鳥山石燕の「百鬼夜行」シリーズや「桃山人夜話」は文庫化されていますが、「百怪図巻」は、カレンダーにはなっているみたいなのに、文庫化の話は未だに耳にせず、紙の書籍の形で手元に置きたいのならば、この本「妖怪図巻」を買うしかありません。幸い、最初の発売(2000年)からだいぶ経ちましたので、古本でしたら、かなり安価で入手する事も可能になっています。
さて、私のお目当は、絵画そのもの以上に、多田克己氏の解説部分でした。この本には、多田氏の前作「百鬼解読」(1999年)から溢れた妖怪たちの分析が多数、収録されているのであります。多田氏の妖怪説明は、妖怪の特徴や出没事例のみならず、歴史的出自やその後の変遷の解析など、かなり掘り下げた話題にも触れられており、好きな人なら大変楽しめるのです。
本作では、妖怪たちの江戸時代までの変容の話ではとどまらず、佐藤有文氏や山田野理夫氏などの近代の妖怪研究家の書物の事まで言及しています。まさに、妖怪の進化の歴史はまだ続いているのであり、私たちも、その歴史の中に生きている事を実感させてくれるのであります。
松井文庫「百鬼夜行絵巻」の解説に移行すると、さらに多田節が暴走モードに突入します。松井文庫「百鬼夜行絵巻」に描かれた一部の妖怪は、完全な創作っぽい妖怪たちで、その出典が全くの不明なのですが、それにも関わらず、多田氏は、名称と容姿だけを手がかりにして、これらの妖怪の正体を言葉遊びでガンガン解釈していきます。多田氏の説明がどこまで当たっているのかは分かりませんが、その熟語、ことわざの知識量には、ただただ圧倒されてしまうばかりで、違う形で感心させられてしまうのでした。
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