2015年1月27日、アウシュヴィッツ強制収容所の解放70周年の行事としてベルリンで演奏会が開かれた。ベルリン・フィルの団員によって、かつてホロコーストの犠牲者が持っていた楽器(15挺のヴァイオリンと1挺のチェロ)が演奏された。これらの楽器を提供したのはイスラエルに住むヴァイオリン職人のアムノン・ヴァインシュタインである。親族のほとんどをホロコーストで失った彼はホロコーストを潜り抜けた楽器を集め、修復し、その持ち主の物語を発掘して伝える「希望のヴァイオリン・プロジェクト」を主宰している。
本書にはホロコーストをめぐる7挺のヴァイオリンの物語が載せられている。そのいずれもが迫害と死の恐怖の中でヴァイオリンが希望の光であったことを示している。イスラエルに向かうはずのユダヤ難民を乗せた船が英国の意向でインド洋のモーリシャス島に着いた。そこで4年間抑留されたが、ヴァイオリンによって生きる希望をもてた人、アウシュヴィッツの収容所の中につくられた囚人オーケストラで演奏することによって厳しい収容所生活に耐えた人、ナチスに追われ難民として逃避行を続けるなかでヴァイオリンが弾けることで救われた人、等々。どの話からも音楽がもつ、人を感動させる力の大きさを認めることができる。
私がもっとも胸打たれたのはウクライナのユダヤ少年の物語である。貧しい農家に生まれた男の子は父からヴァイオリンを習った。侵入したドイツ軍に目の前で両親と妹を殺された12歳の少年は森へ逃げ込みパルチザンに入る。彼は自ら進んでドイツ軍の部隊に忍び込み、食堂でヴァイオリンを弾くことを求められたのを利用して敵陣の爆破に成功する。両親と妹の仇討ちを果たした少年はリーダーからの帰郷の勧めを断り、ソヴィエト軍に入りドイツ軍と戦い続けるが、終戦間際の戦闘で命を落とす。少年の死後、彼のヴァイオリンはイスラエルのヴァインシュタインの元へ届けられた。
音楽の力で運よくホロコーストを生き延びた人もいるが、無数の命がナチスの暴虐によってこの世から消された事実は変わらない。それを思うと「音楽の力」の過大視はできないだろう。本書ではホロコーストの悲惨さにはとりたてて焦点を当ててはいない。ヴァイオリンとその持ち主の運命を淡々と記述しているのだが、あの壮絶なナチスによるユダヤ人迫害に加担した多くの国民がいたことも隠さずに記述している。ユダヤ人は全財産を放棄して初期は国外脱出、やがては強制連行に至るのだが、残された財産は国と隣人たちが略奪したのであった。そのために密告が横行したことも記されている。
ヴァイオリン演奏の歴史はユダヤ人演奏家の歴史と言っても過言ではない。ハイフェッツ、シェリング、シゲティ、パールマン、クレーメル、ヴェンゲローフ…。ユダヤ人にとってヴァイオリンは何世紀にわたってユダヤ文化の重要な側面を担ってきた。彼らは民族の感情と誇りをこの楽器に託して生きてきたのである。ナチスがワーグナーなどの音楽をプロパガンダに利用したことはよく知られているが、ユダヤ人がヴァイオリンによる音楽の力によって厳しい迫害を生き抜こうとしたことはもっと知られていいと思うのだ。
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希望のヴァイオリン:ホロコーストを生きぬいた演奏家たち 単行本 – 2016/2/23
ジェイムズ・A・グライムズ
(著),
宇丹 貴代実
(翻訳)
購入を強化する
《音楽が力、支え、ときには武器となった時代》
楽器修理人アムノンの元には、ホロコーストをくぐり抜けた多くの楽器が持ち込まれた。音楽を力に生き延びた有名無名の持ち主の物語。
「これらの楽器は、あの世からの証言なのです。」
音楽が生きる力、命を救う手段、そして復讐の武器だった時代、ユダヤ人ゲットーで、強制収容所で、パルチザンの部隊で、ヴァイオリンとともに生きた有名無名の演奏家たちがいた。
「一九八〇年代末に、アウシュヴィッツでヴァイオリンを弾いていた男がアムノンの工房を訪れた。死の収容所を出てからこのかた手を触れずにきた自分の楽器を、孫息子のために修復してほしいのだという。ヴァイオリンの表板は演奏中に雨や雪にさらされたせいでぼろぼろになっていた。分解すると中から灰が出てきた。どう考えても、アウシュヴィッツの死体焼却場から舞い落ちてきたものだ。」(本文より)
[目次]
プロローグ アムノンのヴァイオリン
第1章 「ワーグナー」のヴァイオリン
第2章 エーリヒ・ヴァイニンガーのヴァイオリン
第3章 アウシュヴィッツのヴァイオリン
第4章 オーレ・ブルのヴァイオリン
第5章 ファイヴェル・ヴィーニンガーのヴァイオリン
第6章 モテレ・シュラインのヴァイオリン
エピローグ シモン・クロンゴルトのヴァイオリン
謝辞
訳者あとがき
参考文献
原註
索引
[原題]Violins of Hope: Violins of the Holocaust―Instruments of Hope and Liberation in Mankind's Darkest Hour
楽器修理人アムノンの元には、ホロコーストをくぐり抜けた多くの楽器が持ち込まれた。音楽を力に生き延びた有名無名の持ち主の物語。
「これらの楽器は、あの世からの証言なのです。」
音楽が生きる力、命を救う手段、そして復讐の武器だった時代、ユダヤ人ゲットーで、強制収容所で、パルチザンの部隊で、ヴァイオリンとともに生きた有名無名の演奏家たちがいた。
「一九八〇年代末に、アウシュヴィッツでヴァイオリンを弾いていた男がアムノンの工房を訪れた。死の収容所を出てからこのかた手を触れずにきた自分の楽器を、孫息子のために修復してほしいのだという。ヴァイオリンの表板は演奏中に雨や雪にさらされたせいでぼろぼろになっていた。分解すると中から灰が出てきた。どう考えても、アウシュヴィッツの死体焼却場から舞い落ちてきたものだ。」(本文より)
[目次]
プロローグ アムノンのヴァイオリン
第1章 「ワーグナー」のヴァイオリン
第2章 エーリヒ・ヴァイニンガーのヴァイオリン
第3章 アウシュヴィッツのヴァイオリン
第4章 オーレ・ブルのヴァイオリン
第5章 ファイヴェル・ヴィーニンガーのヴァイオリン
第6章 モテレ・シュラインのヴァイオリン
エピローグ シモン・クロンゴルトのヴァイオリン
謝辞
訳者あとがき
参考文献
原註
索引
[原題]Violins of Hope: Violins of the Holocaust―Instruments of Hope and Liberation in Mankind's Darkest Hour
- 本の長さ284ページ
- 言語日本語
- 出版社白水社
- 発売日2016/2/23
- 寸法13.8 x 2.5 x 19.5 cm
- ISBN-104560084785
- ISBN-13978-4560084786
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
音楽が生きる力、命を救う手段、そして復讐の武器だった時代、ユダヤ人ゲットーで、強制収容所で、パルチザンの部隊で、ヴァイオリンとともに生きた有名無名の演奏家たちがいた。
著者について
ジェイムズ・A・グライムズ James A. Grymes
アメリカの音楽学者、ノースカロライナ大学シャーロット校教授。フロリダ州立大学でPhDを取得、ハンガリーの作曲家ドホナーニについて、評伝Ernst von Dohnányi: A Song of Life(イローナ・フォン・ドホナーニとの共著)ほか、複数の著書がある。邦訳は本書が初めて。
訳者:
上智大学法学部国際関係法学科卒業、
翻訳家
訳書に、コリンガム『戦争と飢餓』(河出書房新社)、レスター『ダ・ヴィンチ・ゴースト――ウィトルウィウス的人体図の謎』、シャピロ『マンモスのつくりかた――絶滅生物がクローンでよみがえる』(以上、筑摩書房)など。
アメリカの音楽学者、ノースカロライナ大学シャーロット校教授。フロリダ州立大学でPhDを取得、ハンガリーの作曲家ドホナーニについて、評伝Ernst von Dohnányi: A Song of Life(イローナ・フォン・ドホナーニとの共著)ほか、複数の著書がある。邦訳は本書が初めて。
訳者:
上智大学法学部国際関係法学科卒業、
翻訳家
訳書に、コリンガム『戦争と飢餓』(河出書房新社)、レスター『ダ・ヴィンチ・ゴースト――ウィトルウィウス的人体図の謎』、シャピロ『マンモスのつくりかた――絶滅生物がクローンでよみがえる』(以上、筑摩書房)など。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
グライムズ,ジェイムズ・A.
アメリカの音楽学者、ノースカロライナ大学シャーロット校教授。フロリダ州立大学でPhDを取得、ハンガリーの作曲家ドホナーニについて、複数の著書がある
宇丹/貴代実
上智大学法学部国際関係法学科卒業、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
アメリカの音楽学者、ノースカロライナ大学シャーロット校教授。フロリダ州立大学でPhDを取得、ハンガリーの作曲家ドホナーニについて、複数の著書がある
宇丹/貴代実
上智大学法学部国際関係法学科卒業、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 白水社 (2016/2/23)
- 発売日 : 2016/2/23
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 284ページ
- ISBN-10 : 4560084785
- ISBN-13 : 978-4560084786
- 寸法 : 13.8 x 2.5 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 731,876位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 2,919位ヨーロッパ史一般の本
- - 75,140位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
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2016年3月14日に日本でレビュー済み
モシェとゴルダ夫妻は第二次世界大戦の直前、パレスチナにたどりつく。やがて、ヨーロッパに残っていた親族が皆殺しにあったという報せを受け取る。その後は、モシェは自身の親族について二度と語からず、ゴルダも息子のアムノンに祖父母や親族について尋ねられても、詳しく語ることができなかった。そのため、モシェの家業を継いで弦楽器製作者(リュティエ)となったアムノンも、過去に目を向けることなく修業に励んだ。しかし、1980年代あたりから、工房にホロコーストをくぐり抜けたヴァイオリンなどが持ち込まれ、その修復の依頼を受けるようになる。本書は、それらの楽器にまつわる物語である。
それぞれの楽器には、名器でないものも含まれている。また、持ち主たちもプロの演奏家ばかりではない。しかし、迫害の日々のなかで楽器を愛し、音楽を愛している。彼らの奏でる演奏は、強制収容所のつらい日々の中で、安らぎや喜びをもたらしている姿が描かれる。一方で、かなり悲惨な状況下での演奏もあれば、ドイツ人を含む支配者のための演奏もある。そのため、楽器を演奏することによって、命を救われたり、生き延びたケースも紹介されている。
何ともやっかいなことは、優れた演奏や音楽を愛するドイツ人が、平気でユダヤ人を殺害し、その財産を略奪していることだ(正確に書けばユダヤ人迫害に加担したのはドイツ人だけではない)。芸術への愛と、博愛や平等精神は単純に結びつかない。もちろん、ユダヤ人に与した人々がいないわけでもないが、全体としては少数者である。美を敬愛することを否定する気などないが、美への愛と博愛が結びつかないことがあることも忘れてはならないことの一つなのだろう。
なお、訳者によると、2015年1月27日、国際ホロコースト祈念日演奏会「希望のヴァイオリン」が、アムノンのもとに集まった楽器を使ってベルリン・フィルハーモニーによって行われている。ここにはドイツの外務大臣も出席し、二度と国内で反ユダヤ主義を台頭させてはならないと述べたそうである。
それぞれの楽器には、名器でないものも含まれている。また、持ち主たちもプロの演奏家ばかりではない。しかし、迫害の日々のなかで楽器を愛し、音楽を愛している。彼らの奏でる演奏は、強制収容所のつらい日々の中で、安らぎや喜びをもたらしている姿が描かれる。一方で、かなり悲惨な状況下での演奏もあれば、ドイツ人を含む支配者のための演奏もある。そのため、楽器を演奏することによって、命を救われたり、生き延びたケースも紹介されている。
何ともやっかいなことは、優れた演奏や音楽を愛するドイツ人が、平気でユダヤ人を殺害し、その財産を略奪していることだ(正確に書けばユダヤ人迫害に加担したのはドイツ人だけではない)。芸術への愛と、博愛や平等精神は単純に結びつかない。もちろん、ユダヤ人に与した人々がいないわけでもないが、全体としては少数者である。美を敬愛することを否定する気などないが、美への愛と博愛が結びつかないことがあることも忘れてはならないことの一つなのだろう。
なお、訳者によると、2015年1月27日、国際ホロコースト祈念日演奏会「希望のヴァイオリン」が、アムノンのもとに集まった楽器を使ってベルリン・フィルハーモニーによって行われている。ここにはドイツの外務大臣も出席し、二度と国内で反ユダヤ主義を台頭させてはならないと述べたそうである。
2019年2月2日に日本でレビュー済み
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ホロコーストを潜った演奏家たちのヴァイオリンを
証言として使用する
追悼音楽会「希望のヴァイオリン 2013年」をTV放送で視聴。
このプロジェクトの設立者は、
父親の代からヴァイオリン職人アムノン・ヴァインシュテイン氏。
尊父故モシェ・ヴァインシュテインが師事した、ヴァイオリン製作者
故ヤーコブ・ツィンマーマン氏のヴァイオリンを演奏する
シュロモ・ミンツ氏の音楽を愛聴。そして
ベートーヴェン交響曲第5番最終楽章を、
ホロコースト犠牲者たちのヴァイオリン13挺で
モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団員が演奏すると、
迫力があり感極まった。
挿入される簡潔な説明だけでなく、
もっと詳しく知りたいと本書を購読。
外出先でも間隙を縫って読み進め、持ち歩く時は、
何かとても重要な内容が含まれているという感がしていた。
第1章
現在のイスラエル管弦楽団の前身である
パレスチナ管弦楽団の発足人で、ヴァイオリンの巨匠
故ブロニスラフ・フーベルマン氏の尽力が描かれている。
パレスチナ管弦楽団は、
イギリス委任統治領パレスチナ時代の1936年に創設、
初演は同年12月26日にテル=アヴィヴにおいて
アルトゥール・トスカニーニが指揮。
欧州各地で政治的理由から解雇された
多数のユダヤ人音楽家を楽団員とすることで、
ホロコーストからいかに救っていったかの記。
首相ヒトラーの悪法が施行されていく過程が詳しくわかる。
第3章
1946年に、アウシュビッツ生存者がヴァイオリンを
アブラハーム・ダヴィッドヴィッツ氏に50ドルで売却した。
当時、ダヴィッドヴィッツ氏は
アメリカ・ユダヤ人共同配給委員会で働き、
ホロコースト難民支援をしていた。
息子のフレディらは、アムノン W.氏へ修復のため持ち込み、
70年ぶりにこの2013年の音楽会
プログラム第一曲目Gianluigi Gelmetti作曲
『Ke’ev(苦痛)』にて、
モンテカルロ・フィル首席奏者ダヴィッド・ルフェーヴル氏が使用して演奏。
第4章ノルウェー編、
第5章ルーマニア 編は“芸は身を助けた”逸話。
今まで、ユダヤ人について
不明瞭な認識であったことを改めて知った。
例えば、南アフリカにもユダヤ人共同体があったこと、
ノルウェーでのユダヤ人の状況と経緯、
ルーマニアにはユダヤ人が、
ロシア、ポーランドに次いで3番目に数が多かったこと。
死の輸送から、見せしめの射殺、当然の衰弱死、
絶滅を目的とした大量虐殺まで、強制収容所以外でも
至るところでユダヤ人がホロコーストで落命した様子が分かる。
第6章パルチザンのウクライナ少年、故モテレ・シュレイン君の復讐。
本書を読み始めた日に、
ジョンウィリアムズ作曲「シンドラーのリストのテーマ」が
脳裏に流れてきた。
現在、この利発だったモテレ君のヴァイオリンは、
ホロコースト記念館の常設展示品で、
近くにシンドラーのリストも展示されているとある。
気の効いた演奏と心得た行動力のあったモテレ君が偲ばれる。
2008年9月24日の第1回「希望のヴァイオリン」コンサートにて、
モテレ君が最後に弾いてから65年ぶりに演奏で使用された。
エピローグ
ナチスによるユダヤ人の絶滅政策は、
大規模な国家レベルでの一種の集団ヒステリー。
コストを考えて、非情で以て遂行し、
例えば定員を倍以上越え窒息死までさせて輸送して、
その後の収入・収益はどれくらいだったのか。
口減らし感覚で虐殺、強制労働による搾取や、
ユダヤ人が社会的に占めていたポストや資産を
剥奪や接収と横領をした後、
短期間でも果たしてどれ程の利益があったのだろうか。
歴史の闇である。
本書から離れて、
ホロコーストから生き延びた人々の移住先の国
イスラエルの現況は、
分割後のパレスチナとの複雑で新たな悲劇に
まだ終止符が打たれていない。
米国の大使館移転への抗議デモで、
パレスチナの看護師
故ラザーン・ナッジャールRazaan Alnaggarさん(享年21歳)は、
2018年6月1日にイスラエル軍の銃撃で落命。
医療ボランティアとして最前線、
イスラエルとの境界線から50メートル離れた地点で
けが人が出た場合にすぐに駆けつけられるよう待機、
白衣を着衣していたにも関わらず、
正面からイスラエル軍の銃撃をうける。
圧倒的な軍事力の格差でも自衛の砲撃と云う、
暗殺のような殉死である。
両国のこのような悲劇が、一刻も早く終わることを祈念する。
壊れたり傷んだものを直すという営為は、
人の気持ちを温かく満たすものがあるが、
本書の場合は格別なのだ。
本書とこの平和活動から、
リンチによる被害から不登校とその後遺症に
長く苦しんだ息子の心身が快癒していく希望と、
未来への活力を母親の私は得た。
ナチスドイツによるユダヤ人作曲家の演奏禁止に抗議して、
パレスチナ管弦楽団の初演プログラムで選ばれた
Felix Mendelssohnの誕生日(1809年2月3日)に。
証言として使用する
追悼音楽会「希望のヴァイオリン 2013年」をTV放送で視聴。
このプロジェクトの設立者は、
父親の代からヴァイオリン職人アムノン・ヴァインシュテイン氏。
尊父故モシェ・ヴァインシュテインが師事した、ヴァイオリン製作者
故ヤーコブ・ツィンマーマン氏のヴァイオリンを演奏する
シュロモ・ミンツ氏の音楽を愛聴。そして
ベートーヴェン交響曲第5番最終楽章を、
ホロコースト犠牲者たちのヴァイオリン13挺で
モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団員が演奏すると、
迫力があり感極まった。
挿入される簡潔な説明だけでなく、
もっと詳しく知りたいと本書を購読。
外出先でも間隙を縫って読み進め、持ち歩く時は、
何かとても重要な内容が含まれているという感がしていた。
第1章
現在のイスラエル管弦楽団の前身である
パレスチナ管弦楽団の発足人で、ヴァイオリンの巨匠
故ブロニスラフ・フーベルマン氏の尽力が描かれている。
パレスチナ管弦楽団は、
イギリス委任統治領パレスチナ時代の1936年に創設、
初演は同年12月26日にテル=アヴィヴにおいて
アルトゥール・トスカニーニが指揮。
欧州各地で政治的理由から解雇された
多数のユダヤ人音楽家を楽団員とすることで、
ホロコーストからいかに救っていったかの記。
首相ヒトラーの悪法が施行されていく過程が詳しくわかる。
第3章
1946年に、アウシュビッツ生存者がヴァイオリンを
アブラハーム・ダヴィッドヴィッツ氏に50ドルで売却した。
当時、ダヴィッドヴィッツ氏は
アメリカ・ユダヤ人共同配給委員会で働き、
ホロコースト難民支援をしていた。
息子のフレディらは、アムノン W.氏へ修復のため持ち込み、
70年ぶりにこの2013年の音楽会
プログラム第一曲目Gianluigi Gelmetti作曲
『Ke’ev(苦痛)』にて、
モンテカルロ・フィル首席奏者ダヴィッド・ルフェーヴル氏が使用して演奏。
第4章ノルウェー編、
第5章ルーマニア 編は“芸は身を助けた”逸話。
今まで、ユダヤ人について
不明瞭な認識であったことを改めて知った。
例えば、南アフリカにもユダヤ人共同体があったこと、
ノルウェーでのユダヤ人の状況と経緯、
ルーマニアにはユダヤ人が、
ロシア、ポーランドに次いで3番目に数が多かったこと。
死の輸送から、見せしめの射殺、当然の衰弱死、
絶滅を目的とした大量虐殺まで、強制収容所以外でも
至るところでユダヤ人がホロコーストで落命した様子が分かる。
第6章パルチザンのウクライナ少年、故モテレ・シュレイン君の復讐。
本書を読み始めた日に、
ジョンウィリアムズ作曲「シンドラーのリストのテーマ」が
脳裏に流れてきた。
現在、この利発だったモテレ君のヴァイオリンは、
ホロコースト記念館の常設展示品で、
近くにシンドラーのリストも展示されているとある。
気の効いた演奏と心得た行動力のあったモテレ君が偲ばれる。
2008年9月24日の第1回「希望のヴァイオリン」コンサートにて、
モテレ君が最後に弾いてから65年ぶりに演奏で使用された。
エピローグ
ナチスによるユダヤ人の絶滅政策は、
大規模な国家レベルでの一種の集団ヒステリー。
コストを考えて、非情で以て遂行し、
例えば定員を倍以上越え窒息死までさせて輸送して、
その後の収入・収益はどれくらいだったのか。
口減らし感覚で虐殺、強制労働による搾取や、
ユダヤ人が社会的に占めていたポストや資産を
剥奪や接収と横領をした後、
短期間でも果たしてどれ程の利益があったのだろうか。
歴史の闇である。
本書から離れて、
ホロコーストから生き延びた人々の移住先の国
イスラエルの現況は、
分割後のパレスチナとの複雑で新たな悲劇に
まだ終止符が打たれていない。
米国の大使館移転への抗議デモで、
パレスチナの看護師
故ラザーン・ナッジャールRazaan Alnaggarさん(享年21歳)は、
2018年6月1日にイスラエル軍の銃撃で落命。
医療ボランティアとして最前線、
イスラエルとの境界線から50メートル離れた地点で
けが人が出た場合にすぐに駆けつけられるよう待機、
白衣を着衣していたにも関わらず、
正面からイスラエル軍の銃撃をうける。
圧倒的な軍事力の格差でも自衛の砲撃と云う、
暗殺のような殉死である。
両国のこのような悲劇が、一刻も早く終わることを祈念する。
壊れたり傷んだものを直すという営為は、
人の気持ちを温かく満たすものがあるが、
本書の場合は格別なのだ。
本書とこの平和活動から、
リンチによる被害から不登校とその後遺症に
長く苦しんだ息子の心身が快癒していく希望と、
未来への活力を母親の私は得た。
ナチスドイツによるユダヤ人作曲家の演奏禁止に抗議して、
パレスチナ管弦楽団の初演プログラムで選ばれた
Felix Mendelssohnの誕生日(1809年2月3日)に。





