藤井聡太という天才少年の出現を契機に、初めて将棋に興味を持った人が多いと言われている。かく言う私も、一昔前、羽生善治という天才少年の出現を契機に将棋に興味を持った口であり、羽生さんの活躍をリアルタイムで追い続けてきた結果、羽生さん以降の将棋界の動向については詳しくなったのだが、それ以前については断片的な知識しかなかったので、丁度いい機会と思い、本書で将棋の歴史を系統的に学んでみることにした。
筆者は将棋400年の歴史を振り返るに先立って、まず『はじめに』で、古代インドで誕生したチャトランガというゲームが洋の東西に伝わって、それぞれの地域で改良されたさまざまなゲームが存在していることを示しつつも、日本の将棋の伝来ルートについては、いずれが正しいのか今後の研究を待つしかないとしている。
本編第一章では江戸時代の名人などの動向が紹介されているのだが、江戸時代は大橋本家、大橋分家、伊藤家三家の家元制であり、たとえば大橋宗桂という世襲名は十一代まで、伊藤宗看という世襲名は六代まで登場しており、これらの違いが判別しにくいうえに、同じ人が当初の本名とこの世襲名の両方で登場していたり、各家間で養子縁組での出入りがあったりするので、読んでいて、次々に登場してくるこれらの人物像や人物関係が、本当に分かりにくいことこのうえなかった。
しかし、その後の時代の第二章、第三章ともなると、現在にまで名が知れている関根金次郎や阪田三吉の名前が出てくるだけでなく、この時代になると、現在から遠過ぎもせず、近過ぎもせずで、現在の将棋界にも直接繋がり、かつ、知らなかったさまざまなエピソード、たとえば、新聞将棋の始まりが明治時代であること、奨励会制度が昭和3年には発足していること、最後の世襲制名人関根金次郎が実力制名人戦制度への移行を決断した男気、終戦の翌年に順位戦制度がスタートしたことなどが語られているので、個人的には、本書の中で第二章、第三章が最も興味深く読むことができた箇所だった。
考えてみれば、本書で語られている将棋400年の詳しい歴史などは、よほどの将棋愛好家でなければ知らないのかもしれないし、そのうちの現代将棋に限った歴史についても、将棋ファンになった時期によって、人それぞれリアルタイムで知っている時代は違うわけであり(私の場合は、羽生さんと重なっていた晩年の大山康晴さんの時代まで)、そういった意味で本書は、単に藤井聡太ブームに乗っかった本というだけでなく、以前からの将棋ファンの多くにとっても参考になる本と言っていいのかもしれない。
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