神話を権力や施策の正当化に用いる一方、神話を事実とは思っていない人が多数いたこと、滑稽なほど神話と事実の折り合いに苦心する姿を、同時代の様々なエピソードを交えて窺い知れたことは大きな収穫。
何かを食べればどこぞの健康に良いという即効便利な食べ物のごとく、神話や勅語が現代の不安や不満の薬、凋落する国の自信回復の支柱となるかのような言説に安易に呑み込まれないためにも、神話について知り、それらがどうやって利用され、そして何を招いたかをかを知るのは、必要だと思います。
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建国神話の社会史-虚偽と史実の境界 (中公選書) 単行本 – 2020/1/17
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天照大神の孫が高天原から降臨し、その孫である神武天皇がヤマトに東征、橿原宮で天皇の位に就く――『古事記』『日本書紀』に記されたこれらの神話が歴史的事実ではないことは、戦前の普通の々にとっても当たり前のことであった。史実ではないが、史実として扱い、そう振る舞っていたのである(こうした「建前と本音」的なものは、現代の私たちにも心当たりがある)。
神話の「史実」化には、天皇による統治を正当化するという明治政府の政治的目的があったのはもちろんだが、一方で民主化(神々の話合いは「万機公論」の根拠とされた)や経済振興の手段でもあったことは、今ではあまり知られていない。もっとも、「神話」を「史実」として受け止めることには、さまざまに無理も生じる。とくに教育現場における混乱は、いくつもの「笑えない」笑い話を残した。
本書は、幕末水戸学の尊王攘夷思想という建国神話重視の発端から、昭和天皇が「人間宣言」によって事実上、建国神話を否定するまで(そもそも、昭和天皇は科学者でもあった)、日本社会に起きた悲喜劇をエピソードたっぷりで描き出し、近代とは何か、歴史とは何か、国家とは何かを問い直す。
目次より
序 章虚偽と史実の境界
第一章神話が事実となるまで
一日本の建国神話とは
二なぜ「事実」になったのか<? br> 三教科書で「事実」とされたのはなぜか?
第二章「事実」化の波紋
一学校の外ではどうだったのか?
二学校の中ではどうだったのか?
第三章建国祭と万国博覧会
一政治にどう利用されたか?
二経済にどう利用されたか?
第四章満州事変の影響は?
一教室外でも始まる建国神話の「事実化」
二建国神話教育への影響は?
第五章日中戦争期の社会と建国神話
一紀元二千六百年をめぐって
二社会はどう受け止めたか?
第六章太平洋戦争期とその後
一国史教育のその後
二効き目はあったか?
三その後
終章「建国神話の社会史」の旅を終えて
神話の「史実」化には、天皇による統治を正当化するという明治政府の政治的目的があったのはもちろんだが、一方で民主化(神々の話合いは「万機公論」の根拠とされた)や経済振興の手段でもあったことは、今ではあまり知られていない。もっとも、「神話」を「史実」として受け止めることには、さまざまに無理も生じる。とくに教育現場における混乱は、いくつもの「笑えない」笑い話を残した。
本書は、幕末水戸学の尊王攘夷思想という建国神話重視の発端から、昭和天皇が「人間宣言」によって事実上、建国神話を否定するまで(そもそも、昭和天皇は科学者でもあった)、日本社会に起きた悲喜劇をエピソードたっぷりで描き出し、近代とは何か、歴史とは何か、国家とは何かを問い直す。
目次より
序 章虚偽と史実の境界
第一章神話が事実となるまで
一日本の建国神話とは
二なぜ「事実」になったのか<? br> 三教科書で「事実」とされたのはなぜか?
第二章「事実」化の波紋
一学校の外ではどうだったのか?
二学校の中ではどうだったのか?
第三章建国祭と万国博覧会
一政治にどう利用されたか?
二経済にどう利用されたか?
第四章満州事変の影響は?
一教室外でも始まる建国神話の「事実化」
二建国神話教育への影響は?
第五章日中戦争期の社会と建国神話
一紀元二千六百年をめぐって
二社会はどう受け止めたか?
第六章太平洋戦争期とその後
一国史教育のその後
二効き目はあったか?
三その後
終章「建国神話の社会史」の旅を終えて
- 本の長さ262ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2020/1/17
- ISBN-104121101022
- ISBN-13978-4121101020
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
「先生、そんなの嘘だっぺ!」。天照大神の孫が高天原から降臨し、その孫である神武天皇がヤマトに東征、橿原宮で天皇の位に就く―。『古事記』『日本書紀』に記されたこれらの神話が歴史的事実ではないことは、戦前の普通の人々にとっても当たり前のことであった。一方で、民主化や経済振興の手段ともなった巨大な「建前」は、やがて戦時下の国民を大きな混乱に巻き込んでいく。『昭和天皇』の著者による天皇と日本社会の近代史。
著者について
古川隆久
1962(昭和37)年東京生まれ。1985(昭和61)年東京大学文学部国史学専修課程卒業、1992(平成4)年東京大学大学院人文科学研究科国史学専攻博士課程修了(博士(文学))。広島大学専任講師、横浜市立大学助教授などをへて、日本大学文理学部教授。専攻は日本近現代史。著書に『昭和戦中期の総合国策機関』(吉川弘文館 1992年)、『皇紀・万博・オリンピック』(中公新書 1998年)、『戦時議会』(吉川弘文館 2001年)、『戦時下の日本映画』(同上 2003年)、『政治家の生き方』(文春新書 2004年)、『昭和戦中期の議会と行政』(吉川弘文館2005年)、『昭和戦後史』上・中・下(講談社 2006年)、『あるエリート官僚の昭和秘史』(芙蓉書房出版 2006年)、『大正天皇』(吉川弘文館 近刊)などがある。
1962(昭和37)年東京生まれ。1985(昭和61)年東京大学文学部国史学専修課程卒業、1992(平成4)年東京大学大学院人文科学研究科国史学専攻博士課程修了(博士(文学))。広島大学専任講師、横浜市立大学助教授などをへて、日本大学文理学部教授。専攻は日本近現代史。著書に『昭和戦中期の総合国策機関』(吉川弘文館 1992年)、『皇紀・万博・オリンピック』(中公新書 1998年)、『戦時議会』(吉川弘文館 2001年)、『戦時下の日本映画』(同上 2003年)、『政治家の生き方』(文春新書 2004年)、『昭和戦中期の議会と行政』(吉川弘文館2005年)、『昭和戦後史』上・中・下(講談社 2006年)、『あるエリート官僚の昭和秘史』(芙蓉書房出版 2006年)、『大正天皇』(吉川弘文館 近刊)などがある。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
古川/隆久
1962年東京生まれ。東京大学文学部国史学科卒業、東京大学大学院人文科学研究科国史学専攻博士課程修了。博士(文学)。広島大学専任講師、横浜市立大学助教授等を経て、日本大学文理学部教授。専攻は日本近現代史。著書に『昭和天皇』(サントリー学芸賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1962年東京生まれ。東京大学文学部国史学科卒業、東京大学大学院人文科学研究科国史学専攻博士課程修了。博士(文学)。広島大学専任講師、横浜市立大学助教授等を経て、日本大学文理学部教授。専攻は日本近現代史。著書に『昭和天皇』(サントリー学芸賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2020/1/17)
- 発売日 : 2020/1/17
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 262ページ
- ISBN-10 : 4121101022
- ISBN-13 : 978-4121101020
- Amazon 売れ筋ランキング: - 306,738位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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カスタマーレビュー
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殿堂入りベスト50レビュアー
建国神話が現実化する法的根拠は、明治憲法・教育勅語にあり、歴史的根拠は大政奉還にあった。薩長を主力とする明治政府は権威づけに天皇(朝廷)を利用した。権力には権威が必要である。大政奉還は、幕府が政権を天皇(朝廷)に返還することを意味した。これも歴史的必然であり、鎌倉幕府以来、源頼朝、足利尊氏、徳川家康と将軍は、天皇(朝廷)から「征夷大将軍」に任命され、幕府を開いたのである。武家政権の上に権威としての天皇(朝廷)が必要とされたのである。こうした天皇の権威を象徴するのが、建国神話である。明治憲法には「万世一系の天皇これ(大日本帝国)を統治す」と規定されている。これが教育勅語の法的根拠となる。権威としての「建国神話」は常に権力(政府)により「事実」化される必要がある。こうした歴史過程は、本書によって具体的に記述されている。参考になる記述が満載だ。
お勧めの一冊だ。
お勧めの一冊だ。
2020年6月11日に日本でレビュー済み
江戸時代とかから中国の影響あるやろとか所詮は神話は神話やろって言われてた建国神話
水戸学のせいで国家の基盤となってしまい明治政府に継承される
さらには建国神話を法制史と見なして憲法のルーツとみる方向にいく
初等教育でどこまで真面目に教えるのか、という問題に行き当たる
最初は神話は神話やでと至極まっとうに教えようとしていたが
やがては西洋がぶれへの対抗策として建国神話を史実として教えようとする
教育現場は子供にいい加減なことを教えては信頼を失うのでは、と苦労するし
教育学者や解説書の類も、腰が引けた対応になってしまう
そのうちに、建国神話の中から神々の会議のところを取りだして
議会制民主主義は日本の国に合致している、という言論まで出てきて
リベラルな社会改革を肯定するような使われ方もされる
さらには紀元節のあたりで万博や五輪をするにあたっても商売道具としても酷使される
万博の入場券に宝くじをつけるという話が出て賛否両論だったが
「神様のイベントだから神頼みのクジとかちょうどええやん」という根津嘉一郎の発言は草
さらに国際情勢が悪化し軍国主義化することで、建国神話は人を縛る手段となっていくわけである
結局のところ、新国家の統制や統一の方便として建国神話は便利使いされたけど
所詮は方便であり、国をねじ曲げてしまったのでは、という話である
水戸学が江戸幕府の自爆スイッチとなってしまったのは有名だが
結局は自爆スイッチを継承した明治新政府をも汚染してしまったのは草
水戸学のせいで国家の基盤となってしまい明治政府に継承される
さらには建国神話を法制史と見なして憲法のルーツとみる方向にいく
初等教育でどこまで真面目に教えるのか、という問題に行き当たる
最初は神話は神話やでと至極まっとうに教えようとしていたが
やがては西洋がぶれへの対抗策として建国神話を史実として教えようとする
教育現場は子供にいい加減なことを教えては信頼を失うのでは、と苦労するし
教育学者や解説書の類も、腰が引けた対応になってしまう
そのうちに、建国神話の中から神々の会議のところを取りだして
議会制民主主義は日本の国に合致している、という言論まで出てきて
リベラルな社会改革を肯定するような使われ方もされる
さらには紀元節のあたりで万博や五輪をするにあたっても商売道具としても酷使される
万博の入場券に宝くじをつけるという話が出て賛否両論だったが
「神様のイベントだから神頼みのクジとかちょうどええやん」という根津嘉一郎の発言は草
さらに国際情勢が悪化し軍国主義化することで、建国神話は人を縛る手段となっていくわけである
結局のところ、新国家の統制や統一の方便として建国神話は便利使いされたけど
所詮は方便であり、国をねじ曲げてしまったのでは、という話である
水戸学が江戸幕府の自爆スイッチとなってしまったのは有名だが
結局は自爆スイッチを継承した明治新政府をも汚染してしまったのは草