(「訳者あとがき」より抜粋)
本書は、まったく新しいトラウマ解決のための本です。
「こころ」と「からだ」は本来つながっており、分けて考えることはできません。恐怖を感じたときに身体がきゅっと縮み上がったり、落ち込んだときに頭が重くなったり、悲しいときに胸が痛くなったり・・・といった体験は誰にでもあるのではないでしょうか。体調を崩し、医者にかかってもどこにも身体的な理由が見つからず、「精神的なストレスが原因でしょう」と言われたことがある人は多いでしょうし、学校へ行きたくない子どもが腹痛や頭痛を訴えるのもよくあることです。今日どれほど多くの人が「不定愁訴」や「心身症」といった、医学的な根拠のない身体の不調に苦しんでいることでしょう。
身体と心はこれほどまでに密接につながっているので、心を癒すときに身体の存在を無視することはできず、身体を癒すときに心のあり方を無視することは本来できないはずなのです。フロイトはすでに19世紀末に「ヒステリー」の研究を行い、心理的抑圧が身体症状に転換される例について詳細に述べています。しかし、彼の精神分析を含め、その後発展したさまざまな心理療法では、問題の解決策としてもっぱら「心」「意識」のみに焦点を当ててきました。心身のつながりを重視し、それを療法に取り入れる考え方は、米国の心理学界で30年ほど前からようやく徐々に広まり、ハコミセラピーやローゼンメソッド、バイオフィードバックといったさまざまな身体心理的アプローチが開発されるに至りました。こうした身体面から心理面にアプローチする心理学は一般に、ソマティック心理学と呼ばれています。Somaticの「Soma」とは、ギリシャ語が語源で、「生きている身体」を意味します。本書の著者ピーター・リヴァイン博士が開発したトラウマ療法メソッド、ソマティック・エクスペリエンス(SE)も、こうしたソマティック心理学の流ぁ�譴魑發鵑任い泙后���ぢ 本書でピーター・リヴァインは、トラウマというのは心理的、感情的な問題というもむしろ、一義的には身体的な(神経系の)問題であり、身体面を無視してトラウマの癒しはありえないということを豊富な実例と説得力ある理論づけで示しています。
真の変容と癒しは、記憶を何度も何度も掘り起こし、そこで起きた出来事を再体験することにより起こるのではなく、身体が発するメッセージに耳をかたむけ、そのプロセスを妨害しないことによって初めて可能になるのです。「癒しのプロセスは、劇的でなければないほど、またゆっくりと起これば起こるほどより効果的である」という彼の言葉は、トラウマを癒すためには苦しい過去の記憶に繰り返しさかのぼってつらい感情を吐き出さねばならないと思い込まされてきたトラウマ犠牲者たちにとっては大きな救いとなることでしょう。
アメリカで注目を集める最新のトラウマ・セラピー“ソマティック・エクスペリエンス”。生理学、神経科学、動物行動学などを通じて、有機体としての身体にアプローチする、これまでになかったトラウマ理論。
著者について
ピーター・リヴァイン[Peter A.Levine]
医学生物物理学博士、心理学博士。身体をベースにしたトラウマ治療法であるソマティック・エクスペリエンス(SE)の創始者であり、「人間の豊かさのための財団(Foundation for Human Enrichment)」理事長として、世界各国で心理療法士、ソーシャルワーカー、看護師などを対象にSE療法家の養成にあたっている。35年にわたるトラウマとストレスの研究は、精神生理学ハンドブックのストレスに関する章を含む多くの科学、医学の出版物の刊行に貢献した。スペースシャトル開発時のNASAのストレス・コンサルタントを務め、アリゾナのホピ・ガイダンス・センターを含む世界中の病院、治療施設、ペインクリニックで教えている。
藤原千枝子[フジワラチエコ]
カリフォルニア州公認サイコセラピスト。臨床心理士、ソマティック・エクスペリエンス認定プラクティショナー。大阪大学人間科学部卒。新聞記者を経て、サンフランシスコのカリフォルニア統合学研究所(California Institute of Integral Studies)にてカウンセリング心理学修士課程修了。現在は札幌市でプレマカウンセリングルームを主宰する傍ら、市内の中学高校でのスクールカウンセリング、トラウマに苦しむ女性のためのグループセラピーなどを行っている。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
リヴァイン,ピーター
医学生物物理学博士、心理学博士。身体をベースにしたトラウマ治療法であるソマティック・エクスペリエンス(SE)の創始者であり、「人間の豊かさのための財団(Foundation for Human Enrichment)」理事長として、世界各国で心理療法士、ソーシャルワーカー、看護師などを対象にSE療法家の養成にあたっている。35年にわたるトラウマとストレスの研究は、精神生理学ハンドブックのストレスに関する章を含む多くの科学、医学の出版物の刊行に貢献した。スペースシャトル開発時のNASAのストレス・コンサルタントを務め、アリゾナのホピ・ガイダンス・センターを含む世界中の病院、治療施設、ペインクリニックで教えている
藤原/千枝子
カリフォルニア州公認サイコセラピスト。臨床心理士、ソマティック・エクスペリエンス認定プラクティショナー。大阪大学人間科学部卒。新聞記者を経て、サンフランシスコのカリフォルニア統合学研究所(California Institute of Integral Studies)にてカウンセリング心理学修士課程修了。現在は札幌市でプレマカウンセリングルームを主宰する傍ら、市内の中学高校でのスクールカウンセリング、トラウマに苦しむ女性のためのグループセラピーなどを行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)