本書はタダのことわざ辞典ではない。あくまでも「ことわざ」というものを「知る」ための辞典である。そう思って読んでみると、たしかに、ひとつひとつの「ことわざ」についての説明が、類書とは異なる。各ことわざの「意味」についての説明は、ひどく簡潔である。そのあとに、「使用例」があり、「解説」が付いている。この使用例や解説が面白く、読みだすととまらない。重要なことわざについては、一ページ全面を使って、詳しい説明がなされている。
念のために言うが、ここで言う「使用例」とは、実際に文学作品などで使われた例のことである。世におこなわれていることわざ辞典のなかには、編者が作った、わざとらしい「使用例」を掲げているものがあるが、そういったものではない。
また本書には、全部で十のコラムが載っている。これがまた楽しい。まさに本書は、「読む」辞典であり、「学ぶ」辞典であり、また「楽しむ」辞典でもある。
編者は、ことわざ研究の第一人者である北村孝一(きたむら・よしかつ)氏。ことわざ学会の代表理事であり、同じ小学館から出ている『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』の監修者でもある。『ことわざの雑学』(大陸書房、一九八四)以来、在野にあって、つねに日本のことわざ研究の先頭を走ってきた研究者である。ことわざに関心をお持ちの読者、今お使いになっていることわざ辞典に満足されていない読者に、お勧めしたい。
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