新鮮かつ独自の視点で書かれた現代短歌集。作者の勤め先での出来事を中心に、家族や故郷についても作歌されています。
天秤にかけたかのごとくバランスの良い五句体である詩もあれば、あえて破調を起こし余韻を残すものもあり、作者の
地頭の良さが滲み出ています。ロスジェネ世代の作者らしい、内容自体は敢えて平易であるもののエッジの効いた内容
で、小説のように楽しむこともできるし、会社員ならば思わず共感したくなるお馴染みのシーンやプライベートで
の微笑ましく涙ぐましい情景も満載。営業マンとして毎日を忙しなく働く中で、朱に染まらずに埋もれずに自らの
活きた目線で事象を捉えているため、現代社会のリアリティを感じ取ることができます。但し、もしかしたら
躍動感を持たせるために、作者が意図して行っているものかもしれませんが、できれば各パートの時系列
を揃えてほしいです。少々唐突感があり、誰のこと何のことを対象に作歌されているのか不明瞭なときがありました。
祈りや願いを捧げるしかないような、厳しい現代社会を垣間見ることできる骨のある内容であり、次回続編が期待され
る一作と感じました。
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