戦前から長きに渡って恐らくは日本初のプロ野球解説者=ライターとして活躍された大和球士(やまときゅうし)なる御仁ありけり。かの打撃の神様こと川上哲治の「弾丸ライナー」の名付け親としても著名なのだが、その大和氏が約40年前に発行された「文藝春秋デラックス/人物・日本プロ野球」なるムックに本書と似た内容の「日本プロ野球騒動史」を執筆されていたのを記憶している。
本書でも一章がさかれている恐らく本邦初の球場における大騒動「三原ポカリ事件」から70年代半ばまでのほぼ同じ事件を扱っていたが、さすがに当時は関係者も多く存命であり、かつまたリアルタイムで取材した筆者であったからよりヴィヴィッドな記述に満ちていた。例えば智将・三原脩にポカリ事件の真相を改めて聞こうとしたら、若気の至りの過ちであるからもうその事は書いてくれるなと懇願されたと。
しかし重複する事件はともかくそれ以降の騒動についての本書の記述は、まことに精細であり綺麗事ではないプロ野球の「熱さ」を十二分に伝えている。パ・リーグ中心の応援スタンスを維持された方ゆえ、いささか贔屓の引き倒しやら極度のアンチ振りが気になるが、むしろ微笑ましいファン気質と言うべきだろう。
だが、終章の「なぜ『乱闘』は少なくなったのか!!」は、今日のプロ野球が抱えている諸問題を的確に指摘していると感じる。もちろんファンにとって娯楽が健全なものであるのが最優先だろうが、水清ければではないが人間臭さまでもが浄化されてしまうのはいかがなものかといったところか。偽善と欺瞞に満ちた綺麗事の上に永年鎮座ましましている高校野球ではないのだから。
さきに挙げたムックの記事において大和氏は
「評論家の建前→騒動は断固根絶すべし…評論家の本音→球場がお通夜のようでもねえ…。」
と結んでおられたが、これは大半のプロ野球ファンの共通認識ではないだろうか。その点で昨今の少なくとも表向きにはお行儀の良すぎる選手たちにはいささか物足りなさを感じてしまうのは無い物ねだりなのかなあ…。
最後になってしまったが、真に熱いファン気質を終生持ち続けたのであろう本書著者のご冥福を心よりお祈り申し上げます…。
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