安倍総理の祖父は、あの有名な岸信介である、とは巷間良く言われるところだが、岸はあくまでも母方の祖父であり、父方の祖父である安倍寛の事はあまり知られていない。安倍総理自身も、岸に対しては度々言及しているが、寛に対してはほとんど言及した事が無い。それは何故なのか。
本書では、安倍寛・寛の息子の晋太郎・寛の孫の晋三の三人の軌跡を追いかける事によって、日本政治が何故今のような状態になってしまったのかをつかもうとしている。
取材によって浮かび上がってきた事は、寛・晋太郎の政治家としての識見・志の高さと、晋三の異常な凡庸ぶりである。それを裏付けるかのように、安倍家の地元では、寛・晋太郎に対する人気・信望は高かったが、晋三に対してはほとんど否定的な評価ばかりであった。
寛は戦前の時代から村長を務め、社会的弱者に寄り添うなど、当時の政治家としてはまれな高い見識を持っていた。戦時中の異常な翼賛選挙にも、軍部の妨害をものともせずに当選した。選挙活動を支えたのは最後まで寛を信じた地元の人々であった。(寛は東條内閣の政策に反対していたため、推薦を受けられず、かなりのハンデを背負った状態で出馬していた)
晋太郎はそんな父を見て育ったためか、徹底してリベラル・ハト派であり、平和憲法を支持する、在日コリアンとも差別せずに親交を結ぶなど、広い度量の持ち主であった。
晋三は、祖父や父がなれなかった総理大臣になったにもかかわらず、彼らとは違い、徹底して凡庸であり、有能さを示すような目立ったエピソードもない。(根は人畜無害の善人、というフォローはあるが)取材でも彼を評価するような言葉は滅多に聞かれなかった。何故日本が迷走しているのか、理解できるような気がした。
売り家と唐様で書く三代目 祖父・父がなれなかった総理大臣になったのだから、身代を潰したとは言えないだろうが、売り家を日本という国だとすれば、このことわざがしっくりくる。
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