安倍総理の祖父は、あの有名な岸信介である、とは巷間良く言われるところだが、岸はあくまでも母方の祖父であり、父方の祖父である安倍寛の事はあまり知られていない。安倍総理自身も、岸に対しては度々言及しているが、寛に対してはほとんど言及した事が無い。それは何故なのか。
本書では、安倍寛・寛の息子の晋太郎・寛の孫の晋三の三人の軌跡を追いかける事によって、日本政治が何故今のような状態になってしまったのかをつかもうとしている。
取材によって浮かび上がってきた事は、寛・晋太郎の政治家としての識見・志の高さと、晋三の異常な凡庸ぶりである。それを裏付けるかのように、安倍家の地元では、寛・晋太郎に対する人気・信望は高かったが、晋三に対してはほとんど否定的な評価ばかりであった。
寛は戦前の時代から村長を務め、社会的弱者に寄り添うなど、当時の政治家としてはまれな高い見識を持っていた。戦時中の異常な翼賛選挙にも、軍部の妨害をものともせずに当選した。選挙活動を支えたのは最後まで寛を信じた地元の人々であった。(寛は東條内閣の政策に反対していたため、推薦を受けられず、かなりのハンデを背負った状態で出馬していた)
晋太郎はそんな父を見て育ったためか、徹底してリベラル・ハト派であり、平和憲法を支持する、在日コリアンとも差別せずに親交を結ぶなど、広い度量の持ち主であった。
晋三は、祖父や父がなれなかった総理大臣になったにもかかわらず、彼らとは違い、徹底して凡庸であり、有能さを示すような目立ったエピソードもない。(根は人畜無害の善人、というフォローはあるが)取材でも彼を評価するような言葉は滅多に聞かれなかった。何故日本が迷走しているのか、理解できるような気がした。
売り家と唐様で書く三代目 祖父・父がなれなかった総理大臣になったのだから、身代を潰したとは言えないだろうが、売り家を日本という国だとすれば、このことわざがしっくりくる。
安倍三代 (朝日文庫) (日本語) 文庫 – 2019/4/5
青木 理
(著)
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本の長さ328ページ
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言語日本語
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出版社朝日新聞出版
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発売日2019/4/5
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寸法14.8 x 10.5 x 1.3 cm
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ISBN-104022619619
-
ISBN-13978-4022619617
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
母方の祖父・岸信介を敬愛する安倍首相の父方の系譜をたどるルポルタージュ。庶民目線の政治家で、戦時中に反戦を唱えた祖父・寛。その志を継ぎ、リベラル保守の政治家として外相も務めた父・晋太郎。周辺取材から浮かび上がる三代目・晋三の人間像とは。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
青木/理
1966年長野県生まれ。ジャーナリスト。慶應義塾大学文学部卒。90年共同通信社入社。大阪社会部、成田支局などを経て東京社会部で警視庁の警備・公安担当記者を務める。その後、ソウル特派員を経て、2006年からフリーランスに。雑誌や書籍などでノンフィクション作品を発表する一方、テレビやラジオのコメンテーターとしても活動している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1966年長野県生まれ。ジャーナリスト。慶應義塾大学文学部卒。90年共同通信社入社。大阪社会部、成田支局などを経て東京社会部で警視庁の警備・公安担当記者を務める。その後、ソウル特派員を経て、2006年からフリーランスに。雑誌や書籍などでノンフィクション作品を発表する一方、テレビやラジオのコメンテーターとしても活動している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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2019年4月20日に日本でレビュー済み
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2019年4月25日に日本でレビュー済み
なるほど安倍晋三の人生は凡庸なのかもしれない。しかし、一方では総理の座を追われながらも返り咲き、4選と憲政史上最長の首相在任期間を射程におさめつつあるのも現実である。
「なぜ凡庸な男が、これほど権力を維持し続けられるのか」
この二つの間にあるギャップは一体何なのか。
この本はその疑問に一切答えられていない。安倍晋三には岸信介とは別に安倍寛というリベラル保守のルーツもあった……だからどうした、という話だ。それが現実の安倍政権の盤石さと何かつながるかと思ったら、全くつながらない。安倍晋三は調べれば調べるほど悲しいまでに凡庸と筆者は言うが、では、現実の安倍晋三の状況をどう説明するのか。
安倍晋三を凡庸だとみる人はこう言う。「あれはだた運がいいだけだよ」。しかし、運だけで7年以上も首相の座を維持できるものか。少なくとも私は「運がいい」だけでは納得できない。
それに安倍晋三が時折垣間見せる偏執的な執念深さのようなもの。あれは何なのか。そのあたりにギャップを解明する何かがあるような気がしている。
安倍晋三について悲しくなるほど平凡とこき下ろして留飲を下げたい人にはこの本はお勧めだろう。
しかし、総理の座に返り咲き、まだまだその座に居座り続けるだろう安倍首相について知りたい人には全く役に立たない本である。
「なぜ凡庸な男が、これほど権力を維持し続けられるのか」
この二つの間にあるギャップは一体何なのか。
この本はその疑問に一切答えられていない。安倍晋三には岸信介とは別に安倍寛というリベラル保守のルーツもあった……だからどうした、という話だ。それが現実の安倍政権の盤石さと何かつながるかと思ったら、全くつながらない。安倍晋三は調べれば調べるほど悲しいまでに凡庸と筆者は言うが、では、現実の安倍晋三の状況をどう説明するのか。
安倍晋三を凡庸だとみる人はこう言う。「あれはだた運がいいだけだよ」。しかし、運だけで7年以上も首相の座を維持できるものか。少なくとも私は「運がいい」だけでは納得できない。
それに安倍晋三が時折垣間見せる偏執的な執念深さのようなもの。あれは何なのか。そのあたりにギャップを解明する何かがあるような気がしている。
安倍晋三について悲しくなるほど平凡とこき下ろして留飲を下げたい人にはこの本はお勧めだろう。
しかし、総理の座に返り咲き、まだまだその座に居座り続けるだろう安倍首相について知りたい人には全く役に立たない本である。
2019年4月30日に日本でレビュー済み
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なぜ安倍晋三首相は「岸信介の孫」と呼ばれるのか。
祖父・寛氏は早世しており、父・晋太郎氏は岸信介の女婿だったし総理になり損ねた男だったから、程度に思っていた。
そうではない、と本書は丹念な聞き取り取材から書き起こす。
保阪正康氏が東條英機首相を引き合いに出しながら「総理にしてはいけない人物」として安倍晋三氏を評している。
後藤田正晴氏が「安倍晋三だけは総理にしてはいけない」と語っていただとか、父・晋太郎氏が「晋三は情がないから政治家には向かない」と評していただとか、父の臨終の場にあってゲームボーイに興じていただとか、そういう話は以前から聞いてはいた。
本書を読みながら、つくづくそう思った。大人に囲まれて育った「凡庸ないい子」が総理を演じている姿には、なんだかかわいそうにもなった。そして長期政権の秘訣もわかった。
父・晋太郎氏を持ち上げすぎ、という嫌いはある。しかし「清濁併せのむ度量と絶妙のバランス感覚の持ち主」であることについては異論はない。
本書の元となった連載が行われたのは2015年。3年半が経ち、筆者の予想した方向に、しっかりと事態は進んでいる。
祖父・寛氏は早世しており、父・晋太郎氏は岸信介の女婿だったし総理になり損ねた男だったから、程度に思っていた。
そうではない、と本書は丹念な聞き取り取材から書き起こす。
保阪正康氏が東條英機首相を引き合いに出しながら「総理にしてはいけない人物」として安倍晋三氏を評している。
後藤田正晴氏が「安倍晋三だけは総理にしてはいけない」と語っていただとか、父・晋太郎氏が「晋三は情がないから政治家には向かない」と評していただとか、父の臨終の場にあってゲームボーイに興じていただとか、そういう話は以前から聞いてはいた。
本書を読みながら、つくづくそう思った。大人に囲まれて育った「凡庸ないい子」が総理を演じている姿には、なんだかかわいそうにもなった。そして長期政権の秘訣もわかった。
父・晋太郎氏を持ち上げすぎ、という嫌いはある。しかし「清濁併せのむ度量と絶妙のバランス感覚の持ち主」であることについては異論はない。
本書の元となった連載が行われたのは2015年。3年半が経ち、筆者の予想した方向に、しっかりと事態は進んでいる。
2019年2月17日に日本でレビュー済み
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安倍寛、晋太郎、晋三の三代の政治家それぞれの生き様を追うことで、政治の世襲の功罪について問題提起する。第二次大戦前、軍部が台頭する中、確固たる政治信念で戦争に反対し、富の偏在の克服を目指し、地元の尊敬を集めた安倍寛。その地盤と看板を受け継ぎつつ、汗水流して選挙区を回り支持を集めた晋太郎。そして生まれながらに政治家として恵まれた環境を得た晋三。代を重ねるごとに権力の階段を上っていった安倍家三代が失ったものに焦点を当てる。
世襲議員は親の地盤、看板、カバンを受け継ぐことで、より容易に権力の中枢に近づくことができ、またドブ板選挙のしがらみから解放されることで、地元利益誘導型ではない、より大局的な視野に立った政治を実行することができる。だが、その半面、有権者との接点が薄らぎ、また苦労を経ないことで、親の代が持っていた信念やエネルギー、為政者としての資質や人間的魅力の多くが失われていく危険がある。筆者は安倍総理の言動の「軽さ」の背景に、こうした世襲の負の側面がにじみ出ていると分析する。
政治家の世襲の功罪について深く考えるきっかけとなる好著。
世襲議員は親の地盤、看板、カバンを受け継ぐことで、より容易に権力の中枢に近づくことができ、またドブ板選挙のしがらみから解放されることで、地元利益誘導型ではない、より大局的な視野に立った政治を実行することができる。だが、その半面、有権者との接点が薄らぎ、また苦労を経ないことで、親の代が持っていた信念やエネルギー、為政者としての資質や人間的魅力の多くが失われていく危険がある。筆者は安倍総理の言動の「軽さ」の背景に、こうした世襲の負の側面がにじみ出ていると分析する。
政治家の世襲の功罪について深く考えるきっかけとなる好著。
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反骨の政治家として地元で慕われた祖父・寛、政治的なバランス感覚を有した父・晋太郎、ときの宰相の安倍晋三まで安倍三代の系譜をたどる作品。
周りに残す印象も薄く、凡庸で特段優れたところもない。内なる衝動から政治を志したわけでもなく、後付けで右寄りの政治姿勢を獲得していった晋三。「美しい国」「運命」といった言葉に頼る姿に、世襲政治の弊害と格差の固定が見えることを指摘します。
巻末では、晋三が小学校から大学までを過ごした成蹊学園の元幹部へのインタビューを収録。ともすれば暴走を続ける教え子の行く末を思いやる姿は、悲痛ですらあります。
周りに残す印象も薄く、凡庸で特段優れたところもない。内なる衝動から政治を志したわけでもなく、後付けで右寄りの政治姿勢を獲得していった晋三。「美しい国」「運命」といった言葉に頼る姿に、世襲政治の弊害と格差の固定が見えることを指摘します。
巻末では、晋三が小学校から大学までを過ごした成蹊学園の元幹部へのインタビューを収録。ともすれば暴走を続ける教え子の行く末を思いやる姿は、悲痛ですらあります。
2019年6月16日に日本でレビュー済み
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世襲の2世3世議員たちが既得権益を守るために国会議員になっている。選挙区は少なくとも3代は世襲出来ないようにすべし。私の選挙区も世襲議員で何十年も何やってんだか??
2019年8月18日に日本でレビュー済み
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まだ読みかけですが、半分以上読み進んだので今の感想を書こうと思います。
安倍晋三の父方の祖父、安倍寛(かん)は挙国一致体制の東條内閣の時代に、翼賛会に属さず、非推薦で、反権力や反戦を掲げて衆院選に立候補して当選した気骨のある人物です。
そして、父親の政治信条を継いだ安倍晋太郎は終生「私は岸信介の娘婿ではなく、安倍寛の息子である」と誇りを持って公言したそうです。
これはあくまでも私の推測ですが、祖父や父が早く亡くなった事で、母親や母方の親戚の影響力が増し、政治家 岸信介(A級戦犯、CIAスパイの元首相)を目標にするようになったのではないかと思います。
二人がもう少し長生きしてくれたら、もっと晋三青年の人格形成に良い影響を与えることが出来たのではないかと思うと残念でなりません。
安倍首相は憲法改正を盛んに謳っていますが、寛や晋太郎の政治信条を思い出して欲しいものです。
最後に、集団的自衛権行使や改憲による緊急事態条項の盛込みに私は反対です。
以上
安倍晋三の父方の祖父、安倍寛(かん)は挙国一致体制の東條内閣の時代に、翼賛会に属さず、非推薦で、反権力や反戦を掲げて衆院選に立候補して当選した気骨のある人物です。
そして、父親の政治信条を継いだ安倍晋太郎は終生「私は岸信介の娘婿ではなく、安倍寛の息子である」と誇りを持って公言したそうです。
これはあくまでも私の推測ですが、祖父や父が早く亡くなった事で、母親や母方の親戚の影響力が増し、政治家 岸信介(A級戦犯、CIAスパイの元首相)を目標にするようになったのではないかと思います。
二人がもう少し長生きしてくれたら、もっと晋三青年の人格形成に良い影響を与えることが出来たのではないかと思うと残念でなりません。
安倍首相は憲法改正を盛んに謳っていますが、寛や晋太郎の政治信条を思い出して欲しいものです。
最後に、集団的自衛権行使や改憲による緊急事態条項の盛込みに私は反対です。
以上