ある時期から、私にはある疑問があった。それは「日本は、なんで植民地にならずに近代化できたのだろう?→東アジアでは異様なほど経済が発達して、資本主義が理解できたからなのか?→でも、そもそも資本主義って何だろう?」というようなものでした。
資本主義については、早い話が「西欧が、大航海時代に入り、世界中の海を走り回って経済行為を行うようになったが、そのため、かなり煩雑でリスキーな取引を行わざるを得なくなった。そのため、”帳簿”がかなり面倒くさくなり、しかも、資産も取引内容も”帳簿”でしか把握できないようになった。しかし、そのおかげで、巨大な資本を動かす術を身に着け、かつ、リスクをさけるためもあり、信用経済が発達し、資本主義が形成され、今日に至っている」というような解釈に至りました。そして、この本を読む限りにおいては、その解釈は正しかったのだろうと思うようになりました。
日本の近代化については、イザベラ・バードの「朝鮮紀行」によると、当時(日清戦争前後)の朝鮮では、穴あき銅銭と行商人程度の経済しかないのに、ソウルにはすでに、日本の銀行(資本主義の象徴にして“帳簿”が命)がある。これを読んだとき、この恐るべきギャップは何なのだろうと思いました。
中国については、岡本隆司の「近代中国史」によると、明代以後、政府権力の定めた貨幣価値など民間は信用しない。幕府に対する民間の高い信用があった日本とは大きな差があった。経済の政府保証がないから、信用が広がらない。広域経済ができない。広域経済ができないと銀行・証券業などが成立しない。どんな凄腕の華僑といえども、”自分の顔”の範囲でしか資金を集められない。すなわち、資本主義が育たない。
例えば、日本だと、商家の旦那さんと番頭どんの信頼関係は“帳簿”。上方落語の「百年目」という噺では、旦那さんが堅いと思っていた番頭どん。それが、芸者も幇間も丸のみで遊んでいるところを目撃してしまう。すると旦那さんは夜通しかかって“帳簿”をみる。すなわち横領を疑い”会計監査”をする。
幕府・諸藩からして、勘定奉行・勘定方がいて、”帳簿”を付けている。そのため狭い日本ながらも、全国的規模の信用経済が成立していた。それが、欧米の資本主義体制とリンクしたため、日本は植民地にならなかった。
板谷俊彦の「日露戦争、資金調達の戦い」は、高橋是清がロンドンで日露戦争の資金調達をしてくる話ですが、当時の日本経済の信用力がないと成立しない話です。資源も大した産業もないのですから、“帳簿”が信用できる社会ということしかなかったのではないかと思います。戦後日本の復興と隆盛も同じだと思います。
ついでに言えば、北米と南米の差は、”帳簿”が信用できるか、できないかの差のようにも思えてきます。産油国が先進国になれないのも”帳簿”をきちんとつけられる社会ではないから・・・
こういう本が出たのだから、この話をもっと広げて誰か書いてくれないだろうか。結構、面白いと思うのだが。
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帳簿の世界史 単行本 – 2015/4/8
| ジェイコブ ソール (著) 著者の作品一覧、著者略歴や口コミなどをご覧いただけます この著者の 検索結果 を表示 |
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「権力とは財布を握っていることである」
アダム・スミス、カール・マルクス、マックス・ウェーバー……。
彼らが口を揃えて主張していた「帳簿」の力とは、一体何なのか。
これまでの歴史家たちが見逃してきた「帳簿の世界史」を、
会計と歴史のプロフェッショナルが初めて紐解く。
・なぜスペイン帝国は栄え、没落したのか。
・なぜフランス革命は起きたのか。
・なぜアメリカ独立は成功したのか。
・なぜ日本は急速に列強へ追いつくことができたのか。
その歴史の裏には全て、帳簿を駆使する会計士たちがいた!
【目次】
■序 章 ルイ一六世はなぜ断頭台へ送られたのか
■第1章 帳簿はいかにして生まれたのか
奴隷が帳簿係を務めたアテネ、ハンムラビ法典で会計原則が定められていたバビロニア、歴代の皇帝が帳簿を公開したローマ帝国。だが古代の会計は不正に満ちていた。それはいかに進化し、複式簿記の発明へ至ったのか。
■第2章 イタリア商人の「富と罰」
教会法で金貸業が禁じられていた一四世紀のイタリアでは、商人と銀行家は常に罪の意識に苛まれていた。だが、最後の審判を恐れるその信仰心こそが、会計を発展させたのだ。彼らの秘密帳簿は、それを示している。
■第3章 新プラトン主義に敗れたメディチ家
ルネサンス期のフィレンツェを支配していたメディチ家。ヨーロッパ最大の富豪を支えた会計技術は、なぜ一世代で失われてしまったのか。その謎を解く鍵は、新プラトン主義によるエリート思想の流行にあった。
■第4章 「太陽の沈まぬ国」が沈むとき
一六世紀になっても会計への偏見は根強かった。だが、スペインは赤字続きの植民地を前に、遂に会計改革に乗り出す。重責を担ったフェリペ二世だったが、オランダの反乱・無敵艦隊の敗北など、更なる悪夢が彼を襲う。
■第5章 オランダ黄金時代を作った複式簿記
東インド会社を中心とした世界貿易で途方もない富を得たオランダ。その繁栄の秘密は、複式簿記にあった。国の統治者が史上初めて複式簿記を学び、それを政権運営に取り入れることができたのは、一体なぜなのか。
■第6章 ブルボン朝最盛期を築いた冷酷な会計顧問
ヴェルサイユ宮殿を建設したルイ一四世を支えたのは、会計顧問のコルベールだった。財政再建に奮闘したその手腕はアダム・スミスにも称賛されたが、同時に彼は会計の力で政敵を容赦なく破滅へと追い込んだ。
■第7章 英国首相ウォルポールの裏金工作
スペイン継承戦争の巨額債務や南海泡沫事件など、イギリスの財政危機を何度も救ったウォルポール。だが彼の権力と財産は、国家財政の秘密主義なくしては得られず、その長期政権も裏金工作によって支えられていた。
■第8章 名門ウェッジウッドを生んだ帳簿分析
イギリス史上最も成功した陶磁器メーカーの創立者・ウェッジウッド。彼は経営に確率の概念を取り込み、緻密な原価計算を行うことで会社を繁栄させた。この時代、富は信心と几帳面な会計の産物だとみなされていた。
■第9章 フランス絶対王政を丸裸にした財務長官
ルイ一六世から財務長官に任命されたスイスの銀行家・ネッケルは、それまで秘密のベールに包まれていた国家財政を、国民へ開示した。そのあまりにも偏った予算配分に国民たちは怒り、フランス革命が起きた。
■第10章 会計の力を駆使したアメリカ建国の父たち
「権力とは財布を握っていることだ」。アメリカ建国の父たちの一人、ハミルトンはこう喝破した。複式簿記を郵政会計に導入したフランクリン、奴隷も個人帳簿に計上したジェファーソン。彼らはみな会計の力を信じた。
■第11章 鉄道が生んだ公認会計士
鉄道の登場により、財務会計の世界は急速に複雑化した。鉄道会社は巨大企業へと成長するが、粉飾決算が横行。その監督のために公認会計士が誕生することになる。彼らは、規制がなく野放し状態のアメリカで奮闘した。
■第12章 『クリスマス・キャロル』に描かれた会計の二面性
一九世紀から二〇世紀にかけて、会計は小説や思想にどのような影響を与えたのか。父親が会計士だったディケンズ、複式簿記の発想が『種の起原』に見られるダーウィン、会計を忌避したヒトラーから見えてくるものとは。
■第13章 大恐慌とリーマン・ショックはなぜ防げなかったのか
複雑化した会計は、もはや専門教育を受けた人でなければ扱えない。その中で大手会計事務所は、監査で知り得た財務情報をもとにコンサルティング業を開始する。明らかな構造的矛盾のもと、最悪の日は近づいていた。
■終 章 経済破綻は世界の金融システムに組み込まれている
■日本版特別付録 帳簿の日本史(編集部)
アダム・スミス、カール・マルクス、マックス・ウェーバー……。
彼らが口を揃えて主張していた「帳簿」の力とは、一体何なのか。
これまでの歴史家たちが見逃してきた「帳簿の世界史」を、
会計と歴史のプロフェッショナルが初めて紐解く。
・なぜスペイン帝国は栄え、没落したのか。
・なぜフランス革命は起きたのか。
・なぜアメリカ独立は成功したのか。
・なぜ日本は急速に列強へ追いつくことができたのか。
その歴史の裏には全て、帳簿を駆使する会計士たちがいた!
【目次】
■序 章 ルイ一六世はなぜ断頭台へ送られたのか
■第1章 帳簿はいかにして生まれたのか
奴隷が帳簿係を務めたアテネ、ハンムラビ法典で会計原則が定められていたバビロニア、歴代の皇帝が帳簿を公開したローマ帝国。だが古代の会計は不正に満ちていた。それはいかに進化し、複式簿記の発明へ至ったのか。
■第2章 イタリア商人の「富と罰」
教会法で金貸業が禁じられていた一四世紀のイタリアでは、商人と銀行家は常に罪の意識に苛まれていた。だが、最後の審判を恐れるその信仰心こそが、会計を発展させたのだ。彼らの秘密帳簿は、それを示している。
■第3章 新プラトン主義に敗れたメディチ家
ルネサンス期のフィレンツェを支配していたメディチ家。ヨーロッパ最大の富豪を支えた会計技術は、なぜ一世代で失われてしまったのか。その謎を解く鍵は、新プラトン主義によるエリート思想の流行にあった。
■第4章 「太陽の沈まぬ国」が沈むとき
一六世紀になっても会計への偏見は根強かった。だが、スペインは赤字続きの植民地を前に、遂に会計改革に乗り出す。重責を担ったフェリペ二世だったが、オランダの反乱・無敵艦隊の敗北など、更なる悪夢が彼を襲う。
■第5章 オランダ黄金時代を作った複式簿記
東インド会社を中心とした世界貿易で途方もない富を得たオランダ。その繁栄の秘密は、複式簿記にあった。国の統治者が史上初めて複式簿記を学び、それを政権運営に取り入れることができたのは、一体なぜなのか。
■第6章 ブルボン朝最盛期を築いた冷酷な会計顧問
ヴェルサイユ宮殿を建設したルイ一四世を支えたのは、会計顧問のコルベールだった。財政再建に奮闘したその手腕はアダム・スミスにも称賛されたが、同時に彼は会計の力で政敵を容赦なく破滅へと追い込んだ。
■第7章 英国首相ウォルポールの裏金工作
スペイン継承戦争の巨額債務や南海泡沫事件など、イギリスの財政危機を何度も救ったウォルポール。だが彼の権力と財産は、国家財政の秘密主義なくしては得られず、その長期政権も裏金工作によって支えられていた。
■第8章 名門ウェッジウッドを生んだ帳簿分析
イギリス史上最も成功した陶磁器メーカーの創立者・ウェッジウッド。彼は経営に確率の概念を取り込み、緻密な原価計算を行うことで会社を繁栄させた。この時代、富は信心と几帳面な会計の産物だとみなされていた。
■第9章 フランス絶対王政を丸裸にした財務長官
ルイ一六世から財務長官に任命されたスイスの銀行家・ネッケルは、それまで秘密のベールに包まれていた国家財政を、国民へ開示した。そのあまりにも偏った予算配分に国民たちは怒り、フランス革命が起きた。
■第10章 会計の力を駆使したアメリカ建国の父たち
「権力とは財布を握っていることだ」。アメリカ建国の父たちの一人、ハミルトンはこう喝破した。複式簿記を郵政会計に導入したフランクリン、奴隷も個人帳簿に計上したジェファーソン。彼らはみな会計の力を信じた。
■第11章 鉄道が生んだ公認会計士
鉄道の登場により、財務会計の世界は急速に複雑化した。鉄道会社は巨大企業へと成長するが、粉飾決算が横行。その監督のために公認会計士が誕生することになる。彼らは、規制がなく野放し状態のアメリカで奮闘した。
■第12章 『クリスマス・キャロル』に描かれた会計の二面性
一九世紀から二〇世紀にかけて、会計は小説や思想にどのような影響を与えたのか。父親が会計士だったディケンズ、複式簿記の発想が『種の起原』に見られるダーウィン、会計を忌避したヒトラーから見えてくるものとは。
■第13章 大恐慌とリーマン・ショックはなぜ防げなかったのか
複雑化した会計は、もはや専門教育を受けた人でなければ扱えない。その中で大手会計事務所は、監査で知り得た財務情報をもとにコンサルティング業を開始する。明らかな構造的矛盾のもと、最悪の日は近づいていた。
■終 章 経済破綻は世界の金融システムに組み込まれている
■日本版特別付録 帳簿の日本史(編集部)
- 本の長さ381ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2015/4/8
- ISBN-104163902465
- ISBN-13978-4163902463
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
未来の資産価値を現在に置きかえる帳簿が生まれたとき、世界が変わった。アダム・スミス、カール・マルクス、マックス・ウェーバー…。彼らが口を揃えて主張していた「彫簿」の力とは、一体何なのか。これまでの歴史家たちが見逃してきた「帳簿の世界史」を、会計と歴史のプロフェッショナルが、初めて紐解く。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ソール,ジェイコブ
1968年ウィスコンシン州マディソン生まれ。南カリフォルニア大学教授。歴史学と会計学を専門とし、これまでの政治歴史学者たちが見落としてきた重要な要素に注目して、近代政治や近代国家の起源を探る研究を行う
村井/章子
翻訳家。上智大学文学部卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1968年ウィスコンシン州マディソン生まれ。南カリフォルニア大学教授。歴史学と会計学を専門とし、これまでの政治歴史学者たちが見落としてきた重要な要素に注目して、近代政治や近代国家の起源を探る研究を行う
村井/章子
翻訳家。上智大学文学部卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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2018年7月25日に日本でレビュー済み
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2019年1月27日に日本でレビュー済み
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まず、日本の帳簿の歴史には触れられていない。巻末に付録として編集部が付けた数ページの小文があり、日本への言及はそこだけである。個人的には、他の方のレビューで本書に日本への言及があるように書かれていたので期待していたら巻末付録のみだったので、非常に残念だった。
(なお、原題は「世界史」とは一言も言っていないので、著者の責任ではない。未だに欧米史を世界史と同一視する、欧州中心主義から脱却できない出版社が悪い。)
肝心の内容は、「政治の安定は会計責任(accountability)が果たされる土壌にのみ実現すること、それはひとえに複式簿記に懸かっている」(p.20)というテーマ。複式簿記という単なるツール、さらにはそのツールによるきちんとした会計が必要だという倫理観が、単に経済発展だけでなく説明責任(これも英語ではaccountability)を果たす近代的な政府にも必須である、という発見は非常に魅力的である。言うなれば、誰もが認める、人類史を変えた重要な発明の一覧(火、火薬、製紙、印刷など)に、新たに複式簿記が付け加えられた、というような、歴史好きなら興奮を覚えずにはいられないテーマである。
個人的には、著者がこの発見に基づき近代「世界」史を大きなスケールで説き直す内容を期待していた。(例えば、古代からの世界の会計史(せめてイスラム圏だけでも)、なぜイスラム圏ではなく西欧で会計が発達したか、なぜ日本は素早い近代化に成功したのか、現代に至るまで近代化が遅れる地域における会計文化は、といったような…)
しかし、実際はほぼ西欧とアメリカのみ(「世界史」とした編集部が悪いのであって著書のせいではありませんが)、しかもかなりペダンティックな細部に分け入る部分が多く、期待していた内容とは違った。大きなスケールに立った観察も随所に散りばめられているものの、衒学的な部分が多すぎて埋もれてしまっている。ペダンティックな細部も悪くはないが、せっかくの大発見がもったいないとの印象が残る。今後、会計の観点からの大きなスケールの世界史本・社会史本が出るのを期待したいところである。
(なお、原題は「世界史」とは一言も言っていないので、著者の責任ではない。未だに欧米史を世界史と同一視する、欧州中心主義から脱却できない出版社が悪い。)
肝心の内容は、「政治の安定は会計責任(accountability)が果たされる土壌にのみ実現すること、それはひとえに複式簿記に懸かっている」(p.20)というテーマ。複式簿記という単なるツール、さらにはそのツールによるきちんとした会計が必要だという倫理観が、単に経済発展だけでなく説明責任(これも英語ではaccountability)を果たす近代的な政府にも必須である、という発見は非常に魅力的である。言うなれば、誰もが認める、人類史を変えた重要な発明の一覧(火、火薬、製紙、印刷など)に、新たに複式簿記が付け加えられた、というような、歴史好きなら興奮を覚えずにはいられないテーマである。
個人的には、著者がこの発見に基づき近代「世界」史を大きなスケールで説き直す内容を期待していた。(例えば、古代からの世界の会計史(せめてイスラム圏だけでも)、なぜイスラム圏ではなく西欧で会計が発達したか、なぜ日本は素早い近代化に成功したのか、現代に至るまで近代化が遅れる地域における会計文化は、といったような…)
しかし、実際はほぼ西欧とアメリカのみ(「世界史」とした編集部が悪いのであって著書のせいではありませんが)、しかもかなりペダンティックな細部に分け入る部分が多く、期待していた内容とは違った。大きなスケールに立った観察も随所に散りばめられているものの、衒学的な部分が多すぎて埋もれてしまっている。ペダンティックな細部も悪くはないが、せっかくの大発見がもったいないとの印象が残る。今後、会計の観点からの大きなスケールの世界史本・社会史本が出るのを期待したいところである。
2018年6月20日に日本でレビュー済み
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本書は世界史を帳簿(会計)の視点から考察するという今迄になかった画期的な歴史本です。
現代では、企業会計、国の財政など、帳簿=会計がなければ成り立たないことは誰もが認識していますが、
西欧史を紐解くと、会計の必要性は必ずしも理解されていなかったことがわかります。
中世のイタリア商人により考案された複式簿記は、なかなか西欧世界に根付きませんでした。
蓄財を良しとしないキリスト教(カトリック)文化、地道な作業がエリートたちの貴族趣味と相容れなかったこと、統治者や君主にとって、財務の開示は抵抗があったこと、などが背景としてあげられています。
共和政とは相性がよく、オランダの繁栄に繋がりました。
「太陽の沈まない帝国」スペインでは、植民地から莫大な富が流入するもかかわらず、帳簿をつけないため、経営にかかるコストが把握できていませんでした。
フランスの絶対王政最盛期のルイ14世は、はじめはポケットにミニ帳簿を忍ばせて歩くほど、簿記に関心を持ちましたが、そのうち嫌になってしまいます。
(戦費が嵩むなど、見たくないものを見なければならないため)
ルイ16世の時代になり、国の財政状態がはじめて国民に開示されますが、革命が勃発してしまいます。
イギリスでは、産業革命による資本主義の発達とともに、会計が浸透していきます。
アメリカでは、鉄道の敷設による会計の複雑化から、はじめて「会計士」という職業が生まれました。
など、非常に簡略化するとこのようなことが他にもいろいろ書かれていて、
「会計が文化の中に組み込まれていた社会は繁栄する」p362
ということに尽きます。
様々な興味深いエピソードがあり、、個性的な人物も登場します。
フランス革命あたりが佳境ですが、私が個人的に面白いと感じたのは、フランスとイギリスとほぼ同時期に起きた投機バブルについての、両国の対応の違いです。
この時イギリスで辣腕を振るった政治家の人物像がとても印象的でした。
会計的発想は、文学や科学にも見ることが出来、会計が数字を扱うだけの無味乾燥なものではないことがわかります。
「心の帳簿」なるものも存在し、来るべき「精算(=審判)」の日に備えるなど面白さは尽きません。
リーマンショックについて書かれている最終章は、私には難しかったです。
本書は、歴史好きの方であれば、複式簿記、会計の知識の有無にかかわらず、楽しく読める本だと思いますが、知識があればより面白く感じると思います。
なお、本書は文庫本で400ページ弱ではありますが、小さな字でぎっしりと印刷されているため、思ったよりボリュームがありました。
読みづらいと思うこともあり、単行本の方がより楽しめたかな、と思いました。
現代では、企業会計、国の財政など、帳簿=会計がなければ成り立たないことは誰もが認識していますが、
西欧史を紐解くと、会計の必要性は必ずしも理解されていなかったことがわかります。
中世のイタリア商人により考案された複式簿記は、なかなか西欧世界に根付きませんでした。
蓄財を良しとしないキリスト教(カトリック)文化、地道な作業がエリートたちの貴族趣味と相容れなかったこと、統治者や君主にとって、財務の開示は抵抗があったこと、などが背景としてあげられています。
共和政とは相性がよく、オランダの繁栄に繋がりました。
「太陽の沈まない帝国」スペインでは、植民地から莫大な富が流入するもかかわらず、帳簿をつけないため、経営にかかるコストが把握できていませんでした。
フランスの絶対王政最盛期のルイ14世は、はじめはポケットにミニ帳簿を忍ばせて歩くほど、簿記に関心を持ちましたが、そのうち嫌になってしまいます。
(戦費が嵩むなど、見たくないものを見なければならないため)
ルイ16世の時代になり、国の財政状態がはじめて国民に開示されますが、革命が勃発してしまいます。
イギリスでは、産業革命による資本主義の発達とともに、会計が浸透していきます。
アメリカでは、鉄道の敷設による会計の複雑化から、はじめて「会計士」という職業が生まれました。
など、非常に簡略化するとこのようなことが他にもいろいろ書かれていて、
「会計が文化の中に組み込まれていた社会は繁栄する」p362
ということに尽きます。
様々な興味深いエピソードがあり、、個性的な人物も登場します。
フランス革命あたりが佳境ですが、私が個人的に面白いと感じたのは、フランスとイギリスとほぼ同時期に起きた投機バブルについての、両国の対応の違いです。
この時イギリスで辣腕を振るった政治家の人物像がとても印象的でした。
会計的発想は、文学や科学にも見ることが出来、会計が数字を扱うだけの無味乾燥なものではないことがわかります。
「心の帳簿」なるものも存在し、来るべき「精算(=審判)」の日に備えるなど面白さは尽きません。
リーマンショックについて書かれている最終章は、私には難しかったです。
本書は、歴史好きの方であれば、複式簿記、会計の知識の有無にかかわらず、楽しく読める本だと思いますが、知識があればより面白く感じると思います。
なお、本書は文庫本で400ページ弱ではありますが、小さな字でぎっしりと印刷されているため、思ったよりボリュームがありました。
読みづらいと思うこともあり、単行本の方がより楽しめたかな、と思いました。
ベスト500レビュアー
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この本としては、複式簿記の発生をヨーロッパとしているが、実は遠方交易をしていたイスラム商人やユダヤ商人の説もあるという。
私的にはイスラム商人や東洋の貿易商人のことも書いて欲しかった。無理な要求だろうか?
日本でも複式簿記によく似た帳簿がすでに江戸時代にあったことは知らなかった。なるほど、だから近代国家としてすぐに変貌できたわけだ。
「ずる」が横行する中国の様な国や、発展途上国で長期的な企業として発展しないのもこの地道な仕事が出来ないからだろう。
私はどこでこの複式簿記が発生したかに興味はないのだが、帳簿を取るということは節約・節制を無意識レベルで行うことに他ならない。
重要なのは、これが一時期有名になったカロリーを全て帳簿付けする岡田 斗司夫 「 レコーディング・ダイエット決定版 」があったが、これと同じことが会社の経営でも行うと、企業の動きがリアルに分かるという大きな利点が生まれる(けれど、カロリー制限は脳の栄養素まで削り、その反動でリバウンドの危険があるので、最近は糖質制限の方が望ましいのは言うまでもない)。現代のIT技術で、原価計算をIot等を駆使すればリアルタイムに把握できるはずで、私の知っている会社では原価計算が公開されていて、利益率や生産高が全部各従業員に見ることが出来るらしい。
こうなると各従業員で競争原理が働いて良好な生産性の向上が促されるという。大手企業でも取り入れられているが、こういう会社で独創的な人材が育つこともこれまた少なくなるので、諸刃の刃だろうとは思うが。
しかし、この本で書かれている論点はそこではない。歴史を通じて、多くの人は、無意識にでも「ずる」をしたがるのか、ということに尽きている。
ダン・アリエリー「 ずる――噓とごまかしの行動経済学 」という良著がある。
この本がその疑問にほとんど応えてくれている。「熟慮的な論理的思考力が支配されると、衝動システムが行動を支配する様になる」
つまりフラストレーションを貯めると欲求に屈しやすくなるということだ。精神的な「過剰」を貯め込めば、どこかで「蕩尽」されることになる。ジョルジュ・バタイユ「 呪われた部分 」を読めば、浪費こそ「労働」だったとわかる。
無意識の衝動を制御する「方法」、計算可能性を照合する方法として「簿記」は極めて有効ではあるが、人間の「欲望」を制御するにはあまりにも面倒くさい方法である。ウェッジウッドの様な企業家、ベンジャミン・フランクリン(最終的には欲望に屈したが)の様な人は精神のコントロールする方法が、文字に書きだすことでしかないことに気づいたからこそ有能なのだが、その意思が習慣化されるまでになっていたことが偉大なのだ。現代ならもっと楽にそういうシステムが組めそうだが、外部の会計士がまず逐一チェックしてくれるか?公開帳簿に踏み切る勇気が今の企業の多くにあるか?
まあ今の人類の精神レベルでは不可能に近い(笑)。
推理で極論を言ってしまえば、文字が生み出されたのは、記録という「誇示」する欲望があったということではないか。最も当初は人口が集中した都市において税や資産を記録する必要から発生したかもしれない。「ずる」するという信用がならない人間の精神を、見抜いたからこそ記録する行為とそして「文字」が生まれたのだろう。この「ずる」は厄介だ。今後人間の最大の悩みの種はこれに集約されるに違いない。
P・S カルロス・ゴーンが逮捕されましたね(笑)。役員報酬が高すぎる批判があった上に、不正な会計操作までしていたとは。
私的にはイスラム商人や東洋の貿易商人のことも書いて欲しかった。無理な要求だろうか?
日本でも複式簿記によく似た帳簿がすでに江戸時代にあったことは知らなかった。なるほど、だから近代国家としてすぐに変貌できたわけだ。
「ずる」が横行する中国の様な国や、発展途上国で長期的な企業として発展しないのもこの地道な仕事が出来ないからだろう。
私はどこでこの複式簿記が発生したかに興味はないのだが、帳簿を取るということは節約・節制を無意識レベルで行うことに他ならない。
重要なのは、これが一時期有名になったカロリーを全て帳簿付けする岡田 斗司夫 「 レコーディング・ダイエット決定版 」があったが、これと同じことが会社の経営でも行うと、企業の動きがリアルに分かるという大きな利点が生まれる(けれど、カロリー制限は脳の栄養素まで削り、その反動でリバウンドの危険があるので、最近は糖質制限の方が望ましいのは言うまでもない)。現代のIT技術で、原価計算をIot等を駆使すればリアルタイムに把握できるはずで、私の知っている会社では原価計算が公開されていて、利益率や生産高が全部各従業員に見ることが出来るらしい。
こうなると各従業員で競争原理が働いて良好な生産性の向上が促されるという。大手企業でも取り入れられているが、こういう会社で独創的な人材が育つこともこれまた少なくなるので、諸刃の刃だろうとは思うが。
しかし、この本で書かれている論点はそこではない。歴史を通じて、多くの人は、無意識にでも「ずる」をしたがるのか、ということに尽きている。
ダン・アリエリー「 ずる――噓とごまかしの行動経済学 」という良著がある。
この本がその疑問にほとんど応えてくれている。「熟慮的な論理的思考力が支配されると、衝動システムが行動を支配する様になる」
つまりフラストレーションを貯めると欲求に屈しやすくなるということだ。精神的な「過剰」を貯め込めば、どこかで「蕩尽」されることになる。ジョルジュ・バタイユ「 呪われた部分 」を読めば、浪費こそ「労働」だったとわかる。
無意識の衝動を制御する「方法」、計算可能性を照合する方法として「簿記」は極めて有効ではあるが、人間の「欲望」を制御するにはあまりにも面倒くさい方法である。ウェッジウッドの様な企業家、ベンジャミン・フランクリン(最終的には欲望に屈したが)の様な人は精神のコントロールする方法が、文字に書きだすことでしかないことに気づいたからこそ有能なのだが、その意思が習慣化されるまでになっていたことが偉大なのだ。現代ならもっと楽にそういうシステムが組めそうだが、外部の会計士がまず逐一チェックしてくれるか?公開帳簿に踏み切る勇気が今の企業の多くにあるか?
まあ今の人類の精神レベルでは不可能に近い(笑)。
推理で極論を言ってしまえば、文字が生み出されたのは、記録という「誇示」する欲望があったということではないか。最も当初は人口が集中した都市において税や資産を記録する必要から発生したかもしれない。「ずる」するという信用がならない人間の精神を、見抜いたからこそ記録する行為とそして「文字」が生まれたのだろう。この「ずる」は厄介だ。今後人間の最大の悩みの種はこれに集約されるに違いない。
P・S カルロス・ゴーンが逮捕されましたね(笑)。役員報酬が高すぎる批判があった上に、不正な会計操作までしていたとは。






