本書は、遠野貴樹を軸にした、人生における出会いと別れを清冽に描く、淡く切ない三つの短編集である。
映像からの小説化だけに、全編に渡って映像的で、各場面が鮮やかな色に満ちている印象である。
1話目「桜花抄」がすごく良い。二人の恋愛の一途さにこちらまで涙が出そうになる。
原作のナレーションと同じような誠実な口調で綴られる言葉の数々。美しい風景が頭の中に広がる。
そして先が気になる2話、3話は登場人物たちの情景と互いの距離感がほろ苦くて甘酸っぱい。
小説版ならではの瑞々しい文体。貴樹や明里、花苗の心理描写が透明で醒めた言葉で折り重なって、また一段と切なく美しい。場面ごとに素敵な背景画を見ているような表現が秀逸でした。
新海さんの文章は風景描写が上手く、夜中に明里と桜の樹の下から雪が舞うのを見上げるシーンや、夕暮れの中にロケットが大空目指して昇っていくシーンなど、映像が目の前に浮かんで来るようでした。
また、アニメでは描かれなかった部分もこの小説で補完できた。
貴樹と明里のお互いに渡せなかった手紙、そして貴樹と水野の過ごした時間も詳しく分かる。
映画の方は「桜花抄」「コスモナウト」の淡い恋の話が中心で、社会人となった貴樹の話である「秒速5センチメート」は、“その後”という感じだったが……小説の方は、貴樹の仕事のことだけでなく、理紗との関係も含めて心情が細かく描かれていて、前の2話が、かなり活きているように感じた。最後に貴樹が前向きに踏み出せて良い。ハッピーエンドで終わらない、でもそれをリアルに突きつけられるようにも感じない……。大切な人と過ごした時間の意味をさりげなく問いかけるような……切なく心に染みる静かなピアノ曲を聴いたような読後感。
新海誠氏の作品は毎回喪失をテーマとし、それを乗り越える姿を描いている。喪失からの再生は、人生で普遍的なものであり、誰しも経験のある事だろう。新海誠氏の作品はだから人の心を動かすのかもしれない。
アニメ映画最新作「天気の子」もすごく楽しみです。
この商品をお持ちですか?
マーケットプレイスに出品する
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません 。詳細はこちら
Kindle Cloud Readerを使い、ブラウザですぐに読むことができます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
小説 秒速5センチメートル (角川文庫) 文庫 – 2016/2/25
購入を強化する
「桜の花びらの落ちるスピードだよ。秒速5センチメートル」。いつも大切なことを教えてくれた明里、彼女を守ろうとした貴樹。二人の恋心の彷徨を描く劇場アニメーション『秒速5センチメートル』を監督自ら小説化。
- 本の長さ191ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA/メディアファクトリー
- 発売日2016/2/25
- 寸法10.7 x 0.8 x 15 cm
- ISBN-104041026164
- ISBN-13978-4041026168
よく一緒に購入されている商品
この商品を見た後に買っているのは?
ページ: 1 / 1 最初に戻るページ: 1 / 1
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
「桜の花びらの落ちるスピードだよ。秒速5センチメートル」いつも大切なことを教えてくれた明里、そんな彼女を守ろうとした貴樹。小学校で出会った2人は中学で離ればなれになり、それぞれの恋心と魂は彷徨を続けていく―。劇場アニメーション『秒速5センチメートル』では語られなかった彼らの心象風景を、新海誠監督みずからが繊細な筆致で小説化。1人の少年を軸に描かれる、3つの連作短編を収録する。
著者について
●新海 誠:1973年長野県生まれ。アニメーション監督。2002年、ほぼ1人で制作した短編アニメーション『ほしのこえ』で注目を集め、以降『雲のむこう、約束の場所』『秒速5センチメートル』『星を追う子ども』『言の葉の庭』を発表し、国内外で数々の賞を受ける。16年には新作長編アニメーション『君の名は。』が公開予定。自身の監督作を小説化した『小説 秒速5センチメートル』『小説 言の葉の庭』も高く評価された。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
新海/誠
1973年長野県生まれ。アニメーション監督。2002年、ほぼ1人で制作した短編アニメーション『ほしのこえ』で注目を集め、以降『雲のむこう、約束の場所』『秒速5センチメートル』『星を追う子ども』『言の葉の庭』を発表し、国内外で数々の賞を受ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1973年長野県生まれ。アニメーション監督。2002年、ほぼ1人で制作した短編アニメーション『ほしのこえ』で注目を集め、以降『雲のむこう、約束の場所』『秒速5センチメートル』『星を追う子ども』『言の葉の庭』を発表し、国内外で数々の賞を受ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1分以内にKindleで 小説 秒速5センチメートル (角川文庫) をお読みいただけます。
Kindle をお持ちでない場合、こちらから購入いただけます。 Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
Kindle をお持ちでない場合、こちらから購入いただけます。 Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
登録情報
- 出版社 : KADOKAWA/メディアファクトリー (2016/2/25)
- 発売日 : 2016/2/25
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 191ページ
- ISBN-10 : 4041026164
- ISBN-13 : 978-4041026168
- 寸法 : 10.7 x 0.8 x 15 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 15,084位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

1973年長野県生まれ。映画監督・映像作家。ゲーム会社に勤める傍ら、自主制作アニメーション『ほしのこえ』を2002年に発表、数々の賞を受賞。04 年に『雲のむこう、約束の場所』で、毎日映画コンクール・アニメーション映画賞を受賞。07年『秒速5センチメートル』を公開し、ロングラン上映を記録。 『小説・秒速5センチメートル』で小説家としてもデビュー(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『ほしのこえ The voices of a distant star』(ISBN-10:4840131376)が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
5つ星のうち4.5
星5つ中の4.5
281 件のグローバル評価
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
世の中で初恋を成就させ、一生添い遂げられる人達はどれぐらい居るのだろうか、それ自体が幸せに直結するのだろうか、それは人それぞれに違う筈で、理想と現実の距離、それに翻弄される人や流れに任せる人、それぞれの感じる時間や心の距離は同じではなく、子供や大人でも違う、ごくありふれた日常において点とも言える奇跡の時間を共有出来たのは、「貴樹」と「明里」に取ってあの雪の日の再会までだったのだろう。十代の多感な時期に取って身近でしかし最も遠く、心がかき乱される不思議な感覚を与えてくれる、それが恋なのでしょう正に揺れる心を、桜が舞う様にゆっくり表現した本作、心情と時間の流れを的確に表現していて監督の力量を感じる特に、社会人パートの本作のタイトルと同じ第三話は、大人達なら共感できるのではないだろうか、今でも彼女が好きなのか?、それともあの頃の思い出にすがり付きたいだけなのか?、世間の厳しさやそれに抗いたいが出来ない自分への葛藤、それを打破する為に貴樹が取ったカンフル剤が、一番嘘や損得考えず突っ走れたあの頃の明里への想いだったのでしょう会社を辞める事で明里との距離が縮まる訳でも、何かが変わるのかは分からないが、動かずにはいられなかったのだろう、しかし明里は新たな幸せに向かい歩み始めていたのだったいずれ貴樹は知る事になるのだろうが、それは果たして不幸なのだろうか?、それは本人の行動や考え方によるもので、この先の事は誰にも分からないのだから。美しい田舎の原風景に、自然現象の秀逸な描写、ここまで雰囲気に浸れる作品はそう多くは無いでしょう兎に角、一話と二話のゆっくりとした時間の流れ方と、切ないやり取りは特筆もので、声優さん達も絶妙な台詞回しで感情移入させてくれます大人達は思い出と重ね合わせ、若者達は今と照らし合わせ、誰もが感動出来るものだと思うので、全ての人達にオススメです。
このレビューの画像
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2019年6月13日に日本でレビュー済み
違反を報告する
Amazonで購入
23人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2017年12月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
なんというか・・・・恋愛小説というより、人生そのものについて考えさせられる小説です。
埼京線大宮駅、池袋サンシャインビル、新宿駅西口地下街、中央線最終電車・・・主人公の心象風景に合わせ語られる街の風景が、なんともリアルに想い描け、若い頃の恋愛・仕事・夢・希望・絶望・孤独・焦燥等、様々な想いがフラッシュバックして心が揺さぶられました。
新海監督の小説版「君の名は。」を読んだときは映画をノベライズ化してトレースしてるイメージがありましたが、こちらは映画とは独立した「小説」として成立しており、登場人物ひとりひとりの心の襞まで感じ取れ、途中なんとも言えぬ切ない思いと、映画本編ラストで感じた、最後前に踏み出そうとする主人公の心の内を確認でき、少しモヤモヤが晴れた気がしました。
読んでる最中は頭の中を「想い出は遠くの日々」と「One more time, one more chance」がずっと流れっぱなし・・・小説単体でも楽しめますが、映画観てから小説を読む方がお勧めです。それでも救われない人は清家雪子さんが書いた漫画版を読むといいでしょう。あちらはちょっと「恋愛」に軸足が傾いている嫌いがありますが、映画・小説と併せて読むとより「秒速」の世界を楽しめると思います。
埼京線大宮駅、池袋サンシャインビル、新宿駅西口地下街、中央線最終電車・・・主人公の心象風景に合わせ語られる街の風景が、なんともリアルに想い描け、若い頃の恋愛・仕事・夢・希望・絶望・孤独・焦燥等、様々な想いがフラッシュバックして心が揺さぶられました。
新海監督の小説版「君の名は。」を読んだときは映画をノベライズ化してトレースしてるイメージがありましたが、こちらは映画とは独立した「小説」として成立しており、登場人物ひとりひとりの心の襞まで感じ取れ、途中なんとも言えぬ切ない思いと、映画本編ラストで感じた、最後前に踏み出そうとする主人公の心の内を確認でき、少しモヤモヤが晴れた気がしました。
読んでる最中は頭の中を「想い出は遠くの日々」と「One more time, one more chance」がずっと流れっぱなし・・・小説単体でも楽しめますが、映画観てから小説を読む方がお勧めです。それでも救われない人は清家雪子さんが書いた漫画版を読むといいでしょう。あちらはちょっと「恋愛」に軸足が傾いている嫌いがありますが、映画・小説と併せて読むとより「秒速」の世界を楽しめると思います。
2022年3月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
日本版Wikipedia「秒速5センチメートル」の「小説」の項では、『(大事だが前略)意図とは逆に、「ひたすら悲しかった」(大事だが後略)との感想が多く、「ラストを補完するかたちで「小説・秒速5センチメートル」を書いた』との書かれていた。当時の記憶ではトラウマ級に「ひたすら悲しかった」ので、Wikipediaを読んですぐに「小説 秒速5センチメートル」を読んだ。
映画のラストの踏切で貴樹と明里と思われる女性がすれ違い、遮断機が下り、お互いに振り返るも「目を合わせることなく」電車が遮り、電車が通り過ぎた後には女性の姿がないというのが無性に悲しかったのだ。
ラストの補完のための小説版だが、小説のラストでは映画版のラスト(踏切)と異なる事実の描写が書かれていて「大衆好みの救い」となっている。「ひたすら悲しい」案件は少し遠のく。
また、映画第2話「澄田かわいそう」、第3話「貴樹許せん」「明里けしからん」「雑に扱われている貴樹の就職後の彼女(水野)」にも救いの手は伸びていた。小説版では、分かりやすく貴樹の格が上がっていた。
映画「秒速5センチメートル」の美点は「現実より美しい現実描写の中の哀しさ」で、意図はその裏返し「悲嘆に暮れていても(悲嘆に暮れている人も世界も)美しい」なのだが、当時の私には汲み取るのがむつかしかったようだ。
映画のラストの踏切で貴樹と明里と思われる女性がすれ違い、遮断機が下り、お互いに振り返るも「目を合わせることなく」電車が遮り、電車が通り過ぎた後には女性の姿がないというのが無性に悲しかったのだ。
ラストの補完のための小説版だが、小説のラストでは映画版のラスト(踏切)と異なる事実の描写が書かれていて「大衆好みの救い」となっている。「ひたすら悲しい」案件は少し遠のく。
また、映画第2話「澄田かわいそう」、第3話「貴樹許せん」「明里けしからん」「雑に扱われている貴樹の就職後の彼女(水野)」にも救いの手は伸びていた。小説版では、分かりやすく貴樹の格が上がっていた。
映画「秒速5センチメートル」の美点は「現実より美しい現実描写の中の哀しさ」で、意図はその裏返し「悲嘆に暮れていても(悲嘆に暮れている人も世界も)美しい」なのだが、当時の私には汲み取るのがむつかしかったようだ。
2018年12月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
映画は観ていません。新海誠の恋愛観、「君の名は」「ほしのこえ」と読み比べると見えてきます。
それぞれパターンは異なるけど、大筋は似ていると思う。
この作品はバッドエンドに見えるかもしれないが、よくよく考えるとそうでもなく読み終えた直後は、辛いかもしれないが徐々に未来が見えてきます。
この作品の直後に「ほしのこえ」を読むと、とても良い感覚に落ち着きます。
とても良い作品ですよ。
それぞれパターンは異なるけど、大筋は似ていると思う。
この作品はバッドエンドに見えるかもしれないが、よくよく考えるとそうでもなく読み終えた直後は、辛いかもしれないが徐々に未来が見えてきます。
この作品の直後に「ほしのこえ」を読むと、とても良い感覚に落ち着きます。
とても良い作品ですよ。
2022年2月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
読後感はあまり良くない。理解できないところが多く、感情移入できるところがほとんどなかったからだ。
多分映画を見ていない分情報や映像が抜けているからだと、好意的に解釈している。
私にとって、映画を見ていない分の補完として、巻末の書評は非常にありがたかった。西田藍さんのものだが、彼女の書評を読んだ後は、腑に落ちるところがたくさんあり、ブルーな読後感が前向きな気持ちに変わった。
星4つは西田さんへの評価である。正直、どんな人かもしらないのだが。
多分映画を見ていない分情報や映像が抜けているからだと、好意的に解釈している。
私にとって、映画を見ていない分の補完として、巻末の書評は非常にありがたかった。西田藍さんのものだが、彼女の書評を読んだ後は、腑に落ちるところがたくさんあり、ブルーな読後感が前向きな気持ちに変わった。
星4つは西田さんへの評価である。正直、どんな人かもしらないのだが。







