少子化世代(著者を含む第2次ベビーブーマーを中心とする世代)が,
・ 現在の少子化対策に“なんとなく”感じる違和感の正体はなんなのか?
・ どんな少子化対策(の追加)を望むのか?
本書は,著者がこの疑問の回答を模索するもの。
著者は,違和感の原因を,
・ 経済合理性原理主義におかされた(マクドナルド化した)現代社会において,保育所の整備等“女性にもっと働いてもらう”ための少子化対策ばかりがうたわれていること
・ そして,それがさらに“マクドナルド化”を推し進めてしまっていること に見出す。
そして,諸外国の子育て支援政策や,森づくりなどの他の政策にヒントを求めた上で,少子化世代が望むもう1つの少子化対策として,
・ あえて,“非効率”な「子育て」そのものに価値を見出すこと
・ それを確保することにより,“つなぐ存在”としての子どもを核として,“マクドナルド化社会”から身を(ひいては社会を)守れ!(働きながら育てられる環境作りもいいけど,ほかの選択肢も)
を主張する。
具体的な施策として,家庭教育手当(保育所等ではなく自宅での子育てを選択した者への補助)やプレイセンターのように今すぐ具体化を検討してもよいもの(すでにされているもの)もあげられているが,基本的には本書は,具体的な施策を考える前段で,新しいパラダイムを提示している,“思想書”だと感じた。
野田聖子議員ら,現在少子化対策の改善を盛んに訴えている少し上の世代の“強い”女性たちの考えと比べると,著者の論はそのさらに次を見据えたものだ。
この点,同世代でありながら子どもを生まずキャリアの世界で生きることを選択した「負け犬」とは,一見正反対の主張のように見えながら,抱えている問題意識・“違和感”は相通ずるものがあり,面白い。
また,結局最も必要(裏を返せば欠けている)なのが子育てに対する“希望”だという論は,村上龍の小説を引用するまでもなく,子育てだけに限らない現代日本社会の最重要テーマだろう。
なお,著者の職業(シンクタンク研究員)や標題から,もっと具体的な政策案を期待して本書を読もうとする者が多いと思われるが,その点では期待はずれとなるかもしれない。
が,著者がメイン・ターゲットとしているのは,まさにそういう政策の立案を担う実務家であろうから,これは著者の深遠謀慮なのかもしれない…。
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