「 本書は、大学生に新しい物の見方を紹介する目的で、
ケンブリッジ大学出版局が企画したシリーズの一冊です。
本書を書きはじめたとき、
わたしは何を伝えるべきか、かなりはっきりした考えをもっていました。
わたしの知る限りでは、
欧米の研究書の大部分、そして教え子の学生たちが目にする一般書のほとんどが、
中国史における女性の位置について大きな誤解が生じるような書き方をしていました。
このような誤解は、
ひとつには、中国の家族制度のもつダイナミクス、
なかでも妻と母に与えられた特権と、
上流家族の娘に付された価値についての無知からくるものです。
もうひとつは、
明清王朝が家族の形成に積極的で細心の注意を払い、
家族の価値を維持しようとしたことに、十分注意がむけられなかったことによります。
わたしは、
シャーロット・ファースが『被虐文体』と呼んだような、
纏足と納妾(のうしょう)制度とエキゾチックな妓女文化に光をあてた中国女性史に止めを刺す決心をしました 」
(スーザン・マン女史による、巻頭文「日本版への序」より)
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・・・この本の中でごった煮のように包括されている< 性的なもの >というのは、
ぶっちゃけて言えば、要は< エロいこと >です。
あの有名な纏足(てんそく=チャンジョオ。正しくは纏脚)から、
宦官(かんがん=チャングワン)、同性愛など、
少しでもエロいと思われた中国文化は全て俎上に載せられています。
さすが、
「 政治や法、医学、芸術、スポーツまで、西洋的概念では捉えきれない、
性の視点から見渡す伝統中国から近現代中国への変化 (帯の謳い文句)」
と謳っているだけはある本です。
収録されている逸話は、
レビュータイトルにも挙げた花木蘭(ホワムーラン)をはじめ、
どれも興味深くて面白いものばかりでした。
・
ところが、
これが著者であるスーザン女史の論考のパートに入ると、途端に難しくなります。
「 美の理想という観念はまた、
この技巧という観念から男性身体の優位を導きうる。
何人かの著者が指摘したように、
男性は自分の身体の欠陥を隠すために装ったり変形したりしないからだ。
したがって、美しい少年は、ありのままで美しいのだ。
彼らは紅や白粉や纏足ぬきで美しく、
月経による流血や出産による容色の衰えもない。
それに対して、美しく見える少女は、巧みに化粧しているだけのことかもしれないし、
たとえ本当に美しいとしても、その盛りはごく短い (中略)。
呉藻の戯曲をみると、
男性の女装 (中略) および女性の男装 (中略) の魅惑が、
演劇の基本理念であった劇的幻想の中にいかに浸透していたかがよくわかる。
その理論をつきつめてゆくと、すべての生物学上の女性は、
紅や白粉や纏足や耳飾りの穴をうがつことで『女装』していることが示唆される (中略)。
18世紀の小説『鏡花縁(きょうかえん)』は、
『女人国』に行った男性主人公が、
女性宮廷の熱心な官女たちの手で女性に改造される----そのため耐えがたい苦痛を味わう----という物語によって、
この考えを示してみせる。
身体と服装についての認識をめぐって
創作の中に示されたこのような流動的なジェンダーの境界は、
西欧のセクソロジー論の導入によって
消し去られてしまったセックス / ジェンダー・システムが存在していたことを示している 」
・
・・・ぶっちゃけジェンダー論なんかどうでもよく、
その主人公の男性が、大勢の女性たちによって
どのような肉体改造手術をされてしまったかのほうが気になってしまいました。 (;'Д`)ハァハァ
上記の文章を読んで< オレならイケる >という人は、
買っても大丈夫でしょうね。
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ところで、
上記の一文にも出てきた「美の理想」というものは、
この本の中では< エロいこと >以上に大事なキーワードなのですが、
自分の中国史関連のレビューを手伝ってくれている友人・同僚の中国人たち、
U(90后< ジョウリンホゥ >の女性、25歳)と、
S(80后< バーリンホゥ >の男性、33歳)にこの本をざっと見てもらい、
中国の「美の理想」を訊ねると、
< 中国では、世代間で趣味嗜好の認識が全く違うので、あれが美しい、これが美しいといったことは簡単には言えない >
・・・とのこと。
中国における世代間の文化の断絶は相当ひどいらしく、
このレビューを書いている時点での最も新しい世代である00后(リンリンホゥ)の趣味嗜好は、
80后や90后である彼ら・彼女らには理解できない部分が多いそうです。
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・
・・・以上。
この本、「原注」、「訳注」、「解説」、「参考文献」、「索引」だけでも
締めて52ページもありますから、この本のマジメぶりがわかるというものです。
また、定価で2800円もしますから、決してお安くありません。
読み手は確実に選ぶので、先述の< オレなら >という人以外は、
中古でお安くなってからのほうがいいです。
収録されている逸話自体は面白いですし、
あと、写真もわりと豊富なので、楽しめる部分はそこそこあります。
そういう意味では、そこそこオススメの本。
このレビューが参考になれば幸いです。 (*^ω^*)
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