ずいぶん昔になるが、新聞に掲載されていた書評を読み興味を持ったことがあったが、そのまま忘れさっていた本書『悪童日記』を、Amazonで見つけたので入手して読むことにした。
第二次大戦末期、ハンガリーの片田舎の村に疎開した双子の少年が「ぼくたち」と語りながら始まる日記として、著者は本書を構成している。
著者A・クリストフは、もともとフランス語を習得したのが二十代にはいってからだからこその涸れた簡潔な文章(訳者の解説で知った)で、一章一章が完結しながストーリーは続いて行く。
訳者の堀茂樹氏巻末の解説で、「死、安楽死、性行為、孤独、労働、貧富、飢え、あるいはまたエゴイズム、サディスム、いじめ、暴力、悪意、さらには戦争、占領、民族差別、強制収容所、計画的集団殺戮など、普遍的なものであれ、歴史的色彩の濃いものであれ、シリアスな問題が物語の随所に仕込まれている。」
と、記述していたが、まさにこれら不条理で倫理感の欠片もないエピソード満載で「ぼくたち」が語り続ける。
が、この双子にたいしてなぜか嫌悪感をもたずに読み進ませてくれるのが、著者のなまじの才能の持ち主ではない所以である。
著者10歳のときの戦時下ハンガリーでの記憶なども背景にあることは紛れもない事実なのだろうが、著者A・クリストフは、今日、当時のことを「かなり幸福な子供時代だった」と回顧し、「むしょうに懐かしい」と言っているそうである。
子ども時代の辛い思い出も時が過ぎると「懐かしく」思いだすことは、だれしも一つや二つは覚えがあるだろう。
ネタバレになるから、ここでは書くことをやめておきますが、あっけなく終える、この日記の最期には、多くの読者が衝撃を受けることだけは間違いない。
このユニークな作家の本書続編『ふたりの証拠』『第三の嘘』も読みたくなりながら本書を読み終えたのです。
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