岩波講座・現代社会学第22巻、「メディアと情報化の社会学」。吉見俊哉氏の「序」に続くのは同じく吉見氏の「電子情報化とテクノロジーの政治学」。19世紀の終わり頃から20世紀の初めにおける「エレクトリシャン」と呼ばれた電気技術者集団が共通して備えていた性向や社会的主張、資本主義体制への回収の様相などや、マクルーハンの議論やベネディクト・アンダーソン「想像の共同体」を援用してメディア自体の持つ政治性を示していく。以下、明治維新下の日本で電信網の整備が国民国家及び「国民」の形成に大きな役割を果たしたことを通じてメディアと権力の共犯関係を示した論文、印刷術が近代の知の枠組を準備したことを示した論文、グローバルメディアがコングロマリットとなってローカルの価値体系を侵食する文化帝国主義論の解説と批判的検討などを収録。中でも石田佐恵子氏「メディア時代の<現実>探しゲーム」は、特にテレビメディアが行う「状況の定義」、特にリアリティを定義しようとする手口・振る舞いが丁寧に記述されている論文だ。まるでメディアが状況を定義する主体である「かのように」振舞うやり口は今や多くの人に理解され始めている。なお、森岡氏、嘉田・大西両氏による論文は内容的に古くなってしまっている。現実が認識を追い越してしまったようだ。情報化を扱う論文に固有の現象だ。
他にも細かい部分、例えば電話は当初演奏会の中継に多く使われたとか、ラジオが当初は双方向のメディアだったとか、そんなところにも面白みのある1冊です。
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