小国の末の王女で20歳のヒロインは、母親が多産だったことを見込まれ、北の大国の
神王となったヒーローと政略結婚することになります。
ヒロインが神王妃に望まれた背景にはヒーロー以外の神王に連なる王族が皆無で
あることが原因でした。
ヒーローが王位に就くまで紆余曲折あり、前王や家族がヒーローを残して宰相の手に
かかってしまい、一人だけ忠臣の手を借りて辺境の塔へ逃げていました。
この北の大国は、「神王」という血筋の者が祭祀を司らないと衰退してしまいます。
宰相の失政が続き、国が荒れ果てた頃に、ヒーローが国の貴族たちに担ぎ上げられ
宰相を討ち、王権を取り戻します。
ヒーローの神王は、家族を宰相によって奪われたことから、孤独で凍てついた眼をした
人物ですが、結婚式の食べ物のやり取りや普段の交流を通して、野生の狼のように
尖った心がヒロインによってほぐれていき、ヒロインには心を許し、執着するように
なっていきます。
感想を言うと、題材は悪くないのですが、うまく設定を生かし切れていない印象を受けました。
題名の「少年王」もヒロインと年の差があるように想定してしまいますが、２歳差で
ヒーローは１８歳です。１８歳で少年王は少し違和感があるように感じます。
むしろ家族を失ったことで、「孤独な青年王」としたほうが誤解がなくて良かった気がします。
ヒーローはヒロインとは心を許しあうのですが、宰相に裏切られたことで臣下を信じ切ることが
できません。そのことを臣下たちは心配しているのですが、うまく噛み合わないでいます。
結末付近の忠臣の息子でヒーローを心配して、昔宰相の手から逃がす手助けをした人物も
存在感が薄いですし、（何よりそんな恩人の顔を覚えていないという設定が少し無理があります）
「嫁さらい」でヒロインが姿を消す展開も無理やりな印象で、他国のヒロインがよく了承したと
違和感が拭えませんでした。
作者様は今作がデビュー作ということで、設定をうまく生かし切れていないように感じたのが残念です。
挿絵の方は癖はありますが、ヒーローは精悍に描かれていて好感を持ちました。
次回作以降に期待したい作家さんです。
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