GDP(国内総生産)とは何かを探った経済書。
著者がこの書を書くきっかけになったのが、日本だそうで、GDPの値で見ると経済に失敗した国だけど、実際に生活してみたらあまり悲惨な国ではなかったという体験だそうです。そこで、GDPを創ったクズネッツという人の人生から、経済的に破綻しかけたアイスランド、一般的に貧困率が高いのと格差の大きいという風に見られがちなアフリカ諸国やアジア諸国、識者から聞いた様々な寓話等を紹介しながら、GDPだけでは捉えきれない経済の実態や幸福度を見つめ、金に換算できない本当の幸せとは何か、それを指標にする為の新しい尺度や物差しを作るべきではないかと提言したのではないかというのが、感想でしたがどうでしょうか。
個人的な話に言い換えると、私がこの経済書を買う為に食費を削ったとしたら経済的には損失ですが、ここから得られる見識や知識は将来色々(生きる知恵、雑談のネタ、読んでいる間の楽しさ等)役に立つので、それを表す経済値意外の尺度で世界や時代を見た方がいいのではという事だと思いました。
また個人的な体験で恐縮ですが、ある会社の採用が前提の好待遇の仕事の実習をしたのですが、あまり向いていない仕事で、一緒に作業した人を怒らせてしまい、私の方から採用しない様に頼んでしまった経験があるのですが、待遇の良い仕事を断ったのは経済的に大失敗ですが、そこで嫌々向いていない仕事を怒られながら続けたら寿命が縮まる可能性が高かったので、不採用にして頂いて成功だったとも言えるので、金だけで幸福度を査定するのがおかしいとは思ったりもします(私が巧く仕事に適用できなかったのが一番馬鹿ですが)。
人口の問題に関して「NOでは政治は変えられない」で世田谷の保坂区長と貧困問題を研究している湯浅さんの対談に依ると、私の第二次ベビーブームの世代が結婚して子供を産む人が多かったら、第三次ベビーブームになってあまり問題にならなかったかも、という考察があるそうで、私の世代に責任が多そうですが、バブル経済が終わった頃で時給で働く場合が多いので、結婚してもらえないとか、結婚は無理と諦めた人が多い様です。あの時人口問題を指摘していれば回避できたかもという事で、まだバブル経済のツケが残っている様です。
最近、経済書を読む事が増えたのですが、去年だったか読んだ「そろそろ左派は経済を語ろう」とか最近話題の「父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」等で、経済成長は悪くないし、貧富の差や格差をなくすのは当然という趣旨の物が多く、「そろそろ左派は~」は賛否判れて炎上ぎみでしたが、この経済書の場合は幸福は必ずしも数値化できないかもしれないし、数値化できない物を目に見える様にすべきという趣旨で、若干対立するかなとも思いました。前記二作に結構いい点数にしたので、☆の数は迷いましたが、経済に関する議論が増えるのはいい事だと思うので、こうしておきました。
経済成長、GDPの不完全さを告発した問題提起の経済書。是非ご一読を。
蛇足ですが、気になったことを書いておくと、イギリスの統計で性的労働従事者を調べた際、女性のみを対象にした不完全な物だったそうですが、男性の性的労働に占める割合は42%を占めるとか。LGBTの人が増えているのは知ってはいますが、身近にいない(或いは知らない)ので少し驚きました。不明を恥じます。
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幻想の経済成長 単行本(ソフトカバー) – 2019/3/20
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「日本は本当に終わった国なのか?」 東京の街にあふれる活気が、記者を新たな取材へと向かわせた――
《フィナンシャル・タイムズ》元東京支局長、「成長神話」を追う
「GDP」(国内総生産)を拡大し続ければ、私たちは本当に幸せになれるのか?
『日本‐喪失と再起の物語』で話題を呼んだ《フィナンシャル・タイムズ》の元東京支局長が、
こんな疑問を胸に世界5大陸で取材を敢行。
至れり尽くせりの日本の新幹線から金融危機の後遺症に苦しむアイスランド、
大気汚染と闘う中国から統計には表れないケニアの元気な非公式経済まで、
各国で見聞きした豊富な事例をもとに「成長至上主義」の限界を明かし、
そこから脱却するための道筋を示す。
序文「日本の読者へ」を特別収録。
「私たちが『成長』に取り憑かれていることを明らかにする、ウィット、情報、取材、いずれも行き届いたガイド」
――アンガス・ディートン(ノーベル経済学賞受賞者)
「秀逸で時宜を得た本。政策立案者、経済学者、投資家、そしてジャーナリストの必読書だ」
――ジリアン・テット(《フィナンシャル・タイムズ》米国版編集長)
「とても洞察に富み、随所に機知がひらめく、本質的な問いに対する導きの書」
――コフィ・アナン(第7代国連事務総長、ノーベル平和賞受賞者)
《フィナンシャル・タイムズ》元東京支局長、「成長神話」を追う
「GDP」(国内総生産)を拡大し続ければ、私たちは本当に幸せになれるのか?
『日本‐喪失と再起の物語』で話題を呼んだ《フィナンシャル・タイムズ》の元東京支局長が、
こんな疑問を胸に世界5大陸で取材を敢行。
至れり尽くせりの日本の新幹線から金融危機の後遺症に苦しむアイスランド、
大気汚染と闘う中国から統計には表れないケニアの元気な非公式経済まで、
各国で見聞きした豊富な事例をもとに「成長至上主義」の限界を明かし、
そこから脱却するための道筋を示す。
序文「日本の読者へ」を特別収録。
「私たちが『成長』に取り憑かれていることを明らかにする、ウィット、情報、取材、いずれも行き届いたガイド」
――アンガス・ディートン(ノーベル経済学賞受賞者)
「秀逸で時宜を得た本。政策立案者、経済学者、投資家、そしてジャーナリストの必読書だ」
――ジリアン・テット(《フィナンシャル・タイムズ》米国版編集長)
「とても洞察に富み、随所に機知がひらめく、本質的な問いに対する導きの書」
――コフィ・アナン(第7代国連事務総長、ノーベル平和賞受賞者)
- 本の長さ336ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2019/3/20
- 寸法14 x 2.5 x 19.4 cm
- ISBN-104152098457
- ISBN-13978-4152098450
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
「GDP」(国内総生産)を拡大し続ければ、私たちは本当に幸せになれるのか?「フィナンシャル・タイムズ」の元東京支局長が、こんな疑問を胸に世界5大陸で取材を敢行。至れり尽くせりの日本の新幹線から金融危機の後遺症に苦しむアイスランド、大気汚染と闘う中国から統計には表れないケニアの元気な非公式経済まで、各国で見聞きした豊富な事例をもとに「成長至上主義」の限界を明かし、そこから脱却するための道筋を示す。序文「日本の読者へ」を特別収録。
著者について
《フィナンシャル・タイムズ(FT)》紙のアフリカ編集長。ロンドンを拠点にアフリカ各地を取材する。2002年1月から08年8月まで、同紙の東京支局長。ケンブリッジ大学卒業。1990年よりFT記者。チリ、アルゼンチン特派員、製薬・バイオ産業担当、アジア編集長などをへて現職。アジアに関するコラムで、The Society of Publishers in Asia Award、英Editorial Intelligence Comment Awardなど受賞歴多数。著書『日本‐喪失と再起の物語』(2014年、邦訳早川書房)は、《ニューヨーク・タイムズ》、《エコノミスト》、《読売新聞》など、各国のメディアで絶賛された。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ピリング,デイヴィッド
「フィナンシャル・タイムズ(FT)」紙のアフリカ編集長。ロンドンを拠点にアフリカ各地を取材する。2002年1月から08年8月まで、同紙の東京支局長。ケンブリッジ大学卒業。1990年よりFT記者。チリ、アルゼンチン特派員、製薬・バイオ産業担当、アジア編集長などをへて現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
「フィナンシャル・タイムズ(FT)」紙のアフリカ編集長。ロンドンを拠点にアフリカ各地を取材する。2002年1月から08年8月まで、同紙の東京支局長。ケンブリッジ大学卒業。1990年よりFT記者。チリ、アルゼンチン特派員、製薬・バイオ産業担当、アジア編集長などをへて現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2019/3/20)
- 発売日 : 2019/3/20
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 336ページ
- ISBN-10 : 4152098457
- ISBN-13 : 978-4152098450
- 寸法 : 14 x 2.5 x 19.4 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 482,214位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 494位経済思想・経済学説 (本)
- - 2,317位経済学 (本)
- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
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GDPが日本との戦争遂行力を確認するために活用された、もともとそのつもりだったのか? という点には驚きました。一方、日本にはそんな計算があったのか? 今夏、アルキメデスの大戦という映画が公開されますが、このことを問うた内容かもしれません。測定項目、測定方法の意図したところに結果は出てくる。世論が動く、動かせる、、、というのはどこかで聞いた話です。また、誤った結果で、バイアスのかかった結果で、途上国へ経済支援しているのかもしれないです。理性の限界、合理性の限界をも感じる内容でした。
ベスト1000レビュアー
週刊東洋経済でインタビューを読み、興味がわいたので書店で購入しました。結果から言うと満足しています。GDPの限界論については以前から一連の議論がなされていたかと思いますが、ここ数年間の議論熱の高まりを見ると、今度こそ本当に変化が起こるのではないかと感じており、その背景や世界中での議論の広がりなどは本書から包括的に理解できました。著者はフィナンシャル・タイムズの記者ということで、現地での取材を前面に打ち出した記述が多いのですが、特に新興国の統計作成官へのインタビューはなかなか興味深く読みました。統計作成は政治に密接に関係していること、それは特に新興国では顕著だということがにじみ出ている内容でした。つまり現政権に不利になるような統計作成は自分の身(生命さえも)を危うくする、ということです。
他方少し気になった程度ですが、本の端々から「労働者vs資本家」「富裕者vs貧困者」のような二項対立的な記述が多く、これは著者の心理的バイアスがかかっている気はしました。ベストセラーになった本「ファクトフルネス」の用語を使えば分断本能がかかっている気がしました。本書では、労働分配率が下がり資本分配率が上がっている、という記述がありましたが、確か実際は両方の数値が下がっているはずです。その意味で、インタビューなどの現地現物の情報が多い反面、データの裏付けが弱い印象は感じました。ただGDPあるいはGDPの代替指標として世界各国で提案している各種新指標については、現地インタビューを通じてリアリスティックな姿を提示してくれてとても理解が深まりました。
他方少し気になった程度ですが、本の端々から「労働者vs資本家」「富裕者vs貧困者」のような二項対立的な記述が多く、これは著者の心理的バイアスがかかっている気はしました。ベストセラーになった本「ファクトフルネス」の用語を使えば分断本能がかかっている気がしました。本書では、労働分配率が下がり資本分配率が上がっている、という記述がありましたが、確か実際は両方の数値が下がっているはずです。その意味で、インタビューなどの現地現物の情報が多い反面、データの裏付けが弱い印象は感じました。ただGDPあるいはGDPの代替指標として世界各国で提案している各種新指標については、現地インタビューを通じてリアリスティックな姿を提示してくれてとても理解が深まりました。
2020年9月26日に日本でレビュー済み
GDP(国内総生産)は国内、および各国の成長指標としてスタンダードなものとして使われている。だが、その指標が本当に正しいのか、それを基に経済を語ることに問題がないのか、また過去から現在まで同じ指標で評価しても良いのか、はGDPと共に語られることはない。
GDPで計測対象になるもの・ならないもの、GDPをあげるとはどういうことか、本当にきちんと測ることができるのか。世界各国の様々な例を挙げつつ、問題点について語っていく。春を売る人の数、森林の面積、麻薬や戦争をどうするか。ブータンは幸福度を指標にするが、その幸福度を上げることは本当に幸福なのか。IT技術、インターネットで世界が変わることに指標はついていくのか。
過去から現在まで世界の様々な状況、取り組みに対して語りつつ、経済とは何か、経済成長とは何か、を語っていく。
様々なものを数える・指標を作る大変さは良く分かったとして、実際本当に国と国とを比較、自国の成長を過去と現在とを比較するにはどうすればよいのか、はなかなか難しい。その難しさ、そもそも「測る」ことが現実的なのか、は非常によくわかった気がする一冊。
GDPで計測対象になるもの・ならないもの、GDPをあげるとはどういうことか、本当にきちんと測ることができるのか。世界各国の様々な例を挙げつつ、問題点について語っていく。春を売る人の数、森林の面積、麻薬や戦争をどうするか。ブータンは幸福度を指標にするが、その幸福度を上げることは本当に幸福なのか。IT技術、インターネットで世界が変わることに指標はついていくのか。
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様々なものを数える・指標を作る大変さは良く分かったとして、実際本当に国と国とを比較、自国の成長を過去と現在とを比較するにはどうすればよいのか、はなかなか難しい。その難しさ、そもそも「測る」ことが現実的なのか、は非常によくわかった気がする一冊。
2022年5月4日に日本でレビュー済み
この本の主題はGDPという指標が、あたかもその国の経済指標を表すパラメーターとして使用なされているが、実は必ずしもそうとは云えないことを記している。また、そこに暮らす人々の幸福度を表すものでもない。
このことは、おぼろげながら感じていたことであるが、こうして改めて定義なされると、誠にそうだなと頷くしかない。
ただし、だいぶ斜め読みしたせいもあるのだが、結局のところ、それに変わるべき適切なパラメーターがないということに問題はあるのだろうと思える。
しかし、思うのはこの世に様々な学問があるが、一番イイカゲンというか、評価者により意見がバラつくのが経済学ではなかろうか。それだけ、正味の実態を掴み難いし、そのパラメーターの評価でまるで変わって来てしまう。
このことは、おぼろげながら感じていたことであるが、こうして改めて定義なされると、誠にそうだなと頷くしかない。
ただし、だいぶ斜め読みしたせいもあるのだが、結局のところ、それに変わるべき適切なパラメーターがないということに問題はあるのだろうと思える。
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