いつもふにゃりとした笑顔を絶やさないヴァレンシュタイン家の家令、ドミニク。年齢の読めない外見や契約者を圧倒する実力など謎に包まれた彼ですが、今回のお話で彼の過去を垣間見ることが出来ます。そこにあるのは、少年と少女の出会いと切なる想い。ドミニクの過去に目を向けつつも、「今」を生きるマルクたちを取り巻く恋物語にも新たな展開が訪れます。
いやー、巻が進めば進むほど面白い作品になってきたなぁ、と思います。正直一巻では、主人公マルクにあまりよい印象は無かったのですが、二巻以降は鰻登りし続けて、今では大好きなキャラの一人です。エルミナの隣に傅く彼の姿はいいですね。マルクを始めとして、この作品のキャラは個性が強くて味があります。マルクの普段は馬鹿丁寧な敬語と穏やかな笑顔を見せるのに、金銭に対する執着が半端無かったり、口では冷めたことを言いながらも、襲撃された兄を心配する姿とかですね。そんな姿がばればれなことからも、裏世界を生きてきた割に、嘘をつけないんだなぁとか思いました。
そんな見所盛りだくさんの登場人物たちですが、今巻の目玉は何と言ってもカナメでしょう。エルミナへの恋心を自覚し、叶わない恋と思いながらも、自分なりのけじめをつけようとするマルク。正しいかどうかは別としてその姿勢は非常に好印象です。そして、カナメに告げたエルミナへの想いとけじめ。ですが、カナメはマルクが散々悩んで出した「けじめ」をあっさりと踏み倒します。やや強引ながら、なんとも強気なカナメらしい。今巻ラストにおけるカナメの心境の変化と彼女が取ったある行動も見所です。エルミナとカナメの両者に対する想いに悩むマルク。いったいこれから、この恋物語はどうなることやら。
ドミニクにしろ、マルクにしろ、共通しているのは「大切な人には笑っていて欲しい」という他者に対する好意の原点とも言える純粋な想い。ただ、ドミニクとは違い、マルクは笑顔を見せる大切な人のそばにありたいと望んだ。それは、辛い現実に阻まれ、打ちのめされるだけなのか。それとも・・・
一人で勝手に盛り上がってしまいましたが、次巻「影執事マルクの道行き」は七月発売予定らしいです。同月には、新刊だけでなく、コミック版、ドラマCDも出るそうですね。期待に胸躍らせつつ、楽しみに待ちたいと思います。
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