の性質が類似した(定数係数斉次線型)熱方程式の初期値問題を解説し, 再びリッチフロー方程式の考察に戻る. 厳密性よりわかりやすさを優先しているので突っ込みたくなる人もいるかもしれないが, 数学ガールシリーズの広い読者層を考えると妥当な書き方である.
本書は図説がとても多く, しかも見やすい上に, 文も読みやすいだけではなく, 幾何学と代数学そして解析学が融合して, さらに物理学まで関係していく様子を, 臨場感を味わいながら楽しく学べる. また, 始めあたりのグラフ理論の話も, 当然内容の理解に必須ながら, 私はここを読んで「離散数学で使われる位相が離散位相なのか…だから冪集合が定める位相を離散位相というのか」と位相を学んで8年来の疑問が晴れた. また位相の導入では自分が普段数学を教えている時と同じことが書かれていた. やはり世の中には自分と同じことを考える人がいるのだなと感じた. 位相の説明は, 位相を実際に教える上でも役に立った.
また非ユークリッド幾何学についても入り口をかなりていねいに解説しており, 多様体の計量の概念を深く理解することができた. 詳細は省くが, 或る種の 複素多様体 では計量が存在するか自明ではなく, その計量を未知関数とする 非線型偏微分方程式 の解の存在問題によって解かれる. このことを, より本質から理解したいので, 非ユークリッド幾何学の説明が最も思い出に残っている.
終わりにデルタ関数という超関数が現れるのも, 超関数愛好者としてはうれしかった.
幾何学 のおもしろさだけではなく, 代数学 と 解析学 と 物理学 のおもしろさまで楽しめつつわかる本である. 収穫は位相幾何の入門事項だけではない. ぜひゆっくりていねいに読んでみていただきたい.
なお「境界のない閉多様体」の厳密な定義は「 微分位相幾何学 」が参考になる. (2019.1.12 加筆)
私は, ポアンカレ予想を知って, また知り合いから「位相幾何でも微分形式の積分でルベーグ積分を使う」と聞いて, 位相幾何 に興味を持った. その理解の第一歩となった本である.
VINEメンバー
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結城 浩さんの「数学ガール」シリーズの第六作目『ポアンカレ予想』が刊行された。とても面白く、見事な出来栄えの書である。全体の構成とストーリーが良く練られており、かなりの数学の経験者でも「なるほど。上手いな」と感心させられる箇所が多くある。「僕」と「数学ガール」(特にミルカさん、テトラちゃん)との対話の中に、数学好きのハートを鷲づかみにする「殺し文句」が埋め込まれており、とても嬉しい気分にさせられる。
高校までの教育でユークリッド幾何に親しんだ私たちは、空間の形やその計量(2点間の距離)は天与のものと思い込みがちだが、それらは人(数学研究者)によって定義されるものなのである。写像の連続性に位相(空間の開集合の全体)の導入が必要なこと、位相多様体(位相空間で局所ユークリッドであるもの)を同相写像で類別し、それらを分類することが位相幾何学の大きな目標であること、非ユークリッド幾何学の発見が2次元閉多様体の幾何構造やリーマン計量の導入への契機となったこと、などが本書の前半で明確に語られている。3次元ポアンカレ予想の解決を語るには、3次元球面、位相空間の基本群、ハミルトン-ペレルマンによるリッチフロー、などの説明が必要になるが、これらについても本書の後半で非常に分かり易く解説されている。第5章で「3次元球面は二つの3次元球体をそれらの境界である2次元球面で貼り合わせたもの」であることが視覚的に語られているが、「任意の3次元閉多様体は、二つの種数の等しいソリッドトーラスをそれらの境界で貼り合わせて得られる」という「へーゴード分解」の種数0のケースに当たることに注意したい。リッチフローはリーマン計量に関する熱方程式(発展方程式)として表示されるが、第7章「微分方程式のぬくもり」と第9章「ひらめきと腕力」の準備の周到さ、展開の面白さに感心する。1次元の熱方程式を変数分離すると、時間変数から指数関数が、空間変数から三角関数が得られることは良く知られているが、本書では三角関数の直交性を示して、関数のフーリエ展開やラプラス積分の話題に繋げている所が素晴らしい。特に、偶関数であるx^2をa+b(cosx)で近似し、そのL2ノルムを最小にするa,bを求める問題(問題9-2。305頁)に関わる「腕力」と「ひらめき」の解説は本書の白眉といえる。フーリエ係数に関するベッセルの不等式(パーセヴァルの等式)をご存知の方は、この問題の解(a,b)はx^2のフーリエ係数(a0,a1)に一致することに気付かれるだろう【注: a1は308頁の最初の定積分で求められている。x^2のフーリエ展開は331頁に述べられているが、数学が得意な方はぜひ確認して頂きたいと思う】。
本書の対話の中で共鳴し共感を覚え、下線を引いた箇所を幾つか抜き出してみたい(☆を付けたものが特にハートを揺さぶられた「殺し文句」)。
☆-「学ぶことは素敵で、おもしろくて、楽しくて、美しくて、感動があると知りました。ですから、その感動を他の人にも伝えたいと思ったんです」(pp.193-194)
-「自分の《理解の最前線》を先に進めるため、自然な質問を繰り出しているのだ」(p.246)
-「いえ、《当たり前のことから始めるのは良いこと》ですから」(p.275)
-「彼女がさまざまなことに詳しいのは、学んでいるからだ。当たり前じゃないか」(p.277)
☆-「そして、そこには、他者の活動に対する敬意があると思います。… そもそも、問題を解いて終わりにせず、論文を残すというのも他者のためです。《数学は時代を越える》と言いますが、時を越える数学を支えているのは、多くの数学者たちの協力にほかならないと思うんです」(p.351)
☆-「でもいつか、アリアドネの糸をたぐっていきましょう! いつか、いっしょに行きましょうね。無限の未来へ向けて! インフィニティ!」(p.376。テトラちゃん、なんと可愛いことを言って下さるのでしょう!)
こんなに素直で豊かな感受性を持つ「数学ガール」たちが近くで会話していたら、きっと聞き耳を立て、その会話の輪に加わってみたいと思うだろうな、ととても楽しい気分にさせられる。著者である結城さんの向学心と数学への愛情がヒシヒシと伝わってくるお薦めの一冊である。
【付記】
本書を読みながら、この本も面白い読み物で数学が好きな読者の方々に薦められるのでは、と心に浮かんだものを幾つか挙げてみたい。
小針あき宏『すべての人に数学を 対話・現代数学入門』、野口宏『エキゾチックな球面』、松本幸夫『トポロジーへの誘い』、本間龍雄『ポアンカレ予想物語』、宮岡礼子『現代幾何学への招待』
【追記: 2018.4.19】
本書の第8章でガウスの「驚異の定理」、即ち曲面のガウス曲率が内在的な量であることに言及されている。曲率がそのリーマン計量(第一基本形式)で規定されるという発見は「微分幾何学の発展の基となる極めて重大な発見であった」ことをぜひ認識しておきたい。曲面の微分幾何学の入門書として、小林昭七『曲線と曲面の微分幾何』と梅原雅顕・山田光太郎『曲線と曲面』の二冊が優れていると思う。後者ではガウス曲率を第一基本量(E,F,G)で表示するガウスの公式の証明にまで及んでいる。微分幾何学は多様体上の微分積分学であるから、その第一歩として(曲線と)曲面の微分幾何学の基礎を習得することの重要性は言を俟たない。純真なテトラちゃんなら、一般論に対し具体的な特殊論の位置を占める「曲面の微分幾何から始めるのは良いことです」と頷いてくれることだろう。曲面論に限っても、平均曲率一定曲面の理論や界面現象に現れる動く曲面の理論など、興味深い理論が多くあり奥がとても深い。小林昭七先生の書の「あとがき」に記されている印象に残る文章を引用させて頂きたいと思う。
「このような微分幾何の成功の元を質すとき、それがGaussとRiemannの曲率の概念にあることを知り、あらためて、この2人の数学者の偉大さを理解するわけである」
高校までの教育でユークリッド幾何に親しんだ私たちは、空間の形やその計量(2点間の距離)は天与のものと思い込みがちだが、それらは人(数学研究者)によって定義されるものなのである。写像の連続性に位相(空間の開集合の全体)の導入が必要なこと、位相多様体(位相空間で局所ユークリッドであるもの)を同相写像で類別し、それらを分類することが位相幾何学の大きな目標であること、非ユークリッド幾何学の発見が2次元閉多様体の幾何構造やリーマン計量の導入への契機となったこと、などが本書の前半で明確に語られている。3次元ポアンカレ予想の解決を語るには、3次元球面、位相空間の基本群、ハミルトン-ペレルマンによるリッチフロー、などの説明が必要になるが、これらについても本書の後半で非常に分かり易く解説されている。第5章で「3次元球面は二つの3次元球体をそれらの境界である2次元球面で貼り合わせたもの」であることが視覚的に語られているが、「任意の3次元閉多様体は、二つの種数の等しいソリッドトーラスをそれらの境界で貼り合わせて得られる」という「へーゴード分解」の種数0のケースに当たることに注意したい。リッチフローはリーマン計量に関する熱方程式(発展方程式)として表示されるが、第7章「微分方程式のぬくもり」と第9章「ひらめきと腕力」の準備の周到さ、展開の面白さに感心する。1次元の熱方程式を変数分離すると、時間変数から指数関数が、空間変数から三角関数が得られることは良く知られているが、本書では三角関数の直交性を示して、関数のフーリエ展開やラプラス積分の話題に繋げている所が素晴らしい。特に、偶関数であるx^2をa+b(cosx)で近似し、そのL2ノルムを最小にするa,bを求める問題(問題9-2。305頁)に関わる「腕力」と「ひらめき」の解説は本書の白眉といえる。フーリエ係数に関するベッセルの不等式(パーセヴァルの等式)をご存知の方は、この問題の解(a,b)はx^2のフーリエ係数(a0,a1)に一致することに気付かれるだろう【注: a1は308頁の最初の定積分で求められている。x^2のフーリエ展開は331頁に述べられているが、数学が得意な方はぜひ確認して頂きたいと思う】。
本書の対話の中で共鳴し共感を覚え、下線を引いた箇所を幾つか抜き出してみたい(☆を付けたものが特にハートを揺さぶられた「殺し文句」)。
☆-「学ぶことは素敵で、おもしろくて、楽しくて、美しくて、感動があると知りました。ですから、その感動を他の人にも伝えたいと思ったんです」(pp.193-194)
-「自分の《理解の最前線》を先に進めるため、自然な質問を繰り出しているのだ」(p.246)
-「いえ、《当たり前のことから始めるのは良いこと》ですから」(p.275)
-「彼女がさまざまなことに詳しいのは、学んでいるからだ。当たり前じゃないか」(p.277)
☆-「そして、そこには、他者の活動に対する敬意があると思います。… そもそも、問題を解いて終わりにせず、論文を残すというのも他者のためです。《数学は時代を越える》と言いますが、時を越える数学を支えているのは、多くの数学者たちの協力にほかならないと思うんです」(p.351)
☆-「でもいつか、アリアドネの糸をたぐっていきましょう! いつか、いっしょに行きましょうね。無限の未来へ向けて! インフィニティ!」(p.376。テトラちゃん、なんと可愛いことを言って下さるのでしょう!)
こんなに素直で豊かな感受性を持つ「数学ガール」たちが近くで会話していたら、きっと聞き耳を立て、その会話の輪に加わってみたいと思うだろうな、ととても楽しい気分にさせられる。著者である結城さんの向学心と数学への愛情がヒシヒシと伝わってくるお薦めの一冊である。
【付記】
本書を読みながら、この本も面白い読み物で数学が好きな読者の方々に薦められるのでは、と心に浮かんだものを幾つか挙げてみたい。
小針あき宏『すべての人に数学を 対話・現代数学入門』、野口宏『エキゾチックな球面』、松本幸夫『トポロジーへの誘い』、本間龍雄『ポアンカレ予想物語』、宮岡礼子『現代幾何学への招待』
【追記: 2018.4.19】
本書の第8章でガウスの「驚異の定理」、即ち曲面のガウス曲率が内在的な量であることに言及されている。曲率がそのリーマン計量(第一基本形式)で規定されるという発見は「微分幾何学の発展の基となる極めて重大な発見であった」ことをぜひ認識しておきたい。曲面の微分幾何学の入門書として、小林昭七『曲線と曲面の微分幾何』と梅原雅顕・山田光太郎『曲線と曲面』の二冊が優れていると思う。後者ではガウス曲率を第一基本量(E,F,G)で表示するガウスの公式の証明にまで及んでいる。微分幾何学は多様体上の微分積分学であるから、その第一歩として(曲線と)曲面の微分幾何学の基礎を習得することの重要性は言を俟たない。純真なテトラちゃんなら、一般論に対し具体的な特殊論の位置を占める「曲面の微分幾何から始めるのは良いことです」と頷いてくれることだろう。曲面論に限っても、平均曲率一定曲面の理論や界面現象に現れる動く曲面の理論など、興味深い理論が多くあり奥がとても深い。小林昭七先生の書の「あとがき」に記されている印象に残る文章を引用させて頂きたいと思う。
「このような微分幾何の成功の元を質すとき、それがGaussとRiemannの曲率の概念にあることを知り、あらためて、この2人の数学者の偉大さを理解するわけである」
2020年3月10日に日本でレビュー済み
本書は『数学ガール』シリーズの第6作である. これと対になって刊行されている『数学ガールの秘密のノート』シリーズは高校数学で取り扱われる分野がテーマであるのに対し, 『本編』においては大学の理系学生が触れるである内容にまで踏み込むのが特徴だ.
今回のテーマは「ポアンカレ予想」数学界の最重要問題としてアメリカのクレイ数学研究所が2000年に発表したミレニアム問題の一つだったものである. 本作も主人公「僕」を中心として数学で対話をしていく. 今までと同様様々な理解度の登場人物たちが対話をもとに対象を解き明かしていく. そのことを通して読者はその数学的な対象への理解, また学ぶこと, 教えることとは何かを物語を通して問われていく. 最終章までにはテーマである「ポアンカレ予想」について必要な準備がなされる. しかしいざ最終章と蓋を開けてみると証明の概要, フローチャートが提示されるだけだ. リッチフロー方程式と熱伝導方程式の関係性も素人目には難しい. 当然「ポアンカレ予想」を数学の一般書として出すことの難しさは想像に難くない. そこまでに歩んできた道のりも数学の魅力の伝わる大変興味深いものだった. しかしタイトルとして「ポアンカレ予想」と銘打っている以上もう少し踏み込んで(あと数章足して)文章だけでなく数式を用いてポアンカレ予想に挑戦してほしかった. 期待値が非常に高かったためオチの納得感が少なかったのが残念な点である(要求過多なのは重々承知のうえ).
今回のテーマは「ポアンカレ予想」数学界の最重要問題としてアメリカのクレイ数学研究所が2000年に発表したミレニアム問題の一つだったものである. 本作も主人公「僕」を中心として数学で対話をしていく. 今までと同様様々な理解度の登場人物たちが対話をもとに対象を解き明かしていく. そのことを通して読者はその数学的な対象への理解, また学ぶこと, 教えることとは何かを物語を通して問われていく. 最終章までにはテーマである「ポアンカレ予想」について必要な準備がなされる. しかしいざ最終章と蓋を開けてみると証明の概要, フローチャートが提示されるだけだ. リッチフロー方程式と熱伝導方程式の関係性も素人目には難しい. 当然「ポアンカレ予想」を数学の一般書として出すことの難しさは想像に難くない. そこまでに歩んできた道のりも数学の魅力の伝わる大変興味深いものだった. しかしタイトルとして「ポアンカレ予想」と銘打っている以上もう少し踏み込んで(あと数章足して)文章だけでなく数式を用いてポアンカレ予想に挑戦してほしかった. 期待値が非常に高かったためオチの納得感が少なかったのが残念な点である(要求過多なのは重々承知のうえ).
2018年5月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書は数学ガールの本編の第六作目にしてテーマはトポロジーの難問として名高いポアンカレ予想である。
確かに本書は随所でトポロジーのテーマを扱っているのだが、それが通俗書を超えるレベルに達しているかというといささか疑問である。
解説が結局通俗書によくある「コーヒーカップとドーナッツを同一視する」に収まっている感じがしてどうにもパッとしない
まあそのへんは些細なことだ
本書の問題点はテーマとして掲げているポアンカレ予想の解説がほとんど含まれていないことにある。
最終章でこれまで積み上げてきたものを使ってペレルマンの論文を解説するのかと思いきや
「(論文は)理解できない」と言い出し、何故かリッチフローの手法と似ていると言ってフーリエの熱伝導方程式を解説し始める。
私は数学にあまり強くないのでハミルトンのリッチフローの手法がフーリエの熱伝導方程式の方法と似ているのかどうか、つまりアナロジーとして適切なのかどうか判断できないがこれにはかなりガッカリさせられた
もっと意味がわからないのは登場人物たちがそれで満足してしまい、知的好奇心を巡らせないことである。
目的はあくまでもポアンカレ予想にあるのに、である
小説として読んでもほとんどの問題が未解決のまま終わっており、何の進展もない。
著者である結城浩氏は「自身がポアンカレ予想を理解するためには一冊の本を書く必要があった」とSNSで仰っているが、本書を読む限り著者がポアンカレ予想の証明をあるレベルまで理解したとは言い難い
これまでのシリーズが数学的にも、また小説としてもきちんと成り立っていたので本書にはかなりガッカリさせられた
確かに本書は随所でトポロジーのテーマを扱っているのだが、それが通俗書を超えるレベルに達しているかというといささか疑問である。
解説が結局通俗書によくある「コーヒーカップとドーナッツを同一視する」に収まっている感じがしてどうにもパッとしない
まあそのへんは些細なことだ
本書の問題点はテーマとして掲げているポアンカレ予想の解説がほとんど含まれていないことにある。
最終章でこれまで積み上げてきたものを使ってペレルマンの論文を解説するのかと思いきや
「(論文は)理解できない」と言い出し、何故かリッチフローの手法と似ていると言ってフーリエの熱伝導方程式を解説し始める。
私は数学にあまり強くないのでハミルトンのリッチフローの手法がフーリエの熱伝導方程式の方法と似ているのかどうか、つまりアナロジーとして適切なのかどうか判断できないがこれにはかなりガッカリさせられた
もっと意味がわからないのは登場人物たちがそれで満足してしまい、知的好奇心を巡らせないことである。
目的はあくまでもポアンカレ予想にあるのに、である
小説として読んでもほとんどの問題が未解決のまま終わっており、何の進展もない。
著者である結城浩氏は「自身がポアンカレ予想を理解するためには一冊の本を書く必要があった」とSNSで仰っているが、本書を読む限り著者がポアンカレ予想の証明をあるレベルまで理解したとは言い難い
これまでのシリーズが数学的にも、また小説としてもきちんと成り立っていたので本書にはかなりガッカリさせられた
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