戦前の少年犯罪 単行本（ソフトカバー） – 2007/10/30

という本です。

一般的に老人が言う、昔はよかったという話が全く嘘であったことが分かります。
戦前は少年犯罪がおおく、凶悪で恐ろしい。

新聞を調べてまとめるというアプローチを今まで誰もやらなかった。
誰もやらずに、イメージで偉そうにしていた。
それをこの人がやった。

自分も反省しました。なかなか治りませんが。

少年犯罪が残忍化しているとニュースで度々報道されているが、たまたまネット動画でこの本を知り購入。
戦前は貧しかったからではないかと思ってしまいそうだが、理由は全くそのような次元ではなく
過去と現代の犯罪を比べるということはできないが、今の社会問題や人間関係の歪みといった複雑な理由から
発生した犯罪ではなく、信じがたい安易な理由で殺人が横行し、しかも現在の少年犯罪よりも更に低年齢の子供達が
犯していた事例の数々にはゾッとさせられるものがある。
かつての日本は礼儀や道徳が厳しく躾けられていたイメージがあったが、この１冊でガラリと認識がひっくり返された。
ご興味のある方は是非一読を。

　著者が国会図書館に通い続け、当時の新聞などを丹念に読み込んでまとめた資料。
　少年犯罪の近年の悪化を嘆く向きは、是非呼んでいただきたい。
成人も含めて、現在ほど安全な時代はないのだが、センセーショナルな犯罪はしつこくワイドショーで取り上げられるので、体感治安の悪化を感じ、犯罪件数も多いと錯覚しているのだ。

　戦前、銃は家庭や学校にもあったし、管理もいい加減で、子どももナイフを持っているのが当たり前の時代だった。
　武器がそばにあれば暴発も含めて使ってしまうのが人の性だ（だから米でも銃規制運動が起きる）。
　1929年2月19日、9歳が6歳を餅の取り合いで猟銃で射殺（50年1月までは数え年表記なので、満年齢では1〜2歳下）。
　28年6月20日、両親が弟ばかりを可愛がるので、小4の兄が毒殺。

　学校内での喧嘩殺人も多く、27年6月17日、小4女子が授業中に同級生をメートル尺で殴り殺害。
無差別加害では、30年1月25日、小学校高等科（現在の中2）が女性の髪切り通り魔20件。
　35年9月4日、15歳女子が幼女を誘拐殺人。
　42年10月12日、18歳が9人連続殺人・6人傷害事件。
　44年、7月29日、中4が同性愛の果てに友人一家3人殺害。

　体罰事件
　34年10月8日、高等小学校教師が1年生が掃除をサボったと、顔や頭を平手打ちにし、警察が捜査開始。
　戦前は体罰に寛容ではなく、体罰に傷害事件となっていた。
　
　教師に対する暴行
　28年3月6日、中学5年生数人が、卒業式の直後に校長と教員一人を殴った。
　お礼参りや、小学生でさえ教師を殴る事は日常茶飯事だった。

　41年10月26日、17歳が一家皆殺しを謀り、1歳・9歳の甥姪を殺害。
　27年の金融恐慌から満州事変までの本当に大変な4年間以外は、就職困難でなく、ニートも多かった。

　教師の犯罪
　33年7月10日、高等小学校校長が、女生徒数十人をレイプ。
　このような性的事件は無数にある。
　視学という教師の不正を監視して処罰する役職があったが、「視学3年家が建つ」と言われるほど汚職まみれだった。
入学試験での買収事件も多い。

　30年11月24日、小学校校長が妻を保険金殺人。
　31年6月1日、小学校教師が子ども殺害。
　子殺しも時代として多かったが、教員によるものも頻発。

　旧制高校生というエリート
　35年4月25日、高1生ら80人が街頭ストームと称し大暴れ。
　旧制高校生は、同世代の男子の1％以下という超エリートだったが、警察も地元の人も気を使って甘やかしていた。
　30年8月17日、一高生と京大生100人以上が乱闘。
　京大生は、仕込み杖を持ち歩いていたのだが、東映ヤクザ映画か？！
　
　32年8月14日、一高と三高の応援団、120人が大乱闘。
　一高と三高の対抗試合では、このようなことが多く、フーリガンよりたちの悪い集団であった。
　
　旧制高校生は、超エリートではあったが、教養がなかった。
　 三木清は37年に『文芸春秋』で試験勉強をしているだけで読書をしない、と
「学生の知能低下について」に残している。
　中学と高校の試験を突破すれば、帝国大学の定員は高校卒業者数以上だったので、勉強もせず、モラトリアム期間を過ごし、周囲の大人も甘やかしたので、連日のように街中で暴れまわっていた。

　親殺し
　27年1月30日、中3が父親撲殺。
　尊属殺は、2005年128件（親殺しのみ）、最も古いデータの56年136件（親族も含む）。
　親殺しのみでは、74〜85年までで96％であるので、56年は130件か。
　32年8月25日、18歳が遺産争いから生後3日の赤子を含む祖母一家3人惨殺。

　主殺し
　住み込みが多かったので、家族的関係になって、親殺しと同様の理由で殺害する。
　36年4月25日、19歳が主人一家6人惨殺。

　いじめ殺人
　28年6月23日、小1ら二人が幼女を押さえつけて、硫酸を浴びせる（4週間の重症）。
　31年5月12日、小2が同級生女子二人を川に突き落とし、一人が溺死。
　
　エログロナンセンス
　33年7月9日、女学校3年生らの桃色遊戯グループ「小鳥組」が補導。
　「現代女性はすべからく異性と交際して、時代に後れぬ良妻賢母を心がけねばならぬ」と誓い、異性を紹介しあい、互いに相手を交換もしていた。
　33年6月17日、女学生ら41人が上流階級相手の売春。

　また昔も若い女性は、外人に弱かった。
　33年10月11日、東京帝大法学部への留学で来日したドイツ人学生（25）に、到着翌日から恋文が殺到した。
　41年5月20日、14歳ら女学生9人が、援助交際。
　リーダーだった18歳は、村長の娘で、13歳の時から60歳近いオヤジ相手に援助交際を始めた後補導されたが、小学生の時からやっていた可能性が高い。

　33年5月12日、女学校2年が小学校教師の子を修学旅行先で出産。
　教師が手を出すケースも多かった。

　幼女レイプ殺人
　28年12月1日、17〜18の学生が、小学1年女子をレイプ・絞殺、正規に泥をつめ池に投げ捨て。
　37年10月5日、15歳が幼女100人以上を誘拐し、レイプ殺人。

　14歳以上の女性を襲っても、ほぼ全てが示談となったし、13歳以下は合意があっても強姦罪なので、事件として警察統計に載っているのは殆どが幼女レイプ。
　尚、二人以上が共謀した強姦は、58年から非親告罪となり、強姦検挙者は急増している。

　赤ちゃんの産み殺し
　33年4月15日、18歳が兄と関係し、赤ちゃんを圧殺死。
　70年頃までは、年30〜40件あった。

　心中
　35年の10代自死率は、2005年の3倍、20代前半は倍以上であった（具体的数字を調べても35年のは不明で、55年の15.6がピーク。　05年は約５。）
　35年8月20日、18歳ニートが女性3人と心中
　大島へ向かう船内は、自死希望者の出会いの場だったようで、見知らぬ者同士一緒に死ぬ例は多い。　

　ここからは、戦前の風習などを抜き出す。
　子育ては主義で
永井荷風の33年10月24日日記では、「今の世の親達は小児の躾け方にはまったく頓着せざるがごとし」とある。
　荷風は父が米国留学帰りの教育勅語作成に参加した文部官僚であったので、明治の日本人としては例外的に厳しくしつけたのかもしれない。

　子どもを厳しくしつけるのは欧米から入ってきた考えで、自由に暴れさせるのが日本の伝統であった。

　軍事
　30年ごろの表記として、自由奔放の育ってきた日本人は、元々規律正しい団体行動が苦手で、日本の軍隊では下克上は当たり前だった。
　日本は貧乏だったので、兵隊を養う金がなく、徴兵検査に合格しても兵に行かない人が殆どだった。

　37年に始まった日中戦争で大変な好景気になったが、20代は兵に取られたので、10代は引っ張りだこの高給取りになった。
　そしてよからぬ遊びを覚えてしまって、金が足りなくなって強盗を働くのが多く、親よりも稼いでいたので、親も意見しにくかったのが不良が増えた原因だと当時の警察も分析している。

　日本の軍隊は教育に力を入れていたが、2.26では、士官学校で最高の教育を受けていたエリート軍人が、その教育の責任者である渡辺錠太郎陸軍教育総監を殺した。
　戦争が数年間ない時期に、エリートとして国を憂いながらも何の役にも立たず、貧乏だった日本の国家予算を更に圧迫する無駄飯ぐらいのニート様的立場に耐えられなかったのも原因としてあるだろう。
　満州事変前、軍人は、国中から税金ドロボーと言われ、バカにされてもいたし。

　戦争でさえ、ニート的思考によるもので、何かしなければいけないと、焦りだけが肥大化して、何の計画もなく、目的さえよく分からない、軍の存在意義を示すだけの純粋無垢な戦争に突入していった。
　一時の衝動を爆発させるだけの〈ニート犯罪〉に補給や戦略などあるはずもなかった。
　2・26も1日分の食料さえ用意せずに大部隊を展開したように。
　
　荒木貞夫陸軍大臣は、「荒木と呼んでくれ！」と青年将校たちの甘やかしで有名な皇道派の大将で、それまで「国軍」と呼ばれていた数々の栄光に包まれた伝統ある日本軍の呼び名を、「皇軍」と、天皇の軍隊の独占物のように呼ぶようにしたり、将校の所持する軍刀（サーベル）を、世界では武器として役に立たないと廃止していたにもかかわらず、自分の物と同じく日本刀に持ち替えさせ、平時から身に着けることを奨励した。
　カイゼル髭も含め、流行語やファッション、ブランドに弱い人だった。

　若い者をおだてた荒木は、若い将校のアイドルとなったが、二十歳そこそこの少尉などが、陸軍トップの荒木と直接友達づきあいができたばかりか、命令すらできた状態だったので、上官の大尉や少佐の命令など聞いていられず、秩序や命令系統がメチャクチャになったまま、戦争を始めた。

　その後文部大臣になって「キミボク禁止令」（女学生が男っぽい言葉遣いしてはいけないとする命令）やら「パーマネント禁止令」を発令し、当の女学生ばかりか、世間からも総スカンを喰らった。
　話しの威勢は良かったが、高橋是清に「話の具体的な中身がない」と小僧扱いされる人であった。

　体罰について
　武士道の元祖としても戦前の軍国主義に大きな影響を与えた山鹿素行や水戸光圀も「子どもを厳しく育てると、心がねじけて親に隠れて悪い事をするようになるし、親を恨んだりして関係がおかしくなるから、体罰はよろしくない。」としているように、戦前は体罰禁止であった。
　武士道の心得を説いた大道寺友山『武道初心集』でも、「妻が悪い事をしても殴るのは臆病武士の所業である。」としており、藩校・寺子屋でも体罰の事例はほぼなかった。

　学校・軍隊とも体罰禁止は、日本の伝統であったので、世界に先駆けて1879年（明治12年)の教育令に明記された。
　体罰が軍隊で広がったのは日中戦争の慢性化により士気が荒廃した結果そうなってしまったものであり、東条英機が悪名高い『戦陣訓』を出す事になったのも、そうした軍紀荒廃に歯止めをかけようとする意図によるものだった。
　

　少年法は、ＧＨＱによってもたらされたものではなく、戦前の23年（大正12年）施行されたもので、14歳未満には刑事責任免除、16歳未満は死刑・無期免除、18歳未満の容疑者は全て仮名であった。
　20歳で徴兵検査を受けても徴兵は翌年1月の為、21歳を過ぎて遊び回っている者もいたので、運用面では20歳以上にさえ適用されていた。
　42年ごろから尊属殺は報道されなくなった。
　聖戦遂行の為の帝国国民、特に教育勅語や正しい戦時教育を受けている子どもたちは、皆正しい心を持っているはずだということ。

　老人殺しの新聞記事は毎日のようにあり、弱者として狙われたので、お年寄りを大切にしようと教えねばならなかった。

知らないって恐ろしい…
思わず、自分でも詳細に調べてしまった…

この本は戦前の日本で起きた少年犯罪をテーマ別に分けた上で紹介し、それぞれに著者がコメントをつけるような形で書かれています。
とにかく紹介されている事件の数がすさまじくよくぞここまで調べたと驚嘆させられます。
ニホン人は脳がどうのとか教育がどうのとかスピリチュアルとか言ってないで、まず何よりこの本を読むべきです。そして自分の無知さに気付くべきです。
”ちゃんと調べる”という一番基本的なことの大切さをこの本から改めて教わりました。

ただ、惜しむらくは文の書き方でしょうか。
必要以上に読者を挑発するような、あるいは嘲るような箇所が多く見受けられます。
著者自身も、エセ識者がしゃべくり放題で市民は騙されっぱなしという現状に憤りを感じているのでしょう。しかし本として世に出す以上はもっと誠実さを文に込めないと読者に避けられてしまいます。
私達のようにある程度この問題に関心のある人間ならよいでしょうが、本来この本を本当に読むべきは何も知らない人々のはず。しかし何も知らない人がこの文を読んだらどう思うでしょうか。遠まわしに自分まで馬鹿にされているような感じを受けないでしょうか。
世に訴えることがあるならもっと綺麗な文章でまとめるべきと思いました。

本来なら文句無し５つ星をあげたいところですが、あえて厳しく４つにしました。

昭和・戦前の少年犯罪に焦点を当てて、地道に調べ上げた力作。
若干の考察がなされているが、基本は事実を淡々と記している。

これを読めば如何に僕達の先輩達が嘘つきなのかが分かる。

治安は益々良くなっていて、僕達は幸せな時間を生きていることが身にしみる。

是非とも多くの方に読まれて欲しいと心から願う本。

二・二六事件や荒木貞夫の著者の評価には賛否あるかもしれないが、著者はなかなか
面白い視点を持っていると思う。

市井の研究者がアカデミズムを凌駕した好例となる本です。お勧めです。

満20歳未満を少年として扱い、昭和の初めから昭和20年8月15日の終戦の日の終戦の日までを対象期間とした少年犯罪の記録集です（ただし、戦前の新聞記事での年齢表記が数え年であるため、満20歳の可能性のある21歳の事件も取り上げられています）。「国立国会図書館にこもって、古い新聞と雑誌をひたすら読み続ける日々を送っている」という著者により調べられた少年犯罪が、具体的な形で列挙されていき、その合間に筆者の意見・感想といったものが語られていきます。

各章は以下のようになっています。全ての章は「戦前は ... 時代」という形になっており、各章ごとにテーマが決められそのテーマに沿った少年犯罪の例が挙げられていきます。例外的に、第15章だけは少年犯罪を扱っておらず、「少年犯罪だけではなく、対となっているこれらの教師の犯罪を見ておかないと戦前の実態を知るうえで片手落ち」との判断のもと、教師の犯罪を対象としています。

第1章 戦前は小学生が人を殺す
第2章 戦前は脳の壊れた異常犯罪の時代
第3章 戦前は親殺しの時代
第4章 戦前は老人殺しの時代
第5章 戦前は主殺しの時代
第6章 戦前はいじめの時代
第7章 戦前は桃色交友の時代
第8章 戦前は幼女レイプ殺人事件の時代
第9章 戦前は体罰禁止時代
第10章 戦前は教師を殴る時代
第11章 戦前はニートの時代
第12章 戦前は女学生最強の時代
第13章 戦前はキレやすい少年の時代
第14章 戦前は心中ブームの時代
第15章 戦前は教師が犯罪を重ねる時代
第16章 戦前は旧制高校生という史上最低の若者たちの時代

amazonでの評価を見れば分かるように、筆者が労力を注いで集めた少年犯罪記録集としての読み応えがあり、こんなことがあったのかと興味深く読めると思います。また、数え年と満年齢、戦前の学校制度、など戦前の文化についても知ることができます。しかし、「戦前」と「少年」という用語の定義がなされる前にいきなり第1章が開始される構成、「脳の壊れた異常犯罪」や「女学生最強」といったいたずらに扇情的な用語の使用、突然口語体になる挑発するかのような文章（例としてp.167「なんせ昔の日本人はローンを組んでまで家を買うなんてバカなことはしませんでしたし、戦前は家賃も安く、極貧過程は結構払わないでためていましたし、昔の貧乏人は家電製品なんて買わず、トンカツやハンバーグなんて高級なもんも食べず、これで一番金のかかる教育費がいらないのなら楽勝です」）、などなんでこんな書き方をするのか、なぜそんなことを書くのかというのが目につき、苛立つことがたびたびありました。

特に、ニートを対象とした第11章ではニートという切り口からニ・ニ六事件が語られるのですが、首謀者の誰もが満20歳未満でないはずのニ・ニ六事件について持ち出してきて筆者なりの解釈をするというのには、困惑しました。

注：p.32で「ニーチェの<超人>は英語で云うとスーパーマンではなくオーバーマンなんですが、」という記載があります。これについては、インターネットで軽く調べただけなのですがsupermanでもovermanでもどちらでもよいと思います。

テレビではよく識者等と称する人達が最近の子供はテレビやゲーム
最近だとスマホなどの影響で凶悪犯罪を昔より起こすようになっていると言っているが
統計的な事実を元にそれを否定する良書
いかにマスコミや識者の言う事が事実ではなく単なる思い込みによるものか分かると思う。