ホスピス緩和ケアの音楽療法を専門とする米国認定音楽療法士、佐藤由美子さんの著書の第三弾です。一作目の『ラストソング』は、きっかけは地方のテレビ局のドキュメンタリーから興味を抱き、購入。青森慈恵会病院勤務の際に癌末期患者の緩和ケアとして氏が音楽療法を行い、患者さんが安らかに息を引き取る様子を家族が看取るまでのダイジェスト版でした。頑なな職人肌の田舎なまりの男性患者のリクエストは、なんとプレスリー。若き日の思い出の曲だそう。衝撃は、摂食もできず体調不良で入院するも、音楽療法で痛みや恐怖が和らぎ、いったん退院。再入院した際の、末期の瞬間まで耳からの情報は伝わっている点。信じがたいことだが、その後、私自身が実父の最期を看取った際に実感した事実。一緒になって、ずっと話しかけていた姉も「感じた」という。
しかし、この本は万人にはオススメし難い。なぜなら、非常に読みづらい。筆者が実際に出会った終末期の患者と家族との話をまとめている事実だからこそ、振り返ってまとめられないのだと感じた。だからこそ読むことで体験する価値があると思うのだ。また、音楽療法にはマニュアルがなく、パーソン・センタード・ケアであるため、患者のニーズを基にした患者中心のアプローチである点も同様で、要するに日本人の求めるマニュアル本とは一線を画するのだ。この点は、二作目の『死に逝く人は何を思うのか~遺される家族にできること』でも同様だ。
そして、本作は全く異なるアプローチで書かれた作品である。テーマが「アメリカ人から見た戦争」を、直接受け止めた日本人がまとめている点にある。同時に、実際のアメリカ人の戦争体験とその裏付けとなる詳細な資料を付している点も特筆される。ともすれば、概念的かつイデオロギー的に語られる嫌いのある戦争論の中に一石を投じた作品として、一読に値する。
この商品をお持ちですか?
マーケットプレイスに出品する

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません 。詳細はこちら
Kindle Cloud Readerを使い、ブラウザですぐに読むことができます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
戦争の歌がきこえる 単行本(ソフトカバー) – 2020/7/14
購入を強化する
「僕は日本兵を殺した」
私がアメリカのホスピスで見届けたのは、
第二次世界大戦を生き抜いた人たちの最期だった。
思い出の音楽とともによみがえってきたのは、
語られずにいた数々の証言。
「マンハッタン計画にかかわっていたんだ」
男は涙ながらに告白し、
「彼らが来る! ナチスが来る! ! 」
女は恐怖に囚われつづけた――。
これは、ひとりの音楽療法士が記録した、
日本人の知らない「もうひとつの戦争の記憶」であり、
「戦争」の比喩が不気味に飛び交う現代日本において、
トランスナショナルに平和の意味を考えるための一冊である。
【目次】
プロローグ 日本人の私が、戦争を経験したアメリカ人とかかわること
音楽療法について
第一部 太平洋戦争(Pacific War)
第一章 良い戦争という幻想――「僕は日本兵を殺した」
第二章 記憶の中で生きる――「忘れないでくれ」
第三章 原爆開発にかかわった人――「誇りには思っていない」
第二部 欧州戦線(European Theater)
第四章 アメリカの理想と現実――「僕たちは、なんのために戦っているのか」
第五章 女たちの戦争――「経験して初めてわかること」
第六章 ホロコーストの記憶――「ナチスが来る!」
第三部 忘却と記憶(Forgetting, Remembering)
第七章 祖父が語らなかったこと
第八章 忘れられた中国人たち
エピローグ その記憶は、私たちが自己満足と戦うことを可能にする
補遺
あの戦争をどう名づけるか/謝罪と責任――日米における観念の違い/アイデンティティと国籍――なんのために戦ったのか/英語に訳せない「歴史認識」という言葉
あとがき
私がアメリカのホスピスで見届けたのは、
第二次世界大戦を生き抜いた人たちの最期だった。
思い出の音楽とともによみがえってきたのは、
語られずにいた数々の証言。
「マンハッタン計画にかかわっていたんだ」
男は涙ながらに告白し、
「彼らが来る! ナチスが来る! ! 」
女は恐怖に囚われつづけた――。
これは、ひとりの音楽療法士が記録した、
日本人の知らない「もうひとつの戦争の記憶」であり、
「戦争」の比喩が不気味に飛び交う現代日本において、
トランスナショナルに平和の意味を考えるための一冊である。
【目次】
プロローグ 日本人の私が、戦争を経験したアメリカ人とかかわること
音楽療法について
第一部 太平洋戦争(Pacific War)
第一章 良い戦争という幻想――「僕は日本兵を殺した」
第二章 記憶の中で生きる――「忘れないでくれ」
第三章 原爆開発にかかわった人――「誇りには思っていない」
第二部 欧州戦線(European Theater)
第四章 アメリカの理想と現実――「僕たちは、なんのために戦っているのか」
第五章 女たちの戦争――「経験して初めてわかること」
第六章 ホロコーストの記憶――「ナチスが来る!」
第三部 忘却と記憶(Forgetting, Remembering)
第七章 祖父が語らなかったこと
第八章 忘れられた中国人たち
エピローグ その記憶は、私たちが自己満足と戦うことを可能にする
補遺
あの戦争をどう名づけるか/謝罪と責任――日米における観念の違い/アイデンティティと国籍――なんのために戦ったのか/英語に訳せない「歴史認識」という言葉
あとがき
- 本の長さ264ページ
- 言語日本語
- 出版社柏書房
- 発売日2020/7/14
- 寸法18.8 x 12.8 x 2.5 cm
- ISBN-104760152490
- ISBN-13978-4760152490
この商品を見た後に買っているのは?
ページ: 1 / 1 最初に戻るページ: 1 / 1
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
「僕は日本兵を殺した」アメリカのホスピスで見届けたのは、第二次世界大戦を生き抜いた人たちの最期だった。日本人が知らない「もうひとつの戦争」の記憶。
著者について
佐藤由美子(さとう・ゆみこ)
ホスピス緩和ケアの音楽療法を専門とする米国認定音楽療法士。バージニア州立ラッドフォード大学大学院音楽科を卒業後、オハイオ州のホスピスで10年間音楽療法を実践。2013 年に帰国し、国内の緩和ケア病棟や在宅医療の現場で音楽療法を実践。その様子は、テレビ朝日「テレメンタリー」や朝日新聞「ひと欄」で報道される。2017年にふたたび渡米し、現地で執筆活動などを行なう。著書に『ラスト・ソング――人生の最期に聴く音楽』、『死に逝く人は何を想うのか――遺される家族にできること』(ともにポプラ社)がある。
Twitter: @YumikoSatoMTBC
HP: https://yumikosato.com
ホスピス緩和ケアの音楽療法を専門とする米国認定音楽療法士。バージニア州立ラッドフォード大学大学院音楽科を卒業後、オハイオ州のホスピスで10年間音楽療法を実践。2013 年に帰国し、国内の緩和ケア病棟や在宅医療の現場で音楽療法を実践。その様子は、テレビ朝日「テレメンタリー」や朝日新聞「ひと欄」で報道される。2017年にふたたび渡米し、現地で執筆活動などを行なう。著書に『ラスト・ソング――人生の最期に聴く音楽』、『死に逝く人は何を想うのか――遺される家族にできること』(ともにポプラ社)がある。
Twitter: @YumikoSatoMTBC
HP: https://yumikosato.com
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
佐藤/由美子
ホスピス緩和ケアの音楽療法を専門とする米国認定音楽療法士。バージニア州立ラッドフォード大学大学院音楽科を卒業後、オハイオ州のホスピスで10年間音楽療法を実践。2013年に帰国し、国内の緩和ケア病棟や在宅医療の現場で音楽療法を実践(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
ホスピス緩和ケアの音楽療法を専門とする米国認定音楽療法士。バージニア州立ラッドフォード大学大学院音楽科を卒業後、オハイオ州のホスピスで10年間音楽療法を実践。2013年に帰国し、国内の緩和ケア病棟や在宅医療の現場で音楽療法を実践(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
佐藤由美子(さとう・ゆみこ)
ホスピス緩和ケアの音楽療法を専門とする米国認定音楽療法士。バージニア州立ラッドフォード大学大学院音楽科を卒業後、オハイオ州のホスピスで10年間音楽療法を実践。2013 年に帰国し、国内の緩和ケア病棟や在宅医療の現場で音楽療法を実践。その様子は、テレビ朝日「テレメンタリー」や朝日新聞「ひと欄」で報道される。2017年にふたたび渡米し、現地で執筆活動などを行なう。著書に『ラスト・ソング――人生の最期に聴く音楽』、『死に逝く人は何を想うのか――遺される家族にできること』(ともにポプラ社)がある。
Twitter: @YumikoSatoMTBC
HP: https://yumikosato.com
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
5つ星のうち4.7
星5つ中の4.7
36 件のグローバル評価
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2020年8月10日に日本でレビュー済み
違反を報告する
Amazonで購入
14人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2020年8月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
死にゆく人が筆者にだけ語った人生の物語。幸せな人生を過ごしたように見えた人が、実は戦争の記憶の中でずっともがき苦しんで、幸せを感じたことなど一度もなかった。どんなにハッピーな出来事も自分の心を癒すことがなかった。本当のことを誰にも語らずに死んでいくはずだった人の語りを丹念に書き留めて、資料を探して事実を確認し、一冊の本にまとめ上げた労作。戦争に加害者も被害者もなく、ただ心に大きな傷を与えて、人の人生を台無しにする。私たちはなんのために生まれてきたのか・・・。少なくとも国を守るために生まれてきたのではない。私たちは自分の人生に責任を持とう。そう思わせてくれる本です。
2020年9月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
戦争を体験した様々な人との出会いをきっかけに、筆者が感じたこと、考えたことを、数字的なデータも交えて記述した作品です。
数字の正しさなど、自分でより深く調べて確かめたい(疑っているわけではありませんが、一次資料に当たりたいという意味で)部分はありますが、外から見た日本、それぞれの国や民族から見たあの戦争、など、これまでにない視点で戦争を見つめるきっかけになると思います。
歴史修正主義的な言論が多くなされる今の日本に生きているからこそ、読んでおいてよかった、と思いました。
数字の正しさなど、自分でより深く調べて確かめたい(疑っているわけではありませんが、一次資料に当たりたいという意味で)部分はありますが、外から見た日本、それぞれの国や民族から見たあの戦争、など、これまでにない視点で戦争を見つめるきっかけになると思います。
歴史修正主義的な言論が多くなされる今の日本に生きているからこそ、読んでおいてよかった、と思いました。
2020年7月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
確実に、戦後民主主義の成果が、この著者の中に、結実してる。概念の正確さを丹念に表現しようとする姿勢に清々しさを覚える。ヘーゲルの論理学を思わずにはいられない。かって、Leo HubermanがWe,the peopleを書いた時の新鮮さを感じた。この時代だからこそこの著者は生まれたと思う。エピローグと補遺の間に挟まれた著者の経験が読む者に追体験をさせシンパシーを沸き起こさせるのだ。この著作は論理学のお手本になると思う。これからの佐藤由美子氏の活躍を強く願う。
2020年8月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
音楽療法=楽しくなければいけない、という概念が良い意味で覆される。佐藤氏の音楽療法は、楽しいだけではないことを私に教えてくれました。
現場で音楽療法を行っていると、どうしても『楽しくしなければ』という気持ちになりがちで、ましてや『戦争の話』はタブーと捉えるスタッフもいる。
この本は、戦争を生き残り高齢者となったクライアントとの関わりや、時代背景についても詳しく書かれているので、考えさせられることが多い。
音楽療法士は勿論だが、実際に介護の現場で働いている介護職員にも読んでもらいたい。
『あなた方がお世話をしている方々は、想像出来ないような辛く哀しい経験をしているんですよ』
最後に、佐藤氏のご活躍をこれからも陰ながら応援しております。
現場で音楽療法を行っていると、どうしても『楽しくしなければ』という気持ちになりがちで、ましてや『戦争の話』はタブーと捉えるスタッフもいる。
この本は、戦争を生き残り高齢者となったクライアントとの関わりや、時代背景についても詳しく書かれているので、考えさせられることが多い。
音楽療法士は勿論だが、実際に介護の現場で働いている介護職員にも読んでもらいたい。
『あなた方がお世話をしている方々は、想像出来ないような辛く哀しい経験をしているんですよ』
最後に、佐藤氏のご活躍をこれからも陰ながら応援しております。