メアリー・ロバーツ・ラインハート(1958年死去)の看護婦探偵ヒルダ・アダムスシリーズの第2長編Haunted Lady(1942年)の新訳にして初完訳。既訳抄訳として、妹尾韶夫訳『おびえる女』(別冊宝石112号)がある。(未見)
本書はもっと早く読むつもりだったのだが、訳者あとがきを読むと、ヒラヤマ探偵文庫の『ミス・ピンカートン』(平山雄一訳)が勧められていた。訳者の指示は大事なので、長編第一作である『ミス・ピンカートン』(Miss Pinkerton 1932年)を先に読むことにして、どうにかこうにか入手して、そちらを読んでから本書にとりかかったので、ずいぶん遅くなってしまった。
第1探偵談中編『バックルの付いたバッグ』ではヒルダは29歳、第2探偵談中編『鍵のかかったドア』ではヒルダは30歳だった。
第3探偵談長編『ミス・ピンカートン』では、最後まで読んでも、ヒルダの年齢の記載は見当たらなかった。(見落としご容赦)
本書では、冒頭から38歳という年齢が出てくる。年齢に比して若く見え、天使のよう、というのがうりになっている。むろん、まだ独身で、風呂付きアパートに住んでいて、パットン警視の電話により依頼により仕事を引き受ける。その後依頼人本人からの電話があって、ヒルダ着任となる。
仕事は、表向きは病人(老人)の自宅での看護介護で、実質的には、侵入捜査員である。
本書では、かってロンドンの社交界を仕切ってきた資産家のミセス・フェアバンクス(夫は死去)が年老いて、孫娘ジャニスと一緒に住んでいるが、部屋に蝙蝠や蛇が入ってくると訴えて、捜査員の派遣を希望していると、孫から電話あり。ヒルダが看護婦兼警護員兼捜査員として、イライザ・フェアバンクスの邸宅に派遣されることになる。
イライザには長男と長女がいて、長男には妻がいるが、イライザとは不仲。長女は離婚していて、前夫との間の娘がジャニスである。前夫には新妻がいて、新妻はジャニスの元家庭教師。彼女もイライザと不仲。こんな中で、ヒルダの警備にも関わらず、ある晩、イライザは自室で刺殺されてしまう。
私的感想
〇他の三作はヒルダの一人称で書かれていたが、本書は三人称で書かれている。しかし、大部分がヒルダの一人称的三人称なので、他作品との間に大きな違いはない。一部、警察の捜査に関する部分で、パットン警視の一人称的三人称にする必要があって、この形式にしたと思われる。
〇『バックルの付いたバッグ』では、ヒルダが貧民アパートに捜査に行くというアウトドア的展開もあったが、他の作品はほぼ、ヒルダが付き添い看護婦として派遣された邸宅内でのストーリー展開で終わってしまう。こうなると、長編では、家庭内に複雑な人間関係をつくる必要があり、そうやっても、結局は本人の死(つまり遺言状)で利益を得る者という問題となって、(いろいろ努力はしているが)似たような展開になってしまう。第1長編と第2長編の間が約10年で、その後長編が書かれなかったのは、そういうことかなと思う。
〇第1長編では、ヒルダは刑法上の間接正犯の故意なき過失なき道具役(犯人が毒にすり替えた薬を、薬のままと信じて患者に注射し・・)を振られてしまい、第2長編でも被害者の周囲の監視と警護を命じられながら、むざむざと死なせてしまう。これはいかにも「もし、わたしが知ってさえいたらHad I But Known=HIBK」的展開であるが、2長編ともあまりそういう印象はない。一応、普通の本格ミステリーである。
〇本作品では、犯人の隠し方はなかなか上手と思う。アリバイトリックも小粒だが、面白い。動機はわかりにくいというべきか、説得力がやや低いというべきか。
〇本書で展開される家族内のどろどろの人間関係、愛憎関係自体はなかなか面白い。しかし、どうしてこういう人間関係になってしまうのかという点で説得力に乏しい(つまり、そんなにいがみ合い憎み合う理由があるのか)
〇その他、不自然な展開が多少ある。
〇ヒルダ・アダムスという女性の人間的魅力については、プロフェッショナルとして成熟したと解すべきか。私としては、第1中編、第2中編の三十前後の頃を気に入っている。
私的結論
〇充分面白い40年代本格ミステリー。
〇ヒラヤマ探偵文庫『ミス・ピンカートン』訳者あとがきによると、ヒルダ・アダムスシリーズには、The Secret(1943年)という中編があるらしい。読みたい!
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憑りつかれた老婦人 (論創海外ミステリ247) 単行本 – 2020/3/6
M・R・ラインハート
(著),
金井真弓
(翻訳)
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閉め切った部屋に出没する蝙蝠の謎。それは老婦人の妄想か?パットン警視の要請により看護婦探偵ミス・ピンカートンが調査に乗り出す!
- 本の長さ320ページ
- 言語日本語
- 出版社論創社
- 発売日2020/3/6
- 寸法18.8 x 12.8 x 2.5 cm
- ISBN-104846018997
- ISBN-13978-4846018993
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
閉め切った部屋に出没する蝙蝠の謎、それは老婦人の妄想か?パットン警視の要請により看護婦探偵ミス・ピンカートンが調査に乗り出す!
著者について
M・R・ラインハート 1876-1958 本名メアリー・ロバーツ・ラインハート。 アメリカ、ペンシルベニア州ピッツバーグ生まれ。 1896年に医師と結婚。1903年に株式市場不況の影響で生活が苦しくなり、 家計を助けようと短編小説を書き始める。 迫りくる恐怖を読者に予感させるサスペンスの技法には定評があり、〈HIBK(もしも知ってさえいたら)〉派の創始者とも称された。 晩年まで創作意欲は衰えず、The Swimming Pool(52)はベストセラーとなり、 短編集The Frightened Wife(53)でアメリカ探偵作家クラブ特別賞を受賞。 代表作の『螺旋階段』(08)は『バット』(31)のタイトルで戯曲化されている。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ラインハート,M.R.
1876‐1958。本名メアリー・ロバーツ・ラインハート。アメリカ、ペンシルベニア州ピッツバーグ生まれ。1896年に医師と結婚。1903年に株式市場不況の影響で生活が苦しくなり、家計を助けようと短編小説を書き始める。“HIBK(もしも知ってさえいたら)”派の創始者とも称された。晩年まで創作意欲は衰えず、短編集The Frightened Wife(53)でアメリカ探偵作家クラブ特別賞を受賞
金井/真弓
翻訳家、大学非常勤講師。千葉大学大学院人文社会科学研究科修士課程修了。大妻女子大学大学院人間文化研究科博士課程満期退学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1876‐1958。本名メアリー・ロバーツ・ラインハート。アメリカ、ペンシルベニア州ピッツバーグ生まれ。1896年に医師と結婚。1903年に株式市場不況の影響で生活が苦しくなり、家計を助けようと短編小説を書き始める。“HIBK(もしも知ってさえいたら)”派の創始者とも称された。晩年まで創作意欲は衰えず、短編集The Frightened Wife(53)でアメリカ探偵作家クラブ特別賞を受賞
金井/真弓
翻訳家、大学非常勤講師。千葉大学大学院人文社会科学研究科修士課程修了。大妻女子大学大学院人間文化研究科博士課程満期退学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 論創社; 四六版 (2020/3/6)
- 発売日 : 2020/3/6
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 320ページ
- ISBN-10 : 4846018997
- ISBN-13 : 978-4846018993
- 寸法 : 18.8 x 12.8 x 2.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 992,164位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
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- - 21,617位英米文学研究
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