ヒトラーの格好をした俳優がチャップリンのように単身で動物にコケにされまくって毒づいたり肥溜めに突っ込んでるのに堂々としているタイプの映画かと思っていたのですが全く違いました。下ネタに頼った馬鹿馬鹿しいギャグや手垢のついたブラックジョークの寄せ集めではない、社会派のジャーマン・コメディです。
序盤はこの手のストーリーでお馴染みの、蘇ったヒトラーが現代ドイツの社会情勢や文明に触れて驚嘆するシーンが描かれますが、その描き方が面白い。蘇った瞬間から現代ドイツ人の衆目に晒され、「今どきドイツでヒトラーのコスプレをしてるヤバイやつ」と観光客にも面白がられスマホに囲まれ記念撮影の嵐を受けます。新聞スタンドという1945年から変わらず存続しているメディア・スポットの力を得てからは今の自分の状況を完全に把握し、自分の見た目とその状況を目的達成のために利用していく話になります。彼に国への不満を取材されたドイツ人たちが皆彼に共感を示され、いつの間にか自分が彼に共感しているのだと錯覚に陥っていく様が実に自然に描かれていて見事です。
下らないと思いつつもだらだらとテレビを見てしまうタイプの国民が現状に対して抱えている不満を、威厳漂う身なりでユーモアを交えながら優しい眼差しで堂々と代弁するヒトラーの姿は、ひょっとすると理想的なリーダーの姿に見えてしまうかもしれませんが、絶対に忘れてはいけないのは、彼が作中で初めてインターネットに接したときに真っ先に検索した言葉が何であるかです。
この映画を表す一言は
「笑うな危険」
これに尽きる。

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