乳幼児期は人間の基礎を育てる大切な時期だと、乳幼児期の子育てに重点を置いている1冊。
著者は30年以上、子どもの臨床に携わってきた。さらに診察室だけではなく、保育園や幼稚園、学校、児童相談所、養護施設、家庭裁判所などさまざまな場所で数多くの子どもや親に出会ってきた。
社会の変化に伴い、育児方法や育児の考え方は大きく変化した。育児不安を持つ母親はますます増加し、近年問題になっている過干渉や放置、虐待など、社会のゆがみは、そのまま子育てに影響している。著者は、子どものありのままを受け止めることが大切だと強調する。十分な受容や承認を受けた子どもは、安心して社会に出ることができる。子どもにとって、最大のサポーターであり、理解者であるのが親なのだ、と。育児の喜びは、子どもに期待できる喜び、子どもを幸せにできる喜びの二つあると著者はいう。そして、子どもの笑顔や喜ぶ姿に、自分自身が喜べる親であってほしいと願う。
自分が望んだとおりに子どもが育つ姿を見て、満足する。そういう「条件つきの愛」ではなく、無条件に子どもを愛することの大切さは、きっとだれでもわかっていることなのだろう。本書に書かれていることは、ごくごくあたりまえのことばかりだ。しかし、忙しい毎日に追われ、そんなあたりまえのことをつい忘れてしまいがちになる。本書は、自分の子育てをあらためて見つめ直すきっかけになりそうだ。(町場キリコ)
内容(「MARC」データベースより)
子どもは人とふれあいながら育つことが大事。つぎの世代を生きる子どもたちを豊かに健やかに育てることは大人自身も自分を大切に生きること。児童精神科医が語る乳幼児期の育児の大切さ。
著者について
1935年、前橋市に生まれる。高校卒業後、6年間働いた後、1962年新潟大学医学部に編入学する。1966年に同校卒業後、東京大学で精神医学を学び、1969年、ブリティシュ・コロンビア大学に留学し、児童精神医学の臨床訓練をうける。帰国後、国立秩父学園をへて、小児療育相談センター(横浜市)に20年間勤める。この間、東京大学精神科、東京女子医大小児科などで講師を勤める。一方、全国各地の乳幼児の育成にたずさわる親や保母さんたちと勉強会、講演会を重ねる。 現在、川崎医療福祉大学教授(岡山市)。『児童精神医学の臨床』など著書多数。