LGBTのための制度ならば、如何なる方法を採ってでも正確に該当する当事者だけに適用するように審査し限定させる機能を整備しなければならないのに、
それがまったく不完全である(というか、何も無い)ために、誰でも悪用する危険や飛躍も起こるのだろう。ここまではわかる。
しかしこの本はLGBTに限定したとしても、そうした制度に反対し、アメリカ批判を交え、最終的には総じてほぼLGBTそのものに懐疑的な視点をもたせるよう仕上がっているのだ。(個人的には大いにそうした意図があるように感じた。)
「社会通念から逸脱している」「例外を一般化することがあってはならない」といった具合に、LGBTに差を設けるべきという論調が中心になっている。
子供を作れる男女が神聖で、それ以外は考えらないという論調が目立つ。婚姻率が、子供が、それが中核である。
この本ではパートナーシップ制は同性婚に繋がるもので、ほぼ同性婚とイコールの見方を持っている。
そうして、同性婚と一夫多妻制やほかの嗜好はイコールであるかのような飛躍をする。
同性愛が何なのかがあまりわかっていないからそのような飛躍になるのである。
アメリカでそのような流れがあるのであれば、それは同性愛を単なる嗜好の形態と安易に考え、これに便乗、利用しようとする者がいるからである。
この本でも肝心のLGBTの扱いについて、指向である同性愛を単なる嗜好と決めつけ、「個別に対応すればいい」と言うだけで、どうも雑で乱暴である。
同性愛者が不利益や差別にさらされているエピソードが事実かどうかわからず、実際には同性愛者に不利益や差別など無いと言う。
つまりLGBTの様々な苦悩を嘘だと決めつけているのである。
そうして差別など無い、と言いながらLGBTが如何に狂っていて悪いかのみを挙げ、厄介視させることで世間へ身構えるよう促し、合理的差別と言って差別を設けるべきとするのがこの本の核であるから、矛盾しているとしか思えない。
教育にも取り入れる必要はないと言う。
この本での合理性というのは、男女のみ という定理である。それ以外は非合理というわけである。
そもそもは、こうした雑さ加減から、差別が生じてきたのではあるまいか。
LGBTが存在する事実は変わらないにも関わらず、厄介視して法的に存在しない概念だからと無視したり隠してしまえば、
そうした風土の社会でLGBTに生まれついた子供はそれだけ得体の知れないものとして、異端視されやすくなるであろう。
社会通念を実際に近づけることを拒むのはおかしなことではないだろうか。
9割の人々のために男女の結婚の意義や伝統的な家族制度を伝えていくことは最重要だが、1割の少数者の話を躍起になって省略する必要もない。
そのような教育時間が小一時間あっただけで罰は当たらないだろうし、むしろ余計な勘違いからくる双方のストレスを減らすことができる。
1割の少数者と言ったが、電通のネット調査の数字のブレから、実際にはもっと少ないのではないかという疑念を入れている。
しかしアンケートへの導入条件の差などから本当にアクセスした当事者が増え、大きく間違っていないかもしれないわけである。
本当かどうかもわからないことまで決めつけて、それに基づいて公に態度を決定していく方針は如何なものか。
対して、同性同士の親に育てられた子供は問題があるというデータを挙げていたり、エイズは7割強が同性愛という事について
どのようにすれば改善するかを、当事者は考える必要があると感じる部分もあった。
ここは単なる悪口とは違う、大きな課題かと思う。
エイズについては、まずセーフ不足でしかない。いい加減で予防意識が無さ過ぎるからこうなっているのである。
同性同士の親子問題については、そのうち社会的に成功している子供もいる。そうした子供はなぜ健全なのか、どういう育てられ方をしたのか、
その同性親の教育方針を研究して、注意すること、やっていいこといけないことを洗い出し、活かすよう動いていくべきであろう。
またモラルに反する性虐待などは同性愛に限ったことではないものの、もってのほかというほかない。
宗教迫害というエピソードも出てくるが、これに関してはこの同性愛者が特別なだけで、同性愛者がみなこのようなことをするわけではないだろう。
セクシャリティの問題ではなく各々の人間性の問題であることも多い。
マイノリティーは人間性の問題を何でもそのせい(同性愛のせい)に捉えがちなので、個人的な問題まで勝手に人種問題に括らないよう注意が必要と思う。
基本的に強烈な反LGBT本である。これは決して制度のみを問題にしている本ではない。
従ってLGBTが関わるものはすべて悪く悪くもっていく。いいことはほぼ書いていない。何もかも駄目。そんな筈があるのだろうか。
侵害と思うなと言ってもこれでは無理がある。相手は選択できない性指向。もう少し良い面も見つけて提示する必要がある気がする。
それには同性愛がなぜ自然界に生まれるのか、そこから考える必要があるのではないか。
得てして反LGBTは自然界が普遍的に同性愛を生むことについて考えるのを嫌う。
しかし、それを避けている以上、堂々巡りな気がしてならない。
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