ゲームプレイ済み、web書き下ろし短編も読了しました。以下長くゲーム・小説両方のネタバレを含む感想です。
ゲームでも七人ミサキは高知県の海の怪異の筈なのに、なぜか七人ミサキが出るのは海と無関係な旧校舎だしなぜかミサキのリーダーは来日していた旧約聖書のとある人物(デフォで日本語がとても堪能)など人間社会よりグローバル化する心霊現象に頭を痛めました。また、web短編でも10年前に亡くなった人物が生前LINEを使っているなど時系列に明らかな矛盾があり、正直小説版も嫌な予感しかしませんでした。しかしながら、ゲームプレイ前にKindle版を購入してしまったので毒食らわば皿までの根性で読んだのですがまあ酷いのなんの。
公式サイトでは「ゲームの続編!」と銘打っていたのでミサキリーダー来日の経緯とか涙歌の「呪いキャンセラ」の真相とか明かされるのかなぁ?という一縷の望みも絶たれました。詳細は後述しますが、要約すると「伏線丸投げしたまま新たな仲間やラスボスっぽいキャラ投入など風呂敷を広げたはいいもののそのまま打ち切りになった」です。
気になるその内容は登場人物が数行の間に言ったセリフと真逆の事を言うなんて矛盾はザラ、売りにしている「交渉」パートは全く盛り上がらず(七人ミサキのように交渉が必要な程強力な悪霊がそもそも出てこない)最後は「交渉決裂」を理由に生きた人間に対し全身が溶解するという恐ろしい呪いの力をぶつけているのでもう涙歌の方が悪質ですね。ゲームだと交渉パートはBGMやエフェクト素材に助けられ大いに盛り上がりますが、BGMやエフェクトの助けが無い小説では涙歌が交渉人ではなくただの強請り屋と化しており作者の描写力や演出力不足が大いに窺えます。
交渉パートの他は大して面白くも無い冗長な会話劇で内容はペラッペラ。ゲーム版より悪化しています。
涙歌の人間性が異常なのはゲームで承知していましたが、小説ではさらに悪い意味で磨きがかかり不快さがカンスト。昨今は敢えて主人公を不快にする作品もあるので別段気にはならなかったのですが、当然感情移入は全く出来ません。この時点で相当読者を選ぶ作品だと言えるでしょう。もっと悪質なのは涙歌が常識を疑う言動をする度に一々「これはカウンセリングではなく仕事なのだから〜」と涙歌の言動を正当化する為に、わざとらしく第三者視点の予防線を張って会話をブツ切りにする作者です。この文体のせいで「交渉力」を売りにする涙歌と人間&呪いとの交渉の内容が全然頭に入ってこない。あと予防線張るくらいなら涙歌をああいうキャラにするな。
さらに小説ではミサキ事件の話もほとんど出てこず涙歌の「呪いキャンセラ」の謎を始めとするメインキャラの掘り下げを全くと言っていいほど行っていません。その癖大して重要でない場面では作者が語りたくて仕方ないと思われる知識や蘊蓄をキャラがだらだら語り(キャラの言動と全く噛み合っておらず言わされてる感満載)尺を伸ばしてくるので非常にイライラします。そんでもって最後の事件はゲームと同じように変態教師が黒幕だったので「またかよ....」と作者の引き出しの少なさにがっかりしました。
頼みのイラストも画力が高いとは言い難いです。表紙以外のカットは全身と背景が描けないのか、全て顔面どアップ且つアングルが真正面でイラストに動きが全く無く、秒で飽きます。特に涙歌の部下である蒼兵やこがねちゃんに関してですが、小説においてこの2人のカット数はそこそこ多いのにも関わらず、描かれたのは全て首から上のみの証明写真のようなイラストで非常にシュールです。
他にも文中で何度も美人美人言われている涙歌の顔は全く可愛くないし、加えて作中で美大を調査するシーンがあるのですが、そこでは涙歌が高校生だとバレないように(制服姿の高校生が大学へ見学に来ることは良くあるので隠す必要性はあまり感じないのですが)といつもの制服を脱ぎ精一杯のお洒落をする描写があります。
文章では涙歌の服装について事細かく書かれていた(絵師に指示していた?)のに対し、美大捜査時のイラストはいつもの顔面アップ連発で終了。涙歌がどんな服装をしていたのか一切描かれないなど、文章とイラストが噛み合っていない箇所も見受けられました。
噛み合っていない部分で1番衝撃的だったのは、ゲームで中学生辺りかと思っていたこがねちゃんが7歳ということ....表紙絵だと7頭身くらいあるのでどんなにスタイルが良くても10歳以上の体型ですね。顔も涙歌達と同じく縦長なのであの絵で7歳児と判断するのはほぼ不可能でしょう。
ゲームは味のあるドット絵の操作がメインだったのでイラストは特に気にならなかったのですが、ドット絵が無い小説版だとイラストの違和感が否応なしに目に付き、この作品の読みにくさを助長しています。
3年経った今でも、ゲームも小説も続編音沙汰無し。ラノベは漫画と異なり打ち切りが読者に伝えられないそうですが、この空白期間を鑑みると涙歌は「打ち切り作品」と判断するのが妥当かと思われます。作者が「涙歌」のゲームシナリオ・ノベライズ双方を手掛けた時期には、並行して他社で連載されていた漫画の原作も手掛けていたため「作者が忙しくなったから続編が出ない」という線も薄いです。
そもそもネットはおろかツイッターで検索しても全然ヒットしない作品なので、ゲームDL数も小説の売り上げもその程度のものだったのでしょう。紙媒体は絶版になっているので読むには電子書籍しか方法が無いのですが、内容の酷さに激怒しても売ることができないのでおすすめしません。初めて買ったラノベがこんな内容且つ打ち切り作品だったため、星も付けたくないのが正直なところですが、世の中に面白いラノベは沢山あるはずだという希望を込めて評価を星1に致します。
最後に、大物黒幕っぽいビヨンドスコープ開発者さん。名前も貰えず放置されててかわいそー
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