旅回りの役者一座が、ひょんなことから公儀隠密の下請け稼業をすることになって・・・というのが大きな枠組みです。
美貌の女形、千代丸はこともあろうに同心の家の跡取りに化けさせられ、千太郎として、親分を顎で使い(つつ、実は使われて)、薄氷を踏むような綱渡りを演じています。今回は、将軍家のお姫さまのご降嫁をめぐって、加賀藩内部での内紛に巻き込まれることに。
ほんとうの同心の娘で死んだことになっている千代が、黒鍬組なる公儀隠密のひとりとして、この一座にあれこれ役を振り、お姫様暗殺の陰謀を調べさせ、ときには男装し、千代丸とふたり一役を演じる、という裏のストーリーは、これからもっと面白くなりそう。
一座の親方勘太'郎、二枚目役の徳次、老け女形一助、三枚目の亀、用心棒のセンセイそれぞれが特技を活かして活躍。何といっても芝居者たちなので、変装もお手のもの、アドリブも、なりきるのもうまく、ご大家の用人たちの裏をかいてしまいます。このあたりの痛快さが何ともいえません。
そしてふだんは内心オドオドしつづけの千代丸が、いざとなると、突然同心らしいセリフが口をついて出てきたり、将軍のお姫さまになりきったりと、天才役者の片鱗を見せるのも、大向こうから声をかけたくなります。
この巻はストーリーも明快、どの人物も時代劇の典型のようでいて、著者の時代考証はさりげなく深いツボを踏まえていると思います。
そして、芝居ものたちが時代劇を手玉にとる、という二重構造のおかしみが最高です。ヘタレな千代丸が、将軍家の息女に化けさせられて豪華な衣装にうっとりし、「まるで江戸三座の花形役者になったようだよ」と筋違いな方向に恍惚となったり・・。
時代劇の華やかさの椀飯振る舞い、お勧めします。
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