『見てしまう人びと 幻覚の脳科学』(2014年 早川書房)の改題・文庫版。
原著は『Hallucinations』(2012年)。直訳すると「幻覚」です。
2014年版のレヴューが幾つかあります。できればそれを補えるよう、若干長くなりますが章題と、それだけでは内容の分かりづらいものについては、一部感想を含めてご紹介をします。
「第1章 静かな群衆-シャルル・ボネ症候群」
CBS(=シャルル・ボネ症候群)とは、眼病などの眼科領域あるいは脳の視覚領域に問題のある人達の見る幻覚。本人はあくまでも幻覚であって現実ではないと自覚し、フロイトの夢のように無意識の解釈には結びつかず、また、視覚を失った人たちに慰めを与えるものでもあるのかも知れないとのこと。
CBSの患者の見た記号や人や場所の絵を見たかったような気がします。
「第2章 囚人の映画-感覚遮断」
例えば囚人が明かりの無い地下牢に閉じ込められるとそれを補償するように幻覚を見る可能性があり、それを実験的に証明した例が多数挙げられている。
「第3章 数ナノグラムのワイン-においの幻覚」
略。
「第4章 幻を聞く」
幻聴は統合失調症の患者だけでなく、ごく普通の健常者でも聞こえる場合があり、逆に、何故大半の人には幻聴が聞こえないのかという問いもあり得ることになる。
「第5章 パーキンソン症候群の錯覚」
略。
「第6章 変容状態」
ハシシ、メスカリン、LSDなどの幻覚剤を飲んだ時の幻覚体験(=変容状態)について、サックス自身の経験も含めて説明されている。サックスが神経科学医を目指した理由も述べられている。
「第7章 模様-目に見える片頭痛」
片頭痛の前兆として様々な模様が見えるなどの知覚変容が起こり、なかでもルイス・キャロルが片頭痛持ちだったことは有名であり、そのために『不思議の国のアリス』が生まれたのではないか、また片頭痛で生じるような模様は、イスラム芸術、メキシコのサポテカ族の建築物、オーストラリアのアポリジニ芸術の樹皮絵画等々ほぼあらゆる文化に何万年も前から見られることや雪の結晶の特徴などから壮大な解釈が述べられています。
「第8章 「聖なる」病」
癲癇発作の症例が多数詳細に紹介されている。後半でその中の一つである恍惚発作が解説され、ジャンヌダルク(章題の「聖なる」が示すのは彼女らしい)も癲癇だった可能性が高いようです。
「第9章 両断-半視野の幻覚」
略。
「第10章 譫妄」
略。
「第11章 眠りと目覚めのはざま」
略。
「第12章 居眠り病と鬼婆」
ナルコプレシーとカタプレキシーについて。ナルコプレシーでも様々な幻覚や体外離脱、悪夢を経験し、表題の「鬼婆」とは眠っている人の胸にもたれかかって呼吸を妨げる女性を指していたらしい。また「nightmare」と「night-mare」の違いなども興味深い。
「第13章 取りつかれた心」
まず、過去の経験の記憶が甦り、心に取りつき、過去の再現を強制されるという意味における「取りつかれた心」について。特に肉親との死別は突然人の心に穴を開け、その穴を埋めるために認知や知覚に問題を生じる可能性があること、また解離はPTSDの理解のために重要であること、さらに悪魔付きと魔女狩りを例に挙げて、迷信を強く信じる妄想的雰囲気や瞑想、精神修養、熱狂的な太鼓や踊りなども幻覚を生みやすいことなどが説明されている。
「第14章 ドッペルゲンガー-自分自身の幻」
略。
「第15章 幻肢、影、感覚のゴースト」
視覚や聴覚の幻覚と幻肢の違いについて初めに説明し、幻肢は例えば義足を付ければそれが自分のイメージになり得ること、また幻肢のバージョンと言って良いのか、余分な手足が現れる事もあり、また、バーチャルなシステムによって幻肢に痛みを感じる幻肢痛を減らすことも可能らしい。章題にある「影」(つまり「感覚のゴースト」でもある)とは、いないはずの人間を見てしまうことであり、薬物や統合失調症や不安によっても見えてしまい、さらにはその「影」が信仰の対象となることもあるのだそうです。
各章の最後に多くの原注が付けられ、それも勉強になります。
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幻覚の脳科学──見てしまう人びと (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) 文庫 – 2018/3/20
オリヴァー・サックス
(著),
大田直子
(翻訳)
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宙を舞う青いハンカチや楽譜、体長15センチの小人、光り輝く幾何学模様。
話し声や音楽、悪臭、失った手足の感覚――。
現実には存在しないものを知覚してしまう「幻覚」。
これらの多くは狂気の兆候などではなく、
脳機能を解明する上で貴重な手がかりになるという。
多種多様な実例を挙げながら、
幻覚がいかに私たちの精神世界や文化に影響を与えてきたかを綴る医学エッセイ。
『見てしまう人びと――幻覚の脳科学』改題・文庫化。
解説/春日武彦
話し声や音楽、悪臭、失った手足の感覚――。
現実には存在しないものを知覚してしまう「幻覚」。
これらの多くは狂気の兆候などではなく、
脳機能を解明する上で貴重な手がかりになるという。
多種多様な実例を挙げながら、
幻覚がいかに私たちの精神世界や文化に影響を与えてきたかを綴る医学エッセイ。
『見てしまう人びと――幻覚の脳科学』改題・文庫化。
解説/春日武彦
- 本の長さ384ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2018/3/20
- 寸法10.6 x 1.5 x 15.7 cm
- ISBN-104150505195
- ISBN-13978-4150505196
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商品の説明
著者について
1933年、ロンドン生まれ。オックスフォード大学を卒業後、渡米。脳神経科医として診療を行なうかたわら、精力的に作家活動を展開し、優れた医学エッセイを数多く発表する。2007~2012年、コロンビア大学メディカルセンター神経学・精神学教授、2012年からはニューヨーク大学スクール・オブ・メディシン教授をつとめる。著書に『火星の人類学者』『妻を帽子とまちがえた男』『音楽嗜好症(ミュージコフィリア)』『色のない島へ』『レナードの朝〔新版〕』『タングステンおじさん』(以上ハヤカワ・ノンフィクション文庫)、『心の視力』『道程―ーオリヴァー・サックス自伝』『サックス先生、最後の言葉』(以上早川書房刊)など多数。2008年に大英帝国勲章コマンダーを受章。2015年没。
登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2018/3/20)
- 発売日 : 2018/3/20
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 384ページ
- ISBN-10 : 4150505195
- ISBN-13 : 978-4150505196
- 寸法 : 10.6 x 1.5 x 15.7 cm
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オリヴァー・サックス自身の幻覚体験も
脳炎後のパーキンソン症候群を主題とし、ロビン・ウィリアムズとロバート・デニーロが演じた『レナードの朝』(原題:Awakenings)を書いたオリヴァー・サックス。いくつもの著作があるが、今度の本は、幻覚を体験したことのある人、している人の主観が豊富に書かれた本を書いた。幻覚は本人にしか見えなかったり聴こえなかったりするから幻覚なんだが、あらゆる背景で出現する幻覚について書かれており、ワクワクしながら読める。この本を読むまで知らなかったのだが、彼自身、ドラッグも含めていくつもの幻覚体験があるとのこと。自身の体験も書いてあり、よりリアルである。表紙。帯がついてるが、めくるとそこにあったはずの目が、、、、。
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- 2018年4月23日に日本でレビュー済みAmazonで購入
- 2024年7月15日に日本でレビュー済みAmazonで購入幽霊のような幻覚を普通に見せる、脳の隠れた機能に驚かされます
- 2016年2月9日に日本でレビュー済みAmazonで購入いきなり発生する幻覚は恐ろしい。
だが、それが症例は少なくとも名前が付いた病気の所為だとしたら?
そうでなくとも有る状況に脳がエラーを起こしただけだと解ったら?
ユーモアを持って受容する事も可能である。
神経科医にして一般向けの医学啓蒙書(「レナードの朝」「火星の人類学者」)の名手であるサックス博士の、過去作品に登場した患者の物に多くの症例を加えた、まさに『幻覚大全』とでもいうべき書籍。
本書によると神秘体験もドッペルゲンガーも幽霊も脳の損傷以外でも、例えば過労や感覚遮断、睡眠前後等で一般の人間にも体験し得る事だと解る。
ただ、アルツハイマー病と合併した状態で発生する幻覚は理性的に処理出来ない状態の為、患者の苦しみが大きいと言う描写には心が痛んだ。
サックス博士自身も若い頃はカリフォルニアのドラッグ文化にどっぷり浸かって、当時まだ合法だったLSDを始め、なんとモルヒネの注射まで試していた事には驚いた。
結局は患者に希望を与えてそれを奪う形になってしまった「レナードの朝」の痛恨事や、自身の酷い骨折や偏頭痛、晩年は片目の失明等も好奇心とユーモアを持って記載していたサックス博士。
早川書房では故スティーヴン・グールド博士と並びその科学啓蒙書を楽しませて頂いたが、惜しくも昨年お亡くなりになったのは非常に寂しい。
博士の過去作とラマチャンドラン博士著「脳の中の幽霊」をお読みの方には一部重複する記載が有るが、それでも大いにお薦め。
- 2023年4月12日に日本でレビュー済み面白かったです。脳科学的メスを感じた章は1〜5、15で、他は羅列っぽかったですが、これだけよく集めたなと思います。6章は、驚きでした。オリバー先生にドラッグ依存歴があるとは。でも、さすが、観察されていますね。15章面白かったので、左足をとりもどすまで、も読みたくなりました。邦訳あるのかしら?
- 2018年5月6日に日本でレビュー済みAmazonで購入本書は2014年10月に刊行された「見てしまう人びとー幻覚の脳科学」の文庫化にあたる。
文庫化に伴い収録されているのは、
訳者の太田直子氏による「幻覚というのは一方では脳の働きを実証する科学的現象でありながら、他方では「昔から私たちの精神生活や文化に重要な役割を果たしてきた」のだと実感した」というコメントと、
解説として精神科医・春日武彦氏による文章である。春日氏は、なぜオリバー・サックスは精神科医ではなく脳神経科医になったかという疑問を挙げそれに自ら考察している。オリバー・サックスの兄は統合失調症を患っており、自らは同性愛者であり、かつてドラッグ使用により幻覚体験をしていたというエピソードが描かれている。
春日氏は、オリバー・サックスが精神科医になっていたら、自らの境遇や相手への共感への限界を感じたのではないか。と推測している。
惜しくも本書の単行本版が刊行された翌年2015年にオリバー・サックスは亡くなった。いまは彼の遺した豊富な知識と症例に基づく詳細な脳科学の記述を噛みしめるように読んで行きたい。
- 2018年12月2日に日本でレビュー済みAmazonで購入目で見て判断するとはいうけれども、眼は単なる光学器官であって、実際に判断しているのは脳の中。
脳の中なので、化学的状態、物理的状態で脳の中の解析結果で幻覚や幻聴を発生させる。
そうだろうなと思ってはいたが明確な事例を基に語られて納得。
ポピュラーサイエンスでも巻末にある参考文献の量がすごいな。
- 2015年10月25日に日本でレビュー済みAmazonで購入サックスの本は主に一見奇異に見える不思議な症状をもつ患者を紹介し,そこから人間の脳機能や心の働きを解説する物が多いが,この本では正常人にも見える覚醒時幻視,幻聴などが多く紹介されていて非常に面白い.シャルル・ボネ症候群の話はTEDで,本人が講演しているところを見ることが出来る.
- 2019年8月24日に日本でレビュー済み幻聴、幻視、幻覚などは不健康な人々(病人など)に起こるものだと考えていましたが、本書を読むと健康な人にも起こることもあるのだと認識しました。特に幻聴は気が付かないだけで、身近にありそうなことだと思います。これらの現象が生じると大変な異常事態として精神科に行って患者になり主に薬物療法を行われますが、脳にも心にも自然治癒力があり、ストレスなどへの対抗力を強化していくことができるのではないかと思えました。













