西洋の思想がいかに神概念を巡って悪戦苦闘してきたか、
本当に西洋の信仰の執念はすごいな、執拗だなとおもう。
所謂、弁神論に端的に主題化するが、神や善、要は完全性に対
する西洋人のあくなき思弁の執拗さに感嘆してしまう。
合理的/科学的思考と神への信仰は決して矛盾はしない。
合理性への執着だけみれば、スコラ哲学はもちろん、中世の
思想家達のほうがよっぽと身をけずって苦闘している気がした。
本質的な矛盾は抱えてはいるものの。
形而上学には「宇宙の秩序や合理性という前提を疑わないので
あれば」という暗黙の公理が必ずまずあって、次に本書でも
キー概念になっている「充満の原理」「連続の原理」という
本質的には矛盾をきたす二つの観念が導出され、悪戦苦闘と
いうか、時には矛盾に目をつむりながら、二千年近くあざなえ
る縄のように連綿と西洋思想史の中をからみあう様が跡付け
られています。
シェリングてその矛盾が先鋭化、転換し、先に述べた
合理性や超越的神概念はエンディングをようやく迎える。
静的な凛とした完全性と時間の中で刻一刻変化する生成の活動力
の間に揺れ動いてきた西洋思想史。
本書はハーバードでの講演をもとに1933年に出版されたもの。
同時期にハーバードにはホワイトヘッドがいて、1933年は
彼の「観念の冒険」が出版された年(ラヴジョイは同校教員ではな
いらしいが)。
ホワイトヘッドの有機体の哲学の超越的かつ内在的な一種独特
な神概念も(どなたかが「万有在神論」といっていた)、本書を読
むときわめて本書が描く観念史の伝統の延長線上にあるものである
ことがよくわかる。
下手な西洋哲学史などを読むよりは、本書を熟読するほうが得るも
のは格段に多いと思う。
大著だが比較的読みやすいし、もしあなたが文系の大学生なら、
これは読んでほしいし読むべきだと思う。
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