「シバラマ」=「クソ馬鹿」などの意。あるいは、もっと汚い言葉。
主人公は、口をひらけば「シバラマァ」といって小突く、平手打ちする、殴る、蹴るといった暴力をふるう。
「暴力」でしか自分の感情を表現することができない男。
父親の暴力で家族がめちゃくちゃになり、自分自身も暴力に震えていた幼少期。
それなのに、現在の自分の仕事が暴力と直結しているというカルマ。
この映画に別名をつけるとするならば
『暴力の呪い。連鎖。螺旋。』
このあたりだろう。
この男は気に入らないことがあれば、
いつでも、だれであろうと殴りかかる毎日。
そんな中、ひとりの女子高生と出会う。
二人は口をひらけば憎まれ口を言い合う。
次第に二人は惹かれあっていくのだが....。
しかし、二人にとんでもない因縁があることを二人は知らない。
そして、悲しい共通点があることを二人は知らない。知る由も無い。
「親孝行しろよ」男が放った一言が、
それぞれの心中にまさに別の意味で刺さっているように私には見えた。
二人の家庭にある秘密をそれぞれが知らないからこそ、
ギリギリ保たれている非常にアンバランスな、この二人の関係。
ポイントは、この登場人物たちが持っている家庭内事情や秘密を、
全て知りうるのは、観客である我々だけなのだ。まさに現実のこの世と同じかもしれない。
登場人物がそれぞれ持っている点と点。
それを我々の視点で繋ぐ。
そのときに涙腺が崩壊する。
言葉にできない体験をする。
息もできないほど泣くしかない。
これこそ映画の醍醐味であると思う。
見どころとしては、
男がこの映画の中で1度だけ声を出して屈託無く笑い、嗚咽しながら泣き、きちんと言葉にして謝罪する。
そのシーンがどんな意味を持つのか答えはまだ出ていない。
もう一度見よう。
これからまた何度も見るだろう。
生涯に残る名作。
絶対に見るべき。
絶対におすすめ。