とても内容がたくさんあるので全部見るのに一ヶ月かかりました。
英語版・独語版の脚本が異なる2つの本編を作ったペキンパーにドイツ兵を題材にした事への真摯な取り組みを感じたし、独版を掘り起こしたキングレコードの着眼は素晴らしい。2つの本編があってまさに完全版と言え、戦闘シーンの見事な描写や鉄十字章を巡る確執のみならず、戦場で戦ったドイツ兵の心情を理解することができる。
Disc1の6種類の字幕は、この作品において心情を代弁する役割を持つ歌の翻訳が無いものがあったのは残念ですが、どれもそれぞれいいところがあるものでした。吹替はテレビ放映したのが抜粋なので、それ以外の部分は補助字幕です。
Disc2のメイキングを見ると、この3倍にも及ぶ撮影フィルムの中から試行錯誤の編集を経た作品であることが分かりました。ペキンパーは俳優の意見やアドリブも採り入れているので、字幕に関するいろいろな経緯があるのは最終的な台本が無いからなのかもしれないと思いました。また、ペキンパーとコバーンが来日したときにペキンパーが演出して作った日本のアパレルメーカーのCMの映像があって、スカした笑顔のコバーンがとても面白くて何度も見ました。
Disc3のドイツ公開版は、同じ映像なのに英語版とは違う意味の台詞を当てはめているところがあるのですが不思議と表情に合っています。ロシア人少年兵を逃がす場面、病院から帰ったのがシュタイナーの誕生日になっているところ(ここではケアンも笑顔です)、「境界線」ではなく自らの暗号名「ドナウ・ワルツ」になっているところなどが英語版と明らかに異なります。映像のクレジットにはドイツ人の名前が脚本のところにあり、ドイツ人の感覚がうかがえて面白かったです。歌詞は字句があまねく訳出されています。ドイツ語に吹替えたものですがコバーンをはじめ元の役者と声が似ていて違和感がありませんでした。インタビューでグロウナが吹替前にペキンパーが再編集を行ったことを話していますが、映像の編集も英語版と若干異なります。画質は冒頭は雨が降っているのが気になりますが、話に入ってからは気になりませんでした。色のコントラストが良く、ソ連とドイツの軍服の色の違いが英語版よりも分かりやすかったです。
ブックレットは、日・独の評論家や研究者による作品解説、邦題決定の経緯や日本公開時の話、ペキンパーとコバーンの来日時の話など盛りだくさんで、役者のバイオグラフィーにはノンクレジットのイゴール・ガロ(マイヤー少尉)も載っています。ロシア少年兵を表情と動作で良く演じた子役俳優も追ってくれたらなお良かったですが・・・。古い日本語ですが日本語台本があり、その下に記されている軍服や武器や背景の解説を読んでから作品を見ると一層楽しめると思います。
作品の内容についての感想ですが、利己主義者が上に立つと下の者が酷い目にあうということを思い知らされました。戦闘シーンが当時のことですから当然CGなど無いわけで、戦争は損壊しか生まない、戦場には行きたくないことがリアルに感じられました! また、戦地で尻込みするシュトランスキーを虚勢を張る貴族として揶揄する一方、勇敢に指揮を執っていたマイヤー少尉の胸には最初から鉄十字章が映っているのが痛快!
英語版とドイツ版では、エンディングの「幼いハンス」の歌が切れるところが異なります。ドイツ版では英語版よりも前の歌詞で切って、ハンスが成長して帰ってくる歌詞を待たずに「ハンス少年はもういない」で終わっている。英語版では帰ってきて、ドイツ版では帰ってこない結末になっているのが面白いなあと思いました。第二次世界大戦で多くの兵士の命を失ったドイツならではの編集ですね。
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