ずいぶん昔になるが、新聞に掲載されていた書評を読み興味を持ったことがあったが、そのまま忘れさっていた本書『悪童日記』を、Amazonで見つけたので入手して読むことにした。
第二次大戦末期、ハンガリーの片田舎の村に疎開した双子の少年が「ぼくたち」と語りながら始まる日記として、著者は本書を構成している。
著者A・クリストフは、もともとフランス語を習得したのが二十代にはいってからだからこその涸れた簡潔な文章(訳者の解説で知った)で、一章一章が完結しながストーリーは続いて行く。
訳者の堀茂樹氏巻末の解説で、「死、安楽死、性行為、孤独、労働、貧富、飢え、あるいはまたエゴイズム、サディスム、いじめ、暴力、悪意、さらには戦争、占領、民族差別、強制収容所、計画的集団殺戮など、普遍的なものであれ、歴史的色彩の濃いものであれ、シリアスな問題が物語の随所に仕込まれている。」
と、記述していたが、まさにこれら不条理で倫理感の欠片もないエピソード満載で「ぼくたち」が語り続ける。
が、この双子にたいしてなぜか嫌悪感をもたずに読み進ませてくれるのが、著者のなまじの才能の持ち主ではない所以である。
著者10歳のときの戦時下ハンガリーでの記憶なども背景にあることは紛れもない事実なのだろうが、著者A・クリストフは、今日、当時のことを「かなり幸福な子供時代だった」と回顧し、「むしょうに懐かしい」と言っているそうである。
子ども時代の辛い思い出も時が過ぎると「懐かしく」思いだすことは、だれしも一つや二つは覚えがあるだろう。
ネタバレになるから、ここでは書くことをやめておきますが、あっけなく終える、この日記の最期には、多くの読者が衝撃を受けることだけは間違いない。
このユニークな作家の本書続編『ふたりの証拠』『第三の嘘』も読みたくなりながら本書を読み終えたのです。
悪童日記 (ハヤカワepi文庫) (日本語) 文庫 – 2001/5/1
アゴタ クリストフ
(著)
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本の長さ301ページ
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言語日本語
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出版社早川書房
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発売日2001/5/1
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ISBN-104151200029
-
ISBN-13978-4151200021
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商品の説明
商品説明
ハンガリー生まれのアゴタ・クリストフは幼少期を第二次大戦の戦禍の中で過ごし、1956年には社会主義国家となった母国を捨てて西側に亡命している。生い立ちがヨーロッパ現代史そのものを体現している女性である。彼女の処女小説である本作品も、ひとまずは東欧の現代史に照らして読めるが、全体のテイストは歴史小説というよりはむしろエンターテインメント性の強い「寓話」に近い。
そもそもこの小説には人名や地名はおろか、固有名詞はいっさい登場しない。語り手は双子の兄弟「ぼくら」である。戦禍を逃れ、祖母に預けられた「ぼくら」は、孤立無援の状況の中で、生き抜くための術を一から習得し、独学で教育を身につけ、そして目に映った事実のみを「日記」に記していく。彼等の壮絶なサバイバル日記がこの小説なのである。肉親の死に直面しても動じることなく、時には殺人をも犯すこの兄弟はまさに怪物であるが、少年から「少年らしさ」の一切を削ぎ落とすことで、作者は極めて純度の高い人間性のエッセンスを抽出することに成功している。彼らの目を通して、余計な情報を極力排し、朴訥(ぼくとつ)な言葉で書かれた描写は、戦争のもたらす狂気の本質を強く露呈する。
凝りに凝ったスタイル、それでいて読みやすく、先の見えない展開、さらに奥底にはヨーロッパの歴史の重みをうかがわせる、と実に多彩な悦びを与えてくれる作品である。続編の『証拠』『第三の嘘』も本作に劣らない傑作である。(三木秀則)
そもそもこの小説には人名や地名はおろか、固有名詞はいっさい登場しない。語り手は双子の兄弟「ぼくら」である。戦禍を逃れ、祖母に預けられた「ぼくら」は、孤立無援の状況の中で、生き抜くための術を一から習得し、独学で教育を身につけ、そして目に映った事実のみを「日記」に記していく。彼等の壮絶なサバイバル日記がこの小説なのである。肉親の死に直面しても動じることなく、時には殺人をも犯すこの兄弟はまさに怪物であるが、少年から「少年らしさ」の一切を削ぎ落とすことで、作者は極めて純度の高い人間性のエッセンスを抽出することに成功している。彼らの目を通して、余計な情報を極力排し、朴訥(ぼくとつ)な言葉で書かれた描写は、戦争のもたらす狂気の本質を強く露呈する。
凝りに凝ったスタイル、それでいて読みやすく、先の見えない展開、さらに奥底にはヨーロッパの歴史の重みをうかがわせる、と実に多彩な悦びを与えてくれる作品である。続編の『証拠』『第三の嘘』も本作に劣らない傑作である。(三木秀則)
内容(「BOOK」データベースより)
戦争が激しさを増し、双子の「ぼくら」は、小さな町に住むおばあちゃんのもとへ疎開した。その日から、ぼくらの過酷な日々が始まった。人間の醜さや哀しさ、世の不条理―非情な現実を目にするたびに、ぼくらはそれを克明に日記にしるす。戦争が暗い影を落とすなか、ぼくらはしたたかに生き抜いていく。人間の真実をえぐる圧倒的筆力で読書界に感動の嵐を巻き起こした、ハンガリー生まれの女性亡命作家の衝撃の処女作。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
クリストフ,アゴタ
1935年ハンガリー生まれ。1956年のハンガリー動乱の折りに西側に亡命して以来、スイスのヌーシャテル市に在住している。1986年にパリのスイユ社から世に送り出したフランス語の処女小説の本書によって一躍脚光を浴びた。その後、続篇にあたる『ふたりの証拠』(88)『第三の嘘』(91)を発表して三部作を完成させ、力量ある第一級の作家としての地位を確立した
堀/茂樹
1952年生、フランス文学者、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1935年ハンガリー生まれ。1956年のハンガリー動乱の折りに西側に亡命して以来、スイスのヌーシャテル市に在住している。1986年にパリのスイユ社から世に送り出したフランス語の処女小説の本書によって一躍脚光を浴びた。その後、続篇にあたる『ふたりの証拠』(88)『第三の嘘』(91)を発表して三部作を完成させ、力量ある第一級の作家としての地位を確立した
堀/茂樹
1952年生、フランス文学者、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2001/5/1)
- 発売日 : 2001/5/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 301ページ
- ISBN-10 : 4151200029
- ISBN-13 : 978-4151200021
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Amazon 売れ筋ランキング:
- 30,456位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 18位ハヤカワepi文庫
- - 40位フランス文学 (本)
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ベスト500レビュアー
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殿堂入りベスト10レビュアー
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"感情を定義する言葉は非常に漠然としている。その種の言葉の使用は避け、物象や人間や自分自身の描写、つまり事実の忠実な描写だけにとどめたほうがよい。"糸井重里がMOTHERシリーズでオマージュを捧げている事でも知られる、一人称複数形、具体的な名称や感情を排した"僕ら"による原題"大きなノートブック"の本書は著者によれば【子どもを書いた】との事だが、大人に向けて強い衝撃を与えてくれる。 個人的にも、世界中で、そして1995年の来日当時にも1ブームを起こしていた事は残念ながら知らなかったのですが。そういった前情報なしにサクサクとリズミカルに読み進めながら"これはすごい!"と慌てて検索し、スイスに亡命中の著者にとって他国語であるフランス語で書かれた【実質的なデビュー作】である事や三部作である事に再度びっくりしたり、また近年映画化されて話題になっていた事にも興味をひかれたり。https://m.youtube.com/watch?v=GG2Ay13J9TQ
多少陰鬱な描写はありますが、それも含めてハンガリー版"この世界の片隅に"あるいは"火垂るの墓"的な作品を探す誰か。あるいは戯曲的な、はたまた美少年2人組の"正義"に興味のある誰かにオススメ。素晴らしいです!
多少陰鬱な描写はありますが、それも含めてハンガリー版"この世界の片隅に"あるいは"火垂るの墓"的な作品を探す誰か。あるいは戯曲的な、はたまた美少年2人組の"正義"に興味のある誰かにオススメ。素晴らしいです!
ベスト500レビュアーVINEメンバー
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戦争を語る時になぜか日本人は「自己憐憫」の香りがあることが私は大嫌いだ。
それが本書には皆無だ。
それはもちろんハンガリーという国が歴史に翻弄され「負ける」ことや「戦う」ことに慣れた国民の生きざまを単なる「下地」にしている事からも伺える。
異常ともいえる歴史的背景の中で、もっと異常な生い立ちをせざるを得ない「ふたり」。
固有名詞は一切発せられず「ぼくら」としか表現されない彼らの底知れぬ狂気と才気。
異常なほど冷淡で異常なほど冷酷で異常なほど自己確立が早く自立した「ぼくら」が魔女と呼ばれる祖母に育てられながらあらゆる能力を自力で訓練して獲得していく成長譚とも読める。
私が憧れにも近い感情を抱いたのは彼らの「断る能力」。
ぼくらは自分たちでできますから必要ありません、という描写が何度出てくるだろう。
強烈な時代のなかでからからに乾いた子供時代が芳醇に感じる。
極めて稀な小説。
続編を読むことが楽しみで仕方ない。
それが本書には皆無だ。
それはもちろんハンガリーという国が歴史に翻弄され「負ける」ことや「戦う」ことに慣れた国民の生きざまを単なる「下地」にしている事からも伺える。
異常ともいえる歴史的背景の中で、もっと異常な生い立ちをせざるを得ない「ふたり」。
固有名詞は一切発せられず「ぼくら」としか表現されない彼らの底知れぬ狂気と才気。
異常なほど冷淡で異常なほど冷酷で異常なほど自己確立が早く自立した「ぼくら」が魔女と呼ばれる祖母に育てられながらあらゆる能力を自力で訓練して獲得していく成長譚とも読める。
私が憧れにも近い感情を抱いたのは彼らの「断る能力」。
ぼくらは自分たちでできますから必要ありません、という描写が何度出てくるだろう。
強烈な時代のなかでからからに乾いた子供時代が芳醇に感じる。
極めて稀な小説。
続編を読むことが楽しみで仕方ない。
2019年6月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私の高校時代には、どうしようもない悪鬼・悪童共が、群雄割拠してのさばり、校内外をガンつけながら、うろついていたものである。
まったく自慢にならないが言わずと知れたヤンキー校であり、今尚、近隣住民の皆様には迷惑をかけ続けているだろう。
そんな悪童共と三年間を共存した私は、必要に駈られて彼らの生活、生態、趣味趣向を授業よりも必死に勉強し、最早プロフェッショナルに近い悪童観察眼の持ち主である。
さて、物語上の悪童日記の筆者は、自らの生活を文面に残すという悪童らしからぬ驚愕の生態を持つ。これは異例である。亜種である。いや希少種とも言える。
この時点で知能指数が高そうに見えるが、実際天才的な頭の良さを持ち、向上心が高く、さらに働き者である。そして黄金の精神を持つ。
我が旧友共との接点は、男前であり、(平均を私とする)常に痛みに慣れる訓練をしている事ぐらいであった。(肩パン)
筆者は知力 体力 精神力どれをとっても常人より優れた完璧超人である。まさにラノベ。人生イージーモード。まるで私の妄想のような強者設定である…
そんな筆者の凡人には理解不能な生態を書き記し、世界的名書と言える悪童日記。
一読の価値あり!
まったく自慢にならないが言わずと知れたヤンキー校であり、今尚、近隣住民の皆様には迷惑をかけ続けているだろう。
そんな悪童共と三年間を共存した私は、必要に駈られて彼らの生活、生態、趣味趣向を授業よりも必死に勉強し、最早プロフェッショナルに近い悪童観察眼の持ち主である。
さて、物語上の悪童日記の筆者は、自らの生活を文面に残すという悪童らしからぬ驚愕の生態を持つ。これは異例である。亜種である。いや希少種とも言える。
この時点で知能指数が高そうに見えるが、実際天才的な頭の良さを持ち、向上心が高く、さらに働き者である。そして黄金の精神を持つ。
我が旧友共との接点は、男前であり、(平均を私とする)常に痛みに慣れる訓練をしている事ぐらいであった。(肩パン)
筆者は知力 体力 精神力どれをとっても常人より優れた完璧超人である。まさにラノベ。人生イージーモード。まるで私の妄想のような強者設定である…
そんな筆者の凡人には理解不能な生態を書き記し、世界的名書と言える悪童日記。
一読の価値あり!
2021年2月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
なんと悪辣、非情、猥褻な主人公だろう。かつてはトム・リプリーという悪漢ヒーローがいたが、そのジュブナイル版みたいな魅力的で冷酷な双子の子供。規制の道徳観から言えば、これ以上ないくらいの悪童なのに、自分たち独自の倫理観にのっとって容赦なく行動する双子は、読者に爽快感を与えずにはおかない。
なんといっても、疎開児童である双子の子供という着想がユニークで素晴らしい。戦時下という非常事態に、ひとりではなく常に二人で同じ行動をしていると読者に読み取らせることで、彼らの残酷さも非道さも妙に納得させられてしまう。それほどこの「僕ら」という語りはパワフルで奇妙な説得力を持っているのだ。
この双子の主人公は、規制の道徳観に収まりきらないいっぽうで、人間的な側面を彼ら独自の形で表現する圧倒的な他者性を具現している。そして、他の登場人物も多面的な側面を持ち、いっぽうで人間性を、他方で無情な側面を併せ持っているにすぎないのだが、この双子は彼らを容赦なく断罪する。
ただ、生き残ることを念頭に、双子たちは恐るべき成長を遂げていく。ここには善も悪もなく、神も運命もなく、愛も道も正義もない。読者は彼らに後れを取ることなく、その天才を、即興を、訓練を、そして時に異様とも思える決定を見守るばかりだ。
(たまたま、本書の直前に、江藤淳の「妻と私」(良作)を読んでいた。それが、なぜ「悪童日記」と出会うことになったのかわからない。というのも、その著書に垣間見える江藤淳自身の姿と、本作で描かれる双子は、どちらも母不在の物語の主人公でありながら、まさに180度対極にあるように思われたからである。)
なんといっても、疎開児童である双子の子供という着想がユニークで素晴らしい。戦時下という非常事態に、ひとりではなく常に二人で同じ行動をしていると読者に読み取らせることで、彼らの残酷さも非道さも妙に納得させられてしまう。それほどこの「僕ら」という語りはパワフルで奇妙な説得力を持っているのだ。
この双子の主人公は、規制の道徳観に収まりきらないいっぽうで、人間的な側面を彼ら独自の形で表現する圧倒的な他者性を具現している。そして、他の登場人物も多面的な側面を持ち、いっぽうで人間性を、他方で無情な側面を併せ持っているにすぎないのだが、この双子は彼らを容赦なく断罪する。
ただ、生き残ることを念頭に、双子たちは恐るべき成長を遂げていく。ここには善も悪もなく、神も運命もなく、愛も道も正義もない。読者は彼らに後れを取ることなく、その天才を、即興を、訓練を、そして時に異様とも思える決定を見守るばかりだ。
(たまたま、本書の直前に、江藤淳の「妻と私」(良作)を読んでいた。それが、なぜ「悪童日記」と出会うことになったのかわからない。というのも、その著書に垣間見える江藤淳自身の姿と、本作で描かれる双子は、どちらも母不在の物語の主人公でありながら、まさに180度対極にあるように思われたからである。)
ベスト1000レビュアーVINEメンバー
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「読んでから見るか、見てから読むか」
40年ぐらい前、角川映画のキャッチコピーとなりました。
この『悪童日記』も2013年にドイツ・ハンガリー合作映画があります。
私は先に映画の「悪童日記」を観ました。稀有な映像展開が数多くあり感動したしだいです。
映画の原作となる小説があるということで早速読んでみました。
どうしても映画との比較になってしまいますが、
映像には表現出来なかった展開部が数多くあり、映画も含めて本作品の素晴らしさを知ったところです。
著者はアゴタ・クリストフというハンガリー生まれの女性作家で西側に亡命した経歴があります。
女性の視点から祖国ハンガリー現代史を眺めるとともに祖国愛も感じるところです。
また、作品自体は女性特有の母性を感じる作風が特徴かと思います。
美少年の双子の成長記録のようなものですが、時には正義感溢れる行動をとったり、
幼少であるが許される残酷な行為に走ってしまう物語展開には時の経つのを忘れてしまいます。
私は映画からでしたが、是非とも小説を読んで、映画も観てください。
40年ぐらい前、角川映画のキャッチコピーとなりました。
この『悪童日記』も2013年にドイツ・ハンガリー合作映画があります。
私は先に映画の「悪童日記」を観ました。稀有な映像展開が数多くあり感動したしだいです。
映画の原作となる小説があるということで早速読んでみました。
どうしても映画との比較になってしまいますが、
映像には表現出来なかった展開部が数多くあり、映画も含めて本作品の素晴らしさを知ったところです。
著者はアゴタ・クリストフというハンガリー生まれの女性作家で西側に亡命した経歴があります。
女性の視点から祖国ハンガリー現代史を眺めるとともに祖国愛も感じるところです。
また、作品自体は女性特有の母性を感じる作風が特徴かと思います。
美少年の双子の成長記録のようなものですが、時には正義感溢れる行動をとったり、
幼少であるが許される残酷な行為に走ってしまう物語展開には時の経つのを忘れてしまいます。
私は映画からでしたが、是非とも小説を読んで、映画も観てください。
2020年2月24日に日本でレビュー済み
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翻訳表題に違和感を覚えます。訳者は逆説的に「悪童」と訳したようですが、表題は読者が本を手に取る時に重要な要素となるので、できるだけ原文に忠実であるべきかと思います。
双子のそれぞれの「顔」が見えないということが感じられますが、最後に双子を別れさせるため、本来は一人の主人公を双子にした作者の意図を感じます。作者のハンガリーへの想い、他国に蹂躙されてきた歴史の中で、民族のアイデンティティを守るしたたかさを作者は双子に託したように感じました。双子を別れさせた作者の意図は、作者自身がハンガリーを出国し、スイスで居住するわけですが、肉体はハンガリーの外にあっても、精神的にはハンガリーに留まりたかったという作者の気持ちを背景として考えてしまいました。
双子のそれぞれの「顔」が見えないということが感じられますが、最後に双子を別れさせるため、本来は一人の主人公を双子にした作者の意図を感じます。作者のハンガリーへの想い、他国に蹂躙されてきた歴史の中で、民族のアイデンティティを守るしたたかさを作者は双子に託したように感じました。双子を別れさせた作者の意図は、作者自身がハンガリーを出国し、スイスで居住するわけですが、肉体はハンガリーの外にあっても、精神的にはハンガリーに留まりたかったという作者の気持ちを背景として考えてしまいました。