筆者は『はじめに』で、「日本は合計特殊出生率が1.5未満の「超低出生率」状態にあるが、人口構成の変化の振れ幅は、ゆっくりの方が様々な社会の仕組みをそれに合わせていきやすくなる点で望ましく、日本は超低出生率から抜け出して、もうそれに戻らないことが必要だ。また、人口減少が進んで少ない人数になっても豊かであるために、一人ひとりが今以上に力を発揮できる社会になることも必要だ。その見方に立って本書では、フランス、ドイツを中心に、イギリスやスウェーデン、デンマークの例を交えて世界の状況を確認しながら、考えられる方策や、参考となる事例を取り上げる」とし、「結論を急げば、先進国でほぼ一様にみられる晩産化に対して、子育て世代のニーズに社会がどのくらい応えているのかによって、先送りした「産みたい」という気持ちを現実のものにできるかどうかが決まり、現実のものにできた国では出生率がキープされ、できなかった国では超低出生率が続いている」としている。
フランスは少子化対策の優等生であり、少子化を克服した国として、日本が参考にすべき国とされているが、そのフランスの出生率が3年連続で低下しているという事実は、私は知らなかった。『はじめに』にもあるように、フランスでも晩産化がデー上はっきりと出ており、筆者は、産み始めが遅くなると生涯に持つ子どもの数が減ってしまうのは、なかなか避けられないとしている。
しかしその一方で筆者は、そうした現状のうえに立ちながらも、フランスが今後もなお少子化対策の優等生であり続けることができるのかを、一般には知られていないという「コーホート合計特殊出生率」(ある世代の女性が一生に何人産んだかという「結果のまとめ」データで、晩産化が進み、同世代が一斉に産むということがなくなっている現在では意味があると考えられている)を用いて検討しており、それによると、1970年生まれ以降10年間、「40歳までに約2人」をキープしており、一般的に使われている期間合計特殊出生率でみれば確かに直近の3年連続で出生率は減少しているものの、「コーホートでみれば出生率に変化なし」となるのだそうだ。こうした見方があることは私は初めて知ったが、確かに、ある年で切れば出生率は減少していても、晩産化が進んで出産年齢が上がっただけで、トータルでみればフランスの1人の女性が生涯に産む子どもの数は変わっていないという見方は、十分に成り立つと思う。もっとも、晩産化が今後も進んでいけば、出産可能年齢までの期間が短くなってしまい、出生率はやはり低下していくことになるので、筆者はフランスが今後も高い出生率を維持できるかどうかについても検討を行っている。
筆者は、日本を含めた先進国においては、女性の就業と出生率の関係はデータ上は負でも正でもなく中立だとしたうえで、だからこそ克服しなければならない課題として、晩産化は挽回し続けられるのか、女性が選ぶ仕事によって産みやすさが違うという現実、女性よりも子どもを欲しがらない傾向のある男性の考え、保育の質という4点を挙げ、それぞれについても考察している。
筆者は日本が取るべき少子化対策については、たとえば、コーホート出生率をみると日本では20代で産む数が一気に減った分を30代で取り返せていないとして、これが超低出生率状態を招いた原因であり、世代別に女性のプロフィールを詳しく把握すれば有効な政策手段を講じられるとしたり、「パリティ(出産経験)拡大率」を分析することで、限られた予算の中、子どもの数を「ゼロから1人」「1人から2人」「2人から3人」のどれにするのが最も効率のよい投資になるのか、あるいは出生率が低下した要因が何人目にあるのかを踏まえた支援策を取れるといったようなユニークなものを含め、様々な具体策を提案している。
筆者は日本の少子化対策の問題点を語る中で、日本の少子化対策は、経済政策という大きな土台の上にあり、経済成長のツールになってしまっているが、経済のために少子化対策があると考えるのはおかしいとしている。言われてみれば、まったくもってそのとおりだと思う。筆者は、こうした経済成長重視のもとの諸施策は、不況や格差拡大の中で成長し、給料が上がる期待感が薄く、ものの所有を重視しないミレニアム世代以下には効果がない可能性があるとし、この世代が子どもという大きな投資に個人として動くようになる道筋を検討すべきとして、具体的には、「子どもがいると生活が楽しく豊かになる」「子どもを持つことは自然なことである」と思う人一人ひとりを支援する政策が現代的な少子化対策だとしている。
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少子化する世界 (日本経済新聞出版) Kindle版
移民で出生率が上がったドイツ、
「親になれない」フランスの若者、
数よりも子育ての「質」が議論されるイギリス・・・・・・
新たな課題に直面する欧州各国の動きを学び、日本が進む道を探る。
◆日本では人手不足の影響から少子化対策が叫ばれ
「働き方改革」や「女性の活躍推進」が話題を集めているが、
現実の対策は各企業や個人の裁量に依存しているところが大きい。
無償の教育、未婚でも充実した子育て環境など
少子化対策の「お手本」として注目を集めてきたフランスは、
ここ数年で出生率が減少していた。
背景には、フルタイムで働く女性の増加や学業の長期化、
若年男性の失業が影響している。
フランスだけではない。
欧州各国では新たな課題が生まれていた。
例えばドイツでは、出生率は増加したものの、
新生児の25%の親は外国人だった。
社会保障の恩恵を受けるのは誰なのか、国内で議論が進んでいる。
日本に先駆けて動く欧州各国の最新の少子化事情を、
豊富なデータから読み解いていく。
「親になれない」フランスの若者、
数よりも子育ての「質」が議論されるイギリス・・・・・・
新たな課題に直面する欧州各国の動きを学び、日本が進む道を探る。
◆日本では人手不足の影響から少子化対策が叫ばれ
「働き方改革」や「女性の活躍推進」が話題を集めているが、
現実の対策は各企業や個人の裁量に依存しているところが大きい。
無償の教育、未婚でも充実した子育て環境など
少子化対策の「お手本」として注目を集めてきたフランスは、
ここ数年で出生率が減少していた。
背景には、フルタイムで働く女性の増加や学業の長期化、
若年男性の失業が影響している。
フランスだけではない。
欧州各国では新たな課題が生まれていた。
例えばドイツでは、出生率は増加したものの、
新生児の25%の親は外国人だった。
社会保障の恩恵を受けるのは誰なのか、国内で議論が進んでいる。
日本に先駆けて動く欧州各国の最新の少子化事情を、
豊富なデータから読み解いていく。
- 言語日本語
- 出版社日経BP
- 発売日2019/4/8
- ファイルサイズ5467 KB
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
2100年までの世界の人口の推計データを眺めると、少子化は一部の国で急速に進み、平均寿命の伸びとともに世界に広がっていく。移民で出生率が上がったドイツ、「親になれない」フランスの若者、数よりも子育ての「質」が議論されるイギリス…。新たな課題に直面する欧州各国の動きを学び、日本が進む道を探る。 --このテキストは、paperback_shinsho版に関連付けられています。
著者について
村上 芽
株式会社日本総合研究所 創発戦略センターシニアマネジャー
京都大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)を経て2003年より株式会社日本総合研究所。現在、創発戦略センター シニアマネジャー。専門分野は気候変動と金融、SDGs、子どもの参加論。共著に『ビジネスパーソンのためのSDGsの教科書』『投資家と企業のためのESG読本』(ともに日経BP社)、『進化する金融機関の環境リスク戦略』(金融財政事情研究会)、『地球温暖化で伸びるビジネス』(東洋経済新報社)などがある。 --このテキストは、paperback_shinsho版に関連付けられています。
株式会社日本総合研究所 創発戦略センターシニアマネジャー
京都大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)を経て2003年より株式会社日本総合研究所。現在、創発戦略センター シニアマネジャー。専門分野は気候変動と金融、SDGs、子どもの参加論。共著に『ビジネスパーソンのためのSDGsの教科書』『投資家と企業のためのESG読本』(ともに日経BP社)、『進化する金融機関の環境リスク戦略』(金融財政事情研究会)、『地球温暖化で伸びるビジネス』(東洋経済新報社)などがある。 --このテキストは、paperback_shinsho版に関連付けられています。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
村上/芽
京都大学法学部卒業後、日本興業銀行(現・みずほ銀行)を経て2003年より株式会社日本総合研究所。現在、創発戦略センターシニアマネジャー。専門分野は気候変動と金融、SDGs、子どもの参加論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、paperback_shinsho版に関連付けられています。
京都大学法学部卒業後、日本興業銀行(現・みずほ銀行)を経て2003年より株式会社日本総合研究所。現在、創発戦略センターシニアマネジャー。専門分野は気候変動と金融、SDGs、子どもの参加論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、paperback_shinsho版に関連付けられています。
登録情報
- ASIN : B07QSQXXNJ
- 出版社 : 日経BP (2019/4/8)
- 発売日 : 2019/4/8
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 5467 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 229ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 216,206位Kindleストア (の売れ筋ランキングを見るKindleストア)
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- - 2,005位政治 (Kindleストア)
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2021年5月29日に日本でレビュー済み
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環境問題や社会問題が深刻化する中で「小産少子」が特に先進国で本格化していきました。国連が今世紀末に人口は100億人を超えると予測する中で『empty planet』 やワシントン大学の研究チームは世界は100億人に届かず、その後どんどん下がっていく研究が近年出てきました。さらに新型コロナウイルスの世界的流行で出生率の減少はさらに加速していくものだと思われます。
本書でも指摘ありますが、先進国では女性の活躍しやすい社会、ジェンダーギャップ指数が高い国ほど出生率が高い傾向があるのは間違い無いと思います。女性軽視社会では、女性からの反逆が起きている証拠ですね。
また戦争と出生が密接に関連しているのは改めて興味深くフランスの歴史として、ドイツを意識し、脱カトリック、個人の自由を重視した19世紀の「少子化」の傾向から避妊・離婚・資産の保有を禁止し、女性を抑圧した政策が取られたのも歴史として学ぶべき点だと思います。こうした政策はフランスでフェミニズム運動が高まる1960年代まで廃止されることがなかったというのが驚きです。いわゆる自由の国と言われる国でも女性の解放が進んだのは、第二次世界大戦後の極々最近であったということを改めて思い返したいですね。逆に男女平等に近かったのは今のロシアや東欧諸国ということですかね。
ドイツの労働者の柔軟な働き方が「権利」としてメルケル政権にて確立されたのは大きいです。
いやーそれにしても世界の事例を見ると欧州諸国は、ネオリベの広がりで改悪された社会が少しずつ改善されてきている気運は感じますね。翻って日本。女性活躍を経済成長の道具としか捉えれない女性議員が世界最低レベルの国の少子化が改善されるわけもなく(そもそもこれまでの人口があまりにも多すぎたという点も指摘したいです)、社会から押し潰される人々が権利を主張して反逆する機運も感じされず、このまま韓国並みの合計特殊出生率へ低下ですかね。それも大変興味深い現象ですので、今後も日本の人口動向には常に目を配っていきたいですね。そして今後爆発的な人口増加が予想される世界、特にアフリカの動向にも注目していきたいです。
本書でも指摘ありますが、先進国では女性の活躍しやすい社会、ジェンダーギャップ指数が高い国ほど出生率が高い傾向があるのは間違い無いと思います。女性軽視社会では、女性からの反逆が起きている証拠ですね。
また戦争と出生が密接に関連しているのは改めて興味深くフランスの歴史として、ドイツを意識し、脱カトリック、個人の自由を重視した19世紀の「少子化」の傾向から避妊・離婚・資産の保有を禁止し、女性を抑圧した政策が取られたのも歴史として学ぶべき点だと思います。こうした政策はフランスでフェミニズム運動が高まる1960年代まで廃止されることがなかったというのが驚きです。いわゆる自由の国と言われる国でも女性の解放が進んだのは、第二次世界大戦後の極々最近であったということを改めて思い返したいですね。逆に男女平等に近かったのは今のロシアや東欧諸国ということですかね。
ドイツの労働者の柔軟な働き方が「権利」としてメルケル政権にて確立されたのは大きいです。
いやーそれにしても世界の事例を見ると欧州諸国は、ネオリベの広がりで改悪された社会が少しずつ改善されてきている気運は感じますね。翻って日本。女性活躍を経済成長の道具としか捉えれない女性議員が世界最低レベルの国の少子化が改善されるわけもなく(そもそもこれまでの人口があまりにも多すぎたという点も指摘したいです)、社会から押し潰される人々が権利を主張して反逆する機運も感じされず、このまま韓国並みの合計特殊出生率へ低下ですかね。それも大変興味深い現象ですので、今後も日本の人口動向には常に目を配っていきたいですね。そして今後爆発的な人口増加が予想される世界、特にアフリカの動向にも注目していきたいです。
2019年4月21日に日本でレビュー済み
「合計特殊出生率」とは一人の女性が生涯に何人の子供を産むかを表わした数値で、15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したものをいい、その率が2.08の時、人口のプラスマイナスはゼロとなる。
ちなみにお隣の韓国ではつい最近のこと、その数値が1を切ったという驚くべきニュースが流れた。
この本ではフランス、ドイツ、イギリス、デンマークなどの国々の少子化対策の事例が紹介されている。少子化対策先進国と言われているフランスが、最近は再び出生率が減少しているという。その原因として、子供のいる家庭に対する現金給付が一部カットされたことや、女性が教育を受けるために仕事に就くまでの間、子育てをしておらず、また、若年層の失業率の増加によって、家計を圧迫し、経済的に苦しい世帯が増えてきているからだという。それらの要因により、夫婦で共働きをせざるを得ない状況となって、子供よりまず仕事が優先という考え方が多くなってきているそうだ。
ドイツでは出生率が上昇していて、その原因として、ドイツの移民政策が出生率の高い国の女性を受け入れた結果、ドイツで子供を多く生むという結果となっていて、女性の仕事と家庭の両立を支援する形が強化されたことが出生率の増加に結びついているという。
では、日本はどうかと言えば、若者(男女とも)の恋人やつきあっている異性がいないという人の割合が以前と比較して増加傾向にあって、結婚しないもしくはできない人の割合も急増している現状や、結婚している家庭でも出産してからの子育ての問題、経済的な不安が避けて通れない高いハードルとなっていて、子供を出産する環境が十分に整っていないことが少子化の一因となっているようだ。さらに晩婚化よる年齢の問題でたくさんの子供を産む時間的な余裕がないということもあって、この問題は一朝一夕に片付く性質のものではなく、少子化の根本原因となっている問題点を細かく洗い出して、他の国の少子化対策も取り入れながら時間をかけて解決して姿勢が必要となってくる。社会全体で、国を挙げての取り組みが今現在求められるものである。
ちなみにお隣の韓国ではつい最近のこと、その数値が1を切ったという驚くべきニュースが流れた。
この本ではフランス、ドイツ、イギリス、デンマークなどの国々の少子化対策の事例が紹介されている。少子化対策先進国と言われているフランスが、最近は再び出生率が減少しているという。その原因として、子供のいる家庭に対する現金給付が一部カットされたことや、女性が教育を受けるために仕事に就くまでの間、子育てをしておらず、また、若年層の失業率の増加によって、家計を圧迫し、経済的に苦しい世帯が増えてきているからだという。それらの要因により、夫婦で共働きをせざるを得ない状況となって、子供よりまず仕事が優先という考え方が多くなってきているそうだ。
ドイツでは出生率が上昇していて、その原因として、ドイツの移民政策が出生率の高い国の女性を受け入れた結果、ドイツで子供を多く生むという結果となっていて、女性の仕事と家庭の両立を支援する形が強化されたことが出生率の増加に結びついているという。
では、日本はどうかと言えば、若者(男女とも)の恋人やつきあっている異性がいないという人の割合が以前と比較して増加傾向にあって、結婚しないもしくはできない人の割合も急増している現状や、結婚している家庭でも出産してからの子育ての問題、経済的な不安が避けて通れない高いハードルとなっていて、子供を出産する環境が十分に整っていないことが少子化の一因となっているようだ。さらに晩婚化よる年齢の問題でたくさんの子供を産む時間的な余裕がないということもあって、この問題は一朝一夕に片付く性質のものではなく、少子化の根本原因となっている問題点を細かく洗い出して、他の国の少子化対策も取り入れながら時間をかけて解決して姿勢が必要となってくる。社会全体で、国を挙げての取り組みが今現在求められるものである。





