タイトルや表紙はいかにも怪談っぽいのですが、内容は歴史物です。娯楽寄りの郷土史といえば伝わるでしょうか。
良くも悪くも娯楽作品なので、史料批判などは期待できません。というより、同時代史料にあたっているのかどうかも怪しい。それでも、(明治維新後に語られた)戦国時代の伝説をまとめた本としてなかなかの読み応えはあります。複数の学説を並列して立体的に史実を明らかにしようとしているところもあります。
問題は筆者独自の解釈がつづられる後半で、空想が度を超えているように感じました。
伝説に形状不明の釜が出て来るのですが、「中華鍋を伏せた形だと思う。なぜなら、執筆中に通りがかったその山に中華鍋を伏せた形の雲がかかっていたからだ」というくだりがあり(実際には理由はあとがきに書かれているので、こういう書き方ではありませんが)、さすがに冷めてしまいました。
こう書くとトンデモっぽいのですが、歴史マニアの問わず語りのような名調子もあり、少なくとも前半は読み応えがあります。当時の考え方を無視して妙に「合理的」に描かれることの多い戦国史のオルタナティブとして、こういう作品がもっと増えてもよいと思います。
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