伊吹先生の書く小説が大好きです。ストーリーの素晴らしさは勿論なんですが、何にそんなに惹かれるんだろうと考えていたんですが、登場人物の魅力、特に、男性が魅力的なんです。中でもこの「彼方の友へ」の有賀主筆が素敵すぎます。
ストーリーは、戦前から戦後にかけて主人公ハツが激動の時代を成長しながら生き抜いていく様を描いたもので、ぜひ朝ドラにして欲しい!!と思うお話です。心を動かされる場面は多すぎて書ききれませんが、有賀主筆から70年もの時を経て届いたラブレター、"Dear, Hatsuko. Sincerely yours. "にどうしようもないほど切なくなります。この言葉をどんな状況で、どんな思いで書いたのか。文庫版の巻末につけられた番外編での有賀主筆・・・そこから本編でのあの突然の電話につながり、その後、おそらく異国の地で書かれたであろう言葉。そのあたりの状況や気持ちを考えると、小説を読み終わってかなり時が経っているのに涙が出てきそうになります。
最初は図書館で借りて読了したのですが、その後、思わずアマゾンでポチッとしてしまいました。
この商品をお持ちですか?
マーケットプレイスに出品する

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません 。詳細はこちら
Kindle Cloud Readerを使い、ブラウザですぐに読むことができます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
彼方の友へ 単行本(ソフトカバー) – 2017/11/17
購入を強化する
第158回直木三十五賞ノミネート!
「友よ、最上のものを」
戦中の東京、雑誌づくりに夢と情熱を抱いて――
平成の老人施設でひとりまどろむ佐倉波津子に、
赤いリボンで結ばれた小さな箱が手渡された。
「乙女の友・昭和十三年 新年号附録 長谷川純司 作」。
そう印刷された可憐な箱は、70余年の歳月をかけて届けられたものだった――
戦前、戦中、戦後という激動の時代に、
情熱を胸に生きる波津子とそのまわりの人々を、
あたたかく、生き生きとした筆致で描く、著者の圧倒的飛躍作。
「溢れる涙をぬぐいもせず読みました」
「読み継がれるべき大切な小説」
「登場人物がみな魅力的で、読了後『彼方ロス』になってしまいました…」
……感動の声が続々と届いています!
実業之日本社創業120周年記念作品
本作は、竹久夢二や中原淳一が活躍した少女雑誌「少女の友」(実業之日本社刊)の存在に、
著者が心を動かされたことから生まれました。
「友よ、最上のものを」
戦中の東京、雑誌づくりに夢と情熱を抱いて――
平成の老人施設でひとりまどろむ佐倉波津子に、
赤いリボンで結ばれた小さな箱が手渡された。
「乙女の友・昭和十三年 新年号附録 長谷川純司 作」。
そう印刷された可憐な箱は、70余年の歳月をかけて届けられたものだった――
戦前、戦中、戦後という激動の時代に、
情熱を胸に生きる波津子とそのまわりの人々を、
あたたかく、生き生きとした筆致で描く、著者の圧倒的飛躍作。
「溢れる涙をぬぐいもせず読みました」
「読み継がれるべき大切な小説」
「登場人物がみな魅力的で、読了後『彼方ロス』になってしまいました…」
……感動の声が続々と届いています!
実業之日本社創業120周年記念作品
本作は、竹久夢二や中原淳一が活躍した少女雑誌「少女の友」(実業之日本社刊)の存在に、
著者が心を動かされたことから生まれました。
- 本の長さ448ページ
- 言語日本語
- 出版社実業之日本社
- 発売日2017/11/17
- ISBN-104408537160
- ISBN-13978-4408537160
この商品を買った人はこんな商品も買っています
ページ: 1 / 1 最初に戻るページ: 1 / 1
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
平成の老人施設でまどろむ佐倉波津子に、赤いリボンで結ばれた小さな箱が手渡された。「乙女の友・昭和十三年 新年号附録 長谷川純司 作」。そう印刷された可憐な箱は、70余年の歳月をかけて届けられたものだった。昭和初期から現在へ。雑誌の附録に秘められた想いとは―。
著者について
1969年三重県生まれ。中央大学法学部卒。出版社勤務を経て、2008年「風待ちのひと」(「夏の終わりのトラヴィアータ」改題)でポプラ社小説大賞・特別賞を受賞してデビュー。第二作『四十九日のレシピ』が大きな話題となり、テレビドラマ・映画化。『ミッドナイト・バス』が第27回山本周五郎賞、第151回直木三十五賞候補になる。このほかの作品に『なでし子物語』『Bar追分』『今はちょっと、ついてないだけ』『カンパニー』など。あたたかな眼差しと、映像がありありと浮かぶような描写力で多くのファンを持つ。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
伊吹/有喜
1969年三重県生まれ。中央大学法学部卒。出版社勤務を経て、2008年「風待ちのひと」(「夏の終わりのトラヴィアータ」改題)で第3回ポプラ社小説大賞・特別賞を受賞してデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1969年三重県生まれ。中央大学法学部卒。出版社勤務を経て、2008年「風待ちのひと」(「夏の終わりのトラヴィアータ」改題)で第3回ポプラ社小説大賞・特別賞を受賞してデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 実業之日本社 (2017/11/17)
- 発売日 : 2017/11/17
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 448ページ
- ISBN-10 : 4408537160
- ISBN-13 : 978-4408537160
- Amazon 売れ筋ランキング: - 281,506位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 3,978位歴史・時代小説 (本)
- - 9,294位日本文学
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
5つ星のうち4.4
星5つ中の4.4
82 件のグローバル評価
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。

1937年の東京。女学校を辞めて音楽私塾での女中奉公にいそしむ波津子は、ふとしたことから『乙女の友』編集部に雑用係の職を得る。不慣れな会社員生活。理解を示さない同僚。孤独感と辞意。それでも思いとどまることができたのは、幼馴染から譲り受けたフローラゲームのカードと『乙女の友』への熱い思いだ。それが、編集部員見習いとなるチャンスを呼び寄せて……。一方で戦局は熾烈を極め、1945年に向かって出版環境は厳しくなってゆく。運命を時局に左右されるは庶民の哀しき定め。だがそれが一度きりの人生の礎となるなら、懸命に生きるしかない。・マルチアーチスト・長谷川純二(中原純一)の表紙画と挿画を目いっぱい散りばめた『乙女の友』(『少女の友』)誌。長谷川の才能を見いだして大抜擢し、自らの詩へのイラストも任せた編集主筆、有賀憲一郎(内山基)。銀座にビルを構える大和之興業社(実業之日本社)社長と個性的な編集部員たち。川端康成や吉屋信子をモデルとした作家陣。愛読者の集い「友の会」(「友ちゃん会」)。そして昭和13年1月号附録・60枚の花占いカード『フローラゲーム』(『フラワーゲーム』)など、当時実在した華やかな世界観が本書全体に散りばめられている。一方で、楽しい誌面を世に送り出す労苦は並みのものではないことも理解できるようになる。・「泣いてはいけませぬ」ヒヤシンスのカードの「言の葉」に何度も心を奮い立たせる波津子。縁(よすが)とするものは大切だ。そして、この「言の葉」が繰り返される昭和20年の地獄絵図の展開(p402)には圧倒された。・子どもから大人になるわずかな期間、美しい夢や理想の世界に心を遊ばせる(p181)、「こんな時代だからこそ、少女たちには美しい夢を」(p111)、この有賀の信念は軍部や内務省の圧力を当初は跳ね除けるが……。・『フルーツポンチ大同盟』が抜擢される怒涛の展開(p196~)ではワクワク感を楽しめた。「すがる思いで美蘭を見る。美蘭が横を向いた」(p200)は新人作家にとっての厳しい現実だ。・有賀、社長、上里編集長の緊張しつつも、互いへの想いに溢れた「男の世界」も、本書の魅力を最大限に引き出している。「いや、ここにいる。君が先走ったことをしないと、確証が持てるまで」(p223)。うん、良い。・「永遠に慕い続ける思い」(p229)、有賀憲一郎への波津子の淡い思いも、本書が大切にするひとつだ。・やれなくても、やってやる!(p265)・東京大空襲による銀座の消失。それでも、希望を捨てないことの強さ(p382)。・「友へ、最上のものを」(p334) エピローグは涙が止まらない。勇気づけられるエピソード満載。「遅れてきたのですが、僕たちもまた『友』なのです」(p437)、最良を目指す精神は時代を超えて受け継がれる。この、読者に向けての著者のエールを胸に受け取り、感謝とともに書を閉じた。
このレビューの画像
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2021年2月17日に日本でレビュー済み
違反を報告する
Amazonで購入
4人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
ベスト1000レビュアー
Amazonで購入
1937年の東京。女学校を辞めて音楽私塾での女中奉公にいそしむ波津子は、ふとしたことから『乙女の友』編集部に雑用係の職を得る。不慣れな会社員生活。理解を示さない同僚。孤独感と辞意。それでも思いとどまることができたのは、幼馴染から譲り受けたフローラゲームのカードと『乙女の友』への熱い思いだ。それが、編集部員見習いとなるチャンスを呼び寄せて……。一方で戦局は熾烈を極め、1945年に向かって出版環境は厳しくなってゆく。
運命を時局に左右されるは庶民の哀しき定め。だがそれが一度きりの人生の礎となるなら、懸命に生きるしかない。
・マルチアーチスト・長谷川純二(中原純一)の表紙画と挿画を目いっぱい散りばめた『乙女の友』(『少女の友』)誌。長谷川の才能を見いだして大抜擢し、自らの詩へのイラストも任せた編集主筆、有賀憲一郎(内山基)。銀座にビルを構える大和之興業社(実業之日本社)社長と個性的な編集部員たち。川端康成や吉屋信子をモデルとした作家陣。愛読者の集い「友の会」(「友ちゃん会」)。そして昭和13年1月号附録・60枚の花占いカード『フローラゲーム』(『フラワーゲーム』)など、当時実在した華やかな世界観が本書全体に散りばめられている。一方で、楽しい誌面を世に送り出す労苦は並みのものではないことも理解できるようになる。
・「泣いてはいけませぬ」ヒヤシンスのカードの「言の葉」に何度も心を奮い立たせる波津子。縁(よすが)とするものは大切だ。そして、この「言の葉」が繰り返される昭和20年の地獄絵図の展開(p402)には圧倒された。
・子どもから大人になるわずかな期間、美しい夢や理想の世界に心を遊ばせる(p181)、「こんな時代だからこそ、少女たちには美しい夢を」(p111)、この有賀の信念は軍部や内務省の圧力を当初は跳ね除けるが……。
・『フルーツポンチ大同盟』が抜擢される怒涛の展開(p196~)ではワクワク感を楽しめた。「すがる思いで美蘭を見る。美蘭が横を向いた」(p200)は新人作家にとっての厳しい現実だ。
・有賀、社長、上里編集長の緊張しつつも、互いへの想いに溢れた「男の世界」も、本書の魅力を最大限に引き出している。「いや、ここにいる。君が先走ったことをしないと、確証が持てるまで」(p223)。うん、良い。
・「永遠に慕い続ける思い」(p229)、有賀憲一郎への波津子の淡い思いも、本書が大切にするひとつだ。
・やれなくても、やってやる!(p265)
・東京大空襲による銀座の消失。それでも、希望を捨てないことの強さ(p382)。
・「友へ、最上のものを」(p334) エピローグは涙が止まらない。
勇気づけられるエピソード満載。
「遅れてきたのですが、僕たちもまた『友』なのです」(p437)、最良を目指す精神は時代を超えて受け継がれる。この、読者に向けての著者のエールを胸に受け取り、感謝とともに書を閉じた。
運命を時局に左右されるは庶民の哀しき定め。だがそれが一度きりの人生の礎となるなら、懸命に生きるしかない。
・マルチアーチスト・長谷川純二(中原純一)の表紙画と挿画を目いっぱい散りばめた『乙女の友』(『少女の友』)誌。長谷川の才能を見いだして大抜擢し、自らの詩へのイラストも任せた編集主筆、有賀憲一郎(内山基)。銀座にビルを構える大和之興業社(実業之日本社)社長と個性的な編集部員たち。川端康成や吉屋信子をモデルとした作家陣。愛読者の集い「友の会」(「友ちゃん会」)。そして昭和13年1月号附録・60枚の花占いカード『フローラゲーム』(『フラワーゲーム』)など、当時実在した華やかな世界観が本書全体に散りばめられている。一方で、楽しい誌面を世に送り出す労苦は並みのものではないことも理解できるようになる。
・「泣いてはいけませぬ」ヒヤシンスのカードの「言の葉」に何度も心を奮い立たせる波津子。縁(よすが)とするものは大切だ。そして、この「言の葉」が繰り返される昭和20年の地獄絵図の展開(p402)には圧倒された。
・子どもから大人になるわずかな期間、美しい夢や理想の世界に心を遊ばせる(p181)、「こんな時代だからこそ、少女たちには美しい夢を」(p111)、この有賀の信念は軍部や内務省の圧力を当初は跳ね除けるが……。
・『フルーツポンチ大同盟』が抜擢される怒涛の展開(p196~)ではワクワク感を楽しめた。「すがる思いで美蘭を見る。美蘭が横を向いた」(p200)は新人作家にとっての厳しい現実だ。
・有賀、社長、上里編集長の緊張しつつも、互いへの想いに溢れた「男の世界」も、本書の魅力を最大限に引き出している。「いや、ここにいる。君が先走ったことをしないと、確証が持てるまで」(p223)。うん、良い。
・「永遠に慕い続ける思い」(p229)、有賀憲一郎への波津子の淡い思いも、本書が大切にするひとつだ。
・やれなくても、やってやる!(p265)
・東京大空襲による銀座の消失。それでも、希望を捨てないことの強さ(p382)。
・「友へ、最上のものを」(p334) エピローグは涙が止まらない。
勇気づけられるエピソード満載。
「遅れてきたのですが、僕たちもまた『友』なのです」(p437)、最良を目指す精神は時代を超えて受け継がれる。この、読者に向けての著者のエールを胸に受け取り、感謝とともに書を閉じた。

1937年の東京。女学校を辞めて音楽私塾での女中奉公にいそしむ波津子は、ふとしたことから『乙女の友』編集部に雑用係の職を得る。不慣れな会社員生活。理解を示さない同僚。孤独感と辞意。それでも思いとどまることができたのは、幼馴染から譲り受けたフローラゲームのカードと『乙女の友』への熱い思いだ。それが、編集部員見習いとなるチャンスを呼び寄せて……。一方で戦局は熾烈を極め、1945年に向かって出版環境は厳しくなってゆく。
運命を時局に左右されるは庶民の哀しき定め。だがそれが一度きりの人生の礎となるなら、懸命に生きるしかない。
・マルチアーチスト・長谷川純二(中原純一)の表紙画と挿画を目いっぱい散りばめた『乙女の友』(『少女の友』)誌。長谷川の才能を見いだして大抜擢し、自らの詩へのイラストも任せた編集主筆、有賀憲一郎(内山基)。銀座にビルを構える大和之興業社(実業之日本社)社長と個性的な編集部員たち。川端康成や吉屋信子をモデルとした作家陣。愛読者の集い「友の会」(「友ちゃん会」)。そして昭和13年1月号附録・60枚の花占いカード『フローラゲーム』(『フラワーゲーム』)など、当時実在した華やかな世界観が本書全体に散りばめられている。一方で、楽しい誌面を世に送り出す労苦は並みのものではないことも理解できるようになる。
・「泣いてはいけませぬ」ヒヤシンスのカードの「言の葉」に何度も心を奮い立たせる波津子。縁(よすが)とするものは大切だ。そして、この「言の葉」が繰り返される昭和20年の地獄絵図の展開(p402)には圧倒された。
・子どもから大人になるわずかな期間、美しい夢や理想の世界に心を遊ばせる(p181)、「こんな時代だからこそ、少女たちには美しい夢を」(p111)、この有賀の信念は軍部や内務省の圧力を当初は跳ね除けるが……。
・『フルーツポンチ大同盟』が抜擢される怒涛の展開(p196~)ではワクワク感を楽しめた。「すがる思いで美蘭を見る。美蘭が横を向いた」(p200)は新人作家にとっての厳しい現実だ。
・有賀、社長、上里編集長の緊張しつつも、互いへの想いに溢れた「男の世界」も、本書の魅力を最大限に引き出している。「いや、ここにいる。君が先走ったことをしないと、確証が持てるまで」(p223)。うん、良い。
・「永遠に慕い続ける思い」(p229)、有賀憲一郎への波津子の淡い思いも、本書が大切にするひとつだ。
・やれなくても、やってやる!(p265)
・東京大空襲による銀座の消失。それでも、希望を捨てないことの強さ(p382)。
・「友へ、最上のものを」(p334) エピローグは涙が止まらない。
勇気づけられるエピソード満載。
「遅れてきたのですが、僕たちもまた『友』なのです」(p437)、最良を目指す精神は時代を超えて受け継がれる。この、読者に向けての著者のエールを胸に受け取り、感謝とともに書を閉じた。
運命を時局に左右されるは庶民の哀しき定め。だがそれが一度きりの人生の礎となるなら、懸命に生きるしかない。
・マルチアーチスト・長谷川純二(中原純一)の表紙画と挿画を目いっぱい散りばめた『乙女の友』(『少女の友』)誌。長谷川の才能を見いだして大抜擢し、自らの詩へのイラストも任せた編集主筆、有賀憲一郎(内山基)。銀座にビルを構える大和之興業社(実業之日本社)社長と個性的な編集部員たち。川端康成や吉屋信子をモデルとした作家陣。愛読者の集い「友の会」(「友ちゃん会」)。そして昭和13年1月号附録・60枚の花占いカード『フローラゲーム』(『フラワーゲーム』)など、当時実在した華やかな世界観が本書全体に散りばめられている。一方で、楽しい誌面を世に送り出す労苦は並みのものではないことも理解できるようになる。
・「泣いてはいけませぬ」ヒヤシンスのカードの「言の葉」に何度も心を奮い立たせる波津子。縁(よすが)とするものは大切だ。そして、この「言の葉」が繰り返される昭和20年の地獄絵図の展開(p402)には圧倒された。
・子どもから大人になるわずかな期間、美しい夢や理想の世界に心を遊ばせる(p181)、「こんな時代だからこそ、少女たちには美しい夢を」(p111)、この有賀の信念は軍部や内務省の圧力を当初は跳ね除けるが……。
・『フルーツポンチ大同盟』が抜擢される怒涛の展開(p196~)ではワクワク感を楽しめた。「すがる思いで美蘭を見る。美蘭が横を向いた」(p200)は新人作家にとっての厳しい現実だ。
・有賀、社長、上里編集長の緊張しつつも、互いへの想いに溢れた「男の世界」も、本書の魅力を最大限に引き出している。「いや、ここにいる。君が先走ったことをしないと、確証が持てるまで」(p223)。うん、良い。
・「永遠に慕い続ける思い」(p229)、有賀憲一郎への波津子の淡い思いも、本書が大切にするひとつだ。
・やれなくても、やってやる!(p265)
・東京大空襲による銀座の消失。それでも、希望を捨てないことの強さ(p382)。
・「友へ、最上のものを」(p334) エピローグは涙が止まらない。
勇気づけられるエピソード満載。
「遅れてきたのですが、僕たちもまた『友』なのです」(p437)、最良を目指す精神は時代を超えて受け継がれる。この、読者に向けての著者のエールを胸に受け取り、感謝とともに書を閉じた。
このレビューの画像

2018年10月21日に日本でレビュー済み
「多くの雑誌が消えていく。あるいは我が手で幕を引いていく。時流に添えない罰のように。あるいは己が信念に殉ずるかのように。
だけど僕らは切腹も殉死もしない。生き残ることを選ぶ。なぜならこの雑誌は少女、乙女の友だからだ。たとえ荒廃した大地に置かれようと、女性はそれに絶望して死にはしない。一粒の麦、一握の希望、わずかな光でもそこに命脈がある限り…女たちはそれをはぐくみ、つなげていく。
未来へつなげていくことに光を見いだす。それが女性たちの力だ。僕らは男だけれど、女性にはそうした力があることを今だからこそ声を大にして伝えなければいけない。なぜなら彼女たちの声は今はあまりに小さく、あまりにか細い。この時代のなかで簡単に潰されてしまうから。」
私はこの主筆の言葉に奮えました。
そして大きな声で「ありがとうございます。言論統制が厳しい中、当時の乙女たちを励まし、照らし、支えてくれて本当にありがとうございます。」と感謝の気持ちを伝えたくなりました。
と同時に少し恥ずかしい気持ちにもなりました。
昭和、平成、その先へと時代が進むなか今の乙女たちは当時より立派に成長していると言えるでしょうか、私達は少しおバカさんになってしまっている気がします。
この先、これから生まれてくる彼方の友たちの未来が、さらに愚かな乙女の暮らす世になりませんようにと願うばかりです。
良い作品を読ませて頂きました。
伊吹有喜先生ありがとうございます。
ただ、有賀主筆のモデルとなった山内基主筆をなぜ戦死させたのか?
山内主筆が1988年まで生きておられたことを考えると、フィクションとは言えもっと違う設定にして欲しかった、個人的にはそう思いました。
最後に、アニー・ローリー検索して聞いてみました。
とてもキレイで素敵な曲で、プラットホームで歌う波津子の姿が目に浮かぶようでしさた。
だけど僕らは切腹も殉死もしない。生き残ることを選ぶ。なぜならこの雑誌は少女、乙女の友だからだ。たとえ荒廃した大地に置かれようと、女性はそれに絶望して死にはしない。一粒の麦、一握の希望、わずかな光でもそこに命脈がある限り…女たちはそれをはぐくみ、つなげていく。
未来へつなげていくことに光を見いだす。それが女性たちの力だ。僕らは男だけれど、女性にはそうした力があることを今だからこそ声を大にして伝えなければいけない。なぜなら彼女たちの声は今はあまりに小さく、あまりにか細い。この時代のなかで簡単に潰されてしまうから。」
私はこの主筆の言葉に奮えました。
そして大きな声で「ありがとうございます。言論統制が厳しい中、当時の乙女たちを励まし、照らし、支えてくれて本当にありがとうございます。」と感謝の気持ちを伝えたくなりました。
と同時に少し恥ずかしい気持ちにもなりました。
昭和、平成、その先へと時代が進むなか今の乙女たちは当時より立派に成長していると言えるでしょうか、私達は少しおバカさんになってしまっている気がします。
この先、これから生まれてくる彼方の友たちの未来が、さらに愚かな乙女の暮らす世になりませんようにと願うばかりです。
良い作品を読ませて頂きました。
伊吹有喜先生ありがとうございます。
ただ、有賀主筆のモデルとなった山内基主筆をなぜ戦死させたのか?
山内主筆が1988年まで生きておられたことを考えると、フィクションとは言えもっと違う設定にして欲しかった、個人的にはそう思いました。
最後に、アニー・ローリー検索して聞いてみました。
とてもキレイで素敵な曲で、プラットホームで歌う波津子の姿が目に浮かぶようでしさた。
2021年4月9日に日本でレビュー済み
面白い作品に出会い、久しぶりにレビューしたくなりました。
ザクっというと、戦前の暗い時代に懸命に前向きに生きるヒロインを描いている小説です。とはいえ、今風に言えば「お仕事小説」風の味付けをベースにしているところが、面白さ、読みやすさのベースになっていると思います。
加えて、ヒロインの恋がこれでもか!っていうほど進まない……、というもどかしさに読者はムズムズしながらも、それが彼女のいい所なんだよなぁ……などと思わされてしまうのです。ところが一方で、「ええ! この人がこっち方面へ?」というミステリアスな展開や、ヒロインの知らぬところで、こちらも予想だにしなかった複雑に絡む男女関係、などなどエンターテイメントとしての要素が十分にバランスよくちりばめられています。また、登場する多くの人物がみな魅力的で個性豊かに描き分けられていることに感心します。
戦前の暗い時代に懸命に生きるヒロインと書きました。しかし、それは実は間違いです。この作品は、私がそういう時代に生きていた人は不幸だという固定観念を持っていることに気づかせてれました。どんな時代であっても、人は一人一人が輝いて、希望をもって懸命に生きているのだということを教えてくれたのです。そう教えてくれたことが、実は私は一番うれしいのです。
ザクっというと、戦前の暗い時代に懸命に前向きに生きるヒロインを描いている小説です。とはいえ、今風に言えば「お仕事小説」風の味付けをベースにしているところが、面白さ、読みやすさのベースになっていると思います。
加えて、ヒロインの恋がこれでもか!っていうほど進まない……、というもどかしさに読者はムズムズしながらも、それが彼女のいい所なんだよなぁ……などと思わされてしまうのです。ところが一方で、「ええ! この人がこっち方面へ?」というミステリアスな展開や、ヒロインの知らぬところで、こちらも予想だにしなかった複雑に絡む男女関係、などなどエンターテイメントとしての要素が十分にバランスよくちりばめられています。また、登場する多くの人物がみな魅力的で個性豊かに描き分けられていることに感心します。
戦前の暗い時代に懸命に生きるヒロインと書きました。しかし、それは実は間違いです。この作品は、私がそういう時代に生きていた人は不幸だという固定観念を持っていることに気づかせてれました。どんな時代であっても、人は一人一人が輝いて、希望をもって懸命に生きているのだということを教えてくれたのです。そう教えてくれたことが、実は私は一番うれしいのです。
2018年5月11日に日本でレビュー済み
戦中の少女向け雑誌の制作現場の話である。主人公の佐倉波津子は少女雑誌「乙女の友」編集部に有賀主筆付けの女中として働くことになる。戦時中ということで言論統制が厳しい。そんな状況でも強く“友”(読者)に絵や小説を届ける。戦争が引き起こす不幸にもめげずに・・・。感想として何を残せばいいのだろうか。表紙の自転車に乗っている波津子の絵が楽しくも悲しくも見え、複雑な思いになる。
そして、読後に改めて表紙の下(帯に隠れているけど)に書かれたテキストを読み、次に本を裏返すとそこにもテキストが見つかる。なんか泣きそうになった。雑誌と読者の絆、戦時中を生きた人々と平成に生きている人々との絆、本作品と読者との絆・・・。ここにメッセージがあった。
そして、読後に改めて表紙の下(帯に隠れているけど)に書かれたテキストを読み、次に本を裏返すとそこにもテキストが見つかる。なんか泣きそうになった。雑誌と読者の絆、戦時中を生きた人々と平成に生きている人々との絆、本作品と読者との絆・・・。ここにメッセージがあった。
2019年6月6日に日本でレビュー済み
昭和の 前 中期時代の、 雑誌社 編集きょく 内部の ムンムンとした 空気が ビシバシ伝わってくる。
出版に 携わる 面面の個性 や 意気込みを 想像 描きながら 、『 ハツさん まけんじゃない!いけいけ』と
応援しながら 読み進めていった。穏やかな時代から 再びの戦時下の時代へと下る世。
出兵、統制、大空襲、悲惨な時代に 花より団子 とはいうけれど やっぱり けなげに 花は 要る。
活字、 絵の魅力、暖かい歌、は 心ある人たちの こころを和ますのだ 等々と。そう、思えば 昭和30年代 あの頃の 少年 少女雑誌には 付録が いっぱいついていて それは 楽しみだった。
自分が 終わるころ 微睡んで 手繰り寄せる 思い出の中に キラキラしてた頃の自分を 見つけ出せるだろうか?
出版に 携わる 面面の個性 や 意気込みを 想像 描きながら 、『 ハツさん まけんじゃない!いけいけ』と
応援しながら 読み進めていった。穏やかな時代から 再びの戦時下の時代へと下る世。
出兵、統制、大空襲、悲惨な時代に 花より団子 とはいうけれど やっぱり けなげに 花は 要る。
活字、 絵の魅力、暖かい歌、は 心ある人たちの こころを和ますのだ 等々と。そう、思えば 昭和30年代 あの頃の 少年 少女雑誌には 付録が いっぱいついていて それは 楽しみだった。
自分が 終わるころ 微睡んで 手繰り寄せる 思い出の中に キラキラしてた頃の自分を 見つけ出せるだろうか?
2018年5月29日に日本でレビュー済み
伊吹有喜さんのファンです。
『風待ちのひと』と『四十九日のレシピ』に泣かされました。
『なでし子物語』には泣かされはしませんでしたが一気に読むことができたのです。
『ミッドナイト・バス』もそうでしたが、このお話も物語のお店を広げてしまって、登場人物の何人かがページの中に置き去りにされたままエンディングを迎えてしまったような気がしました。
読んでいるときは楽しいのです。文章のエネルギーを受けとると、一時間くらいしか読んでいられなくて、読み了えるのに11日も掛かってしまったくらいに。
物語の閉じ方は、まさに収束していく感じでした。
三人に愛された人が誰を思っていたのか。二人にだけ解る言葉で伝わるんだろうなぁと思っていた通りに書いてくださって。
終戦後を描かないのは蛇足になってしまうからなのでしょうね。
もう一度読むかと言われたら、伊吹さんの作品で、まだ読んでいない作品を手に取ります。
ただ、少女雑誌の作り手を描く世界は伊吹さんが書いてくださらなかったら味わうことは決してなかったでしょう。
『風待ちのひと』と『四十九日のレシピ』に泣かされました。
『なでし子物語』には泣かされはしませんでしたが一気に読むことができたのです。
『ミッドナイト・バス』もそうでしたが、このお話も物語のお店を広げてしまって、登場人物の何人かがページの中に置き去りにされたままエンディングを迎えてしまったような気がしました。
読んでいるときは楽しいのです。文章のエネルギーを受けとると、一時間くらいしか読んでいられなくて、読み了えるのに11日も掛かってしまったくらいに。
物語の閉じ方は、まさに収束していく感じでした。
三人に愛された人が誰を思っていたのか。二人にだけ解る言葉で伝わるんだろうなぁと思っていた通りに書いてくださって。
終戦後を描かないのは蛇足になってしまうからなのでしょうね。
もう一度読むかと言われたら、伊吹さんの作品で、まだ読んでいない作品を手に取ります。
ただ、少女雑誌の作り手を描く世界は伊吹さんが書いてくださらなかったら味わうことは決してなかったでしょう。